「悲しみを乗り越えるために痛みを思い出そう」
強くなるために忘れたものをまた拾い直す前置き。
えー、今回はtettoets/縁さんところのフリーゲーム「ロスト・ヘリアンサス」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
クリアまで1時間くらいのRPG。分岐はあるけどエンドは一つ、のはず。ワンマップフェス、というマップ一つ縛りの企画に参加されているフリゲです。
というわけで、良かった点など。
地続きからふと色を変えるBGM
戦闘に入ってもBGMが地続きなところが好きです。こういう、切り替わらずにずーっと同じBGMで進み続けるゲームって、世界観を重視されてる作品が多い印象。この曲もまた、幻想的で良いんですよねえ。
一方で、ボス戦になるとついにBGMが切り替わります。戦闘曲ではあるんですが、どことなく悲壮感があってすごく好みな選曲でした……! ボス戦前の口上も素晴らしいんだこれが!
世界観の濃度を高めるのはBGMだと固く信じている人間なので、その点しっかり使いこなされてて素敵でした。
良い具合に甘めのステータス
レベルを上げて自分でステータス振りをするタイプのシステム。こういうゲームだと私はつい極振りしてしまうタイプなんですが、本作は私の腕にちょうどよく甘めのバランスでした。無駄なレベリングは不要だけど、軽く遊ぶ程度に雑魚戦はしておいたほうが良い感じ。
あと、きちんと頭打ちになるポイントが設定されているのも上手です。攻撃ばっかり上げたがる私のようなプレイヤーさんは、たぶん向日葵で立ち止まる、はず。一方で魔法型のプレイヤーさんは、二回攻撃してくる敵に立ち止まることになるんじゃないかな。この辺りのレベルデザイン好きです。
自分のプレイを思い返すと、魔法のステータスを魔法攻撃のためでなく敵の魔法を軽減するために上げていたように思います。優先度の低いステータスはあるけど、無駄にはならないような印象でした。
段階を追って解放されていく要素
レベルデザインといえば、マップの開放の仕方も好きです。単純に通せんぼしてる障害物と、この先に向かうかどうかの選択を迫られる標識、二種類あるところがさりげなく斬新だなーと思ってまして。なまじ標識のほうは横をすり抜けられるデザインだからなおさら、先に行きたいけど行けない、進むことへのためらいを感じるんですね。ここがストーリーの根幹に触れるような良いプレイ感を生んでるなあと思います。
記憶の開放も面白くて、敵の情報とか対処法がこっそり載ってるんですよね。そういうものだと思って疑問視していなかったゲーム内の存在と、改めて向き合う感じがします。世界を端々まで味わえるゲームでした。
NPCの扱いといい、ちょっとした要素を綺麗に束ねて世界観を作っていくのが上手いなあと思います。
薄ぼやけた記憶の中で、明確に伝わるテーマ
ストーリーはふんわりとぼかされていて、強くなって手に入れた記憶をプレイヤーが繋いだり補完したりしてピンとくるようになっています。このお話も、考察というほど小難しくなく、一通り要素を全部拾い集めればすんなりと理解できる構成です。
で、私、この作品の“強くなる”の意味がとても好きなんですよ!
軽くネタバレに触れてしまうかもしれないんですが……結末は同じでも選択肢によって分岐があるのが良いなあと思ってるんです。決別でも、感謝でも、どちらでも通じるところが優しくて好き。
何かを大事に思う方法とか、痛みにどう立ち向かうかって人によって本当にたくさんやり方があると思うんですね。その可能性を、狭めずにいてくれたのがありがたかったです。
まとめると、テーマがはっきり伝わってくるけど回答はプレイヤー次第なところが好き。
とまあ、こんな感じで。
繊細で、幻想的で、郷愁を感じる世界観が魅力的な作品でした。