うそうさ〜第二号室〜

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フリーゲーム「Hand in Hand ~夜+昼~」感想

「救わなくたっていい、ただこの拳が届いて欲しい」

そしていつか拳を解いて君と想いを交わしたい前置き。

 

 

えー、今回はhazuさんところのフリーゲーム「Hand in Hand ~夜+昼~」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

VIPRPG、関連作が多数あるのである程度慣れてる方向け。金砕シリーズの大長編見るゲもとい読むゲ。作中では「夜編」「昼編」と題されていますが、別作品というより前編後編といった構成です。

セーブの間隔がかなり長いので、腰を据えてどうぞ。

 

今回は紹介より初めからがっつりネタバレありで感想を書き散らしますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

【夜編】

 

殺す事しか知らなかった魔族の青年が、愛と強さを知る物語。

 

いやー、『第六返球メテオドライブ』でも思いましたが、この作者様は「戦い」「好敵手」を描写するのがべらぼうに上手いですね!! ただの殺戮と腕試しの戦い、そして大切なものを守るための死闘、これらが全て違った味わいで描写されているのがすごく響くんです。

同じ拳の殴り合いでも、戦った後の余韻が別物。それがそのまま主人公ギビトの考え方の変化に繋がっていくんですよね……。キャラクターの成長や変化を描くのってとても難しいと思うんですが、描写がストーリーラインに伴っているので、すんなりと受け入れられました。

 

ドラゴナスの叫びが大好きなんですよー!

「俺も、まだまだ強くなれるってことだ・・・!」のあのシーン。もう、全身が奮い立ちます。私の中で、というかおそらくはギビトの中でもきっと、敗北=失敗って気持ちがあって。それを綺麗に塗り替えてくれたのがナスとの戦いだったなあと思います。

一番目立つ戦闘シーンはやっぱりあの、守るためのシーンだと思うんですが、個人的に一番好きなバトルはここでした。

 

キャラだとやっぱりぐり子が好きだな!

飄々としたキャラを魅せるのがうまいですよねえ。ぐり子さん自身が別に気負っているわけではなさそうなところも好きなんですよ。素で、自然体で、肩の力は入ってない感じ? でも超人ってわけじゃなくて、うっかりおいしいものを食べすぎちゃったり、弱みを見せようとしない意固地さがあったりするところがまた、人間らしい。

達観しているのに不思議と身近に感じられる、まさに「魅力的な女性」の体現でした。

 

あらすじだけなぞれば、王道で軽く見える話だとも思います。闇に生きる青年が本当の強さを手に入れて、愛する女性と心を交わして、死を乗り越えて残されたものを慈しむ。よくあると言えばそれまで。ですが、込められた想いの熱さとそれを描写するパワーが圧倒的です。これは唯一無二。めちゃくちゃ心の臓を揺さぶられました。

 

この段階で「もしも」の強さ、人間と魔族の違いなど、ラストの説得力を増すための布石が置いてあるところも巧みだと思います。

 

 

 

【昼編】

 

殺す事しか知らなかった天界の道具が、愛と強さを知る話。

 

触り合いっこの事件があってもなおルミナリエを女、ゼダックスを男だと思い込んでいたので、性別を明言されてかなり動揺しました。夜のヒロインがTHE女性って感じだったので、なおさら驚かされましたねー。

 

印象に残ってるシーンも山ほどあるけど、一番は「あのルミナリエがあんなに心を傾けて気を遣っている」って気づくXP天使のシーンかな。あれすごくつらくて、でも愛が如実に表れてて、グッときましたね~。そうだと気づいてしまうXP天使もルミナリエを見つめ続けてたんだなあってわかるやつ。良い……。

 

キャラだとダモンが好きかな。ダモンもこれまた、やられる時はきっちりやられちゃうところが良いんですよね。

この作品、何でもできる人ってあんまりいないんですよ。どっかしら弱かったり、うっかり折れちゃったりする。でも、何だってできるって信じたくなる人はいっぱいいるんですよ。これが「もしも」を体現してて好きだなあと思います。

 

あと性癖的な意味で言うとリョナシーン好きです。ダリサのほうも、ゼダックスのほうも。濁点交じりの泣き声って最高だよね。

拷問シーンを長引かせすぎないのも良かったと思うんですよ。この後、全てを知ってるプレイヤーからするとストレスになる展開が来るので、早めに切り上げることでもやもやを軽減しているように思えました。いや、拷問自体は好きなんですけど。

誤解されて濡れ衣を着せられる展開自体はあまり好きではないのですが、絶対ハッピーエンドへ向かってくれるだろうなという確信と信頼があったので頑張れました。

 

 

 

【それから】

 

いやー、上手い。

夜編人間と魔族の差異はないのかもしれないという可能性を語り、昼編で化物・天使・悪魔と呼ばれる中間の存在にスポットを当てて説得力を増して、ついに手を取り合うことができる。論の補強が序盤から終盤に至るまで丁寧なので、納得が強いんですよー。

 

続く、となっているのはこの作品がシリーズの原点に当たるからなのかな。他作品へ派生していきますよー、という……。となるとRTP天使が出演していることが疑問ではありますが、ハー妹がメテオドライブでも活躍していたのもあるし、私がどこかでヒントを見落としてるだけかも。

 

 

 

 

【アフタートーク

 

・メタ視点について

 

もともと他シリーズでも神として作者様が出張ってくる作品が多かったですが、本作でついに一つの回答というか、区切りをつけたなあという感じがしました。

戦神との戦いで出された二人の結論がそのまま本作の読後感だと思うんですよ。つまり、「満足とは言い切れない」。神をぶっ倒して生まれた理由や世界の構造の理由が明確にわかって、すっきりして大団円でハッピーエンド──とはならないので。消化不良の謎が残り続けます。

 

でも、だからこそすごく誠実で好きなんですよね!!

作者自身や神様を登場させて、グリーンサイみたいにプレイヤーに語り掛けてくる作中キャラもいて、本作ってだいぶ次元の壁がゆるゆるじゃないですか。だから、やろうと思えばそれっぽい理由をかこつけて、無理やりご都合主義でおためごかしの回答を用意することだってできたと思うんですよ。

 

でも、それをしない。そこが好きだ!

 

「俺の神に聞け」なアンサーが大好きなんですよね……。二次元の上に三次元があるように、我々の上にはさらに超常の何かがあるかもしれなくて、でもそんなのわかりっこないから日々を謎めきながら生きてるわけじゃないですか。まさにその通りの、当たり前のことを、でも説得力と素晴らしい過程を持って導き直してくれました。

なので、満足とは言い切れない、でも、誠実で好きです。

 

 

 

・XP天使について

 

ハー妹の演出凄かったですよね……!!

皆が記憶を失っても、彼女だけは一から百まで全て覚えている。だってそういう「能力」だから。いやーもう、説得力がすごい! 

 

夜編ですでに「認識されてしまった人物はその認識と異なる場合別人と判断される」と発言しているのもすごいと思うんですよ……! それを言うなら彼女の能力の時点ですでに伏線なんですが。

顔グラが変わって「認識と異なる」姿となった彼女だけが唯一、記憶を保持していて、「同一人物」だとわかるように作られている。この因果がめちゃくちゃ気持ち良かったです。脳汁出そう。

 

どうして彼女がここまで重要な立ち位置に?

という疑問もありはしますが。きっとそれも本作の結論と同じく、「神に聞け」なのかなー、なんて。

 

実を言うと、昼編の途中からXP天使のことあまり好きになれなかったんですよ。それは彼女が原因だからとかじゃなくて、単に「誰か助けて」「私は悪いけどあの人も悪い」という主張が嫌いだったからなんですが。

でも、だからこそXP天使が好きでもあるんですよね。矛盾だと思われるでしょうが、そうじゃない。なんかねえ、彼女ってなんかすごく「小市民」じゃないですか。物語の中核に巻き込まれはしたけど、基本は見てるだけで、踏み出す勇気もあまりなくて、流されるままって感じ。化物だらけの本作の中で、彼女だけが唯一すごく親近感を抱くキャラなんですよ。誰かに責を転じようとしてしまうのも、自省しつつも足を踏み出すまでが遅いのも、色々な点で否が応でも共感できてしまう。

だから、そこから私の共感を離れて、独りで超常的な魔法を発現させて、あそこまで大活躍した姿がすごく印象的でした。

 

モブでも、下級でも、縮こまっていても、大切な人のために踏み出せばそれは物語になれるんだなっていう勇気をもらった気がします。勝手に。

なので、全肯定はしないけど大好きです。語りたくなっちゃう、最後までイイトコ魅せる良キャラでした!

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

調子に乗っていっぱい語ってしまったなあ。

物語の勢いに乗せられる、熱さが光る良作でした。どのセリフも響くんだこれが!

 

 

 

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