「YESとNOだけしか与えられない君は果たして人と言えるかな?」
人為らざりが主人公とは滑稽な前置き。
えー、今回はRED HOSTILITY さんところのフリーゲーム「ロボットと過ごした五人の話」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
とても深淵に触れる作品であると思うのですが、だからこそ語りづらい。とても雑にひっくるめて一言で言えば、哲学ノベル。心身問題などに関心のある方はピンとくるかもしれません。
というわけで、良かった点など。
第一問目をあなたに投げるストーリー
さて本作は、薬物中毒者が出てきたり人殺しが起こったり、なかなかにサスペンスな雰囲気を醸し出しています。五人の話、とタイトルにあるとおり、色んな視点でそれぞれの話に謎が仕込まれてあるので、読みごたえも抜群です。
そしてこれらの謎の横で、プレイヤーは誰かの目を通して間接的に問を投げられます。与えられた選択肢ははいといいえのみ。じわじわと厭な予感を抱かせながら、メインストーリーの傍ら、謎の質問は静かに進行していきます。
美しいピアノの音色がまた、良い具合に焦燥感を煽ってくれるんですよ。このプレイ感がもう最高でしたね!
セーブロード機能がないわりにけっこうな長さの作品なんですが、それでも全然OK、むしろ本編の流れ的に制限があるのは納得です。
本編も気になるしこの質問も気になる、腰を据えて読みたくなる求心力がありました。
カチッと全てが一つのテーマに集結するのが気持ち良かったんですよねえ。
混じりけの無いひずみを感じるエピソード
どの話も、なかなかにエピソードがえげつない。
ジャネットの話があまりにも、あまりにも暴力的でしんどくて大好きなんです。あの話に登場する兄妹二人とも。あの真相を明かす場面の演出も、とても……とても好きでした。
かみさまの話も、おそらくは混じりけのない思考回路から産まれ出たはずだろうに、とても歪みを感じてすごくグッときます。
どちらのエピソードでもこう、やらかした元凶の彼らは、俗っぽく分類するならヤンデレになるとも思うのですが。
一般的にイメージされる過激派暴力集団的ヤンデレというよりは、澄んで澄んで冴え切った歪みのような……独特の想いを感じます。なので、ヤンデレと言えば刺さるそうもいるしヤンデレだとも思うんだけど、ヤンデレと言いたくない何か一点がある気がしてなりません。タグはつけますけどね!
命令通りに感情を動かすヒューマノイド達
本作品は未来SF的で、ヒューマノイドが人々の生活と共に在る世界観です。作品紹介ページのパトリシアからしてわかりやすいですね。
彼らは高い知能と、美しい容姿と、変幻自在のプログラムされた感情を兼ね備えています。そして悍ましいことに、エラーを起こします。
本作はこのエラーが本当にエラーなのか……エラーとクリアの境目はどこか……もっと言えば、とある致命的な一点について。五人の話を通じて例を重ね、迂遠にプレイヤーへと問いかけてくれます。
ネタバレを避けようとするとどうしても抽象的になってしまいますね! はっは。プレイさえしてもらえればわかる!
とにかく、認知を狂わされる感じ、土台が崩壊する感じがとても興味深かったです。
映画とも漫画とも言い難い、個性的なワンシーン
ゲーム画面が全体的にオシャレなPVみたいなんですよ。
何と言えばいいのかな。どこを切り取っても絵になるし、コマ割りのようにキャラが登場する時もあれば背景画像だけで魅せてくれる時もあるし、漫画の扉絵みたいにパキッとした構図を取っている時もあるし。
五人の話がばらばらに始まって一つのテーマに繋がっていく、というお話の構成が、ゲーム画面を通じても感じられたように思います。
もちろん、グラフィックに合わせてテキストの表示の仕方もくるくる変わります。
同作者様の他作品『Margot』の感想記事ではテキストのフォントが読みづらいことを取り上げてしまっていまして、本作もそこまでフォントサイズは変わっていないはずなんですが、いや不思議と読めるんですよね。むしろ読みやすい、よく画面に馴染んでいる印象。
これぞという表示形式を突き詰められたのだろうなあと感じます。
あって嬉しい読了特典
一通り読み終わると、チャプターセレクトおよびエンド回想のできるおまけが解放されます。没グラフィックや制作過程などが比較的多めに見れて興味深いところ。あれだけバシッとハマってる画面デザインに辿り着くには、やっぱり色んな試行錯誤が必要なんだなあとしみじみしました。プレイヤーに解放されているのは氷山の一角でしょうしね。
なお、公式サイトではクリアした方向けのネタバレありエピローグも読むことができます。
特にフレデリカサイドの話はとても感傷を揺らされるものなので、既プレイの方は是非。最後のベルのセリフが胸に詰まります。
とまあ、こんな感じで。
哲学問題や、人間とロボットの話というワードでざわっとした予感がする方には、強く強くおススメしたい一作です。
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