「0と1が繰り返す世界では単純に事を為すべきだ」
届かないなら壊せばいい、足りないのなら作ればいい前置き。
えー、今回はすいかじるさんところのフリーゲーム「8人目のフラグ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
クリックで進める、探索&ノベルなADV。クリアまで2時間かかりましたが、細かいポイントを回収していくともっとかかります。そしてそれだけの価値と細やかさがあるゲームです。
なお、ネタバレしちゃうとかーなーりもったいない作品でもあります!
紹介ページで察せれそうなところまでは隠さず書いてしまっていますが、既に気になっている未プレイの方は掴みだけでもまずやってみることをおススメします。
というわけで良かった点など。
暗中模索の廃墟探索
真っ暗な廃墟にポンと放り出されるところからゲームは始まります。
何をすればよいのか? 主人公は何者か? 現れる少女たちはどういった立ち位置なのか。それらの疑問が明確に開示されるまでにまずは手探りで動く必要があります。
「なんだこれ?」が「なんかわかってきた気がする」になったタイミングでイベントが起こり「なるほど!」と思わず叫びたくなってしまうこの感覚。いやあこれぞ探索ゲームですよねぇ。察しのつく情報とまったく意外な展開、二つが織り交ざっているおかげでぐいぐい先を見たくなる魅力がありました。
また、廃墟探索ということで暗く荒れ果てた雰囲気も魅力の一つです。
ボロボロのぬいぐるみ、割れた窓、破れかけの手記、スクラップの機械などなど。軍艦島とまではいかずともこういうスポット好きな人には涎ものかと思います。
ドアは蹴り飛ばして開けるもの
探索ゲームとして面白い切り口は、小難しい謎解きや常識クイズが一切ないのにも関わらずきっちり謎が隠れている点です。
基本的にパスワードも鍵もそこらへんに落ちていて、取得だけならとっても簡単。「どうそれを生かすか?」に頭を悩ませる場面があったように感じます。この辺り上手いと思うんですよねぇ! 探索ゲーにおける突っ込んじゃいけないツッコミ部分を全く感じさせることなく、「その場所にあっても違和感ないもの」が大半を占めているところにリアルさがありました。
ストーリーの進行状況に応じて行ける場所が増えていく解放感を残しつつ、その制限の仕方にはきちんと理由があるという……ストーリーとシステムが繋がるのも気持ち良かったです。
細かな探索ポイントと嬉しい会話イベント
調べられるポイント自体はかなり多め。ですが、虱潰しになる場面ではあえて探索ポイントが限られる状態になったり、前述の通り序盤は進行制限がかかっていたり、行動可能時間が極端に減ることでまだ先に進めないポイントなのだと示唆してくれたり、プレイヤーのことも考えてくれている作りだなあと感じました。
また、見つけるとちょっとクスッとなる楽しい会話イベントもあります。こういうサブイベントっぽい会話とか、道中で誰かに話しかけられるシステムとかって、さりげないながらもにこにこできて良いですよね。
コミカルで元気いっぱいのキャラクター
会話についてもう少し。
タイトル画面の低く響くモーター音と言い、くすんだ廃墟とモノトーン寄りの画面と言い、初回プレイ時はホラーかと思うほど退廃的な雰囲気が漂っています。
が、その雰囲気をがらっと変えてくれるのが登場するキャラクター達です。軽快な掛け合いに加え、それぞれ異なる性格ながら根がからっと明るいところも魅力的。某所の「だめじゃん!!」には思わず吹き出してしまいました。
探索文書内で見られる掛け合いも、ほんとにリアルでありそうな和やかさとテンポの良さでした。
基本は親切なコンフィグ・システム面
一方惜しい点として、少々バグが残っているのも触れざるを得ないところ。
ですが基本は「実績開放率が100%を超える」といったある意味お得なものです。強制終了も稀に起こりますが、オートセーブ式なので復帰は楽ですし、基本的に詰むことは無かったと思います。あれだけのイベント数をウディタで管理してる時点で相当な苦労があったでろうことは想像に難くないですしねぇ……。
コンフィグ面で言うと、文章スピードの一瞬表示やバッドエンドでのエンドロール早回しは実に助かりました。
とまあ、こんな感じで。
さらに語りたいポイントもあるのですが、ここはネタバレド直球になってしまうので追記にて。
廃墟、シリアスだけど明るい意外性、細やかな会話分岐、綿密な伏線などにピンとくる方へ強くおススメの一作でした。
追記ではネタバレ込みの感想など。
ネタバレあり
真相、エンディングなどについて
表で語りたかったけどネタバレの関係で堪えた良点として、挙げたいのがメタ要素の使い方です!!
あれ面白かったですよねぇ!
なんというか、「プレイヤー」のところまで届きつつもギリギリ「今プレイしている私」のところまでは届かない感じというか。厳密にはメタじゃなくて劇中劇みたいな形になっているから起こる感覚なんでしょうかねぇ。
「右上の×ボタンを押せば~」の台詞にはついマウスの手を伸ばしてしまいたくなるユーモアがありました。
あと私プレイしながら素で、「なるほどフラグ立てが重要なループゲーかー」と思い、思った直後に「8で!!フラグか!!タイトル!!!」となりました。すんげぇ的確なタイトル付けですよね。
正直、“こっちの世界”まで言及されるとは思ってもみなかったので、あのエンディングには心が震えました。私もあそこに住みたい!プリンを食べたい!
あえてクリア後の探索やミキコのエピローグには触れず、実績100%のおまけで「どうなったのか」だけ見せてくれるのもまた加減が絶妙! 少なくともあのゲーム世界におけるあの世界の話は一区切りついた、というところでお話の〆も良かったですし、想像する余地も残されててすっごくわくわくしました。
というかもう灯がラブラブって言ってる時点で泣いたおめでとう。あとミキコさんのみおちゃんに対する啖呵がかっこよかったです。
イベントについて
初回クリア時はプレイ時間が約2時間でぴったり90%達成でした。惜しい!
見逃していたのはほとんどが序盤のレミとの探索会話イベント。あと、キッチン奥へほとんど入っていなかった(電話が鳴るたびに取りに行ってた)ので、携帯の充電に関する会話もけっこう抜けてましたねぇ。あとはわりと序盤最速でクリアしたらしく、「探索再開でーす」関係はほとんど抜けてました。
それでもブレーカーはわざと上げまくったんですけどね!あの反応もうめっちゃ楽しかったです! 「やるなよ?やるなよ?」の法則。しかもバリエーションも豊かでなおさら笑いました。その反応が見たかった!
また、暗闇でのドア破りはレミが3回ほど必中で開けてくれたので、懐中電灯はてっきりフレーバーなんだなあと思い込んでいました。外す時もあった、というかその方が多かった! 私の出会ったレミはなかなかのワザマエだったようです。
実績100を目指してるけどなかなか、という人はとりあえず「イベントが終わるたびに会話する」「レミと同行中にまず全部屋解放してもらってから行動する」ことを意識しておくと何かと回収しやすいのでおススメです。特に後者は姿隠してる灯との会話イベントをほぼこの関係で取り漏らしていたので……っ!
会話分岐・伏線について
序盤やパーティメンバー有無による会話分岐がめっっっちゃ細かくて感動しましたね!
私が見つけたところをせっかくなので一部挙げておくと、
- 自分の名前を誰に名乗ったかでレミミウ和解後の会話が変わる(レミ/ミウ/二人とも/誰にも名乗らない)
- 充電の切れた携帯を調べた時(レミ/ミウ/二人とも)(レミしか開けられないので初日~3日目でレミに開けてもらい、そのターン中にミウとのみ同行すれば会話回収できる)
などなどでした。もちろんこれ以外にも何かと仕込んであります。探すのが楽しい。
また、初期状態に戻すという意味での二周目をしているとあっと驚く伏線も多かったです。日記の日付を即諳んじれるミウとか、序盤に木の実回収しようとすると(灯に)ぶん殴られるとか。
特にこの辺りのループに関する設定や伏線はかなり緻密で良かったですよねぇ。うっかりな行動が延々と影響しちゃう、というのもループならではのギャグで新鮮でした。
余談ですがミウの「おにい」呼びがめっちゃ好きです。かわいい。
ふう、語った語った。
もうね、あちこち凝ってて完成度が高い!
制作は2012年らしいんですが、いやあなんというか革新的ですよね。ストーリーとしてもプレイ感としてもすごくわくわくさせられる良作でした!