うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「ウルフズエデン」感想

「力に溺れるも罪、伏して為さぬも罪」

中庸とはかくも遠しな前置き。

 

 

えー、今回は飼育小屋製作委員会さんところのフリーゲームウルフズエデン」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

育成ゲーな雰囲気の、選択肢分岐ノベルゲー。難易度は作中のヒントさえ見れば簡単。

というわけで、良かった点など。

 

 

各種神話や名作へのリスペクトを感じる作品

 

アダムとイブが楽園を去り、とある少女が楽園へ流れ着いたところから本格的にお話が動き出します。となるとやはり思い浮かぶのは失楽園。物語の途中からは賢き蛇も登場し、いやあかくもかくたるやの様相です。

しかしながら、興味深いのは失楽園に留まらず、オマージュ作品を複数取り揃えている点でした。シートン動物記オオカミ王ロボ、天岩戸、北欧神話などなど。文学や神話に詳しいとされるオタクの心をくすぐってくる小ネタが多く盛り込まれています。

もちろん、これらはあくまで元ネタのラインを感じさせるのみであり、それらを全く未読であっても影響はないかと思います。ただ、元ネタを感じさせつつもオリジナルの話を構築する、造詣の深さがあちこちに見られるという意味でかなり好印象な作品でした。

 

 

 

罪を重ねて業を負う神づくりシステム

 

さて、育成ゲーと述べさせていただいた本作ですが、システムはシンプルです。七つの大罪のうち、どれを食べるか。これだけ。ややこしいリソース管理やフラグはなく、手を付けやすいプレイ感です。

エンド分岐もわかりやすく、ゲーム内に攻略ヒントまで用意されている親切っぷり。おそらくトゥルーの位置づけであろうエンド1も、連想が得意な方は直行できるかと思います。

そして面白いのが、このシンプルさに反してエンドの内容がかなり多岐に渡ることなんですよね!

育てる少女、白露の性格はもちろんのこと、変化は結末のみならず彼女の立ち絵や文体にまで大いに影響します。ギャグエンドもあり人類滅亡エンドもあり、実に楽しく回収させて頂きました。好きなエンドは追記にて。

 

 

 

無知の知を感じさせるストーリー

 

お話の面にももう少し突っ込んで好きなところなど。

七つの大罪を身に含んでいくことで変化していくのは白露もそうですが、ロボも同様に彼女を見て心境を変えていきます。育てる対象だけでなくて自分も変わっていく──むしろお話としては一貫してロボが主人公になっている──この切り口がすごく新鮮でした。

力を持ち、知恵を有し、何でもできる大神ロボ。オープニングや彼の立場からして、初めはどことなく超然とした上位存在のように思えますが、読み進めるとその実彼にも迷いがあり欠けがあるのだというのが見えてきます。

神様、なんでもできるもの、そこまでの存在であってもイコール賢者とはならない。この哲学めいた展開を、ロボや白露の親近感あふれるやり取りで感じさせてくれるところが面白かったです。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

神憑りな雰囲気を感じさせてくれる壮大なお話や、人外×少女、エンド分岐で多彩なパラレルワールドが広がるノベルゲなどが好きな方に強くオススメです。

追記ではエンドネタバレ感想。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

エンド

 

食べすぎエンドがどれも業深くて良かったですね~。

インパクトが強かったのは色欲です。生理的な嫌悪感を掻き立てられる展開がもうすさまじいことすさまじいこと。食欲も近い展開ではあるんですが、嫌さが段違いなんですよね。

好きなのは傲慢かなー。容赦のなさと、これぞ人類の原罪って感じとがしっくり噛み合う気がします。上には上がいる展開を、あえて言葉にせず見てわからせるところも圧倒的で素敵。

身につまされたのは嫉妬ですね……。白露の向上心が本編で丁寧に語られていたぶん、ダメージが大きかったです。まさに鬱展開……。

ああでも憤怒も好きだな! あれが一番、神話らしくて好きなんですよ。神話から始まり神話で終わるところとか、他エンドで見られる卑俗っぽさがあまりなくて神の座を辞すことなく終焉を迎えるところが大好きなんです。業が深い。

 

中庸なエンドだと、飛びぬけて一等で羨望が好きです。

他エンドでさらっと使われていた白露のパワーの原理について説明も聞けるし、ロボの人間に対するしこりの解消にもつながるし。かなりまとまりの良さを感じるエンドだと思います。

 

 

本編で印象に残ったところ

 

セルピィがロボに言う台詞がすっごく好きなんですよ!

一度も憎んでいないと本気で思っていたのか、みたいなあれ。傲慢をそしられるあれ。

セルピィは軽妙快活なキャラだと思っていたので衝撃が大きかったです。でも当然そういった感情は湧き出るものというのも理解はできて……かといってその黒い本音だけが全てではないとも思えますし……色々と見え方が変わりました。記事の表で記載していた無知の知を一番感じたのもあのシーンです。

メインは白露とロボですし、文体自体に含蓄のある言い回しが多くて読みごたえがありますし、掘ればもっともっとお気に入りの部分は出てくるはずです。が、やっぱり鮮烈に記憶に残っているのはセルピィの本音でした。

 

 

総括

 

部品として、世界の歯車として、あるべきとおりに役目をこなそうとするロボ。でももし本当にそのように世界が創られているのなら、運命の示すところは必ず一つで、その解釈にロボが悩むことはきっと有り得ないのだと思うんですよね。

だからこそ、エンドが多岐に渡り、白露の成長とロボの行く末が大きく分かれていくこの作品の構図がよく響くなあと思います。

結論、よくまとまってて読みやすくて感動的で楽しかった! です!