うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

無料アプリゲーム「ALTER EGO」感想

「浮かび来る思考を繋ぎ止めるために、人は言葉を口にした」

止まらぬ思考で頭をぶつける前にいったん息を付きたい前置き。

 

 

 

えー、今回はカラメルカラムさんところのアプリゲーム「ALTER EGO」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

play.google.com

 

 

 

どういうゲームかといえば、アプリインストールページの公式紹介文が全てですので、引用してしまいましょう。

 

■あなたのためのゲーム

性格分析をしてみたい人

文学や哲学、心理学に興味がある人

私ってなにと自問自答を続けてしまう人

 

これに尽きます。

すなわち、私のためのゲームです。

あなたのためのゲームでもあるかもしれません。

 

 

 

 

というわけで、特徴的な点など。

 

 

モノクロームに沈殿していく思考と思想

 

アプリの画面構成はほぼ常にモノクローム黒、白、そして灰。このストイックな見た目がすでに本作をどういうものか表しているような気もします。

唯一紛れ込むは、プレイヤーにとってのお役立ち情報。ここも視認性が高くて好きです。

石材めいた吹き出し、割れる鏡、声は在れど歌詞は無いピアノ中心のBGM――。どこを取っても静謐な世界観が、どことなく居心地よくて好きでした。

 

なんだか不思議な感覚の世界なんですよね……。

緊張感はあるけど落ち着く。冷たい雰囲気なんだけど安心する。強制されない、そっとしてもらえてる感じが好きなのかもしれません。

 

寝付けない夜に起動して、流れてくる吹き出しをぼんやり眺めているだけでも、かなりの「救い」を感じるアプリです。

 

 

 

古典名作名文

 

システムとしてはタップ&放置ゲー。この手のアプリ、回収するものは様々ですが、本作は「古典名文」を回収していきます。

創作する方々なんかは特にピンとくるのでないかと。

ほら、自作のラストに古典文学の引用文とかつけちゃった経験ありませんか? 誰もが通る道ですよね。そうだと言ってくれ!

 

と、余談はともかく。

読書記録をつけている方や、名著のキャッチフレーズが好きな方、こういった「光る一文」を取集しがちな方は特に痺れるのではないかと思います。そうです私です。

と言いつつも個人的には、本を普段読まない方にも是非プレイして欲しい!

登場する各書について、ちょっと興味が湧いてきちゃうような紹介の仕方がすごく上手いんですよね……。

 

ひたすらに画面内へ浮かび来る、名文の数々。

それらをタップで拾い、壊し、しばし沈黙を挟んで、ふたたび溢れる文字の数々……。この緩急の付け方もまさに、夜にする考え事をゲームで再現しているかのようでした。

 

登場する本が多岐に及ぶのもポイント高いですね。

海外文学も日本文学も混ぜこぜで、物語から経書まで。エンディングを見た後のおまけは古典のみでなく近年のSF名著なども取りそろえられており、読書家っぷりがうかがえます。

 

 

 

 

選択するのみではない性格診断

 

本作は古典文学を楽しむのみならず、性格診断もできちゃいます。こちらをメインで楽しんでいる方ももちろんいることでしょう!

目新しいなと感じたのは、その診断方法が多岐に渡ること。

  • ・自分の考えに近いものを選ぶ
  • ・物語の結論を推察する
  • ・ピンとくる単語を無作為に拾っていく
  • ・中には悩み事を思いっきり文章で書き出してしまう

などなど、診断・治療・心理テスト、様々な角度からプレイヤーの内面を推し量られます。作りが丁寧!

診断結果も豊富、かつ、独自の言い回しが多くて好き。レアな結果を出すために診断のやり直しみたいなこともできはするみたいです(さすがに2周目以降をオススメしますが)。

 

 

 

ドSなツンツン少女、エス

 

本作のメインキャラである「エス」。彼女と対話をしながらストーリーは進行していきます。

タイトルの「エゴ」と彼女「エス」でもうピンとくる方もいらっしゃるかもですね。きっとこのアプリ、向いてます。なんて。

 

 

驚かされたのが彼女の辛辣さ!

性格診断ってなんとなく、寄り添うものというイメージが強かったので、かなりドギツイ態度を取られてぎょっとしましたね~。このドSっぷりにすっかり惚れ込んだプレイヤーの皆様も多いのではないでしょうか。

 

と、これだけ書くと急に俗っぽい印象付けになってしまいますが、そうではないんです。エスの見どころはむしろ、初対面のクールさを乗り越えた先にあります。

凛と冴えた態度の裏にある不安定さ。

自身の土台の無さからくる攻撃性。

エスもプレイヤーも、自分のことがわかっているようでわかっていない──。

古代ギリシアでは対話で思索を行っていたといいますが、まさにそれの端を感じます。

どことなく庇護欲をそそられるようないじらしさが見え隠れするのも、いやはや演出の上手いところ。また、メタな言い回しが好きな方にも向いているかと。

 

辛辣に見えて、エスのセリフはすごく考えられているなあとも思います。

こちらを見透かすような物言いはしてくるけれど、自由意思や考えは断定せず、そっとしておいてくれる。こういう風に見える、という、エスの主観として語り聞かせてくれる。この作りがすごく、優しくて好きです。

 

性格診断ということもあって、「私」がどういう型にはまるのか探すアプリでもありますが、「私」の可能性や思考を広く広くそっとしておくことを許し、尊重してくれるアプリでもあるように感じます。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

何があるわけではないんですが、ドグラマグラのラストまできっちり読了いたしました。満足。

 

ほどよい不安定さと緊張感が逆に心を癒してくれる、ぼんやりと思考に没頭できる良いゲームでした。