「幽霊一体につきマイナス2℃の冷房要らず」
えー、今回はさくさくっと数分~1時間でプレイできるホラゲの感想を書いていこうと思います。作品はそれぞれ下記の目次の通り。
ホラー映画的なものから電波鬱系、胸糞、ほのぼのホラーまで。
『418号室』
謎解き・追いかけっこ無しのホラー。
静けさと緊張感が満ちている一作で、わかっちゃいるのに驚かし演出には体をびくっと跳ねさせてしまいました。すさまじい。
探索のみでクリアできるので、難易度という難易度もありませんが、調べた時の反応が細かく変化していくのは良い感じに恐怖を煽られます。お話も私は見事に引っかかり、しかもプレイした時期がぴったり作中の時期だったのもあって、一人で「うおおお……!」と震えました。
エンドはどちらもホラーらしい余韻の残るもの。
私は飲まないほうのエンディングの方が好きです。達成感を味わうために何度も418号室を訪れては微笑む、ってなんだかすごく絵になりませんかね。418号室に泊まりたがる客、ということでまた新たな怖い噂になりそうなところもぞくぞくします。
かなり硬派な印象の残る作品でした。
『建設途中十四階』
ミニゲーム有りの短編ホラー。考察するというよりはわからない部分をわからないまま楽しむ、洒落怖や気づくと怖いスレ系の怖さかも。
舞台が工事現場、という点がまず斬新。雨樋屋でなくシール屋~等々の専門職らしい用語を含め、主人公が現場の人間であるという絶妙なリアルさが出ています。
不思議なことが起こっている時にも、命の危険だからとすぐさま逃げ出すのではなく、仕事現場に支障が出るから……などと考えてしまうあたりがとても現実的。この現実感が都市伝説めいたエンディングとよく噛み合っているなあと感じました。
グラフィックは特にドット絵が良かったですねぇ。メニュー画面のデザインや、タイトルロゴもシンプルにオシャレ。さらにタイトルコール、ここはまさに絵になる構図でほれぼれしました。
蓮コラちっくな化け物もぞわぞわした気持ちにさせられますし、ぬるっと落ちていくドットの細やかな動きにも痺れます。
難点はキャラの動きがかなりスローなところと、出入り口や調べるアイテムがわかりづらいところ。雑然と物が放ってあるマップは確かに工事現場らしいのだけど、特に階段周りは見えづらくて苦労したので、アイコン等が欲しいなと思います。
トマトジュースはずるい。
ところどころおちゃめなのもまた魅力な一作でした。
『サイレント』
短編探索ホラーゲーム。
先んじて、まったく合わないゲームでした。なので酷評します。
まず、操作性が異様に悪い。マップの切り替えポイントの配置とウェイトが悪くて滑りやすく、気軽に行き来ができません。アイテムは基本ノーヒントの虱潰し。虱潰しさせるならさせるで、アイテム以外にもちょっとした小話やミニイベントが欲しいですし、それがないのならはっきりここにアイテムがあると明示してもらいたいところ。
そのうえ屋外に出てからはマップ切り替え地点と行き止まりの判断がつきません。反復横跳びの人も、行き先を邪魔してるんだと思ってなかったので(単純にいたから話しかけようとしてた)、公園奥以外の行き先がわからずしばし戸惑った覚えがあります。「あっち行ったらやっとあたしの家だ」みたいな独り言でも入れてくれればずいぶん違うと思うのですが。
極めつけはウェイトの長さ。意味深を装った無駄なウェイトが多すぎます。ver1.04でプレイしたんですが、これでも全体的にウェイト軽減が行われていた後とのことで、軽減してこれかと。
いやわかるんですよ、ホラーで間の置き方が重要視されているのも、リフレインで恐怖を煽ろうという手法も。なので、使いどころを決めて欲しいですね。
例えば、コマンドで足止めさせるタイプはウェイト軽めに、溜めたいタイプはウェイト多めに、沈黙はウェイトで表現するのではなく「……」+表情変化で表現、などにすればかなりプレイ感は爽快かつ雰囲気は損なわずに済んだかと。
物語もぽっと出のキャラクターが賑やかすばかりで、感動や恐怖以前に思い入れが抱けない感じ。
淡々としてる上に皆がわりと暴言を吐いたり冷たかったりするので、愛着が起こりづらいんですね。なので悲劇が起こったり事実が明かされたりしても、ふぅん、という感想です。
この「知るかバーカ」と言いたくなるプレイ感が、百合の「本当の友達」「理解して欲しい」という想いに対する皮肉である――と言われれば喝采ものですが。作中浮かぶ大半の疑問は解決されませんし、協会に来た人やカエルなどあれはいったい何だったんだという疑問が残ります。
モノクロームかと思いきや普通に色がつき始めたり、サイレントゲームかと思いきや普通にBGMが入ったり、一貫性がなくタイトル回収が行われなかったところも不満です。
同作者様の『Reincarnation』は最後までプレイしたら印象が底辺から良作に変わったゲームだったので、これもそのタイプかと期待したんですが、本作は合いませんでした。
良点は人形たちのキャラデザインとドット絵。
某イベントで二人がぴょんとその場を去っていく時の姿とかすごくかわいかったし、「どうして……?」という不安感が上手く出ていて、あそこは良い演出でした。
また、エンドのフラグに応じてメニュー画面の百合の姿が変化していく演出も、プレイヤーにわかりやすくかつ見ていてぞくぞくできて素敵でした。
ついでに。公式の攻略はやや語弊があります。以下色薄めで伏字。
単純にひどいことを全部してもED4にはいけませんし、ひどいことを2回程度行っても普通にED1へ行けます。ED2とED4がひどいことを全てしたうえで「捕まるかどうか」で分岐すると認識した方が、回収しやすいかと。キーアイテムとひどいことを同じ項目で記載しているのでわかりづらくなっているように思います。
伏字終了。
ともあれ。荒んだ主人公とともに荒んだ気分になるプレイ感でした。
『死んだカエルに捧ぐ』
エンド分岐有り、鬱展開、グロ。
常に画面が赤黒く、文章表示もウェイト多めでヒントも少なく、難易度はかなり高め。ただこう、躍起になってエンドを目指すというより、こういった世界観が好きな人がたっぷりと電波を感じるためにあるような作品でした。
常にノイズ音が鳴り響く、この時点で既に精神をゴリゴリと抉られる感じです。断片的に見れる回想シーンで、かろうじて物語の大枠は理解できる……かな。
そもそも精肉工場が舞台なので、うん。進行上カニバリズムネタが必ず起こり、ホラーとしての演出は十分。演出なのかガチなのかわからなくなりそうなくらい真に迫ったヤバさが感じられるかと思います。
探索ホラーあるあるの電波な表現が多いのも、狂気に拍車をかけています。狭い空間で思い当たることを何度も繰り返したり、ランダム(ではないかもしれないけど起動条件がわかりづらい)イベントが起こったり、突然別マップに飛ばされたり。本編内でもちょっとネタにされてたけど、マリオネタ(さよならを教えてのループ感)も想起できる演出でした。もちろんそれだけではありませんが。
ちなみに恥ずかしながらエンド1つしか回収できていません。見逃がしやすそうな鉄パイプとカエルのようなものは手に入ったんだけどそこからがうーん。
ともあれ、ガチの狂気や電波を感じたい人向けのホラーです。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
下記『びょーしにくちゃん』
『びょーしにくちゃん』
電波鬱、グロ、虫、孕みネタ。
ストーリーは一応ありますが、断片的であいまいな表現が多く、プレイヤーのほうで想像を膨らませながら読む感じでした。一通り読み終わると、唐突にゲームが始まります。
ゲームの発想は面白かったですね~。
プレイヤーはキャラを動かすという前提をガラッと崩してくれるところがまず斬新。さらにルール説明一切なしでプレイヤーに掴ませる、雰囲気重視なところも、電波ゲーとしては秀逸です。
プレイヤーが何をすればいいのか、気づけなければただびょーしにくちゃんの周りがいっぱいになるだけ。気づいても、結局びょーしにくちゃんがなるようになって終わるだけ。この救いの無さと、陰鬱なBGMと、ガサガサガサガサと湧いて出る蟲の不気味さがとても精神を削ってきます。
画面が暗転して、赤い文字?が出たらクリアでいいのかな。
「気持ち悪い」を見事に表現しきってる作品だなーと感じました。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
上記『死んだカエルに捧ぐ』
『Rumor』
一本道、鬱展開。
操作はありますが謎解きや難しい探索は一切なく、いわゆる見るゲに近いプレイ感です。
メモのおかげで次の目的がわかりやすいのがありがたい点。オチを考えると村がちょっと広すぎて開放的に思える気もしますが、コンパクト過ぎると住んでる実感が湧きづらいという難点もあるので、一長一短ですね。
初めは温かな家族愛の物語が繰り広げられ、おやこの作者様の作風にしては珍しいなあなどと思っていたのですが……なるほど、救いようがなく鬱展開でした。
タイトルから展開はぼんやりと察せられるものの、噂の根幹、おおもとの原因が不明なところも不気味さに拍車をかけてるんですよね。父のことか、OPの怪我のくだりが誇大化されたか、このどちらかかなと考えてはいるものの。たとえ何だったとしても関係なく、悪し様にこじつけられてしまうのだろうなー、なんて。想像がつくだけにおぞましさが募ります。
ちなみにマップチップやキャラチップはデフォルトのものが多め。ただしぞわっとくる良い演出が一か所あったので、それだけでもグラフィック面は大いに評価したいです。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
下記『幸せなエミリー』
『幸せなエミリー』
一本道、鬱展開、操作有。
謎解きはありませんが、次どこへ行けばよいかは少し詰まりがちかも。まあでも探索ホラーフリゲってそういうものかな。
印象的なのは、再生ボタンや早送りボタンの演出です。ゲーム中ずっとビデオの中にいるみたいなあの表現がすごく独特で、良い意味で心がざわざわしました。得体の知れない不安感よ。
ずっと時系列が表示されるので、回想やお話の流れが理解しやすいのも良点ですね。エラーになっている時は精神世界や演出上の描写なんだなということもわかりますし。
お話自体は、自傷行為の話。不穏の芽がだんだんと形を成していき、嫌な予感はするけれどプレイヤーには止められない、このやるせなさが実に心地よい鬱でした。前向きになったところで叩き落とすのがまたえげつない……。
キャラグラに変化が起こったり、マップチップが一転したりするところも、がっつりホラーでグッド。クリア後のタイトル画面の虚しさがたまらなくなります。あと診察台に寝かされている、例の、あれが並ぶマップ。とても狂気が深くて好きです。
家族愛、一途な狂気、自傷行為などにピンとくる方にオススメ。
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上記『Rumor』
『部屋を越ゆるもの』
最後はちょっとだけ雰囲気を変えて、ほのぼの寄り、エンド分岐ありの探索ゲー。
ブラウザゲーでしたがふりーむだとDL変換が聞いてくれたのでダウンロードしました。ありがたい。
クトゥルフ神話を題材とありますが、目星やオカルト技能などのシステムもあり、実際のところはクトゥルフ神話TRPGを題材にしている印象です。クトゥルーならではの宇宙的恐怖も少なく、全体的にギャグな雰囲気。
先に不満点を書いてしまうと、用意されたものを用意されたとおりに回収していく流れが単調でした。謎解きや探索というよりは落とし物拾いっぽい感じ。
また、せっかくSAN値(元気度)があるからには利用したかったなあと。一時的発狂を再現するのは難しいかもですが、それこそエンド分岐に関わったり、元気度の初期値を2から始めてなくなるとゲームオーバーみたいにすると緊張感が出る気がします。
ただこのゲーム、クトゥルフの緊張感や無力感を味わうというよりは「はじめてのお手軽クトゥルフ」みたいなほのぼのした雰囲気が売りだよなあとも思っていまして。そこを思うとこのくらいの難易度のほうがいいのかも。
良かった点はTRPGの技能要素の表現です。どことなくキャラステータスが想像できるのも楽しかったですね。サミーラはオカルト(30)くらいかなーとか。
かわいい幼女(8歳)二人のコンビ漫才や助け合う姿も見られるので、見ようによっては百合かもしれません。マイペースとみせかけたスパダリ月属性×警戒心低めの元気な太陽属性のCPはいいものだ!
とまあ、こんな感じで。
特に好みと合ったのは『幸せなエミリー』『418号室』です! じっとりとした感情、大事にしていきたいね。