「白ければ白いほど色鮮やかにうつるもの」
一瞬で染まるのも時間をかけて染めるのも好きな前置き。
えー、今回はcotoliaさんところのフリーゲーム「catalepsy」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
エンド分岐ありの鬱展開ノベルゲー。捉えようによっては近親要素ありで、吸血鬼がメインです。雪気色がよく似合う、病み要素が輝く乙女ゲーでした。
というわけで良かった点など。
静かに穏やかに絡めとる情愛の物語
公式サイトの雰囲気からしてオシャレな本作。各キャラのKEYとして選ばれている単語「無知」「狂信」「支配」がまさに、まさに好みでして、気づけばDLしていました。
確かにヤンデレだったり鬱展開だったりするのですが、苛烈さはなく落ち着いた雰囲気の作品です。主人公がおっとりとした性格で全てを享受していくからか、どのエンドも不思議と読後は心静かな気持ちになります。
きちんと明るいシーンや心を通わせ合うシーンもあって、狂気や血が裏に潜んでいても全体的に穏やかに見えるんですよね。こう、真っ暗闇にゆっくりと沈んでいくキャラクター達を見守るような……よい心地でした。
ぱっと一目で攫って行く視覚演出
作中の舞台である雪の森、淡く繊細な絵柄、薄くぼやけて溶けていきそうなメッセージウィンドウ、滲みや染みが上手く表現されているテクスチャなどなど。あちこちで世界観が感じられ、作品の雰囲気がとても完成されている作品です。
キャラの視点が変わるとメッセージウィンドウの色合いも変わるんですが、これがまた、すごくお話に合う見た目なんですよ。終始「綺麗だなあ」と思いながらプレイしてました。雪のようなグラフィックでもしっかり文字は読みやすいのもグッド。
そして、何よりスチルの使い方!
吸血鬼だと知ってはいましたし流血描写の旨も心得ていたんですよ。でも、それでもはっと目を奪われるあの白と赤! どちらのルートでもすごく、すごく効果的なスチルがあって、思わず息を呑みました。すっごくどきどきして、お茶飲んで震えて一呼吸おいてセーブしてから戻った覚えがあります。どれだけ動揺してしまったんだ。好きです。
あとさりげないところだと、エンド名の表示の仕方や、ゲーム起動時の作者様のタイトルロゴ表示の仕方などもすごくお洒落で素敵でした。
世界観にしっくりくる選曲センス
あと語っておきたいのが選曲センスです。
この手のシリアス寄りでお洒落なゲームって、特に明るい場面での選曲が難しくなるのではと思うのですが、本作はそこでも冴え渡るセンスを見せてくれました。
なんだろうなー、明るいんだけど雰囲気ブレイカーではなくて、やっぱりオシャレなんですよ。街のBGMとかも好きでした。素材サイト様の存在自体も勿論ありがたいことですが、膨大な曲の海からどれをお借りしてどううまく組み込んでいくかというのも、作者様の腕の見せ所だよなあと思います。ところどころでSEが入っていたのも細やかな作りでした。
惜しい点
正直にということで、細々とした点も少し書きますね。
・オートボタンが非表示
スキップと一緒にオートも右下に配置してもらえるとプレイしやすかったかなと。
・ところどころの描写が駆け足/違和感
ミゼラの中で兄さまのことが圧倒的に上位に立っているのであれば、嘘をつくシーンはもう少し尺があるとより感情移入できたかもしれないなー、なんて。
また、人間の常識を知らないミゼラが、例えば初対面の人の家に入る時に申し訳なさそうに挨拶する(失礼という常識がある)点なども違和感がありました。他にもいくつか。
でも、こういう細かいところをバッサリ切ってるからこそ良いなあと思うシーンもあります!
ここは熱く追記で語るつもりですが、とにかく冗長を省くことによる良し悪しが両方出た結果なのかもしれません。
とまあ、こんな感じで。
吸血鬼、という乙女が一度は食らいつく要素を美しい仄暗さと共に描いてくれた一作だなあと思います。
世界観重視、ツンデレ男子萌え、きょうだい萌え、鬱展開好きの方におススメです。
追記ではネタバレがっつりで、エンド語りなど。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
ネタバレ注意!
いやあ、
いやあもう素晴らしかったですね!!!
展開がどれも好み過ぎて本当に本当にありがとうございましたって感じです。
どのエンドも帰結の仕方がすごく収まりよくて、「ああそうなるよね……」って自然と納得できる展開なんですよ。ご都合じゃなくて、きちんと因果が巡り巡って鬱に沈んでいく感じが最高でした!
というわけでそれぞれのエンド感想書きますね!
ネタバレしかないので既プレイの人よろしくお願いします!
友情ED
このエンディングの種類にこのエンド名を持ってくるというやり方がもうあまりにも反語で大好きでした。それこそ夢のようにふっと覚めて(覚まされて)終わってしまうんでしょうね……。
なんだかんだでリア君はツンデレさんなので、ミゼラに釣られてヨハネスにもうっかりちょっとずつ心を開いてしまいそうな気もしており、さらにはあの三人の生活が崩れると知った時一番ショックを受けそうな気がします。つよくいきてほしい……。
ヨハネスED
依存ED
実は初周で辿り着いたエンドです。好きな予感がしていました。
このエンドで、ぱっと血の散ったミゼラとヨハネスを見て改めて、吸血鬼ということを思い出させられたんです。初めは知っていて、そして無意識に頭の隅へ追いやっていた事実を改めて見せつけられる感じ。頭をガツンと殴られるような衝撃がありました。恐ろしいはずなのにこれ以上なく美しいのがまた、ぐっとくるんですよね……。
あとある意味、一番甘やかしてもらえるエンドですよね。わぁい兄さま大好き。
ミゼラが他と比べてグイグイ行ってるように見えるのは、もちろん吸血鬼の本能もあるかとは思うんですが、ヨハネスが甘ったるく許し育ててくれるからこそだなーという印象もありました。
二人きり感が強くて好きなエンドです。
愛情ED
今度はヨハネスにスポットが当たる形のエンディング。
死んでこそ呪いが完成する、どうしようもならない感じが素敵でした。リアだって復讐を遂げているはずなんですが、本当の意味では見事に誰も幸せになれなかったエンドだと思うんですよね。この後味がとても良かったです……。
リアED
依存ED
飛び上がりました。
私は! 敬語で! 姉さん呼びのキャラに! 萌えを刺されてきたんです!!!
何故かプレイしながら一人で「本当に?」「本当に良いの?」「夢ではない??」と言い続けていました。あまりにそれほどまでに理想だったんです。怪しい人間でごめんな。いやもう……王道のツンデレかわいいキャラだと思っていたので……不意打ちが大変すばらしく……好きです。好きです。
疑わず、そう在らねばならないと思ってしまうミゼラもまた罪深くて良いですよね。なんだろう、責任はないけど罪はあるというか、拍車をかけていく感じがとても趣深かったです。
名前欄まで変化してしまう演出と、ミゼラに反応することへもやもやイライラぐるぐるするリアが最高。
愛情ED
流れが上手いエンドだなーと思いました。
プレイヤー視点では嫌な予感がしていても、無知であるミゼラや人間であるリアには気づけないんですよね。この構成がすっごく上手くて、しかもミゼラは(一応は)気づく余地があったからこそ業の深さを感じて、グッときました。
また、無自覚とはいえミゼラのやっていることはヨハネスと近しい気もしまして。蛙の子は蛙ならぬ、血は争えない感じが良かったです。
このエンドもスチルが印象的でした! ヨハネスのほうの見た瞬間に凍り付くようなスチルとは違って、じわじわと段階を踏んでいく演出が凄かったですねぇ。
魅せ方が上手いんですよやっぱり。薄氷の上の幸せって感じがとってもときめくエンドでした。
全部思い返して考えると、やっぱりリア愛情EDが一番好き!!
展開の綺麗さと言い、ハッピー幸せの裏にふっと寒気を感じる雰囲気と言い、すっごい大好き、めちゃくちゃ萌えました。
それぞれどちらが好きかといえば、ヨハネスは依存ED・リアは愛情EDです。
といっても重ね重ね語る通り、どのルートも静かに素敵な鬱だったので大満足でした。