「万人向けの良物件よりあなただけの最高物件を」
決して不動産屋ではない前置き。
えー、今回はPlanetarium(ぷらねたりうむ)さんところのフリーゲーム「退紅」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
年齢制限ありの一本道ノベル。1時間前後、とありましたが私はじっくりのんびり読んだので2時間くらいかかりました。
公式サイトのイメージ画像だけ見ててっきり大正ロマンみたいな和洋入り交じった世界観かと思っていたのですが、がっつり洋風ものでちょっと意外でした。登場人物は皆横文字の名前だし、むしろどうして誤解したんだろうってところなんですけどね。
では、見どころをば。
匂わす程度にネタバレしてるので、察しの良い方は注意です。
読みやすくのめり込む筆力
とにかく描写が綺麗、そしてくどくない! これが一番に挙げたいところです。
どうしてもノベルゲームって会話中心になりがちで、しかも恋愛ものと言えばなおさらかと思うのですが……この作品は情景もきっちり書いてくれているのですごく臨場感があります。ヒロインの内面が揺れ動く様も丁寧で素敵。
あとがきでは、ヒロインが暴走……と書いてありましたがとんでもない。彼女なりの考えとか、気持ちとかがしっかり伝わってきましたよ。作中出てくる様々な芸術品や小物の使い方も良かったですねぇ。
ちょっと怪しい、ドキドキの展開
ヒロインが黒い噂を持つ画家にモデルを頼まれるところから話が転がっていきます。モデルっていうのもまた、一歩間違う危うい雰囲気があって良いですよね……。酔って怪しい展開になったり、地下室の噂にそわそわしたり、日常の中でじわじわと不穏な雰囲気が漂っているのがたまりません。
ここまで起承転結はっきりしている恋愛ノベルは初めてでした。作者さんは謙遜してオチがないなんておっしゃってますが、あの怒涛のラストはすさまじいです。初めはちまちま小分けでプレイしていたのですが、ラスト周りでは思わずかぶりついて一気読みしてしまいました。
動く吹き出し
テキストウィンドウの位置がキャラクターに合わせて動いてくれるので、話し手や心理描写の違いが目で見てわかります。ノベルゲームってテキスト固定が基本だと思うので新鮮でした。けっこう個性ありのヒロインなのにテキストの横に顔グラがないのも珍しいかも。
ヒロインクロエの性格にはけっこう共感できるところがあったので、それも楽しめた理由の一つかもしれません。性的な方面でぐいぐい来られると引いちゃうところとか。いや、あそこまで激情的だったり魔性だったりはしませんけどねw
あのラストの二人のどうこうについて、安易にヤンデレと言って良いものか悩ましいです。病んでるというか、狂おしいほど愛しいというか。とにかくツボでした。
とまあ、こんな感じで。
少しダークな要素もある男女恋愛ノベルゲーをやりたい方にお勧めします。
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