「いつまでも一緒に遊んでいよう」
時間が有限であるという点において存外難解な命題である前置き。
えー、今回はめいどいんるーむさんところのフリーゲーム「Rotation Girl」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
バトルはオート進行、ストーリーはロジカルにロマンティック、ノンフィールドのメタゲー。RPGと呼びたいし呼ぶべきなんですが、そこらへんためらってしまう理由は後述するとして。
私はクリアまで2時間(ゲーム外時間は無換算)でしたが、人によってプレイ時間はかなり異なるはず。
というわけで、良かった点など。
私達はRPGをしている
“彼女”と“私”の対話をし、ダンジョンに潜り、ボス戦をこなし……、RPGとして為されるべき道のりを歩みながらストーリーは進んでいきます。
ちゃんとRPGなんですよ! ただ、RPGですとお出しされると絶対困惑するとも思うんですよ! この独自性が好き!!
詳しくは文字で紹介するとよりややこしくなると思われるので、公式サイトやプレイヤーさんのスクショなどを参照してもらうとして。
いないとは思うんですが、本作が初めてのRPG体験という方にはオススメしがたいです。一方で、RPGにこだわらず、ゲームというものが好きな方に是非オススメしたい作品でもあります。
なんも伝わる気がしねぇ! いいから気になったらやってくれくださいまし!
おまえは何を言っているんだ
“彼女”の話はいつも難解です。
比喩を含め、暗黙の了解を介し、様々な想いを匂わせて、けれども論理的にさくさくと話は進んでいきます。彼女たちが何を話していて何を模索しているのか、こちらも考えながら読んでいくのが楽しかったです。脳みそ使ってる感じ。
語り口がわりとざっくばらんなところもまた良いんですよね~。彼女たちなりの自然体を感じるので。
登場する敵キャラや、ボス撃破の解法も同様に。ピンと気づいた時の気持ち良さがたまりませんでした。
アンビエントに鳴り続けるBGM
ダンジョンのBGMが(おそらく)アンビエント。ここも大好きです!
なんなら探索前の準備画面の方が勇ましいBGMなんですよね。それこそ軍隊モノとかで鳴りそうな。ただ、プレイヤーが一番気合い入れて準備すべき画面はここなので、曲調としてある意味正しくはある。
戦闘もオートで進むので、ゲームをしながらも遠くに意識が飛ぶような、不思議なプレイ体験ができました。どっぷりと思考の海へ潜りに行ける感じ。
面倒くさがり向けのRPG
RPGと言えば、アクションやシューティング等と違ってプレイヤーのスキルは必要なく、時間をかければ誰でもクリアできるジャンルです。だと思っています私は。
そして本作も例に漏れず、誰でもクリアできます。
ただし、それが「論理的に言えば」レベルなところがミソです。
な~んも考えずに進み続けてもいつかは勝てるんですよ。可能性としてのいつかであって現実的に可能かどうかはさておくとして。
「正攻法めんどくさいから楽できる方法考えるか」の思考ができる人向けのゲームだなと感じます。数学好きさんに向いてるとも言えそうです。偏見ですが。
とはいえ、“彼女”はたっぷりヒントを出してくれますし、チートアイテムやハチャメチャスキルもご用意されていますし、なんなら公式の裏技もあるのでご安心ください。
少なくとも詰むことは絶対にない……と、思います。
フィクションに救われフィクションを愛する方へ
この作者様のゲーム全てに言ってる気がするんですが、やっぱテキストが良い味出してるんですよね~!!!
会話はもちろんのこと、各図鑑の文が最高でした。どことなく諦念や皮肉が見え隠れしてるのがツボなんですよ……。作らなくてもなんとかなる装備やアクセサリもいくつかあるんですが、解説文読みたさに作りました。わーい。
とまあ、こんな感じで。
「なんだこれわけわかんねー!」でぶん投げるプレイヤーと「なんだこれわけわかん……おっ?」でのめり込むプレイヤーと二極化されそうな気がしています。
ハマりそうな方は是非!
追記ではネタバレ感想。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
ネタバレ注意!
死んでも図鑑の情報は残るシステム、最高~!!
結局何が良いってこういうところ、テンポよい遊びやすさなんですよね……。
全RPGに搭載されてほしい。
エンディング
空想にこもる、現実に帰る。
この二択はよく見かけますが、あの第三の選択はとても新鮮でした。空想の外側で現実の内側、みたいな。
本作はすごくロジカルにできていて、だからこそ、反論を重ねていく“彼女”と“私”のやり取りが苦しくもあったんですよ。理想形は見えているのにそれを信じるには破綻が多すぎる……。
ゆえに、エンドロールを見れた時はもう震えました!
フィクションやそれを愛する心、愛した記憶が変質していってしまうことを、私は本当に昔っから恐れていまして、それが怖いがゆえにこうして感想文を書き散らしているところがあります。なので、「否定」だけが全てでなかったことに、ほっと一息つきました。
BGMと入り方がまた良いんだよな~!
ずるい! ニクイ! ステキ!!
元ネタの皆さん
敵キャラの元ネタに思い当たるものが多くてにやにやしました。
プレイした今(2023年7月)からするとかなり懐かしいものも多くて、公開当時との時間差をしみじみと思うなどしましたね……。もう○○年前の作品なんだあ……。
暴走Pに青春を捧げたと言っても過言ではない私としては、例のstageが嬉しかったです。意図しているかはさておき、ひつじの敵キャラが初音ミクの分裂→破壊を思い出させてくれたので……。
公式サイトのあとがき曰く、そもそもこのRotationGirl自体が三次創作とのことで。
キャラ自体は違うから、インスパイアと呼ぶ方が通りは良いのかな……?
元ネタとされるゲーム自体は遊んだことなかったんですが、それでも十分に楽しめました。
“彼女”
人好きされるわけではないだろうことはなんとなし察せられ……。そこに惹かれもする……。
この彼女の語り口が私は好きで好きで。
直接引用してしまうんですが、
「……この程度の応対ですら、けっこうがんばって、意識的にやってるんだぜ、いま」
ここで本当にグッときました。わかっちゃうんだよなあ、この感覚な……。
あと、
「どうも私は、別れ話は感情的にしかできないタイプだったみたいだ」
もいじらしくて好きです。うう……。
余談。
なんとなく寝付けなかった日曜の午前3時に本作をクリアしたんですが、下手に平日や隙間時間にプレイするのではなく、このなんか色々なものが曖昧で感傷的で静かになる時間帯に味わえてよかったなあと思っています。ぴこぴこ。