「死んで生きて死んで生きて死んで生きる」
爆風と共に散る鬱展開も良きものな前置き。
えー、今回はhaze factoryさんところのフリーゲーム「大きな樹の中で」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
先んじて書くと、この記事を書いている20170818現在は公開停止中です。
そしてこの記事を投稿する20180616現在は再公開されました。ありがたい。
まあつまるところ、過去作をやってない前提・かつ初期バージョンでのプレイ感想となります。現在は変わってるところも多いかもしれませんが、ご容赦ください。
一本道RPG、サブダンジョンなどのおまけ要素は有り、王道ファンタジーの皮をかぶった感じ。
というわけで良かった点など。
高みに進み、初心に帰るストーリー
必読に「前半王道RPGです」とあるように、序盤は勇者魔王ものに近いお話が進んでいきます。そして、中盤以降は、お察しの通り少し毛色が変わります。
かなりネタバレがもったいない作品だと思うので、詳しくは追記に格納するつもりですが……。
それでもこらえきれず少し書いてしまいますと。作者様の前作が絡むようで、一部のキャラについてはあらすじのみを浚う形になり、少々追いつききれないところもありはしました。が、最終的にはある程度の全体像もきちんと説明してもらえる作りになっているので安心です。
一歩上のステージに話が進み、階段を登るようにしてお話がどんどん進み、そして最後にふっと始まりに帰ってくるような感じの印象を受けました。中二病が疼いて燃えるところも多かったです。ああいう設定大好き。
物語の背景を語るサブダンジョン
本編の進行とは別に、自分のペースで探索できるサブダンジョンが複数設置されています。一応必読では、無理にクリアする必要はなく分岐にも関係はしない、と控えめに書かれてもいます。
が、クリアした自分としては切実にその時行けるサブダンジョンは全部踏破したうえでストーリーを進めていくことを強く強くオススメしたい所存です!!
何が素晴らしいってこのサブダンジョン、お話のキーが随所に埋め込まれてるんですよ。
メインストーリーがはっきり明記される形のお話づくりだとするならば、このサブダンジョンは黙していてなおプレイヤーが察するようなマップ作りがされています。ゆえに強烈、実に心が刺されます。大好きです。
サブダンジョンでの情報をある程度手に入れると、本編での一部のシーンもなおいっそう光りますので、ぜひに。うしさんわぁい。
ウディタ素材の有効活用
驚かされたのが、ウディタで良く見るデフォ素体の使いこなしっぷりです。
ドット絵だけでここまで表現できるのかと!
決めどころでアップになったり、あえてフレームアウトさせて何とも言い難い感情を表現したり、等々。ドット絵のみでも物を訴えるのには十分過ぎるほどのセンスを感じさせられました。なんとなーく、作者様は映画や映像系のスキルを持ってらしそうな印象。
背景画像の使い方も巧みです。サポートキャラ選択時の雰囲気が、BGMも合わせてとても好き。途中出てくる怪物や異空間、赤赤しいマップの作り方も見どころ抜群です。
もちろん止め絵のみでなく、小さいながらも動きまわるドット絵も見られます。わんわんの殺陣が実にかっこいい。通常バトルでも攻撃スキルにドット絵演出がついていて、コマンド式戦闘がにぎやかに見えました。
ポンコツさん(と名前をぼかそうと頑張ったが逆に怒られそう)の三回攻撃がかっこよくて素敵です。
変わりゆく拠点と人々の話
細かいところで言うと、進行度に合わせてサポートキャラやNPCの会話が変わるのも素敵でした。こういうところがRPGの好きなところでもあったりします。
特に印象的だったのは射撃練習をしている教官の台詞ですね……。特別名前が無いキャラにも、さりげなく個性的な設定がつけられていたり、ぎょっと驚く会話をしていたりするので、ついつい回って話しかけたくなりました。
資料やアーカイブがあちこちに落ちていて、自分で設定を拾っていく楽しさとメインストーリーでドンと明かされる楽しさ、どちらも味わえたのも嬉しかったです。
システム面良し悪し
お話や演出面では大満足だった一方で、システム面でストレスを感じる面もしばしば。
簡単に挙げると、
- ウェイトの長さ(会話・マップ移動・仲間選択)
- 物の売り買いに個数指定や確認画面がない(誤売買が起こりやすい)
- 買う装備品のステータス上昇値などが参照できない
- イベントマスが狭く1マスちょうど目の前をキャラチップが通り過ぎてしまう
- クリア後のセーブを忘れるとおまけ部屋に行けなくなる
などですね。
イベントマス設定に関しては8方向移動のウディタゲーあるあるなので致し方ないとして。噂に寄ればウェイトに調整を加えたバージョンアップ版もあったそうです。なので今は改善されているんじゃないかなー、なんて。
あとシステム面以外だと、ストーリーボスとサブダンジョンボスの強さの乖離が目立ちました。ストーリーを進めるためにサブダンジョンでレベル上げ、という構成なのかなと思っていたので、意外にもラスボスが即撃破できてしまい切ない気持ちに……。
ただこれはRPG慣れしてなくてもストーリーの完結を見届けられるというふうに捉えれば、むしろ良点とも言える気もします。
また、システム面少し突きましたが、助かった点ももちろんあります。
- 後戻り不可の場所でのセーブの警告文
- ダンジョン奥地での帰還選択肢
- 強敵の前には回復アイテム
などですね。難易度の調整は易し目に設定されているようでしたし、逃げの選択も用意されているという点は非常に良心的で好感が持てました。
とまあ、こんな感じで。
衝撃度の高い物語や飽きさせない展開が好きな方や、強烈な個性のキャラが好きな方向けの一作です。
追記ではネタバレ込みの感想など。
以下、ネタバレ注意。
<ストーリーについて>
序盤からなんとなく、王道ファンタジーの勇者魔王ものにしては進み方がずいぶんと変わってるなあと思ってたんですよ。
ミッション形式というか、なんだかミリタリものでよくある進行方法だなーと。
それがまさか真相を突いていたとは驚かされました。「ああ確かに!!」となったあの時の感覚が今でも忘れられないです。
CASE2以降はどうにも主人公のルイーズが置いてけぼりな気がしてちょっと寂しかったのですが、終盤まで行ってなんとなく構造を察してからは納得しました。
主人公→世界設定→世界外設定→主人公という形で話が進んでいっているのかなあと。マクロミクロ的な。こういう、最後に最初へ戻っていく話が好きです。カタルシスが気持ち良い。
やっぱりケンティ周りはどうしても、文字上での理解しかできなかったところがあったので、前作を履修しておきたかった気持ちは大きいです。感情移入あまりしてあげられなかった……。
でも、俺たちのたたかいはこれからだ、と言わんばかりの潔い狙った演出は実に燃えました。
<キャラクター>
とても魅力的なキャラが多いので、中でも気になった子を何名か。
メーリア
一番好きです。
なんていうか、ああいうプライドの高い女性が堕ちるところまで堕ちて行ってしまう感じとか、可愛らしい女の子だったのになあと思わされるところとかが本当、性癖を擽られるんですよね。炎魔法が輝いたあのマップでの台詞がどれも大好きです。
初めはメインヒロインと名前被りして覚えづらいなあと思っていたんですが、いやあ、それも伏線ですよね。量産型ゆえに。ひゅっと息を呑みました。
ビーナイン
幻覚のシーンでめっちゃくちゃ陰鬱な気持ちと萌えとがせめぎ合って大騒ぎでした。
あとはCASE2の展開も心に残ってます。無邪気な戦闘キャラで最恐っぽく見えるのに、搾取利用される側に回ってしまうこの逆転が痺れます。
ミオ
初めて彼女の部屋入って散策した時に思わず二度見しました。衝撃度ではナンバーワン。良い趣味をしていらっしゃる。
同性愛ネタがちょっとべたつきすぎるところはありましたが、これは彼女がというよりこの作品全体のネタだと思うので仕方ないかなーなんて。もちろんキャラ付けと趣味もあるでしょうが、シリアスになりすぎないための手法として使っているんだろうとも思います。
イクスト
男だと思っていたので性別に驚きました。
LUNA-0
男だと思っていたので(同文)
ポンコツ呼ばわりされていたり雑な扱い受けていたり、あの組織の中だと不遇な立ち位置だったのではと思っているのですがどうなんでしょう。死に場所を探す長寿者みたいなのはこう、虚しさが沁みて良いなあと思います。
等々書きつつ、バトルではもっぱらウーナとヒロシにお世話になってました。ハンドガンとクリアフィールド頼もしすぎる! そしてウーナが物理を担当してくれたので、ルイーズは自然と魔法攻撃係に。
私はついつい複数回攻撃に釣られてしまうタイプなので雷魔法ばかり使っていましたが、後になってクリティカル頻発する炎魔法のほうがコスパが良いと気づきました。この辺りの調整も興味深かったです。
とまあ、こんな感じで。
複雑化しそうな設定も終盤できちんと種明かししてくれたおかげで最後には無事についていけましたし、おまけ部屋で改めてまとめてくれるのもありがたかったです。
エログロ鬱展開が心地よい私としては好みの物語でした。