うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「よもやまセレクト」感想

「君と出会えて良かったと一瞬だけでも言えれば満足だ」

直後に最悪と吐き捨てる前置き。

 

 

 

えー、今回はTeToriapot(てとり)さんところのフリーゲーム「よもやまセレクト」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ティラノ製、六つのお話が詰まった短編集ノベル。各話は1000文字以内で、好きな話だけ読むこともできる、フリーで気楽な仕様です。ただし公式曰く、倫理はあんまりありません

 

www.freem.ne.jp

 

というわけで、良かった点など。

 

 

 

ちょっと不思議でドロッとした物語

 

お話自体は、ほのぼのラブコメから残虐リョナまで幅広く。こういう雰囲気と断言するのが難しいですが、あえて共通点と言うなら、ちょっと変わった設定のキャラがメインに据えられることでしょうか。

公式の各種注意書きを見ればどことなく察せられるかと思いますが、エグイものもあります。でも、どことなく当然のことのように描かれるので、味わいは比較的あっさりめ。共感というよりは、興味深い民話や伝記を読んでる感じだったかなあ。

中には、おまけに書かれた一言に、背筋がひやりとすることも。設定だけでも妄想が大長編ばりに膨らみそうなものもあり、短編の奥に広がる世界に想いを馳せたくもなりました。

個人的に惹かれたのはSFっぽさかも。でも、宇宙とかそういう系かと言われると全然違うという……ぬぬぬ、表現が難しいですがとにかくこの倫理具合好きです。

 

 

 

六つの物語、六つの関係性

 

主人公の姿や名前が用意されていないので油断していましたが、メインキャラのみでなく、視点主のこちら側にも設定や過去が用意されています。語り手だからこそ相手に指摘されないと気づけない、気づかせない面白さも味わえました。それこそミステリっぽくもあるかも。

エンド名にハッとする話がいくつかあって、気持ち良かったですね~。読み終えてハッとなる話はいいものだ……。

物語それぞれにメインキャラが1人いるのですが、その彼(彼女)(各種中性概念)との関係性もガラッと変わります。恋人、友達、神様、加害者、などなど。何が出てくるかわからないのはストーリーだけでなく、キャラクターの感情についても同様。なのに不思議とまとまりがあって、それこそ一冊の短編集を読み終えた時のような満足感がありました。

 

 

 

読み手の心構えができる並び順

 

もちろんオムニバスな短編集なので、どの順番で読んでも問題ない仕様です。加えて上手いなと思うのが、左から読んでも右から読んでも、後味が良い物語の並び順になっているところ。

個人的にはドロッとした後味で終わってもそれはそれで余韻が楽しめるので好きなんですが! いかんせんそういうのにものすごく拒絶感を抱いてる方がいるのも知ってはいるので……。マイルドな要素もある作品だからこそ、そちらが損なわれないような構成にされているのは良いなあと感じました。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

さくっと読めて、じっとりとずっと残る、良質な短編集でした。

追記ではネタバレ感想。

 

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

 

 

 

 

ネタバレ注意!

 

 

 

 

各ルートの個別感想になります。

 

 

 

 

ユトミーアス

 

こういうのも押しかけ女房と言えるんだろーか? 淫魔側が「えっそれアリ!?」ってなっちゃうのなんか、こう、人間様って感じがして良いですね。ある意味人間の方こそ欲がとめどない感じ。

主人公もそうですが、主人公のパートナーの寛容さにも拍手でした。いや、あの世界では寛容っていうのともまた違うのかな……。とりあえず私は独占欲高い方なので、ほとんどあったことない(と思われる)ユトミーアスを受け入れられるくらい主人公を好いてるのならそれはものすんごい愛だなあと思います。

単純にハッスルエンジョイしたかっただけかもしれないけど、おまけ文的には三人が三人とも愛で満たされてないと成り立たないし、愛と性欲がちゃんと一緒になってる感じじゃないかなと! 解釈! です!

 

 

タネル

 

ストーリーもおまけの紹介文も、徹頭徹尾リョナくてとても良き。淡々と容赦ないところがゾクゾクします。

キャラデザも思いっきりなんか、植物というか、あ~量産型~って感じがするんですよね。はは……。

言ってしまえば「よくある悪趣味な話」なんですが、一方で描写をやりすぎていないからこそ逆にイヤ~な感じが増幅してて良いなと思いました。1000文字制限の良点。

余談、カタルってどこに登場してたっけ……ってなってます。聞き覚えはあるような。うーんうーん。

 

 

 

カノトイ

 

ある意味タネルと同じように「モノ」のはずなんですが、何も持たされていないタネルと違って、憎悪と富と知恵などなどあれこれ持っているものがあるからこその違いが大きい気もします。対比したらなかなかにエグくて趣深いです。富とは災厄

このルートは主人公の背景事情も何かと察せられるところがあって、もっと、を求めたくなりました。エンド名の表記の幼さとか、すごく、想像掻き立てられて好きなんですよね……。

 

 

 

 

ヨスガレモダキ

 

こちらはもう突き抜けて、THE露悪、THE娯楽。あくまでも主人公の発想から拷問を広げていき、ヨスガレモダキ本人はのほほんキャッキャと楽しんでる感じが、さすがの上位存在でした。う~ん無邪気。よって神。

エンド名を見た瞬間、ああいうことになった経緯全てを理解できる構図がすごく気持ち良かったです。虐待されてたんだろーなあ……。

 

 

 

 

ステディ

 

読了後すぐに二周目入りました。この手の話は二周目が楽しいと相場が決まっているので……。

ステディから主人公への評はよく見るとかなり辛辣というか、意外と正直なんですが、だからこそ「皮肉屋」の主人公は好意や信頼を寄せていたんだろうなあとも思えてしみじみします。そういう性格付けや主人公への心配、どこからどこまでが設定なのかも含めて興味深いですね~。

三者のインタビューが入るの、ある意味残酷でもありますよね。でも、なかったらなかったでただ一人静かに消えたことすら知られずに終わるから、どっちもどっちなのかな……。聞き回ってるのはステディなのかな、その辺りも色々と考えたくなる話でした。

BGMの効果を一番感じるお話でもあったように思います。

 

 

 

 

ヰヲ

 

ブコメきたな~!!

この話を最後に読んだんですが、いやあ見事に明るくてすっきりしました。よく考えるとこの話もなかなかにSFしててそこそこに倫理がないというか価値観が独特というかマッドなサイエンティストのはずなんですが……。ここまでの話を読み終えた後だとむしろその辺りまったく違和感なくなってることに、感想を書いている今になって気づきました。慣れってすごいですね。

末永く幸せであってほしいものです。ほのぼの。

 

 

 

 

総括としては、

 

  • ・一番好き → ヨスガレモダキ
  • ・何度も読みたい → ステディ
  • ・わかりやすい → タネル

 

でした!