「良かれと思ってやりました、やり方は私が決めました」
価値観の違いは不幸の始まりな前置き。
えー、今回は六月晴さんところのフリーゲーム「カミサマモウデ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
複数エンドあり、ホラー、BLノベル。攻略対象は2人ですが、登場キャラは男女共に多めです。
というわけで、良かった点など。
男女しっかり絡んでくるストーリー
BLではありますが女性キャラも多く登場し、特に序盤は学生グループのわいわいがやがやを楽しめます。主要キャラには男女カップルも普通にいて、ホラーの王道な雰囲気。
なんなら惚れたのなんだのの話が出てくるまで、BLであることは頭からすっぽ抜けてしまっていたくらいです。
これの何がすごいって、女性キャラをうまいこと生かしてるところなんですよ!
不自然に排除されるわけでもなけば、理由なく登場するわけでもなくて、いやあ納得です。中でもとあるエンドでは“女”がいるからこそ業が深まる良い鬱展開もあって、実に性癖でした~……。
内面が特徴的なキャラ達
まずは少し難点から。登場人物が多く一気に集まるため、読み始めは人物把握に若干苦労しました。キャラの呼び方も、先輩後輩・名字・名が入り乱れるのでいっそう難儀でしたね~……。
でもそれはかなり序盤だけ。みんな個性的でキャラが立っているので、終盤には「アイツ」だけでもピンときてしまうほどにお馴染みとなりました。
ちなみに、公式サイトに人物紹介もばっちり載ってます。サイトには立ち絵もついているので、キャラの外見を想像するのがかなり苦手な自分にはとってもありがたかったです!
せっかくなら本編にも立ち絵があれば……と一瞬頭をよぎったのは確か。でも、立ち絵を使った小話はおまけで読めますし、何より本編の雰囲気づくりとしても立ち絵なしの純サウンドノベルな形式が似合うよなあとも思います。
文章だけで怖さを作れるこの構成力
そう、特筆したいのはやはり、怖さ!
得体のしれないものがひたひたと……といった怖さから、異常行動を取る人間にヒいてしまうような怖さ、信用できない隣人といった油断を殺す怖さまで、手を変え品を変えで様々な恐怖を味わえました。ホラーノベルと言うジャンルとしてもオススメしたい作品です!
凄まじいのが、文章だけでこの恐怖を醸し出しているところなんですよ……。爆音でびっくりさせるとか、画面が血でドバドバとか、そういう演出ではないんです。ただただ、一文一文追うごとにのめり込み、ゾクリと冷や汗の垂れる恐怖を味わえます。
「手で握手をする」みたいな悪文がごく稀に出てきはしますが、むしろそれでもガッツリ怖がれるほど雰囲気作りが上手いという点に着目するべきでしょう。三人称視点で読みやすく、さくさく読み進められるからこそ夢中になって引き込まれるというのもありかもしれません。
それぞれ違う関係性のルート
BLといえばやはり着目したいのはお互いの関係性。
この点、二つのルートの差別化がうまかった!
尾崎ルートは、お互いが踏み込めないもどかしさ。二人きりで閉じている、親しいからこそ崩せない想い……。ホラーとしても、怪異のほとんどはあっさり解決されます。ただし、たった一つの巨大な恐怖がじわじわと常に足首を掴んできますが。
誠実寡黙な彼と向き合い続け、コツコツじっとりと想いを明かされるようなルートでしたね~。
真生ルートは、一方通行のもどかしさ。色んな人に声をかけ、あっちこっちへ奔走し、その中で特別なのはやっぱり……という展開です。こちらはなかなか怪異の全貌が見えない分、「次は一体何が起こってしまうんだ……」というスリルを楽しめました。
チャラで陽キャな彼のギャップにガツンとやられる、ジェットコースター的なルートだったように思います。
どちらも距離感や展開の対比が絶妙でした~……! これでどちらも楽しめちゃうんだからすごい。
全体像を把握しやすいという意味では、個人的に真生ルートからのプレイを勧めたいかな? とはいえエンド分岐が単純なのは尾崎の方ですし、もちろんお好みで遊べますのでご安心を。
とまあ、こんな感じで。
夏の青春と怪異のぞわぞわ、そしてBL的な執着と独占を楽しめる良ゲーでした!
追記ではネタバレ感想。
ネタバレ注意!
好きなエンドについてなど。
真生
ずるくないですか彼!?!
ギャップ萌えで殺しにくるキャラはずるいと相場が決まってるんだ……この……伏兵ヤンデレ……好き……。
「たまこがいれば大丈夫!」の不穏さがすごくて、初回はエンドに到達するまでずっとたまこが裏で真生を操ってるんだと思い込んでいました。
陽子が好き、をそのまま信じていたので、なるほどたまこが悪猫になってしまって一番身近な人間と添い遂げさせようと……ふむふむ……みたいな。ふむふむではないが!
実際は真生が私の想像以上のちゃっかりさんだったという感じでしたね~。
好きなエンドはもちろん3です!!!
……3でしたよね? あの、ハッピー()同棲生活のあれ。
完全に自由を奪うのではなく、動ける範囲があるからこそのおぞましさがあってすごく興奮しました。
やってるのがたまこで、真生はたまこが見えない、というのもミソですよね!? 優人が受け入れてるように表面上は見えるから、真生はひたすらハッピーるんるんというこのすれ違い……。真生の精神にたまこが干渉しているのというのはあるんでしょうけれども。気持ちのアンバランスが絶妙でした……。
猫に見られてるってシチュエーションも素直にえっちで良い! 好き!
尾崎
ぶっつん来て想いが爆発する展開みんな好きでしょ。私は好きです。
毒姫といい、尾崎自身がというより尾崎を取り巻く周囲がえげつなかったように思います。
何よりテンションあがったのは、おまけ話!! 好きでもない相手を義務的に抱いてテクだけ上がっていくシチュエーション私もう、もう、大好きなんですよ……!! すっっっごく悶えました。ありがとうございました。
エンド4のえげつなさ良かったですね~……。胎だけ借りるやつ。尾崎の、陽子という自分を好いてくれている幼馴染でも利用してしまう、そのくらい優人に激情を抱いていることがわかってぞわぞわしました。
正直条件としては陽子と優人はけっこう近しいように思ったんですが、それでも尾崎が優人の方に惹かれてしまったのはなんでだったのかなあ……。一人で先に行かず、尾崎の手をまず取ってくれたから? 校内で孤立してしまうくらいの、誠実な不器用さがあったから? クリア後特典にあった、陽子がとある時期から大人しいふるまいをするようになったというところに、いじらしさを感じました。
余談だけど、幼馴染3人組は並ぶと身長が綺麗に斜めで可愛いですね。陽子想像以上にちっちゃくてびっくりしちゃった。かわいい。
あと、このエンドだったかはうろ覚えなんですが、優人が元凶の尾崎にすがっちゃう描写があってめちゃくちゃ悶えました。良い~……。尾崎がその仕草を両想いによるものという勘違いはしなさそうだから、なおさら苦しくて良い~……。理知的な人、自分を縛っちゃいがち……。
どっちのルートにも性癖なヤンデレ鬱展開エンドがあって、最高でした!!