「刺した一瞬は気持ち良い、愚鈍はその後どうする気?」
後先考えてこその復讐な前置き。
えー、今回は露骨(あきばれ)さんところのフリーゲーム「ヌシアルハナ・ハルノヨ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
エンドもおまけも満足度たっぷりの、病み・鬱・暴力・禁忌・全部盛りなダーク乙女ゲー。そのぶん注意書きや要素は公式サイトにガッツリと記載がされていて、パスワードまで設定されている徹底ぶりです。だからこそ、私のようにこの手の作品が大好きな方には是非ともなんとか届いて欲しい気持ち……!
黒くて暗い話が好きな方には是非ともプレイしてほしい!! と初手で熱く主張しておきますね。
というわけで、良かった点など。
絶対的な階級制度と虐げられるヒロイン
望まない結婚、血筋が全ての世界、虐待の日々。
どろどろと濁って行き詰まった、閉塞的な状況から本編はスタートします。憎悪のセリフが飛び交うのは日常茶飯事、どころか、正面からぶつかりに来てくれる方が気が楽なほど、根は陰湿です。
ヒロインの立ち絵にはビンタを受けた時用の差分まであり、心身ともにガッツリ暴力を受けます。
というとドM向けのように誤解されてしまいそうですが、そういうライトな言い回しだとまた違うと主張したくなってしまう気持ち……!!
なんだろうな、確かに一方的かつ理不尽に虐げられることのほうが多いんですが、そこにそれぞれの矜持や生き様を感じて、単に面白おかしく暴力を扱っているわけでは決してないんですよ。
また、舞台設定が濃厚なので、受ける非道な展開にも凄みと説得力があります。
上手いなあと思うのは、物語の進行中にモブのセリフが挟まれること。このモブキャラたちの噂話のおかげで、第三者から見た彼らがわかるのも良い。カツラのホンケの人達からの見られ方や肩身の狭さ、不穏さが伝わってくる仕様が好きです。
とにかく、この世界観がもう私は大好きです!!
禁忌を隠さない近親婚
さて、本作の近親婚についてですが、ガッツリガチです。
義理の兄妹ですよ~とか、実は拾われっ子ですよ~とかいったごまかしは一切ありません。おまけページに家系図が用意されている時点でその本気っぷりは伺えることでしょう。
中でも、すごいな!?と思ったのは、近親相姦のメリットデメリットまできっちり描かれているところ。
私はどのフリゲもDLの際にキャラクター紹介ページはネタバレ防止でほとんど見ずにDLするため、サツキと初めて対面したシーンでの会話に思わずヤバイ声が出ました。才能の多寡にこだわるところもそうですね。ウワッと気づいてしまった時のエグさが好きです。
また、生まれつき相手が限られているという点が「運命」「生贄」「身代わり」どれとも成り代わるのも、巧みですさまじかったです……。
悪意や含みのある物言いをごまかさない文体
さすが良いところの血筋と言うべきか、キャラのセリフには婉曲的なものも多くあります。
皮肉に秀でていらっしゃる方が非常に多い! おっそろしい! 会話がどれも知的! 最高!
水面下の蹴り合いもあれば、真正面から言葉の刃で切りかかるシーンもあり、実に背筋の凍る想いを味わえます。
そんな中で着目をしたいのが「ごまかさない」ところ。
自分の感情に言い訳をしてしまっているな、という場面ではきっちりモノローグが回収をしてくれます。その場しのぎの選択肢は、聡いキャラ達が鋭く見抜き、こちらを精神的に刺しにかかってきます。
登場人物全員が、悪意に敏感で、かつそれらを取捨選択していく賢さを持っているんですよ。だからこそ、話が早く、プレイヤーに対して誠実で、そしてどうしようもなく救いようがない。
この辺なんだか、生々しくて好きなんです~……。
日常でもあるじゃないですか、「この人今ちょっと思うところがあったんだろうな」って感じる嫌な表情を目にしちゃう場面とか。
で、リアルだとそういうのって流さざるを得ないというか、毎度拾って気を使ったり食って掛かったりしてたら身が持たないと思うのですが。
本作はそこら辺のリアルな機微を交えつつも、爆発する時は最悪の形で爆発するという、フィクションだからこそできる崩壊と退廃を見せてくれて、ものすごく良かったです。さじ加減が絶妙なんじゃ~~~!
専用衣装や立ち絵差分の多さ
つい舞台やストーリーにばかり注目してしまいますが、いやあグラフィック面も素晴らしいんです。
何がって、立ち絵の多さが!!
ルートごとに専用衣装があったり、
幼少期と少年期で別の立ち絵があったり、
微笑みと笑顔で細やかに表情が違っていたり。
とにかく種類が豊富です。
しかも全員分。髪型チェンジまで実装されてるのがまたおいしい。
そしてしかもセンスが良いんだこれが!!!
和服と中華服が混ざってる感じ? でいいのかな? 好みの衣装ばかりでものすごく眼福でした……。好き……。どの服が好きか訊かれたらマジで悩むし決めるまで数日お時間頂きたいくらいにはどれもほんっとに好きです。
画面構成とフォント
起動してまず驚いたのが、タイトルのフォント。
あれは有名な「数式フォント」なるフォントなんですが、和の花が咲き誇るこの作品であの硬質で幾何学的なフォントを起用するの、すごい斬新で驚かされました。違和感ないのがすごいんだよな……。
さて、フォントに限らず本作はあちこちの画面構成が最高。最高です。
キャラごとに家紋が決まっているのもポイントですね。様々な花でダウナーに彩られるこの画面が大好きなんだ……。
攻略対象の多いゲームってイメージカラーでキャラ分けされるイメージが多いのですが。本作の家紋という差別化は世界観がより濃厚になって大好きです。
あとBGMがキャラごとに変わるのも大好きで!
ツバキ様以外、本編中は攻略対象同士がほとんどお互いに顔を合わせることがないので、いっそう「今のお相手はこの人」という意識が高まって好きでした。
とか言いつつタイトル画面のBGMが一番好きですが!
シーン切り替えでSEが入るのもさりげなく引き締まって良い演出でした……。
驚きボリュームのおまけ要素
そして、この濃厚でえげつない最高の物語を味わった後に開放される、クリア後ページですよ。
こ、このボリュームをさらに噛み締められるなんて良いんですかと!!!!!!!
さらには有料の18禁パッチの存在ですよ。
もう、この、このボリュームをまさかのワンコインで本当に宜しいんですかと!!!!!!
カツラと攻略対象のみならず、それぞれのキャラ同士、お家同士の確執因縁憎愛すれ違いその他諸々がたっぷりと浴びれて、とても幸せでした……。嬉しい……。
あっ、とはいえ!
有料の追加パッチについては公式サイトに内容物や文量などはきちんと記載があるので、そちらをまずはご参照ください。くれぐれも私の喜びを受けて過度に期待を膨らませて突撃してしまったりすることのないようにお願いいたします。ワンコインとはいえ、この辺はお金も関わることなので、きちんとしておかねばね。
そしてもちろん、本編だけでも大ボリュームでとんでもない満足感があります! 私の主観ではありますが、だからこそ胸を張って言い切れるので、全力で主張しておきます。
ちなみに私はもう本編楽しんだ時点で「サイコー!」と速攻で購入を決めたのですが! ははは!
やはりドハマリした身としては、全力で楽しんで頂きたい気持ちはあるので……。1プレイヤーはもう大満足しましたということで、ご参考までに。
とまあ、こんな感じで。
テキストもグラフィックも最高至高、特に好きなルートは何度もプレイしてしまった濃密な作品でした……。ダークな乙女ゲーをお求めの方、公式の注意書きがむしろ大好きだという方は是非是非!
普段ならネタバレ感想はこのまま追記に投下するのですが、今回は長くなってしまうので別記事にて。
既プレイの方はよろしければお付き合いくださいませ!
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