「分かれ道に立てた木の棒も、道標たるなら神と呼べ」
形のないものを信じるのは疲れる前置き。
えー、今回は露骨(あきばれ)さんところのフリーゲーム「汝の神を愛せよ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
エンド分岐有の男女恋愛ノベル。育ての親×孤児。
同作者様の他フリーゲームと世界観を同一とする、シリーズものと言えばシリーズものな作品ですが、おそらくここからでも入れはする……はず? 少なくとも、ゲストキャラなどはいません。
というわけで、良かった点など。
エンド内容や話の展開など、軽くネタバレにも触れますのでご注意ください。
顔隠し×糸目
公式サイトを見ればわかる通り、メインキャラはどちらもお目目が見えないキャラデザになっています。
片や顔も髪型も隠した司教服、片や常ににっこり目な形の糸目。
私は片目隠れ好きなんですが、こういうキャラデザがヘキな方絶対いらっしゃると思ってるので、そこに上手いこと届けばいいなあの気持ちを強く感じました……!! メカクレ攻略対象や糸目攻略対象まとめたサイトがあればいいなあと思うくらいなので。
で、使い分けも上手いなあと思っていまして。
司祭の方は頻繁に目も見開いて、困惑や驚きが見えやすい。一方、司教の方はまったく顔色が見えない、からこそ、ハッとさせられるシーンが多々。これは「好き」だからこそできる演出だなと感じました……。良い……。
敬語×敬語
時々くだけはするものの、基本的にはお互いが敬語で会話を重ねます。でも不思議と堅苦しくないんですよね~! 明るい会話のシーンだとテンポよく率直にやり取りしてるからかな?
あくまで彼らの自然体は敬語なんだなあと思わされるといいますか。なんか、親密度って別に語尾だけで測れるものではないんだなあと改めて感じました。
司教の、お前呼び&馬鹿扱い&含みと破壊力のある褒め言葉が大好きです。辛辣さとときめきのバランスがたまらん……。
エンドの半数がお別れ
斬新だな!と感じたのは、用意されているエンドの半数が攻略対象と別れて終わるという点です。全クリしたらそりゃそうなると納得するものの、初めはかなり驚かされましたね~。
ある意味2部構成とも言えるのかな? まずはこの作品における神の愛の定義を感じつつ、エンド5~8を埋める。そうすることで次に、司教という人となりの根っこにある部分を理解しながら、エンド1~4が埋まる。みたいな。
こういう構成になっていることで、司教の覚悟なり、二人の立ち位置の違いなり、色々な深みを感じました。
分かり合えないかもしれない二人がそれでも居心地よくくっつく、みたいな、恋愛に欠かせない要素がそのまま丸っと人生観や人間の相互理解に繋がってるの、すごい構成だなーと思います。
神の愛とは?
さて、本作の大きなテーマの一つである、「神の愛」。これがかなり独自の定義で、内容としても興味深かったです。また、舞台は教会であるものの、この教義を信じていない人も多く登場するので、こちらも設定に入り込みやすく、スッとプレイできました。
何より、司祭の告白というか懺悔というか、想いの丈を吐露してくれるシーンがすっごくストンと心に響いたんですよね。恨みとか怒りとかじゃなくて、ただぽつんとした静かな気持ちだったのが、めちゃくちゃ好きでした。
あと世界観と言えば!
エンドに入る直前の、それこそ天啓のようにぼんやりと浮かび上がる一文が大好きなんですよ……! 全体的に白基調でBGMも荘厳、隅々まで神というモチーフを感じられる作品です。過去作と雰囲気が全く違うため、同じ世界観ということもしばらく気づかなかったほどです。
とまあ、こんな感じで。
本作独自の宗教要素、それにまつわる人たちの想いなど、ずっしりした世界観を感じさせつつもメインの恋愛も骨太さを見せてくれる良作でした。
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追記では思いっきり核心まで書いているネタバレ感想。
ネタバレ注意!
軽く、2点だけ。
受け入れるわけにはいかない人と受け入れないといけない人
おまけの司教視点を読んで、うわ~!となりました。構成の妙~……。
司祭は、神の愛を受け入れると今までの自分の「辛い」が無にされてしまう。
司教は、神の愛を受け入れないと今までの自分の「辛い」が無にされてしまう。
えぐい構図だ……。好きだ……!
プレイ初めは「出て行く」をあそこまで重ねられるところに驚かされていたんですが、ああ、そりゃそうなるなあとものすごく納得してしまいました。納得があるストーリーは良い……。
怪しい香りの漂う真っ白な空間
白ばかりで、時折血が噴き出る世界。
教会というのは名ばかりの、「実験所」ですね。
気づいた瞬間ぶわっと鳥肌が立って、実に良かったです。
欲を言えば、司教の私服や司祭司教のお名前はもっと見る機会が欲しかった~!
しかし!!!
機会がものすごく限られている、たったワンシーンだからこそ光るものがあるのもわかる~~~!!! うお~~~~!!
見たいと思えるこの塩梅が一番ちょうど良かったのかもですね。うんうん。
いや~とにかく恋愛という枠組みを超えて、二人の人間を見つめられるような作品でした。