「どちらかが選ばれるのではなくて、望まれるほうだけが残される」
あなたの意図に生死を沿わせる前置き。
えー、今回は箱庭のイデアさんところのフリーゲーム「白のキョウメイ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
探索重視の謎解き脱出ゲーム。パステル調の可愛らしいイラストと、和やかな中に一匙の猛毒が入っているようなお話が魅力の作品です。
以下はネタバレを匂わしてしまっているので、これからプレイ予定の方はぜひプレイ後にどうぞ。
というわけで良かった点など。
4人の少女を切り替えて謎を解くシステム
この作品で一番特徴的なのはザッピングシステムです。
探索自体は狭い1マップで行うのですが、4人の少女の視点を切り替えていくことで少しずつ脱出への道が進展していきます。こちらで手に入れた情報があちらで役立つ、というパズル感が楽しいシステムでした。
情報は引き継がれてもアイテムが引き継がれない、というのがまた上手いですよねぇ。
それぞれのヒントとなる情報は色で判断できるので、難易度としても調整が効いてて良いなあと思います。なお、私みたいにちっとも謎が閃けないプレイヤーでも安心の攻略ページもあります。ご安心。
四色に分かれた部屋と繊細なドット
ぱっと目を引くのはやはり色使い。四色の部屋に4人の少女とあなた、部屋固有のBGM。見た目は異なるけどピアノの音色やパステルな色味は共通で、和やかなのにどこか落ち着かない気持ちにさせてくれます。静かな不安、たまりませんよね。下手なホラーより怖い。
クリア後にBGM鑑賞ができるの、すごく嬉しかったです。ああいう、ええと、アンビエント? 綺麗な音なのにざわざわする雰囲気の曲好きなんですよねぇ。聞きやすいのは赤だけど、好きなのは青かも。
話を元に戻して。
1マップだからこそ必要なアイテムやフラグはその部屋に全てぎゅっと詰まっています。全て。うぅ……。その部屋にいる少女を印象付けるアイテムがぽんと置いてあるのがまた、良いんですよねぇ。象徴的。
基本的に虱潰しすれば探索はなんとかなりますが、一か所よく目を凝らさないとわからない点は注意かも。室内が繊細で雰囲気のある空間なので、探索自体はむしろずっと浸っていたいと思わされるくらいでした。
要所を彩るスチルと細やかな少女の表情
ボリューム自体は短編ですが、スチルや表情変化は豊富です。
こう、プレイヤーの性癖が性癖なもんで、ついハイライトの消える場面ばかりスクショを集めてしまいまして。でも皆の、ほわ、っとした笑顔も和やかで可愛らしいです。うぅ……。
一枚絵やアイテムに関しては、こう、モチーフの使い方が上手いんですよねぇ。
エンドロールでのリボンの位置に気付いた時は思わず息を飲みました。
こういう、棘のように襲い掛かってくる感じが、大好きです……。
うそつきレーネの物語
前作「ハコイリさま症候群」でサブメインキャラとして登場していた、嘘つきなレーネちゃんが主役です。これだけでもめっちゃ嬉しい人は多いのではなかろうか! 彼女については前作で色々と気になる点がありつつも、焦点はそこまで当たらずに終わってしまった印象があったので、新しい形でがっつりと彼女の魅力が楽しめて嬉しかったです。
といっても、前作の話は知らずとも本筋に影響はないので、この作品から始めても問題はありません。ただ、レーネが嘘つきだという前情報さえあれば理解はしやすいと思います。
名前入力で没入感を大きくするのもまた良い演出ですよね。
数日は後に残りそうな感じでした。
とまあ、こんな感じで。
切り替え型謎解き脱出、和やかな雰囲気の裏の不安定さ、パステルカラーとピアノと少女達、鬱展開などにピンとくる方へおススメの一作です。
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