「再生なんてのは誤魔化しか奇跡でしかありえない」
時計の砂は減り続けるばかりな前置き。
えー、今回はHACOBEYAさんところのフリーゲーム「片道夜行列車」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
全要素を回収してざっくり1時間くらいの短編RPG。私的に合わないなーと思うところもありつつ、客観的には完成度の高いゲームなんだろうなとも思います。
というわけで、特徴的な点など。
童話と少女の世界観
まずはグラフィック面から。
自作グラが豊富で、マップも隅から隅までキラキラの幻想的な雰囲気です。立ち絵・一枚絵・キャラチップなど、キャラの魅せ方が多岐に渉るところも凝っていて素敵なところ。
その幻想風景の通り、登場するキャラクターの関係性も儚さが強調されています。率直に言えば百合です。それこそ砂時計のような終わりの迫る関係にググっとくる方は多いのではないでしょうか。
仄暗い雰囲気が好きな自分としては満足な設定が多かったです! 特にクロとシロ、シロが自分たちの状況をだいぶ割り切ってるところが好き……。
エンドについてはネタバレになるので追記にて。
言葉足らずのテキスト
これは不満点になってしまいますが、テキスト面がどうも言葉足らずな印象はありました。わかりやすさよりも雰囲気重視。何より大事なのは彼女達の心の動きで、プレイヤーへの理解度や没入度は二の次って感じがします。
例えば各面のボスについて。情報無しの私側からすれば、どれがルナに関わるもので、どれがメルに関わるものかわからないので、感情移入しようにもしきれないんですよね……。最序盤のボスが先生だったことや、最初のエンド分岐点での闇堕ちっぽいイベントも相まって、メルをいじめた奴らを倒してメルを引っ張り上げるみたいな構成なのかと思っていたので、予想される展開の脳内修正にちょっと時間がかかりました。
各車両のボスを倒す=その人に関する記憶が奪われるってこと……なんですよね? いまだにちょっと自信がないんですけども。この辺り察しの良いプレイヤーさんはすんなり理解できたのかなあ。メルの敵に当たる人達から急に違ったジャンルの方々が出てきておろおろした覚えがあります。
また、バトルのチュートリアルにおいて。
エーテルが毎ターン1ずつ溜まっていく仕様や、LPが切れてもゲームオーバーとはならない点はもう少し強調した方が良かったのではないかなと。実際、公式でよくあるご質問に載るほどみたいですしね。アイテムの上限個数についても明示してて欲しかったなあ。
システム面で言うと、黒時計の針を使用した時の三択に至っては罠と言って良いレベル。私は初見で「戻る=引き返す」「ここに残る=ボス戦に挑む」「???=???」と解釈してしまったので、だいぶ面倒くさいことに……。
それでも、例えば冒頭の難易度選択など、遠回しにするからこそ雰囲気が出てお洒落なところも多いんです。なので利点はわかる……わかるが……! この辺りははっきり誤解なく書いて欲しかったなあと思います。「???」は「先に進む」でいいと思うんだ……。
入れ替えて楽しいバトル
さて、不満も垂れ流してしまいましたが、もちろん良点もあります!
一番のポイントはオリジナルのバトルシステム! いや~もう、雑魚戦が楽しいゲームって素晴らしいですね!! なんならボスラッシュさせて頂きたかったくらいです!
味方AIに行動を託すこともあるので、自動戦闘好きな方にもオススメできるかも。といっても選択の幅が広いので、ガッツリ自分でコマンド選択してしっかり殴り飛ばしていく楽しみもありますよ!
あとシンプルに、使い魔のみなさんのキャラデザがかわいい。似通った見た目の子もいますが、そのぶんポージングや服装にしっかりと差異が出ているので、こういった個性の付け方もあるんだなーと学びを得ました。
一番お世話になったのは赤の子かな。次いで緑の子。きちんと性能も差別化されているので、くるくる入れ替えるのが楽しかったです!
ちなみに難易度の話。
私はフィジカル重視・カウンター・ジャミングキラー・ブロッキングで構成していたので、難なくさくさくプレイできました。難易度はノーマルでスフィア厳選は全くなし、雑魚敵もスルー出来るところはほどほどに逃げつつな感じ。それでもアイテムもがっつり余りましたし、時間制限でのゲームオーバーは一度もなかったです。隠しボスもわりとあっさり倒せた想い出。
それでも「難しかった」ってご意見はたまにツイッターで見かけたので、メンタル重視だともっときつくなるのかも……? いずれにせよ、人のプレイスタイルを見たくなるバトルはなべて良ゲーですね!
ゲストキャラと匂わせなセリフ
公開時期は『星の王女さま』が後ですが、こちらの『片道夜行列車(以下本作)』が番外編の立ち位置として作られているとのこと。通りで匂わせちっくなキャラがいると……。
まだ『星の王女さま』はプレイしていませんが、本編だけだともやっとしてしまう気持ちにはなりました。プレイ順は逆の方がいいかも。といっても黒時計の針に関わるイベントだけなので、クリアする分には支障はありませんが。
あと欲を言えば、クリア後おまけ部屋でもセーブできて欲しかったですね~! ああいう設定系は何度も見直したくなるので。本編が別にあるならなおさら。
でもおまけ部屋があること自体は嬉しかったです!
とまあ、こんな感じで。
『星の王女さま』をプレイするとまた感じ方が変わってくるゲームなのかもしれないので、さっそくこの勢いでプレイして来ようと思います。
以上、独自のバトルシステムと百合な関係性、幻想的なグラフィックなどにピンとくる方向けな一作でした。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
追記ではネタバレ感想。
ネタバレ注意!!
考察や解釈というより疑問点のメモ。あのエンドが気に入っている方は読まないほうが無難かもしれません。
エンドについて
前述の言葉足らずだと感じた点を突いてしまうのですが、本作における設定がふわふわしていて、感動に乗り切れませんでした。感動よりも「あっそれってこの世界だとアリなんだ!?」っていう気持ちの方が先立つ感じ。
問題は「記憶全部無くして別人になる」のところです。
気持ちだけは残る、という部分はロマンがありますし、この世界における設定はそのくらい緩めなんだよという基準がわかって好きなんですが。名前も友達のこともなぜここにいるのかも全部忘れてしまうっぽいのに「メモを書いた」記憶だけ残ってるのはすごく謎でした。記憶をなくすというのはてっきり、名前や過去の経験などの情報を無くすということだと思っていたんですが……。
ここのせいで中途半端に感じてしまって、うーんと首をひねってしまいました。直前のボス戦での口上が徹底的でかっこよかったぶんなおさら。
これならいっそ、
①メモを書くというエピソード自体無くしてなんか想いの力でどうにかなった!っていう完全ご都合主義にする
➁ルナがメモをポケットから落としてメルが拾い、「あれこれなんだったっけ……」からの走馬灯で「メル!」ってなる
とかのほうが自然と受け入れられたように思います。
暗いなら暗いで突き抜けて欲しい気持ちもあるものの……。エンドの描写やイーハトーヴォの設定からするに、むしろ辛い経験を踏まえたうえでのハッピーエンドを目指していたのかなーと思います。好みではないけど理解はできるし、大衆受けもいいだろうとは感じますね。
ただやっぱりせっかくやるならあと一手突き抜けてほしかったなー!
とはいえ、こういうもどかしさが出るのも、他の要素がしっかりしてるからこそ。贅沢を言いましたが、確かに一目置かれる作品ではあるだろうなと感じました!