「多ければ多いほど嬉しいものでしょう?」
余談が本編になりがちな前置き。
えー、今回は漂い停留所(キノクラ)さんところのフリーゲーム「とある男たちの話」「魔法の鏡はかく語る」「苦しみの無い世界」「貴方を愛しているのです」「一番鶏が鳴くまでに」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
どれもウディタ製の短編ゲー。相互に関係性はなく、単体で楽しめます。
気になった作品だけでも是非!
『とある男たちの話』
[概要]
ウディタ製、キーボード操作のノベルゲー。群像劇風とありますが、単に語り手が変わるだけの一本筋なお話です。
[感想]
まず、難点はキーボード操作という点。ノベルゲーに必須と言ってよいほどのオートモードはなく、テキストスピードはかなりゆっくりで早回し不可。
一方で本作は「誰かの話を聞く」という形式で全て成り立っているため、雰囲気は出ているとも言えます。また、背景画像がスーッと上へスライドしていく演出は、劇場の幕開けを連想させてオシャレでもありました。
内容はRPG世界観での鬱展開。魔物と人間のどうこう。テーマがシンプルに、「金髪の男はなぜ笑ったか?」に絞られているのも、読みやすく印象に残りやすくて良かったです。
私は「自分と同じ想いをさせないため」という解釈がまず浮かびましたが……。自暴自棄でもよし、一矢報いた満足でもよし。どれが思い浮かぶかというより思い浮かんだ中からどれを選ぶかがその人の価値観に繋がるのやもしれません。
なお、自分の解釈や読後感を大切にしたい方は、あとがきを読まないのが賢明です。
[一言]
静かに暗い話へ没頭したい方向け。
『魔法の鏡はかく語る』
[概要]
ウディタ製、キーボード操作のノベルゲー。白雪姫をベースとした短編。
[感想]
前作と違って文章スピードの調整ができるようになりました! やった~! これが一つあるだけで、プレイしやすさが段違いです。
内容としてはダークメルヘン、鏡×お妃様。ヤンデレ好き私は大歓喜。お妃様の豹変について、妬みや年老いたことへの絶望でなく、「不安」を前面に出していたのが良い切り口だったな~と思います。正史のような軽いエピローグこそ知りたかったかも……。
あとがきで力を入れたと書かれていた演出も、確かに迫力があって好きです。
[一言]
エンドを見た後の起動画面の変化の仕方が好き。
『苦しみの無い世界』
[概要]
箱庭世界、SF。選択肢で二つのエンドに分岐する操作有り短編。
[感想]
一番に良かった点としては、タイトル画面ですね!!
二回スタートを押すことになるの、言ってしまえば二度手間なんですが、こと本作ではゲーム開始の第一歩から早くも世界が始まってる感じがしてめちゃくちゃ好きでした。
主人公が目を閉じて、PCが起きるという、この相反する動きもなんだか象徴的で素敵。
水槽を覗き込んだ時の背景画面の変化も好きですね~。
ゲーム内のウェイトと、沈み込むような対話の時間とが、見事に噛み合ってました。
ゲーム内容としては、ひたすら毎日お魚とお話をするゲーム。ちょっとずつ変化して情報量の増えていくテキストを楽しみつつ、じっくり鬱思考へたゆたっていく感じ。
お魚がけっこうシニカルなので、なおさら、「このままでいいんだろうか……?」という揺らぎを感じました。
仮にお魚が優しい言葉ばかりかけてくるなら不信になっただろうし、突き放して外に出るよう促してくるなら反発してしまっただろうなあ。両方のエンドを見たくなるベストな語り口だったように思います。
余談。
クリア後おまけでは主人公が存外はっきり自我を持っていて驚きました。無口主人公扱いじゃなかったのかー。
[一言]
暗く暗く落ち込むことで自分を癒していきたいという私に向いていたゲームでした。
『貴方を愛しているのです』
[概要]
びっくりも追いかけっこもなしのサスペンス探索ゲ―。ウディタ製。攻略見れば数十分。横スクロール2Dタイプ。
[感想]
まず気になる点。
探索は基本的に総当たり。公式に攻略があるので問題はありませんが、自力でクリアしたい派の方は進行フラグのわかりづらさに苦労するかもしれません。それこそ寝室のパスとかも、パスメッセージをアレと同じ文字色にするだけでかなり解きやすさが変わったんじゃないかな。
で、良い点。
グラフィックから!
マップが狭めで、どこを調べても反応がある細かさがかなり好きです! 無駄なうろうろが少なくなるだけでも嬉しい……。物置いてる場所もリアルで好きでした。トイレの蓋を開け閉めできるフリゲは良いフリゲだ。
探索時のテキストも、どことな~く主人公の攻撃的な部分や陰な部分が見え隠れして良かったです。
同作者様の『DEAD OR DIE』でも思いましたが、やっぱり顔グラが良いですね!! それこそメニュー画面でしか見れないんですが、一目見ただけでビビビと来る陰鬱さがツボでした。
また、OPにも注目したいところ。
あのシンと緊張感を漂わせてくれるモノローグが好きなんですよ~! エンド回収プレイヤーのためにスキップも用意してくださっていますが、これからプレイする方にも是非一度は見て頂きたいですね!
ああいう、世界観や作品の雰囲気の決め手となる導入をバシッと決めれる作品は大好きだ……。
[一言]
作中にある通り、おまけは補足のつもりで見に行くのではなく、パロディ作品を見るつもりで覗くのがよいかと。
『一番鶏が鳴くまでに』
[概要]
操作有りだけど基本的には会話を見て終わる探索ゲ―。謎解き・追いかけっこ・驚かしは無し。
[感想]
同作者様の作品の中でも、シリーズものを除くと一番明るくてあったかい話だったかもしれません。
いや~、黒企業のヤバイもん運ばされてる雇われ乞食だと思ってましたすいません!
ほとんど会話を見るだけのゲーム、と紹介されていましたが、この会話こそが良かったです。終わりのある不安なら大丈夫、みたいなくだりが一番好き!
“僕”君は働いてる?ことと言い、もしかすると“ボク”と違って貧困層で両親とも仲良くない(あるいはいない)のかもしれません。そう思うといっそう、前述のくだりが沁みます……。
おまけの顔グラの話にもあった目のクマってのは、不安で寝れないのかな、それとも寝る間もなく働かないといけいないのかな、とかとか。
加えて、グラフィックも好きですね!
ここまでプレイしてきて、色んな絵柄を描き分けられるのすごいな~と改めて……。「外国風童話」という表現に膝を打ちました。まさにそれだあ!
恐ろしい老婆がただシワ足しただけでなくちゃんとそれらしく描けるの、マジで「画力」って感じがしてすさまじいです。鷲鼻の老婆、良いよな~!
余談。それこそ今までの流れだと、おまけ部屋で解説が多々溢れそうな気がしていたんですが……今作はかなり簡素でおや?となりました。でも、前述の通り作中である程度想像はつくし、良い余地を残して頂けた感じもしてありがたいです。イラスト面は見れますしね!
[一言]
ワンマップでさくっと、童話風な作品をプレイしたい方向け。
とまあ、こんな感じで。
普段なら一番気に入った作品を挙げるところなんですが、ことこの作者様においては一番を決めるのが難しく……。どれも世界観や雰囲気がきっちりと一貫していて、比べるというよりは一つ一つと向き合って出会っていきたい印象の作品群でした。
スクショでピンときた作品があるならまずそれから手をつけるのが吉!
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
おまけ。
この作者様は色んなフリゲのファンアートも描かれていらっしゃるんですが、1枚でその作品の魅力をバシッと印象的に伝えてくれる絵がたくさんで本当眼福なんです!
フリゲプレイヤーさんは是非、そちらも覗いてくださいませ~~~!