「誰も異常を唱えないなら正常とみて差し支えない」
結局相対で決めてしまうのが楽な前置き。
えー、今回はエンディング・エラーさんところのフリーゲーム「終わる世界とあなたと私」「箱庭ネオテニー」「ハロウィンナイト・グリッチ」「ハロウィンナイト・グリッチSweet」「クリスマスのしあわせなおうち」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
どれも短編の男女恋愛ノベルゲー。攻略対象は近親で、ヤンデレや病みが多めの乙女向けです。
昔にこの作者様の処女作『完全バッドエンド』をプレイさせて頂き、ずいぶんと間が空いて他作も一気プレイしたのですが……ぐぐっと進化した個性的な作品がぞくぞく作られていて驚きでした。継続は力なり!
今回取り上げる作品に相互の関係性はありませんが、同じ作者様ということで併せて取り上げてしまいますね。記載はプレイ順。
都合上、「このキャラがヤンデレ」「こういうシーンがある」くらいのネタバレはしてしまうので、新鮮な気持ちでプレイしたい方は要注意です。
あと大半の作品に年齢制限がついているので、DLの際はそちらもご確認のほどお願いします。
『終わる世界とあなたと私』
魔王兄×シスター妹、ダークファンタジー。サブキャラはショタ多め、ほんのりとショタコンケモナー要素。
目を引く瞳
すごくピンポイントなんですが、あの瞳の描き方がすごく好きでして!
ふりーむの紹介スクショを見た際、ぱっと目を引くあの瞳に惹かれて気づけばDLボタンを押していました。焦点は合ってるんだけど人らしからぬというか、魔や狂気を感じる描き方というか……絵の技術は門外漢ですがとにかくすごく好きでした。
使いどころの難しいBGMに合う名シーン
タイトル画面の素材曲といい、けっこう使いどころに悩む個性的なBGMが多用されています。が、これがめちゃくちゃ合うんですよね!
シスターだからといってシンフォニックな曲を持ってくるのではなく、ちょっと変わり種を上手く取り入れていて、「ここにこの曲を持ってくるとは!」というセンスが光る選曲でした。
どこまでも闇と狂愛を忘れないストーリー
鬱展開だけでなくメリバや流血シーンもあり、ヤンデレと言えばこれ、の基本をしっかり押さえてくれた印象です。明るいエンドであっても最後まで闇を忘れない姿勢は実に素晴らしく、無害そうなサブキャラでもちらっと病みが見え隠れするこだわり具合でした。
中でも例のセリフ! 伝わらない!
あのね、事態をややこしくしていたのは~みたいなあのセリフがすっごく好きなんですよ!! 素晴らしい、あの一言をあのシチュエーションで見られただけでもこのゲームをプレイした価値があった、素晴らしいありがとう……! 萌えました。
個人的には二人で二人の世界を創世してそのまま全てが滅んで欲しいなあと思います。お先真っ暗っていいよね、安心。
あと某エンドの、一言でさっと青ざめさせてくれる感じが大好きでした。
合わなかった点
キャラクターが現代のオタクっぽくなるノリが苦手なので、主人公のギャグモードはちょっと合わなかったところかも。
でもハート目な表情や、不穏の流れをぶった切ってコメディに走って「ええ!?」とびっくりさせてくれる展開自体は楽しかったです!
そして合わなかった点というわけではないんですが、聖職者らしさや清廉潔癖さを求めるとちょっと期待とずれる気もします。ここは紹介文通りなので大丈夫だと思いつつ、これからプレイする方向けに念のため。
総括一言
お兄様に世界を滅ぼす勢いで愛されたい方、そのお兄様を凌駕する勢いで我が道を行きたい方向け。
『箱庭ネオテニー』
エイプリルフールだ、嘘をつこう! あらすじと注意書きのギャップでなんとなく察せられるタイプの、周回前提ヤンデレものでよく見かけるあのジャンル。このジャンルなんていえばいいんでしょうね。
ネタバレ一切触れずにプレイするのが楽しいと思いつつ、うまく隠しながら書ける自信がないので、特に閲覧注意です。
うつつの世界とぼやけた瞳
このゲームもまたスクショからDLしました。そしてこれまた目の描き方がいいなあと思ってDLしました。いや、違うんですよ天丼じゃないんですよ。きちんと上記の作品と違った描き方がされていてこちらはメルヘンパステルな色合いが魅力的なんです。
アリュームの焦点がぼやけたような瞳がすごく、良いなあと思います。暗喩的で。ニドのほうもこう、吸い込まれそうな瞳でドキドキ(意味深)しますし。なんだか宇宙っぽい、し、ニドは宇宙人みたいだと揶揄されるのも似合いそうで、こちらの心が辛くなります。好きです。
一歩踏み外せば違う展開・ミルフィーユ構造のストーリー
選択肢とエンドがかなり多く、かつ導入部分に集中しているところも特徴的。特に初回プレイ時は、軽快な会話の裏に隠し切れない棘にとってもぞくぞくしました。
エンド分岐の方法もある意味皮肉っぽくていいですよね。少し選択肢を変えるだけでどんどんはがれていく感じ。ふふふ。
この手のやり方って緩急の付け方が重要だと思うんですよ。本作はそこを上手いことやり切っている作品だなあと感じました。
そのポイントはニドの態度かなあと思います。フラットなんですよね、彼。無理に甘やかしたり誤魔化したりしようとせず、僕は当然ここにいてこういうことをしている、というような態度。根本の考え方がそうだと思い知らされる感じ。凄い。
足場がぐらつく夢見心地を存分に楽しめました。
目で見てわからせる演出力
改めてグラフィックの話に戻るんですが、このシナリオをより味わい深くしているのはやっぱり作者様のグラフィック力のたまものだと思うんですよね。
『完全バッドエンド』の頃から起動画面のオシャレさ等に見惚れていたんですが、それらのセンスがここにきて大いに猛威を振るってプレイヤーをこう、こう、おおお……!っとしてくれるような。ぱっとシーンの変わる演出がもう最高でした。
アリュームの普段のポーズがものすごく良いんですよねぇ。初回プレイ時は自傷癖もちなのかと思っていたんですが、色々終わってから、なるほどあの手元はあれが気になって弄ってるんだろうなと……気づいたらぞっと鳥肌でした。そ、そういうことでいいんですよね? 伝わるかな? エンド6もそうですが、深読みできる諸々が仕込んであるの大好きです。
ネタバレ感想
↓白抜き伏字ここから
各エンドのタイトルが好きですねー! 一言コメントも黒くて好きです。鬱展開はこういうどうにもならない余韻が好き。
本編はアリューム視点だったのと状況が異常だったのであまり感じませんでしたが、おまけ話ではアリュームの天然魔性っぷりにうわぁ……となりました。特にHOPEで感じたんですが。ニドにそこまでさせてしまったことを悔いたり申し訳なく思ったりするのではなく、ニドが怖い・過保護・離れたいと思うあたりけっこうアリュームも勝手だなあと思っちゃうんですよね。いや、ニドがおかしいのは大前提としても!
だからといってアリュームが嫌いというわけではなくて、むしろ、守られることしか知らないお姫様というキャラ像がよく見えるお話でした。こういう、本人は決して悪くないんだけど責任転嫁しようと思えばできちゃう構造のお話好きなんですよね……。何かがどうにかなればなんとか幸せになれたかもしれないのに(ならない)(運命の摂理)(人の業)って感じが。
敬語好きの私は断然ヤフェト派で、エンド9、裏で軋みをあげている崩壊間際のアリュームの末路も含めて大好きなんですが、エンド3のエンドリスト一枚絵も好きです。
……アリュームが暗い方面に壊れかけてる展開が好きなんだろーか。
↑ここまで。
【ググったメモ】
Sandplay:なんでお砂遊び?と思ったら箱庭療法がsandplay therapyだそうな
Agony:苦しみ悶える
Emancipator:解放者
Defloration:花を摘む、散らす
Wreckage:難破船? 残骸?
総括・一言
ヤンデレやダークメルヘン好きには是非ともプレイして欲しいところ、俺敬語キャラおいしかったです。
『ハロウィンナイト・グリッチ』
ハロウィンしようぜ姉さん! 異形・傷跡・トラウマ持ちヒロイン・身体改造など。
ニッチな性癖を満たす外見設定
サウィンがピアスざくざく指してて、単純なニードルタイプじゃなくリングタイプまで混ざっている時点でどことなーくそんな気はしていたのですが。案の定、身体改造ネタがありました! やったー!
ここが大きく取り上げられるというわけではないんですけども、そこらだとまだまだ見ない設定なのでテンション上がりました。苦手な方はそれこそスクショのピムたちのツギハギ痕で避けられますし、そのぶん興味もった人をとことん引きずり込む感じで嬉しかったです。
スウィードみたいに、筆談等の独特の方法でコミュニケーションする必要のあるキャラも好きなのでどちらの攻略対象にも性癖のツボを押された形でした。とんとんボードを叩く癖の描写が本当好きでして! 某エンドではあれがめちゃくちゃ上手い演出になっているのも素敵です。さりげなくプレイヤーに癖を覚え込ませる工程、大事ですよね。
君のせい/じゃない、俺のもの/じゃない
攻略対象が二人明確に出ており、二人の態度が真っ二つだったのも印象的でした。オラオラ系(メンヘラ寄り)ヤンデレが好きな人、草食系(だけどやることはやる)ヤンデレが好きな人、どちらも楽しめるかと思います。
ヤンデレが複数人出てきても行動原理がきちんと二人とも違うので、よりキャラの深まりが出ているように感じました。スウィードが揺らぎなく「自分への罰」って言ってたセリフがすごく、おお……って思ったんですよねぇ。そしてサウィンの某エンドと比べてさらに深くうなずくなど。
安易なテンプレ台詞ではなく、そのキャラがこういう考え方だから出てくる、というようなセリフが多くて、とても好感が持てました。
最後の選択肢でぴたっとBGMが止まるのも上手い演出。
ぼくら死なないアンデッド
ただし心臓を潰すと死ぬ。
というわけで、普通の現代ものだとお目にかかれない、なかなかゴアいエンドが多かったのも見どころでした。共通ルートでゴアって単語の出てくる乙女ゲーは初めてプレイしたかもしれません。いいね。
私エンド5が本当もう倒れ伏して寄声あげるくらい好きなんですよ!!!察して!
かわいい……あの男かわいい……健気なかわいさが好き……。鳥肌たつ余韻が好き……。あとエンドのおまけの「誰でもできる!簡単講座!」なノリがえぐくて好き……。
断面やモツはでませんが、流血の範囲を数歩超える程度にしっかりしたグロスチルが出るので、苦手ラインがグレーゾーンな人は注意かも。
総括一言
サウィンに猛犬注意のステッカーを貼りたい。
『ハロウィンナイト・グリッチ SWEET』
ハロウィンしようぜ二人きりで! 異形・傷跡・嫉妬ヤンデレなどなど。上記作品の続編、もとい短編番外編。
より詳しく知れるハロウィンタウン
エルデルのような新キャラクターの登場により、作品の舞台であるハロウィンタウンについてもう少し詳しく知ることができる番外編です。サウィンだけがおかしいんじゃない、全員ろくでもないハッピーイカレタウン。こういう悪役然とした舞台設定好きな人きっと多いですよね。私も好き。
また、これらの背景を通じて、前作では振り回され役として終わった主人公であるピムも、明言はされないながら少なからずヤバイ歪みがあるのだろうと察せられます。
サウィンを受け入れている時点で……辺りかとは思うんですが、無自覚な狂人って属性だけでなかなかに妄想が膨らみました。
糖度高めのストーリー
前作では、脅されたり不穏だったり、想いを通わせ合う前に殺傷沙汰が始まる感じでしたが、今作では糖度たっぷりの乙女ゲーな展開になっています。私個人としては前作の雰囲気を強く推したいですが、展開はマイルドに愛は過激なヤンデレを楽しみたい……という方にはむしろこちらのほうが良いのかも。
コスプレネタと黒いスウィード
で、ここはちょっと合わなかったところになるのですが。
個人的に女装ネタは苦手なので相いれなかったのが一点。総受けハーレムより攻略キャラをとことん深めて欲しいのでおまけストーリーが苦手だったのが一点。
あと、スウィードは前作でピムの意志もある程度尊重しつつこらえきれない愛があふれてしまうヤンデレだと思っていたので、今回の暗黒微笑押せ押せな感じは少し合わなかったです……。が、前作の頃からああいう条件だと強気に~ってセリフはありましたし納得はできます。単純に前作のエンド4のスウィードが好きすぎたので、私がこだわって盲目的になっているだけかもなー、なんて。
総括・一言
前作序盤の軽快にぶっ飛んだ会話や明るい雰囲気をさらに味わいたい方向け。
『クリスマスのしあわせなおうち』
ポップな見た目と注意書きのギャップでなんとなく察する第二段。
叱られない子どもの世界
おうちの皆はりりりちゃんのことが大好き!
りりりちゃんは良い子なので、もちろん叱られることだってありません。誰も怒ってくれません。誰もりりりちゃんと本当の意味で向き合ってくれません。
この感じがすごく心に刺さって好きでしたー!
なんだろう、子どもの癇癪とディスコミュニケーションな選択肢を選び続ける彼の、致命的な相性の悪さがすごく好きなんですよね。どこかの家庭でありえそうなバッドコミュなのに、どこの家庭でもあり得てはいけないことが起こっているギャップもまた深みがあって良かったです。
あと単純にりりりちゃんがすごく私の理想とする少女(悪)(悪ではない)(自分が一番なだけ)なのも感動でした。
弱気な攻略対象
上記の通り、今までプレイして触れてきたヤンデレの皆さんがどなたも押せ押せゴーゴータイプだったので、この手のタイプのキャラは新鮮でした。私は卑屈がちなキャラが好きなのと、片目隠れが好きなのですごく私得な感じです。
セットにすることでりりりちゃんの魅力がさらに増すのも見どころ!
エンド4
ネタバレなので熱くは語れませんがこういう、正常を伝える人がいなくて箱庭の中で不気味がすくすく育っていくような展開、大好きです。
また、このエンドに限らずですが、お風呂場の背景画像にきちんと色がついているのも細かくて素敵でした。
総括・一言
シンプルに病み度が高く、心がほどよくえぐられる良作。
とまあ、こんな感じで。
まとめると、
な感じでした!
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
(『ハロウィンナイト・グリッチすぺしゃる!』
『サマーデイズ★弟』
『パラダイスロスト/フェイクワールド』
『キリくんと私。』
『チョコレイト&ハニー』)