「モラトリアムなんて誰が決めた?」
個人のペースが枠づけられていく前置き。
えー、今回は奥山キイチ(http://kiiichi.blog.shinobi.jp/)さんところのフリーゲーム「Persona - The Rapture」(http://kiiichi.blog.shinobi.jp/%E5%89%B5%E4%BD%9C/persona%20-%20the%20rapture)の感想をつらつら書きますね。
おまけ要素を含めてコンプまで10時間ほどの長編RPGです。
Personaと題にある通り、アトラス作の大人気「ペルソナ」シリーズのオマージュ作品となっています。
が、ペルソナを知らない人もちょっと待ってほしい。かく言う私もペルソナ未プレイのためDLを躊躇っていたクチなのですが、実はこの作品、オマージュ部分はバトルシステムや一部の用語に限られています。ストーリーやキャラはほとんどオリジナルです。
つまり、ペルソナを知らなくても十分プレイできます! むしろ物語がメインです。なので、あまり先入観を持たず、興味が湧いたら是非気軽にプレイしてみてほしいところです。
さて、前提が長くなりましたが、魅力的な点についてあげていきますね。
人の闇に触れつつもカラっと締めるストーリー
ストーリーはチャプターで分かれていて、序盤は各キャラに、中盤は舞台背景や設定に、終盤は作品全体にといった具合でスポットライトが次々と当てられていきます。
特に序盤の展開はピンとくる人も大きいのではないでしょうか。恋愛、無力感、孤独感、等々の学生なら誰でも思う悩み事。各キャラが暗い気持ちに沈み、それを思い切り物理でぶん殴りに行く流れはたまらなく心を揺さぶられます。
神々の対立という壮大なところまで話は膨らみますが、最後にまたキャラ達の個人的な生活へ戻って来てくれるので、風呂敷の畳み方に思わず拍手をしたくなりました。
downを狙って敵を封殺、属性重視のバトル
相手の弱点を突くと1ターン行動不能(down)にできます。上手くいけばノーダメージで相手を封殺、なんてことも。敵の種族によってだいたいの弱点傾向は明かされているので、初見の敵でもなんとかなります。レベル上げ嫌いでもこのシステムを利用すればある程度はゴリ押しできるかと。
そのぶん難易度は高めで、downを無視してしまうと雑魚戦でもあっさり死ぬことがあります。なので、ある程度RPG慣れした人向け。
戦闘中はヘルプでいつでも種族ごとの弱点を確認できる気遣いがありがたかったです。
選択肢多めのキャラエピソード
メインのストーリーとは別に、アイテムを使うことで各キャラのちょっとしたエピソードが見られます。キャラに愛着のわく話ばかりなので、見ればその子が好きになること間違いなしと言ってもいいくらいです。
主人公の返答も基本は3種類ほどあるので、セーブロードで見直す楽しみもあります。
一つ不満を上げるなら、大筋は変わらないので優しい態度を取りたい子にきつい態度を取ることになってしまう時があったことくらいでしょうか。逆も然り。とはいえ、ここでの選択肢は「プレイヤーがどう言いたいか」より「このキャラを攻略するにはどういう言動をすればいいか」の最適解が数種類用意されている感じではあったので、意図としてはわかるかな。
キャラ萌え重視の方やストーリー重視の人は是非とも、なシステムでした。
完全オリジナルのBGM
元々音楽方面で活動されていることもあって、どのBGMもとにかく雰囲気が出ていて魅力的です。ゲームが非アクティブでもBGMは流れるので、作業用にもできます。やったね!
私自身は洋楽あまり詳しくないのであれですが、参考にしたアーティストさんもたくさんいらっしゃるご様子で、クリア後の一言コメントでちらりとその概要がわかります。詳しい人なら聞いていて「おっ」と思うところもあるのではないでしょうか。
やっぱりダンジョンBGMがどれも印象的です。かっこいい!
とまあ、こんな感じで。
他にもマップの作りやセーブタイミングの絶妙さ、仲間キャラによって微妙に変わるNPCの会話、自販機などなど、細かいところもぎゅっと凝った作りの名作でした!
追記ではネタバレがっつりの感想を書きますね。ご興味ある方はどうぞ!
【バトル・おまけダンジョンについて】
好きなキャラは連れ回したい派なので、日野・ココロ・大河原・藤枝のメンバーで進んでました。日野・藤枝が回復、大河原が物理、ココロが魔法アタッカーな感じ。バフデバフ技のバランスも丁度良かった気がします。
ペルソナやカードである程度の属性・耐性の調整ができるので基本誰を選んでも進めるのが嬉しかったですねぇ。
キツかったのはクリア後の課外活動。やはりおまけ要素なだけあって、敵の強さが段違いです。レベル上げでなんとかなるタイプじゃなくdown取らないと絶対死ぬ感じなのが辛かったですねー。どうしても雑魚戦は思考停止しがちなので…w
とはいえ、手ごたえある戦闘が楽しいのは確か。回復ポイントの位置もちょうどよくて、常に全力で戦えたので色々と試行錯誤するのは楽しかったです。
最奥のおまけボスを倒した時点でレベル60台でした。要領よくしっかり弱点を突いて進めるタイプの人ならもっとレベル低くてもいけると思います。
【キャラクターについて】
サイトで公開されている関連小説3本の話も含んでいます。小説については匂わせる程度のネタバレで済ませているつもりなので、ご興味湧いたら是非どうぞ。
[鷹取ココロ]
いっちばん好きです。
初めのころは、「クールビューティさんが人格破壊されて従者化なんてどこのエロゲ!?」という不純な萌えがあったのは確かです。うん。懺悔します。ごめん。でも、従順かと思いきや冷たく、鉄面皮かと思えば軋むところもある、作中で変化し続ける彼女はとっても魅力的に見えます。
結局、EDで過去と決別した以上、鷹取先輩≠ココロという捉え方をして、OP時点の鷹取先輩という人は消えてしまったんだなと解釈しているのですが。どうなんでしょうかね? そもそも鷹取先輩は本当に元から存在していたのかとか……存在とは何だ!?
サイトに公開されている小説を読んで思うのは、ココロもイゴールみたいに日野が産み出した何かなのでは?ということ。ただ、それが何なのかというところまでは考え切れておらず、むしろ曖昧に終わらせるほうがお話としては良いのかなあとも思って、複雑です。
とりあえず小説のほうにあった彼女の失踪については、ココロが日野啓一を変えた→日野の創造物であるココロはココロの言う脱出口に辿りついた→ココロは作中における死ではなくてrapture世界からの脱出という形で姿を消した。ということかなあ。
ついでにココロの生まれた経緯について。ココロ先輩が永眠症にかかった時の(ゲームで最初に訪れるIDEA)ボスである「輪入道」は魂を抜く妖怪だそうです。なので、
日野がエットゥヘに呼ばれたことで覚醒
↓
時系列がOPへ、鷹取が皆の犠牲としてIDEA内で死ぬ
↓
ココロが産まれる(鷹取の魂は抜かれる)
みたいな流れなのかなあと思っています。
[山田ちなみ]
はっきり書くと、実はあまり好きなキャラではありません。
例えば「卑怯って言う君が一番卑怯じゃないか」とか、「悟られるような空元気をするのが痛々しい」とか、ざくざく言ってやりたい衝動にかられます。構ってちゃんになりきれないプライドの嫌らしさとか、チラチラ見ておいてこっちが手を差し出したら振り払う女々しさとか、そういうのがどうしても目について苦手です。
でも、じゃあ悪いかと言うと、そうじゃなくって。
むしろ、山田って矛盾が根幹にあるキャラなんじゃないかなーとも思うんですよね。女として見られたくないと言いつつ“恋愛”のペルソナを持っている辺りがもう象徴的だと思います。なんだろう、理想と現実のギャップを埋めようとして、それが叶わなくって半端なことになっちゃうみたいなところが大きい気がします。それが本人もわかっていそうなところがまたいじらしい。その辺りを見ると可愛い子だとも思えるとは思うんですよ、うん。
あと山田は、「助けを求めていないフリしてるんだから助けられちゃ駄目」みたいな、自縄自縛に陥っているところもありそうですよね。ある意味、すごく真面目で良い子だとも思うんです。律する心が強いというか。でも、女である自分に自己嫌悪して、さらに外部に助けを求められないとなると、もう本当めちゃくちゃ生きづらかろうなあと思います。
そういうしんどさが臨界に達した時に、「腹いてぇ」な状況になったり、うおおおおと爆走したりするのかもですね。本編のエネルギッシュなところは好きです。一方で彼女の回想シーンではこのしんどさみたいなのがダイレクトで来るからなおさらキツイのかもしれません。
好きではない、けど、こうやって考えたくなるくらいには魅力的なキャラだと思います。
[春日陸]
まさかのホモ要員。もとい、オカマ要員。いつの間にかいじられポジションが定着していて吹きました。選択肢でも春日いじりネタが多く、ついつい吸い寄せられるように選択することもしばしば。ペルソナアトラス繋がりということでついついデビサバの「アツロウにまかせる」的な流れを思い出してしまいますw
女子に何かと可愛がられていたのは、ペルソナの暴走が周りに影響して~みたいなせいかと思っていたのですが……あんまり関係無かった、かな? 「gothic」を踏まえると女難の相があるんじゃないかとも思わされます。いずれにせよ、周りにお世話してくれる人が自然とつきそうで、世渡り上手そうなイメージです。
そしてそのわりに彼はある意味一人で完結している人ですよね。コンプ後見れるおまけを読んでなおさら思い、小説を読んで確信しました。
[藤枝百合花]
いつのまにか食いしん坊キャラになっていたポエマーさん。本編で披露してくれたあれは、うん、ともかく、回想での詩的表現は大好きです。
初めの頃はこう、山田とはまた違う方面での痛々しさがあって。会話に入るタイミングを測るシーンとかもう、胃が痛かったですね! わっかるんですよあの感じ……あそこでフォロー入れられるココロ先輩と石神先輩もすごいですが、一方で、ああー気を遣わせてしまった失敗したーみたいな気持ちもわかるんです。自分の黒歴史がほじくられるのでなおさらダメージが……。
だからこそ、後半で皆にさらっと馴染んでいる会話が増えてとても安心しました。
彼女、人のことを気遣っているように見えて、けっこう無神経なところも多いんですよね。長文メール送りつけてきたり空気読まずにご飯要求してきたり。これが大河原先輩の言うところの“私”ばっかじゃねーかって話なのかなあと思うんですが。初対面と仲良くなってからとでかなり対応が変わってきそうな気がして、深みのあるキャラだと思います。
言葉って無力だよなあ、な流れには強く強く頷きました。もうねぇ、逆に野暮になったりするしねぇ、本当もどかしい。
[大河原琢己]
ライブの曲がかっけぇ!いやー、聴いてて気持ち良かったです。
彼のエピソードの中では、ラスボス戦で挟まれる夢の話がもう、もうたまらん大好きです。この作品の中で一・二を争うくらい好きです。主人公に対する当たりの強さが話を追うごとになあなあになって、油断したところであれですよ。あのシーンって、主人公やココロのことをこういうふうに考えてたんだなあっていうのがビリビリ伝わってくるじゃないですか。感極まります。
主人公のこと嫌いとか、ココロは俺のとか、そういうのじゃなくて、「どうかな」で終わるのが良いですよね。リンゴや蜂蜜ってカレーによく合うんだよなあ……とか考え出したらもう駄目です泣きます。
作中を通して一番中身が読めないキャラだったかもしれません。
いや、「言いたいことは言う」「やりたいことはやる」、で基本原理はとてもわかりやすい方なのですが。なんというか、他のキャラは悩みとか引っかかりとかがわかりやすかったのに対して、大河原先輩は根本の悩みが不明瞭な感じがします。無力感? が反動で傍若無人な振る舞いになっているとか? うーん……。
ただ、それこそカリスマを感じるのは確かです。人好きしそうというか、奔放なところが憧れるというか。めっちゃ好きです。
[石神賢司]
いやー、回想で惚れました!これは惚れざるを得ないでしょう!
横恋慕という展開自体どろどろで大好きです。
あの食事会のシーンが大好きで、もう大好きで、初見時はエンターを押す手がゆっくりになっていくのを感じました。たった一つの台詞の重いこと重いこと。あれ単品で見直せるようにセーブデータ作る始末です。
恥をかいたけど笑いごとになって良かったね、で終わると思うじゃないですか! そうさせないのが先輩のかっこよさですよ! あんな状況であんな状態になって、それで、あの返しができるなんて、もう、かっこよすぎるでしょう!
かっこいいだけで終わらせず、オチがつくのもまた素敵ですよね。あれでまたリアルさや年相応感が増してると思います。
やると決めれば容赦なくやれる、かなり貫徹したところも大好き。一方でうっかり闇堕ちしそうなところもポイントでした。
[比良坂ヨミ]
彼女ははたして何だったのか? 勿論作中で集合無意識的なものと答えは出ているのですが、それでも考えずにはいられません。
初めはココロのシャドウかなあと思ってました。例えば彼女がよく言うメタ台詞は、OPで鷹取先輩が言ってた「所詮ゲームだもの」を思い出させますし。ヨミがシャドウだと真っ先に気付いたのもココロですし。ただ、ヨミが仮にココロのシャドウだとしたら、ココロのほうもヨミの対になっているはずなわけで、集合無意識の反対って何だろう教団側な訳は無いから…? とここまで考えた辺りで頭がパンクしました。
“ココロの”シャドウというよりは、誰からでも産まれるし誰のものでもない“みんなの”シャドウと考えた方がいいのかなー、なんて。色々考えて、結局初めのところに戻ってきてしまいました。
彼女の回想も見たかったというのが正直なところ。だけど、それが無いからこそあの子のキャラ性が光るのでしょう。惜しくはありますが……っ!
[日野啓一]
プレイヤーの分身、と思いきや、終盤でがっつりと彼も一個人であることが明かされる感じのお人。良いですよねこういう手を離れていく感じの成長が感じられる主人公。大好きです。
クリア後はかなりプレイボーイな感じになってますが、結局どうなるんでしょうね? どっちも選ばない気もしますがそうなるとそれはそれで思わせぶりな罪深い男になってしまい、うーんうーん。プレイヤーとしてはむしろココロ先輩と一緒にいたいんだけど、いやー、日野のココロへの対応はかなり冷たいので、無理なような気もします。
冷たいというか、家族ゆえの気安さみたいなところもあるのかなあ。あるいは、ココロは日野やエットゥヘが無意識に産み出した人だとしたら、ココロへの冷たさは日野の自己嫌悪の現れとか……? ちょっと気になってます。
なんか全然まとまってないけど、思ったことはこんな感じ。
とにかくどっぷりハマって一気にプレイし、クリア後もぐるぐる色々と考え続けることになる、中毒性たっぷりのゲームでした!