うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「ADELE-アデル-」感想

「立ち振る舞いからお里が知れる」

その発言で品位が知れる前置き。

 

えー、今回はカンテラの喫茶店さんところのフリーゲームADELE-アデル-」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

初めにお断りしておくとこのゲーム、「萌え属性やシチュとしては合う」一方で「話としては合わない」という印象でした。ゆえに、特に後半はかなり批判色強めです。ご了承ください。

 

おまけ含め全クリまで1時間かからないくらいの短編ホラーゲーム。注意書きにある「ヤンデレ」という単語や、召使いという響きに釣られてDLしました。

というわけでまずは良いなあと思った点から。

 

 

独特の操作キャラドットとメルヘン怖いマップ

 

まずドット絵に驚きました。あまり見慣れない形のキャラチップだなーと。蟹移動はご愛敬ですが、等身高めのドット自体は好きです。

マップもまた可愛らしく、あちこちに落ちているお菓子やぬいぐるみ類はついつい調べたくなる魅力がありました。

そして何よりぞくぞくするのはあの地下マップですね! 地下でいいのかな、あの落とされた先のところなんですが……。

ガラッと変わる雰囲気や、某イベントをこなすとまるで責め立てるかのように並ぶあれらこれらに泣きそうでした。やっぱりホラーはこうでなくては。

 

 

多様なイラスト群

 

興味深かったのは色んな絵師さんを起用されている(らしい?)こと。メニュー画面、起動画面、立ち絵、エンドロール、どれも異なるタッチの絵柄でした。ファンアートを取り込んでいるのかも? アンソロジーっぽい豪華さは楽しかったです。

起動画面のイラストが一番お気に入り。

 

 

オリジナル曲とパートボイス

トゥルーエンドに辿りつくと、オリジナルのIA曲が聞けます。元ボカロ民な私にこれは嬉しい。

余談ですが作業用BGM作ったくらいにはVOCALOIDハロウィン曲タグ好きです。

さらに、キャラクターにはパートボイスも付いていて、要所では台詞を臨場感込めて喋ってくれることも。どの方も走り気味の読み方ではありましたが、何よりもあの例のヤンデレさんの狂いボイスと脅すような呼びかけボイスには実に興奮しました。ありがとうございました。

 

 

 

 

さて一方、ちょっとこれはなあと思った点も正直に書きます。

 

 

 

アデルが舞台装置に徹し過ぎている

一応、主人公の位置付けでありタイトルにもなっているアデルちゃんですが。彼女の動き方がどうにも合わないなあと感じました。なんというか、行動理念や傾向が見えてこない子だなあと。

付与されているのは“心優しき箱入りお嬢”という属性だけで、あとはストーリーを動かすためにただ“喋らされている”“動かされている”ような印象でした。

具体的な点についてはネタバレも含むので追記にて。

 

 

あと一歩が足りないラストシーン、雰囲気に入りきれない展開

個人的に、ヤンデレって読者や相手を圧倒させるくらいの狂った雰囲気こそが魅力だと思っていまして。そういう意味で追いつめられる展開自体は良かったのですが、他キャラがその異常さに冷静なツッコミを入れてしまったことでプレイヤーが我に帰ってしまうところが多かったように思います。

また、これも具体的な点は追記に隠しますが、せっかくの盛り上がる狂気シーンや衝撃シーンに対してキャラの反応が薄かったり後に残らなかったりして、「あれ?」と思うこともしばしば。

テンポの良さは大事だとも思うのですが、この作品はストーリー自体の重厚さや複雑さを魅せるタイプではなくキャラ推しのタイプだと感じたので、なおさらこの辺りの心理描写はもうちょっと盛り上がりが欲しかったです。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

謎解きは易しめ、ノーヒントで理不尽なところもありはしますがメタ読みまたは総当たりでなんとかなるレベルなので、攻略自体は楽かなあと思います。エンド分岐もそれらしい匂いを漂わせる選択肢やアイテムが出てきてくれますし。

 

 ハロウィンな雰囲気が楽しめる、グラフィック重視ゲーかなと思います。

追記からは上記のとおり、ネタバレ込みの感想など。

 

 

 

 

 

ネタバレ注意。

 

 

 

 

【エンディングについて】

 

ひとまず先にエンドについて。ノーマルとバッドで別れてはいますが、結末としてはどちらも同じ雰囲気かなと思います。多分生き残るほうがノーマルなのかな?

とりあえず見た順番につらつらと。勝手に便宜上のエンド名つけてます。

 

・突然の死エンド

お菓子の種類を間違えてアデルでメモを見に行くとこのエンド、のはず?

まあ当然、初見ではこのエンドに辿り着きました。初めてジャックの狂いボイスを聞いたのもここ。ときめきました。

 

・ネロ発狂エンド

お菓子の種類を正解してアデルでメモを見に行くとこのエンド。

ジャックの何かしらの精神影響のせいでネロの正気が失われた……んでしょうか。この辺りはホラーあるある不思議パワーですかね。

 

・トゥルーエンド

ジャックが反省するにはまだまだ時間がかかりそうですエンド。

エピローグをどうとでも解釈できるのが良いところですよね。後述するエンドを考えると、来てくれた彼がジャックというイジワルな見方もできてすごく萌えました。

 

・捕獲エンド

諦めちゃったよエンド。ジャック勝利おめでとうございました。

ジャックから逃げるの難しいとの声をちらほら目にしたものの、私の時はダッシュすれば追いつかれないし細路地では引っかかってくれるしでとても楽でした。むしろカボチャ達のほうに苦労した覚えが。バージョンアップか何かで速度緩和されたのかもしれません。ありがてぇ!

 

・入れ替わりエンド

捕獲エンドもそうですが、お守りはストーリー進行に絶対必須だと思っていたので拾わないという発想がなく、エンドを出すのに苦労しました。たはー。

実はトゥルーエンドの時にちょこっと怪しんでいたので、妄想が実現してくれて嬉しかったエンドでもあります。ほらー言った通りじゃんほらー(言ってない)。

 

 

 

【ストーリー上気になったところ】

 

・アデルについて

 

アデルを心優しき少女として表現したいのなら雪だるま殺しのシーンはもっと躊躇わせて良かったんじゃないのかなとか、ジャックが登場して真相を話しだすまで一切ジャックのことを話に出さないのは不自然だなあとか。

ジャックについてはそれこそ、悲惨な事件が起こったから記憶を封じて見ないふりをしたかった等考えられるかもしれませんが、それならそれでそういう雑談が欲しかったですし……。

 

選択肢にあったイチゴシャルロッテにしてもそうですが、せっかく設定として美味しい部分があるのに、伏線が一つもないのがもったいないんですよねぇ。

 

また、ネロが死んだ後もあっさりバイバイして逃げちゃう。いや、ネロの心意気を買って逃げるのを優先したというのはわかりますし、あそこでぐずつかれても困るは困るんですが、ラストで感動し損ねてしまいました。追いかけっこのシーン切り代わりの時にアデルの独白とか動揺とか入れてくれたらもうちょっと違う印象になった気がします。

 

 

 

・ネロについて

 

というよりあのお嬢殺しのシーンについて。殺した後の反応は最高でした。むやみやたらと箱を調べさせて長居させていました。ごめん。最高でした。

しかしながら、欲を言うなら殺す前にもワンクッション欲しかった! 「これはお嬢じゃない……」と自分に言い聞かせる台詞を入れるもよし、「本当に?」という警告メッセージを出して躊躇いの表現をするもよし。キャラの割り切りが良すぎて、あまり残酷なことをしているイメージがなく、淡々と必要なフラグを回収していくだけみたいに思えてしまうんですよねぇ。ここもやっぱりもったいない点でした。

 

あ、ただ、アデルを先行させると死んだり酒入りお菓子を勧めると死んだり配膳方法の謎解きがあったり、暗に“召使いらしい動き”を要求されていたのはジャックの歪みが感じられて実に良かったです。本当良かった。ホラーの仕掛けがストーリーと絡む展開すごく好きです。

 

 

余談。 

ここまでの自分の感想を振り返るとこう、キャラにもっと動揺して欲しかったのかな。なんというか、キャラ達が舞台装置として機械的に求められる的確な動きだけをしているようなイメージがあるんですよね。

 

 

 

・各種設定について

ちょっと考察解釈も含みます。 

 

ジャックの部屋の地図だけネロの見慣れないものだった(よね?)ことと言い、けっこう離れた土地から雇用されたのだと思うのですが、そもそもなぜ彼はあの家に雇われたんでしょう。

家族と言う名の使用人がたくさん居るのなら、それこそプロ意識の高い執事なんて不要だろうし、ジャック家ももっとふさわしい家に彼を送り込むべきだったのでは。

一応、使用人としてはまだまだ未熟な皆の教育係として雇われたのかなあと考えてもみたのですが、それだと旦那様の台詞が合わないなあと思いますし。優しさや愛を学んでほしいっていうのならまずは現状のジャックを肯定してあげるべきだとも思いますし。

 

あのおまけ話はヤンデレる理由作りというか、ジャックの狂気の説明だというのはわかるんですが、アデルお嬢様の心優しさよりも無理やり感の方が目についてしまいました。

 

また、使用人惨殺事件が起こったうえでなお、ネロをさらっと家に迎え入れてしまうのは無防備すぎやしませんか。それだけの事件が起こったならそれこそ他者は家に入れないくらいの警戒度になりそうな気もするけども。

事件以来、使用人と仲良くしたがらなくなったアデルが唯一選んだ相手がネロだった……というのなら恋愛ネタとしては美味しいのですがそうだとしたらやっぱり親が心を開くアデルを見て感激するセリフなどは欲しかったですし。

 

んでんで、発端の、ハロウィンのことを知らされていなかったというのも、磨けば光る設定だろうになあと思いまして。

せっかく冒頭でアデルの部屋のシーンがあるわけですから、10月31日は外に出ちゃ駄目って言いつけられているとか、外のざわめきが館まで届いてきてトリックオアトリートって言葉を聞いてアデルが初めて興味を示すとか、もっと「隠している」感じを出せていたらネロの後悔も映えただろうなあと思うんです。

真相を後に伸ばしておきたいから、これについては無知なお嬢様ってだけで流せるようにさらっとした描写に留めたのかもしれませんが……。あれでは「ハロウィン知らないって無茶だろう」としか思えませんし、逆にアデル家の人々はなぜネロにそんな重要すぎることを話していなかったんだと問い詰めたくなります。連絡網―!ほうれんそうー!

 

 

 

 

だいたい気になるところはこんな感じ。

もしもっときちんとした裏設定や伏線があるのならゲーム内で明かして欲しかったです。と書きつつ、見逃してたり解釈不足だったりしたら情けないのですが。

 

コミカライズされているそうなんですが、漫画ではその辺りの無茶なところの捕捉や伏線の入れ込みがあるんでしょうか。だとしてもゲーム内で完結してほしいしなー。うーんうーん。

 

 

というわけで、好みが被るところもあったのでいっそうもどかしい気持ちになりました。