うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「たまゆらの華」感想

「良と悪を問う前にその定義から語り聞かせてくれまいか」

自分良ければすべて良しでいい気がしてきた前置き。

 

 

えー、今回は雨天星月さんところのフリーゲームたまゆらの華」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド分岐有り、攻略対象一人の乙女向けノベルゲー。

複数のスタッフさんによる共同制作サークルのようなんですが、プラットホーム的なサイトリンクが見当たらなかったので、暫定でゲームページのリンクのみ繋げておきます。

 

さて本作、ぶっちゃけるとかなり合いませんでした!

なのでまあいつもよりも批判気味に書きます。お好きな方は避けたほうがいいかも。

本編のエピソードのネタバレも含みます。

 

というわけで、特徴的な点など。

 

 

ノルマをこなすために動くキャラクター

 

一番合わなかった点が、キャラクターの動き方についてです。

どうもやりたい展開が先行しているような印象で、特にヒロインの行動が一貫しておらず、見ていてもどかしく感じました。

例えば、はぐれた攻略対象を心配するシーン。イザークが怪我をしたのではと思い、いてもたってもいられず自分の身がボロボロになるまで走り回り、その過程で彼が好きだと自覚する──。このシーンだけ切り取れば、必死さが恋の芽生えに繋がる良シーンと言えます。

しかし問題は直後。見知らぬ女性と出会い自分の過去の手掛かりが掴めることになるや否や、ヒロインは攻略対象のことを放って、グイグイ自分のことばかり聞き始めます。おいさっきの心配はどうした!?

ここだけでなく、似た展開が何度も起こるのでどうにもため息。

一つ一つは色々な意味を持っている良いシーンが多いんですが、作中でやらせたかったのであろう展開が終わるとこれまでの積み上げが雑に放り捨てられてしまうことが多く、惜しまれます。

 

まとめると、やりたいことはわかる。しかし整合性がないからキャラクターの魅力を損なっている。こんな感じですね。

 

 

 

健気と思いやりがズレたキャラクター

 

先んじて書いておくと、私守られヒロインや性善説ヒロイン大好きです。箱入り娘どんとこい、無知な女の子が成長したり逆に甘やかされたりするのは実に良いものです。

なので本作のヒロインもそれっぽくて嬉しいな~と始めは感じていたんですが、いやあ残念期待を裏切られました。

 

なんというかこう、行動する時の原動力が基本的に自分勝手。寿命が縮むとさんざん脅されていた能力を、暗くて見えなくて怖いから使うとかいう軽い理由で乱用してあげく使い物にならなくなりますし。ヒロインが自己犠牲となるバッドエンドも、助けてもらえない私をアピールするモノローグで終わりますし。

殺されそうになっても相手を心配する──という善心自体は私も好きなんですが、殺すなって言ったのに、と責めるような感情を抱くモノローグにはかなり違和感がありました。駄目だダメだというばかりで自分から別の解決方法を提示しようとしないのが自己中。

こうなるとどうしても、「敵をも守ろうとする清らかなヒロイン」ではなく「自分が荒事を見たくないだけのワガママなヒロイン」に見えてしまいます。

 

続いて、攻略対象のほうもなかなかにけっこう強引です。ネタバレを隠す言い方をしますが、騙されたかと思いきや騙されていたししかも騙されていたという展開にはちょっと笑ってしまいました。策士~。

「君を意志を尊重したかった」というような台詞が多く出てくるんですが、実際のところは「いいえ」に当たる選択肢を選んでもだいたいが強引に「はい」的なルートへ強制されてしまいます。

 

ただここは、見ようによっては良点でもあります。

というのも本作、一つヤンデレに当たるエンドがあるんですよ。ええ、私の好きな。なので、彼の本性が実は強引に自由意思を誘導して絡めとるタイプなんだという前提さえあれば、ヤンデレ萌え的な見方ができるかもしれません。

 

 

 

暗に圧を感じる意志の尊重と無茶な設定

 

引き続き相手を尊重することについて。けっこう作中で強調されているので、テーマの一つなのかなあと思うのですが……。焔とアスラビアで異文化交流を見せるかと思いきや、実際のところは押しつけが多く辟易しました。首筋のキスを暗に強要するところもそうですし、事前説明なく焔の風習を取り入れて民衆を騒がせたこともそうですね。風習だけでなくとも例えばアベルが渡した銃にしても、本人が操作方法を覚える気のない劇物を押し付けるというのは逆に、イザークを陥れたいのかと思いますし。

 

あと一番突っ込みたかったのは、過去話について。焔に知られると一族が悪用されるかもしれないから守ろう→守られる側の一族の意志も尊重しよう。ここまでは納得。

からの、やっぱり焔に一族の場所を打ち明けよう、で思わず爆笑しました。なんでや! 悪用されるかもって気づいてたじゃん! 

本編では、致し方ない事情により……みたいな書きぶりだったのでなおさら温度差にガクっときました。

 

また、浄天眼が「真実の愛チェッカー」みたいな扱いをされているところも残念。なんというか、誰か(プレイヤー)に対して「これは本当の愛なんです!騙されているわけじゃないんです!」って叫んでいる感じがして逆に萎えてしまいましたねー。これ仮に欠点が嘘だったって話になったらどうするんだろう。このヒロインだと破局しかねないから尚シュール。

 

あっでも、浄天眼という名前自体はめちゃくちゃカッコよくて好きです!

敵側にもそうなるに至った経緯がある、という言い分や、怪しいと思っていたキャラクターが実は……という流れも好き。この辺りはプレイヤーとしても驚きがいがあって楽しめました。

なのでなおさら、ヒロインの受動っぷりと身勝手計画ブレイカーっぷりが目立ったというのもあるんですけどね……。紅蓮はあれだけ頑張ってるのにさんざん言われて偉そうな説教まで受けて報われんなあ。

 

 

 

美麗なグラフィックと異国感

 

魅力的なのはやっぱり立ち絵やスチル、グラフィック全般です。それこそプロとして活躍されていてもおかしくないほどの画力で、どのスチルも実に美しく惚れ惚れしました。

 

ただごめんなさいここも気になるところとして、イラストの構図が気になります。

注目したいのが、公式サイトトップ画像およびタイトル画面。これは誤解が起こっても仕方なかろうなあと感じました。

というのも、どうもTwitterアカウント等や必読を拝見するに、「紅蓮は攻略対象ではないのですか」という質問が起こっているようなんですよね。そりゃそうだろうなあ。せっかく攻略対象一人の相思相愛ものなわけですし、イザークをもっとアピールして欲しかったかなと感じます。

私、紅蓮大好きですよ! 三つ編みも金目も好き要素ですし、クーデレで不器用な優しさがあるところも素敵。なので彼が思いっきり前に出てくれているのはすごく嬉しいです。そこは誤解なきよう。ただ需要のミスマッチは起こるだろうな、という感じです。

同様に、ゴリゴリ中華風な作品をイメージしていたので、それよりもアスラビアやヒガン一族など多様な異国情緒の方がメインだったのも少し期待とズレていた印象です。

ついでに細かいところ。花嫁衣裳や王子様衣装もかっこいいんですが、灼熱の国で露出の高い衣装を身にまとって屋外パーティをするというところも気になりました。

 

でもほんと、しつこいようですが、グラフィック自体はクオリティ高くてすっごいんですよ! スチルもねー、濃密な雰囲気が香り立つようで、見惚れちゃいました。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

クリア特典のキャラプロフがインタビュー調なのは斬新だったかな。棗が好きです。

ストーリーの流れより糖度重視の方や、グラフィック重視の方には合うかもしれません。