うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「白緋ト云フ名ノ傾城」感想

「洞は底がないから虚と呼ぶのです」

支えて下さい、なければ穴ごと落ちて下さいな前置き。

 

 

 

えー、今回はJelikoさんところのフリーゲーム白緋ト云フ名ノ傾城」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

www.freem.ne.jp

 

遊郭を舞台とした、和風ノベルゲー。恋愛というよりは情念。一本道、プレイ時間は数時間ですが、その濃密さや美しさは延々と脳裏に焼き付く一作。

 

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

 

衝撃から始まり、静かに幕を引く話

 

花魁の死、という壮絶なシーンから始まる本作。プロローグがエピローグとはよく言ったもので、この死に至るまでどのような想いがあったのか綴られていくのが本作です。

男二人の視点が交互に繰り返されながら、物語は進みます。

目を見張るのがやっぱりこの目次ですよ! 美女を美女として描けるの、心底素晴らしいと思います。アップにするのが艶やかな唇というのもまた衝撃的で良い……。

 

そしてこの男二人の対比がとても良い!

背景の使い方が上手いんですよねえ。二人をしっかり、朱と白で色分けしたうえで、要所でふっと入り混じる。この感じが、真反対のようで似ているところのある二人の人間性の表現に繋がっていたなあと……。染み入る演出でした。

あと月の描写が大好きなんですよね! 普段は鷹野に使われる月の背景が、(確か私の記憶では)一か所、弥一のシーンで使われるところがありまして。あの美しい文すらも抑え、背景画像一枚でハッと弥一の想いにも気づかされる、あの演出が最高でした……!

 

 

 

どっぷりと感じられる吉原の色

 

花魁の口調からこまごまとした描写、登場する舞台の小物に至るまで。どこもかしこも「艶」で「粋」で「宵闇」のじっとりとした雰囲気を感じさせる作品でした。

文章がとにもかくにも美しいんですよね……。こういう遊郭物はなんとなし、用語や風習が独自で小難しい印象を持ってしまっていたのですが……。本作は見慣れない単語もすっと頭に入ってくる美文ばかりで、とても読みやすかったです。「~しんせん」「~かえ?」といった花魁独特の語尾も、逆に「~ですかい」「へえ、」といった男連中の江戸喋り?も隅々まで表現されていて、かなり濃厚でした。

この世界観は本当に本作でしか味わえない、「美」だと思います。

 

 

 

圧倒的演技力で魅せるフルボイス

 

サウンドノベルと銘打たれている本作。なんと驚き、地の文も含めて全てフルボイスです。

いや、終わってから知ってびっくりしたんですよ!

全部同じ人!? って!

確かに発音の癖などよく聴けばしっかりと同一人物なのですが、それ以上に、圧倒的な別人と思わせるだけの演技力がありました……! 無理な声替えをせず、自然と聴きやすい演技に収めてくださっているのもポイント高いです。

正直に言うと、少し活舌は気になったかな? な行が弱そう、演技がたいそう良い分耳に引っかかるところはやっぱり惜しまれたなあとも思います。

しかしながら! あの圧倒的な、息の詰まるような雰囲気を出せるのはやはりこの声優さんあってこそのものです。

 

もっと言うと、このゲーム作者様はノベルゲの画面映え重視で本文のフォントがかなり小さめで読みづらいのがたまに傷だなあと感じておりまして。そこをボイスでしっかりカバーして頂けていたため、相乗効果でよりよく感じました。

 

女性の台詞ももちろん同じ男性声優さんが担当されています。変に異性ぶった声ではなく、あくまでこの方自身の声帯というか……聴き苦しいベール抜きに率直な演技力で声を届けてくれたような印象でした。何より、白緋の、あの底知れぬ雰囲気の女性を、男性の声帯であそこまで表現できるものなのかと! 驚かされるばかりです……。

あとがきもちらりと触れられますが、この声優さんの筆致自体もとても抑制が効いていて、美しかったです。このお二人だからこそあの、触れればふつりと途切れてしまいそうな、絶妙な雰囲気が生み出せたのだろうなと思います。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

艶やかで、繊細で、苛烈で、美しい。静かにじっくりと読み進めたい。そんな物語でした。

 

 

ちなみに!

2021/11/5に『Scarlet and Blank』というタイトルでSteam英語版がリリースされるとのこと。これを機に是非原作?日本語版?も広まって欲しい気持ちです。わくわく。

 

 

 

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