「手を取り合い補い合えば、ほおらこんなに綺麗なレインボー!」
ドドメ色にならない程度の距離感でよろしくな前置き。
えー、今回はPixel_Note(三條)さんところのフリーゲーム「ナントカ三術将2」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
エレメントを召喚して街の皆のお悩み事を解決していく……ADV?シミュレーション? うーん、ストーリーをがっつり楽しむゲー!
難易度があるほど難しいゲームではありませんが、前作『ナントカ三術将』のクリアデータがあるとよりサクサク進められるので、プレイ予定の方は是非。
というわけで、良かった点など。
短編集とメインストーリーが交錯する展開
前作からシステムがガラッと一変された本作。文章量が大幅に増し、この世界をもっと知れる&より溶け込める仕様となりました。
具体的には、短編連作めいた感じかな?
ミッションをこなすことで、世界観や作中の人達の日常を感じ、さらにはエレメントの生体もどんどんわかるようになる感じ。一方で、クーの強化で進行していくメインストーリーでは、三術将の関係性やとある陰謀が巡り合う骨太なお話が楽しめます。
遊び方、ストーリーの読み具合をプレイヤー側で調整できるのも嬉しいところ。
ガンガンターンを経過させて、メインストーリーからどっぷり浸かるもよし! 箸休め感覚でミッションという名の日常パートを摘まみつつ、メインの連載漫画のようなヒキを楽しむもよし!
ゲーム感はしっかりある画面構成
文章量だけ見れば、ノベルゲーもかくやの大ボリューム! ですが、ただ読むだけといった心地ではなくきっちり「ゲーム」を感じたのは、やはり随所の演出やシステムによるものかなと思いました。
ミッション→報酬といった基本の流れもそう。強化するとストーリーが進むシステムもそう。戦うRPGや選択肢を選ぶADVとはまた異なるプレイ感ではありますが、きっちりゲームとして楽しめる印象が強かったです。ただ読み進めるだけのビジュアルノベルではなく、プレイヤーの行動に何か返ってくるというテイが取られているから、このプレイ感が出るんでしょうかね……。
何より、図鑑画面もミッション画面もメイン画面もぜ~んぶ、デザインがめちゃくちゃ良い!! 見たい情報がぱっと見て分かりやすいの、さりげなく最強だなって思います。
メインストーリーの進行具合によってミニキャラがマップを移動していくのもかわいくて好き……。
個性豊かな街の人達
さて、前作ではエレメントの多様性が大きな魅力だったように思うのですが、今作ではその多様性がそのままこの世界の人々の生活に繋がっていきます。エレメント紹介が街の人のお悩み解決となることで、設定だけでないリアルさ、みんなの暮らしが実感できる……読み物としてものすごく面白かったです!
あの生物のこの生態をこう利用する!?という驚きなどもあり、色々な切り口と柔軟さが見れました。
加えて、エレメントのみならず住民のみなさんも癖あり個性あり笑いありなところが魅力的でした。なんだろうな、確かに顔無しで一回きりのキャラがほとんどなんですが、それでもただのモブに収まらないんですよねえ。ちゃんと、そこで生きてる人たちって感じがして好きです!
特に面白かったミッションなどは、ネタバレになるので追記にて。
完璧じゃないから三術将!
前作でも華麗な連携を見せてくれた彼ら三術将ですが、そこはまだまだ急ごしらえ。今作ではその三人の絆がより深まっていくところも見れて、人間ドラマ的な楽しみができるお話でもありました。
あの三人それぞれ、個性がものすごくバランス良いんですよ!
ジーンは一見ナルシストだけどものすごく努力家で、爪が甘いけど慕われてて。
イグニスは堅物だけど緻密な思考が得意で、言葉は足りないけどそのぶん恩を着せたり人を責めたりしない。
メアトはぐうたらに見えるけど、大切にしたいものや自分のやりたいことをどうやってうまく社会と溶け込めさせればいいのかわからないだけ。
なんかね、全員やっぱり足りないところがあって、素直に「こいつ良い人なんだよ!」とは言い難いんですよ。それぞれに、オイオイって言いたくなるシーンもあります。でも、だからこそ私は彼らに全力の親しみを持って、「こいつ良い奴なんだよ!!」って言いたくなっちゃうんです。心から。
そしてメインストーリーの中だと、クーが良い清涼剤だな~と思いましたね。この作品、三術将がぎくしゃくと不和を重ねていく話だったとしても、見どころはあったはずですが、それ以上にシリアスやすれ違いに疲れてしまっていたようにも思います。だからこそ、クーの存在がありがたかった!
時にはきっぱりとツッコミ、時には癒し系として、しかし本人もそこそこ自由人な感じの雰囲気でもって作品全体をまろやかに整えてくれるという。いやあ、まさに良い助手ですね!
ぎこちないからこそ手を取り合える、不完全だからこそ補い合える、熱くて楽しいストーリーでした!
顔グラも立ち絵も豊富
最後、グラフィックについて。
まず、話してる最中に顔グラが出てくるんですが、どれもこれも表情豊かでとても素敵でした! 感情が乏しくなるという業を背負っているイグニスも、決して無表情というわけではないんですよね……。こういうところが好きです。また、笑顔になると急にぱあっと少女らしくなるメアトに一番きゅんとさせられました。
表情だけでなく、状況に応じて新規立ち絵がバンバン出てくるのもポイントです。えっ、こんな衣装見せてくれるんですか?!っていう。キャラを画面外に出したり、暗転させたりして衣装替えをごまかす手法だってもちろん取れるはずなのに、惜しみなく色んなバリエーションを見せてくれるところがとても素敵。
中でもやっぱり着目してしまうのはジーンですね~……。やっぱり主役なだけあって差分も豊富。元々のデザインがものすごく好きなんですが、それでもなおどの色バリエーションも合うなあと思えてしまうのがすごいなあと。
やっぱり表情から感じるそのキャラっぽさが一番の魅力なんだなと思います。
とまあ、こんな感じで。
前作が好きな方はもちろん、用語集などが搭載されているので一応今作が初めての方でも、是非遊んでみて欲しい逸品でした!
追記ではネタバレ感想。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
ネタバレ注意!
最終章
いやもうBGMが最高!!!
途中で転調?して踊るような曲調に変わるんですが、私が読み進めるスピードだとあの転調がちょうどメアトの奮起するシーンと重なって、涙がもう溢れる溢れる。二倍にボドボド零れまくりました。
ただ力づくで熱いだけの曲じゃなくて、変化球混ざってくるところが、ナントカ三術将らしくて好きだなーと思います。選曲が神!
あと、やっぱりクーがすごく熱くて素敵でしたね……!
今までクーが何度も放っていたバースト。あれがさらに強化された技があそこで出たんだなと、エフェクトでわかるようになっている演出がとても粋でした。
好きなミッション
ミッション全部が読み返せるの、ほんとにほんとに最高の仕様だと思います!!! 作者様ありがとーーーーー!! 何回も読み返しちゃいました!!!
以下は好きなミッション抜粋です。
・アルーノ族関係
どれも好きです! あの、独特で憎めない感じがすごい好き。エピローグでも出会えて嬉しかったな!
・カリスマ術士ジャック
大好き!! ジャックの誇りと生きがいをきちんと認めてくれるところが好きなんです。ジャックみたいな、少し弱くてでも根っこは善良な人を描くのが、この作者様は上手いなあと感じます。
ジャックの信じてもらえないかもしれないけど、という言葉に、態度で返そうとするジーンさんの背中がとても眩しかったです……。ジーンさんを、努力家でちょっと自信ない時もあってでも虚勢であってもやっぱり私はすごいと奮い立つ誇り高き人だと私は思っているので、なおさらその良さを感じました。
・臆病な守衛
このミッションは、好きとか楽しいとかよりも、興味深かった! エレメントの性質の活かし方も、問題解決の発想も、全部に目を丸くしました。その発想はなかった! そういう、なんか、レベリング別の鳴子みたいなのって絶対便利ですよね。現実でも使えないかな……もう似たようなの実装されてるのかな……。
・モーヒザットの治安
他メンバーが出てくるタイプのミッションだと、このミッションが好き!
本作で初めてイグニス視点になる場面でもそうでしたが、イグニスってものすごくスマートで自己完結型の思考回路してるんですよね。だからこそ抱え込んじゃうんだろうけど。でもこういう人、すごく綺麗でとても羨ましいです。脳内が綺麗……? 合理的とも違うし悩むこともあるんだけど、なんか綺麗だなあって思います。いいなあ。
そのうえでジーンと協力し合うという姿勢に成長している、ここも大好き!
と、ネタバレ全開で言いたかったのはこんな感じかな!
今回も、締めるところはきっちり締めつつゆるーく終わる、あったかい作品でした。