「繋がるその輪で丁寧に、坂道転げ落ちて見せましょうや」
ネット上にも袖する縁な前置き。
えー、今回はフリーゲーム「パラとパラ オルタナティブ」「ギンガミⅡ」「MIKURO_COLORS」「懺悔室」「想い出とまわる君 ~Memories Of...~」「ライチがピアノ弾くだけ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
VIPRPG、どれも見るゲ寄りですが一部操作有り。作者様は一緒だったり違ってたり。関連作品はそれぞれ概要に記載。
『パラとパラ オルタナティブ』
[概要]
男女パラライズの起源のような見るゲ。水関係の魔法具現化もサブキャラでちらほら。
[感想]
海を守る孤独な少女と、出会った少年の話――ということで途中までは悲恋ものの王道を直球に進みますが、最終章で装いはがらりと変わります。
無限少女のくだりは正直、一読で理解するには難しいやり取りだったのですが、エピローグまで辿りついてやっとピンときました。「弧を描く」という表現も良いですよね。この手の選択が巡り巡る展開とても好きです。
同一を求める、家族を求める気持ちと、恋で突き進もうとする身勝手な少年心のすれ違いみたいなのは実に業深くてしみじみしますね。
いやあまさかあのイケメンがクラゲとはなあ。
あとおまけ、ヘルミーナとクルスに笑いました。良作よね。
[一言]
君の存在意義をこんな形で終わらせたくない見るゲ。
『ギンガミⅡ』
[概要]
『ギンガミ』のほうがエラーでプレイできなかったのでこっちから。話は繋がってないらしいので安心。RTPキャラで鬱展開見るゲ。
[感想]
見事に全部ぶっ壊していく鬱展開でした。
帽子の下の流れでなんとなーくジサツのためのっぽいなと思ってたら本当にそうで吹き出すなど。クトゥルー要素が入っていることからもわかる通り、理不尽鬱系で、あまりの容赦のなさはいっそ潔いほどです。
何よりもうエンドロールの演出の悪趣味さがあまりにも美しい。あの演出を見れただけでもプレイして良かったです。
血がずりずり引きずられていくドットとか、皮肉に心を削っていくタイプの演出が上手いんですよね。序盤の明るく青春なシーンをしっかり描いてあるからこそ刺さる。
お兄ちゃんの150万のくだりとか、暗澹とした気持ちになりました。心からの憎悪とかじゃないからこそより辛くて、よき。
作中の父親にしても宇宙的なものにしてもそうですが、圧倒的で理不尽な暴力に善なるものが滅多刺しに壊されていく姿は、なんとも言えず何度も見たくなるのあれ何でなんでしょうかね。心が痛むからこそ癖になると言うか、この世は腐った水の底というか。異様に中毒性がありました。
[一言]
鬱展開好きに是非。
『MIKURO_COLORS』
[概要]
キャラグラは三将軍とブラインド、ですが、名前も性格も舞台もガッツリオリジナルな見るゲ。イベント戦闘はあるけどほぼ見るゲ。学園もの×格闘武芸もの。『詩歌を嗜むRe』をプレイしておくと、小ネタにニヤリとできるかも。
[感想]
権力のあるボスに牛耳られた学園で、ハグレ者の二人と人避けする転校生が手を取り合り、巨悪に立ち向かう────という熱血もの。面白いのはこの舞台がお嬢様学校である点。加えて、悪も単なる悪ではなく一本筋の通った信念を持つものであるという点がとても素敵でした。
いやまさに鉄子自身が熱血なんですよね。文字通り。あの覚醒シーンほんと好き、文末に「!」が入り始めて文字から熱気が漂い血潮かけ巡る感じがものすごく熱くて好き。
あと上手いのが、回想や伏線の繋げ方、それを伏線とプレイヤーに気付かせる反復法です。
例えば竜子と鉄子のセリフの被り方。そしてそれを否定する友が傍にいたか、そうでないか。氷雨には笑顔、鉄子には泣き顔に見えたキネ子の表情。定期的にかかってくるおじさんからの電話……。
読み進める間に積み重ねられてきた様々な描写が、最後にガチリとハマり込む爽快感が最高でした。泣かせにくるだけじゃなくて、この作品独自の言い回しで彼女達だからこそという唯一無二さを出してくるところも好き。大根に醤油で泣かせられるとは思わなんだ。
個人的にセーブはこまめにしたい派ではあるので、普段ならシーン区切りでもセーブが欲しいと思うところではあったんですが……。本作はむしろこのセーブの控えめさが良かったです。一気に読んでこの熱い感情を叩きつけて終わる、このプレイ感こそが好きです。どちらのエンドでも。
続編予告も気になるところではありますが……。今のところはまだない、のかな? これだけでもきっちり完結しており、しっかり満足感のある一作です。
[一言]
ともだちパワーは最強。
『懺悔室』
[概要]
2012紅白。メモリストリーム男女の短編集。ちょっとだけキャンセルさん。
[前置き]
メモストさんに初めて出会ったのは『起きて寝るお話』だったんですが、当時はメモスト女の自殺願望やらメモスト男の多重人格やらの設定が全然ピンと来てなくてうまく読めなかったんですね。
やっと理解できました! 原点はここか!!
はあやっと出会えた、これでメモストさん関係の文脈がやっと理解できるようになりました。嬉しかったなー。
紅白のページのスクショがかなりこう、作為的な電波文だったのでどうしよっかなーと躊躇ったんですが、蓋を開いてみれば理解しやすいよう論を広げながら哲学する話が多くて安心しました。少なくともあえて電波にしました~みたいな厭らしさはなかったです。まあ安価だもんね。
[感想]
というわけでやっと本編の話。
下ネタ→哲学→哲学→下ネタ→哲学みたいな、交互にボディブローかまされる構成です。
しょっぱな近親相姦尻穴性交をかまされて爆笑したんですが、言ってることはガチだったのでいっそうヤベエよヤベエよってなりました。楽しいね。
公開順通りにプレイしていったら、この作者様がメモスト達に与えているテーマはわかりやすく理解できると思います。
箱の中のダイヤモンド、観測できない場所で鳴った木の倒れる音、目の前に実存していない過去の記録。確実に存在していたはずの見えないもの、みたいな。生前葬の話の、死んだ後に発生する私の悼み、とかもそうですね。
ここに幽霊なるものを入れてないのが一貫してていいなーと思います。いたかどうかわからないものを前提に出すんじゃなくて、確実にあったと言えるはずのものが無いと思わされてしまう不確定さみたいなところを突きたいんですよね、きっと。
共通したダウナーなBGMや、淡々と繰り広げられる哲学的問答がとても楽しい作品集でした。
台詞や勢いは4Pする話が好きなんですけども。「君だって数学Bを履修しただろう!」が好きすぎてほんとツボ。
中でも一作だけ切り取るなら墓参が好きだなー。シームレスに人格が入れ替わる多重人格的なもの大好きなんですよ。RPGツクール2000の話をしよう、と綺麗に繋がっているところも、OPとEDみたいで大好きです。あれ、これだと切り取れてないな。まあいっか。
ともあれ、観測されない存在は存在していると言えるのか、シュレディンガーの箱猫みたいに両方の可能性を持つものはどちらかに規定されないとどちらともいえないんじゃないか、みたいな感じの話が好きな人には合うと思います。哲学にわかの自分でも楽しめたのでね!
[一言]
メモストさんとぷよぷよ(意味深)したい。
『想い出とまわる君 ~Memories Of...~』
[概要]
ループを繰り返しながら視点からの逃げ道を探すやるゲ。探索。メモリストリーム男女とサブでキャンセルさん、謎の仮面の男。
[前置き]
前述「懺悔室」を大いにリスペクトしたやるゲ。
作者様は「ごめん、まだわかんないや」とか「白昼夢チルドレン」とかの方。元々作風がかなり特徴的な方なので、合わせようという頑張り的な何かを感じるお話でした。自分の話に引き込んだ途端に特徴が出るようなプレイ感?
エンド直前のシーンになると同作者様の別作品にかかわりのありそうな単語やら謎の人物やら出てきますが、無視しても大筋は辿れます。この話は『懺悔室』と観測者の前提があるからこそ他作品とリンクさせてほしくなかった気持ちもあるけど、第三者が介入しないと本当に二人は停滞しか残されていないような気もするから、致し方ないのかな。
[感想]
難易度そこそこ高め。やれること全部やっても、二つ目の質問でかなり悩みました。そして某サイトに答えがあったので見てきました。ゆるして……。
メモストさん自体メタな存在ですが、本作はそれをゲームのギミックにまで持ってきてるところが興味深かったですねー。「メタでなければ知覚されない、知覚されなければ存在しない?」という疑問が『懺悔室』の始まりかなと思っているので、よくここまで踏襲したなあとしみじみしました。
そのぶん、「メモリーストリームという存在では絶対に解決できない」命題に対して出した結論があれだったのが少し惜しく感じもしましたが……。メモスト女の抱いている命題の前提自体をズラすことでメモストを救済する、みたいな構図になっているのかなあ。
調べられるもの全てに元ネタの画像が仕込まれてあるなど、愛は強く感じます。
[一言]
ループゲーメタゲーっていいよね。
[同作者様の他フリーゲーム感想記事]
VIPRPG「想い出とまわる君 ~Memories Of...~」感想
『ライチがピアノ弾くだけ』
[概要]
見るだけ分ゲ。音合わせ。ライチとやみっち。「僕に妹がいるわけがない」を知ってると楽しさ二倍増し。
[感想]
音合わせ、初めてプレイしたんですが、良いジャンルですね~。ツクール製のムービーな感じ。初めての人間にもわかりやすい説明があって助かりました。音量注意も気が利いていて素敵。
内容は、ホラーを乗り越えて、心温まる感じ。元ネタのマップや演出をしっかり拾っていてリスペクトを感じる作品です。
個人的にホラーや鬱作品の勝手な救済ネタが好きではないので、オチはもやっとしましたが、連弾シーンがぐっとくるものを感じました。ぎこちないピアノの表現の仕方が、とてもこう、愛おしいですね。
[一言]
数分で心を潤したい方向け。らいやみ。