「みんなを救うんじゃなくて、誰も仲間外れにしない優しさ」
遊ぶときも壊すときも捨てるときも一緒な前置き。
えー、今回はトビー・フォックス (Toby Fox)さんところのゲーム「UNDERTALE(アンダーテール)」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
なんと!
当ブログでは珍しく、商業ゲームです!
今回プレイしたのはSTEAM版・非公式日本語訳版。そうなんですよ、非公式パッチだけ延々と抱えて、本編もセール中に買ったまま詰んで早数年。ようやっと重い腰を上げました。
もうすっかり有名かとは思うので、紹介などは抜きにして、自分のプレイ体験だけメモ代わりに載せておこうと思います。
もちろん、ネタバレ注意!
以下は伏字も隠しもなく全て見事にネタバレします。
初見 Nルート
・トリエル
まず言い訳をさせて欲しい。
トリエルはHP減らしたら説得に応じてくれると思ったんだよ~…………!!!
ここ以降は殺さず進められただけに、罪悪感がいっそう増しました。母を殺してしまった罪を、他の人に優しくすることで誤魔化す、みたいなプレイをしてしまったように思います……。うぅ……。
クリア後に感想などを調べてたらやっぱり、「トリエル倒したプレイヤーは話を聞いてない」「根気がない」といったご意見も見かけて、めちゃくちゃ辛かったんですが……。「後悔してからの二周目が楽しいゲーム」という言葉もあって、すごく救われた気持ちになりました。後者だと思ってたいなあ。
ホームでは反抗期しないとゲームが進まないことがわかっておらず、のほほんと寝たりお話したりしてました。そしたら謎の声(たぶんアズゴア)に起こされました。HAHAHA。
ああいう風にヒントを教えてくれるのいいよね~って思います。
・パピルス
対応方法を全部試そうとしたら意図せず恋人ルートが解放されそうになって大変焦りました。でもまあ、そんなにその気になってくれるならこっちも、みたいな……悪い気はしないかな……みたいな!? そんな気分になってからさらにフラれる二段構え。実に楽しかったです。くっそ~! 好きだ~~!!
私はゲームが上手い方ではないので3回ボコられて無事に見逃がしてもらえたんですが、どうもあれが正規の不殺手段ではないみたいですね? でもなんか、パピルスの人の良さが全面に溢れていて大好きです。
パピルスのテーマ流れ出した途端に何もかもがハッピーエンドへ走り出す気がするところも好き。
電話するのが楽しくて、マップが切り替わるたびに話しかけてました。二回内容が変わるのも良いですよね~。パズル関係全般の、「礼には及ばないぞ」のドヤ顔感がツボです。
・アンダインとモンスターキッズ
初めは対処法がわからず、耐え弾幕と思ってセリフが尽きるまで粘りました。そして私の腕前ではもちろん、かーなーり死にまくりました。
彼女はなんていうか、悪役に悪役であってほしいタイプなんだろうなと思っていたので、おうちに引きこもられた時は申し訳なさありましたね……。モンスターキッズを速攻で助けたのでなおさら、いや~、悪役として期待に応えてあげられなかったけどこっちもやりたくないからなあみたいな……。そう上手いこと善悪って分かれないよねとか色々と考えた想い出。
あと、モンスターキッズにもう一回会いたくてあっちこっちめちゃくちゃうろうろしました。固有名欲しかったなあ。
・マフェットちゃん
トリエルママの言うことを聞きながらここまで進んできたんですよ。つまり、怪しいものは拾い過ぎないようにしていて、当然蜘蛛の巣もスルーしてしまっていたんですよ。
……苦労しましたね~! アフフフフ~。
いっそ諦めて殴り倒そうかとも思ったんですが、ここまで良い子で進んだぶん、攻撃力も足りなくて結局全力で耐えました。ペットのご飯の時間が一番つらかったな~。
でもBGMはここが一番好きです。
あと、お目目を順番にぱちぱちぱちぱちって閉じていく動きがすごく好き。
・サンズ
お食事会があまりに怖すぎた、というか、言い訳をしたかった……いやでもこれホントに言い訳でしかないんですよね……辛い……。
この後の審判のシーンもそうですが、サンズはなんていうかどっからどこまでも全部他人事な感じがして、なかなか打ち解けようと思いづらいキャラだったように思います。
初周からサンズ大好き!って方もいらっしゃるのかなあ。自分は後ろめたさが邪魔をしてしまったように思います……。
・アルフィーとメタトン
謎の鍵を使わずじまいだったので、メタトンが真相を話してもなお半信半疑で進み続けていました。
うーん、信じたくなかったというか……。アルフィーが拗らせまくってる人なのは察しがついたので、自作自演だったとしてもそれでよかったんですよ。私を利用する形であったとしても、それでアルフィーが自信を持てるんならそれでいいんじゃないかなって。助けてもらった時、馬鹿正直に「ありがとー!」って思っちゃってたから、その気持ちを嘘にしたくなかったんですよね……。
そのぶん、逆にメタトンの葛藤が当時は全然わかっておらず。
アルフィーともメタトンとももう少し話せればよかったなあと思いながら勢いに呑まれて駆け抜けました。
・アズゴア
あの決意の槍の演出よ!
アズゴアも決意を持っているからああいう風に、槍もハートと同じく真っ赤なケツイの色で、メタく介入してこっちの選択を封じることもできたのかなあと解釈しているんですが……どうなんだろうね。とりあえず、BGMのアレンジの入り方も含め、すごい涙が止まらなくなりました。
そして泣きながら挑むももちろん死ぬわ死ぬわ。
あれね、死にまくるとちょっとずつ「はなす」の内容が変わっていくんですよ。アズゴアにつらい顔させるのが申し訳なかった……。計11回は死にました。本当にすまんかった。
この段階だとなんでアズゴアがバタースコッチパイに反応するのかわからなくて、なんとなしホームを思い出すのかなーとか色々考えてたんですが……。Pルートでやっと納得がいきました。しかもよく見たら二人とも炎魔法使いですね。細かい……!
撃破後の台詞が一番好きです。「おはなしをしよう」。もう、私はそれがしたくてずっと、ずっとずっとずっと挑み続けてたんだ……!
まあフラウィーにやられるわけですが。
・フラウィー
見逃がしました。ざっくり倒しておく方がすっきりするんだろうし、Pルートが望めない以上は倒しておいても良かったのかなあと今となっては思うのですが。
当時はやっぱり、フラウィーの事情も訊きたいなあと思っちゃったんですよ。なんかな、あれだけみんな優しい世界でなんでフラウィーだけがあそこまで殺伐としてるのか気になったんですよね……。
その辺りはPルートで解決したので満足ですし、「話を聞きたいならこの条件でクリアしてみろ」みたいな流れがスムーズだったので、なんだかんだで良いプレイ体験をさせてもらえたのかなと思います。
2周目 Pルート
・アンダインとパピルス
電話内容がアンダインいる時といない時とでほぼ全マップ変わるんですよ!!!
それだけでもやっぱ、不殺Nじゃなくて素直にネタバレ無しの思うがままプレイをして良かったなあと思います。嬉しい……!
ボケ担当だったパピルスが時々アンダインのブレーキになるのが意外過ぎてめっちゃ面白かったです。特にホットランドはボケツッコミが完全逆転してて楽しかった……!
あと楽しかったのはアルフィーのデートイベント!
BGMの切り替わりがずるいですよね、あんなんもう泣きながら爆笑よ。
それに、なんかアルフィーみたいなキャラも救われてくれるのがすごく嬉しかったです。比べてみるとアンダインやパピルスってまあ、言ってしまえば根は悪い奴じゃないんだぞってひしひし伝わってくるタイプじゃないですか。理想の友達と理想のヒーロー、みたいな。それに比べてアルフィーはそういう魅力的な描写が目に見えづらいようにされていて、まあ一般ウケの悪い人だろうなあとは思うんですよ。嫌な面もよく描写されてましたしね。
それでもアルフィーがメインキャラの一人として救われているところに、思うところがありました。このルートは良い人だけを選んで救うんじゃなくて、みんなを救ってくれるんだなって。ダメなところともちゃんと立ち向かったうえで許してくれる、信頼できる綺麗ごとを見せてくれるんだなって……。
後悔としては、しんじつのラボの犬MIXを私棒きれでなんとかしちゃったんですよー。そのせいか、エンドロールでもスノーフルの会話でも、まだ自我がMIXしてる感じのテキストになってしまい、若干の申し訳なさがありました。いやでも余裕がなかったんだ……。
・エンディング他
エンディングはもうとにかく熱血王道大円満!で気持ち良かったですね~!
「他のものをSAVEすることができる」
からはずっとずびずび鼻鳴らしながらプレイしました。
最後に、寂しかったところとして。
アズリエルとのいせきでの会話で、あくまでPルートで彼らを救ったのはFriskであって、私じゃないと改めて言われたのが心にザクっと来ました。完全にプレイヤーが主人公と切り離された感じ。
いやそりゃそうなんですよ、トリエルさん殺しちゃったし。でもなんか、いっぺんやってしまったことはもう取り返しつかないんだなと……リセットしても罪は罪なんだと……。
そしてこの感情はゲームを再起動した時の彼との会話でなお濃くなりました。
そっか、私は敵なんだよな。それはそうですよね、だってこの後Gルート行こうとしてるんだもんね。
ある意味ここで覚悟が決まって、良かったのかもしれません。
3周目 Gルート
・プレイにおける心構えについて
今まで良い子ちゃんなプレイをしてきたのもあって、どういうスタンスでこのルートに入ればいいのかなーと序盤は戸惑いつつのプレイだったんですよ。
でも心配いりませんでした。最初期にサンズが、「おまえは人間のふりしたバケモノだ」と示してくれるからです。モンスターでもニンゲンでもない、バケモノ、エイリアン、このゲームにおける異物。そんなのと言葉通じるわけないですよね。
というわけでそこからはさくさく、それこそ心を殺して楽しくプレイできました。
Pルートに入るためのヒントにしてもそうですが、このサイコパスと名高いGルートにおいてもゲーム内の誘導は丁寧なんだなあと、ゲーム早々に感じ入りました。
・想定されるプレイヤー像について
このルートに入るプレイヤーってサンズも言ってましたが、「そういうルートが用意されてるからやってみた」人がまずいると思うんですね。自分は圧倒的にこれ。
一方で、「残虐プレイが気持ち良くてやった」とか「弾幕バトルを楽しんでたらこうなってた」みたいなプレイヤーさんもいると思うんですよ。でこのゲームのすごいところは、そういったプレイヤーもしっかり想定して作られてる(と思われる演出がある)ところでした。
まずは残虐プレイやサイコパスRPを楽しみたいプレイヤーについて。彼らが特に気持ち良くなれるのが、スノーフルやアンダイン戦だと思うんですよね。歩けば怖がられ、おまえはおかしいと言われ、さらには完璧な「悪役」になれる! ワルになりたいプレイヤーにとってこれってめちゃくちゃ気持ち良くないですか?
情に訴えかけてGルートへ進むのを止める、という、優しい世界を目指すゲームからのメッセージというのが本願かなと思ってはいるものの。こういう、プレイヤーを悦ばせる側面があるところに、本当の優しさ……どんなプレイヤーも受け入れますよという姿勢を感じます。
また、バトルが楽しくてルート入りしたプレイヤーについて。これはもうあれですね、サンズ戦の難易度が物語ってるように思いますね!!!
あとメタトン戦辺りにも絡めたいのですが、これは後述。
とにかく、心優しき優等生や、共感性の高い感情移入派のプレイヤー“以外”にも楽しみを与えてくれるところが、やっぱり優しいゲームだなあと感じます。
・トリエル
トリエルママを撃破して、自分は間違っていた、みたいなことを言いだした時に私は、「あ、主人公を守りたいっていうのはエゴでもあるってことなのかな」と思ったんですよ。実際は意味が違っていたんですが、ここでそういえばアンテのキャラって皆短所もちゃんとあるよなあと気づきました。パピルスは空気が読めないとも言えますし、アルフィーは前述の通り、アンダインも頭が固いところがあって、アズゴアは優柔不断、みたいな。
こんな感じで、キャラが作り物みたいな聖人君子ばかりじゃなくて、おや?と思ったりする面も用意されているのは、Gルートに入りやすくする導線……なのかなあ……なんて。
・パピルス
貴様が答えてくれれば俺様達は全力で返してやるのに、みたいなセリフに涙腺が崩壊しました。そうだよなあ、コミュニケーションって、誰かと友達になるってそういうことだよなあ……。そしてこっちは言葉の通じないバケモノなんだ……。
パピルスってびっくりするほど暗いところがなくて、底抜けのお人好しで、だからこそこのGルートの主人公にとってはものすごい嫌がられるタイプなのかなあと思います。さみしい……。
・モンスターキッド&アンダイン
あれだけ人間は危ない逃げろって言い続けてきたのに逃げなかったモンスターキッドを、それでもアンダインは一言も責めないんですよ!!!
これまでのルートだとかなり短気なところも見えていましたが、それでもあの子に「逃げろと言っただろう!」みたいな怒り方はしないで、笑ってあたしに任せろと言ってくれるんですよ。もう、こんな、こんなにも頼もしい味方いるか?!
パピルスに対する態度もそうですが、ほんととことん身内想いの良い人ですよね……。
散り際も含め、どこまでも凛とヒーローであったところが大好きです。
なおバトルについては数日かかりました。いやもう、強かった……。矢印攻撃はパターン覚えても手のほうが間に合わないんもんで、もう多少被弾する覚悟でやってました。輪っかの矢印がひゅんひゅん収縮していく攻撃は、むしろスピードアップしてからのほうが楽だったなあ。
ここを雪だるまのかけら二個で抑えられたのはかなり手堅かったと、後になって昔の自分をほめたたえました。バタスコ残しといてほんとによかった……。
・マフェットちゃん
撃破時の演出にものすごく、納得感がありました。
ああそりゃ、ここまでのボス戦でさんざん言葉を尽くしてきて、それでもここに来たってことは、もはやこのプレイヤーには言葉は通じないとゲームの方が理解したんだなという。それでマフェットちゃんの撃破演出は、言葉もなく、ただ瞳で訴えかけるようなやり方になったんだなあと。
アンダインよりこっちの演出のほうが心痛んだって方もいそうな気がする。
・メタトン
そしてすごいのがこの戦い!! この戦いの演出ですよ!!!
新しいビジュアルで、新しい曲で、さあ何が起こるのかというこちらの期待をぜーーーんぶ無視してワンパンで終わる戦闘。この何がすごいって、終わらせることで逆に雄弁とこちらに突きつけてくるものがあるからです。
ここまでのプレイヤーこと私は、物語の変化とかキャラの新しい一面とか、Gルートに入るからこその新しい要素を求めてきたんですよ。でも、このメタトン戦で、主人公と私がさらに乖離したというか……。私にとってはワクワクするNEOメタトンも、主人公にとってはただの障害物で演出すら邪魔なスクラップに過ぎないんだなと解釈しました。
このバトルでなんか、この先の道がどうなるかの覚悟が決まった気がします。このルートをクリアしたその先には、破壊しつくした爽快感じゃなくて、虚無感が待っているんだろう、と。
・サンズ
いや~~~~~~~~~~クリアするまでかなり時間がかかりました! 三週間くらい? プレイ時間だと14時間くらい。
帰宅する→サンズと戦う→負ける→翌日って感じだったので、逆に倒した後の寂しさが凄まじかったです。「さあ今日もサンズと……あ……倒したんだった……」みたいな。いや日常の一環のように死闘をさせられるサンズからしたらたまったものではないと思うんですが!
ともあれ、初見殺し・画面外攻撃・高難易度弾幕、どれも一貫してプレイヤーを諦めさせるための戦いだなという感じがしました。それが、サンズの立場からできる全力の抵抗だったんだなあと思います。
でも最後には、サンズを倒すためには放置するっていうヒントをサンズ本人がくれるじゃないですか。それがもう、しんどくてしんどくて!! ゲームという媒体をしている以上、プレイヤーにクリアされることが目的であるからには当然。それでもずっしりと重く感じましたね~……。逃げられない因果というか運命というかメタというか。
そして何より、これだけゲーム側が抵抗してもなおプレイヤーが頑張ったら勝てるというシステムになっているのが、とても誠実で好きです。
姿を見せずに倒されてしまうところも、サンズらしくて好きです……。唯一死に際だけはプレイヤーの好きにはさせないし、見せてやらないって感じ。
・総括
やっぱり初めに書いたことの繰り返しになりますが、どんなプレイヤーも受け入れるために存在してくれているのがGルートだと感じました。だから噂よりは苦しくなかったし、このあとリセットして再び世界を始めてしまうことで、プレイヤーが第二のフラウィーになる構成になっていて、改めて構成の妙を感じました。
4・5週目 N・Pルート
Gルートの後のPルートはエンディングに変化があると聞いて、プレイ。いやもうここまでやったらしゃぶりつくさにゃいかんって!
今回は選んでいないトリエルママと一緒のエンドへ行ったんですが、なるほど、なるほど……。
ラストでたった一か所変わるだけなのに、こんなにゾクリとさせられるんだなとしみじみしました。この後の展開が目に浮かぶ……だって実際に私がこの手でやってきたことですもんね……。
見事な“再演”のプロローグを感じさせてくれるエンディングでした。
とまあ、こんな感じで。
隅々まで味わいたくなる、そしてさらに壊したくなる、その業が返ってくる、完璧さがありました。でも根幹には優しさの満ちた作品だったと思います。