「幸せに生きられるに決まってるだろ、このアホ面を見ろ!」
気を抜いていられる場所を持ってる証拠の前置き。
えー、今回はSEPTET(ぬぬぬ)さんところのWeb小説3部作の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
septetgame.wixsite.com
全編ほぼセリフのみで進むSS。
SSというと界隈によって意味が異なりますが、ここではショートストーリーではなく、スレ形式小説を指します。
中身はしっかりがっつり長編です。
起承転結も用意されていて、シリアスもギャグも鬱もハッピーも全て味わえます。
相互につながっているので、気になる方は初めから順番にぜひ。
紹介
もともとこの作者様はフリーゲーム作者様として存じ上げていたんですが、小説も公式サイトに公開されていたので手を付けました。
結論、面白かった~!!
読んで良かった、やっぱりこの作者様の作るちょっと厳しい世界と優しい心が大好きです。
さてフリゲ好き向けにご紹介するんですが、本作はなんとなく『らすぼす養成はいすくーる』のノリが近かったように思います。世界観も勇者魔王モノ。
好きな方は合うはずですし、逆もしかり。
普段はフリゲしかやらない方、ノベルはちょっとなあと抵抗のある方も、セリフだけなら読みやすいのではないでしょうか?
こうして自分の創作物をジャンル縛らずホームで全て公開してくださっている作者様、本当にありがたいです。応援しやすいし追いやすい!
と、ご紹介はこんな感じで。
以降、読んでいる前提での感想です。
ネタバレもバンバン挟みますのでご注意を!
▼ネタバレ▼
幼女「待ちくたびれたぞ勇者」
[概要]
鈍感善人勇者×クーデレお人好し魔王。
虐げられた過去や孤独の恐怖など、シリアス展開はあるものの、「いやもうこの勇者ならハピエンまっしぐらだろ!」と信じさせてくれるパワフルさもあってサクサク読めました。良い王道!
[印象に残ったシーン]
特に好きだったのは地下牢での乱戦!
「あ、今RPGにおけるあのコマンドを選んだんだろうな」みたいな、なんとなし皆のステータスが察せられる戦闘描写で楽しかったです。戦う彼らの姿もゲームのパラメータも両方目に浮かぶよう。いいねいいね。
魔女と竜人の殴り合いも好き~……。
お互いがお互いの言い分を頭でわかったうえで、どうしても納得いかないからあえて片方に偏って、お互いが殴り合うことで中道を目指せるという……。
孤独だと絶対にできない解決方法だな~と思うから、仲間の存在がいっそう感じられたし、二人とも「相手が言わなきゃ自分が言ってたけどただ気持ちの整理がつかなかった」と自覚しているのもすごく誠実。
謝り合える素敵関係だった……。
子どもっぽいけど大人な二人だよね……。
ルーラの日数制限や魔王の結界など、便利魔法には代償が用意されている世界観も丁寧。
代償の解決策や作中時間がちゃんと管理されていて、読みやすいけどなんでもありではないバランスが受け入れやすくて好きでした。
[一言]
善人ばかりじゃないからこその善性の話、いいよね……。
勇者「百年ずっと、待ってたよ」
[概要]
公式の作品紹介ページにある通り、がっつり容赦なく鬱展開。
苦労人で頑張りやな彼×全力投球で彼の支えになりたがる彼女。
『幼女「待ちくたびれたぞ勇者」』の前史ですが、読む順番はこっちが後でOKのはず。
[印象に残ったシーン]
純度の高い悲劇、大好きです……。
すれ違いによる鬱シーンが多いんだけど、どれも回避しようがない筋書きだったところが好き。短絡的な誤解ではなく、納得がある。「しょうがないよなあ、でもどうすれば……」と思いを馳せたくなる良き鬱でした。
悪者ってそんなわかりやすく決まってるわけないんだよなあ……。
ちゃんと最後まで勇者に優しい人もいるからこそなお、真実味があって痛い。
ラストの繋がり方がむちゃくちゃ美しかったですね……。
「手紙を読み上げる声」っていう表現で確かに「ん?」となったんですよ。ちょうど読み流せるくらいには自然でしかし気に留められるくらいにはがっつり効いてくる伏線。うまい!
他にも色々な謎や伏線回収がばっちり。
勇者が名前を思い出すくだり、勇者の瞳の色、抜けなかった魔剣……。
鬱展開だからもちろん心は痛むし手も止めながら読んだんだけど(もちろん良い意味で)、一方で文体としてはすごく読みやすかったし気持ち良かったのは、構成が巧いからだと思います。
思えば、手紙を持っていた人たちに面影を感じたのも、ラストの輪廻転生につながってるんだよな。
本当に構成が美しい……。
[好き箇所引用]
この作品特に刺さったシーンが多かったので、一部だけ引用。
問題があれば教えてくださいませ……!
”祈りも願いも努力も他人への献身もことごとく踏みにじられてしまう様とか、最初から最後まで救いようのない筋書きとか、
そういうのって意地悪な目で見て楽しいって感じるんじゃなくて、どうしようもなく悲しいけどそれと同時に、ただ美しいんだ”
私はバッドエンドも大好きな人だから、美しいと言ってくれるのがとても優しい視点でありがたかったです。
“「ああ神様っ!!! 神様!! 私たちの尊き創造主様!! いつかあなたも殺しに行きます!!」”
この文章そのものもそうですが、それ以上に、ここを読んだ時の気持ちを併せて記録しておきたいのかも。
これが彼女から発せられる絶望も衝撃的だったし、次作を思うとこれをもしかしたら聞いていたかもしれない鍵守の心境も複雑だろうし、いろんな意味で痛みが満ちていて好きでした。
[一言]
この話が一番好きかもだし、狩人さんの結末が特に好きかも……。
勇者「世界崩壊待ったなし」
[概要]
シリーズ完結編。
ラストの2文が魂に刻み付けたいくらい美しい。
過去作も含めて全部通して読んだからこそ感じ取れる美しさなので、ぜひ順番通りにどうぞ。
[感想]
基本的に私が固定カプ厨なので、序盤でNTRの波動が出ていたのは実は苦手でした……。メタ要素が入ってきたり、別世界でドンパチしたりするところも。
でも、だからこそ後でネタバラシされたときにはすっきりしたし、ああいうドタバタを乗り越えたからあの結末に辿り着けたんだとも強く感じます。
「物語は必ず私たちのそばにいてくれる」っていうあたたかさが本当に染み入ります。キャラクターを個人として大事に扱っている作者様だなあと……。だから鬱や痛みもちゃんと響くんだろうし。
前2作も十分満足度の高い作品でしたが、それを超える作品がお出しされて、もうお腹がいっぱいです。なんて幸せなんだ。
作者って絶対的な存在だけど、でもキャラクターだってけっこう思い通り動いてはくれなかったりするし、意外と何でもしようと思ったってつじつまが合わなくなるよね、みたいな。
そういう、「作者の全知全能の隙間に生まれた子たちが命って呼べるんじゃない?」って感じがしました。
1作目が人と魔族の未来を作る話、
2作目が人と魔族の過去の話、
3作目が人と魔族が今を生きていく話……。
時系列もきれいに整ってて大好きです。
ピンポイントな感想だと、魔王様がずっとかわいかったですね~。
荒くれに威風堂々ド正論パンチしかけたうえで、背筋を伸ばして敗走することになったシーンが本当に好きです。情けないはずなのにかっこいい。
魔王様は何でもできるわけじゃなくて、それこそ対人関係や気持ちの整理は苦手だったり、魔力特化型でできないことも多いのが好きだなあと改めて感じました。
創った人は、みんなが助け合ってやっていく世界を求めたんだろうなあ……。
[妄言]
男女カプが増量されてて嬉しかったです!
ここは二次創作でやれ案件なので、折り畳みにて。
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竜人×姫のラブコメ後日談、読みてぇ~!
姫が(心身に損害のない程度の蓋を開けてみればちょっとした理由で)誘拐監禁されてプッツンくる竜人さんが見てぇ~! バリバリヤンキーモードでカチコミかけた先では姫があっさり問題解決してて犯人とのほほんティータイム交わしててほしいし、それで我に返った竜人が顔赤くして大騒ぎになってほしいです。
読みたいよ魔女ちゃんどうしたらいい!?
「おもしろそー! あたしも読む読む」「他人事だと思って……」「だって他人事だもーん」「ほう、例の彼とはどうなんですか?」「誰?」「向こうから花束もって全力ダッシュで駆けてきている鎧姿のあの彼ですが」「モブにあるまじき体力! じゃ シュッ」マジョサーン……
読みてぇ~……。
つい妄言を吟じてしまいましたが、なんかもう彼らが自由に脳内でしゃべりだしてしまうくらいには、本当にキャラが生き生きしている作品でした!
[一言]
君の描いた物語が君を助けにくる、そんな展開を信じたくなった人へ。
余談
フリゲ関係のオンラインイベントの際に、作者様がエアスケブを受け付けていらしたので、怖れながらリクエスト申し上げました!
快く描いて頂けてとってもとっても嬉しかったです!!
とまあ、こんな感じで。
とってもキャラクターが生き生きしていて、世界もどっしり息づいている素敵な作品なので、気になった方は是非!
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