「百年だって千年だって変わらない、だって愛は永遠だから!」
対象は一個人に限らない前置き。
えー、今回は箱庭のイデア(栄崎)さんところのフリーゲーム「ディアーレイス」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
クリアまでだいたい2時間くらいのRPG。エンドは二つありますが一本道。王道を行き突き落とされ道を逸れ破壊し王道に戻ってくるファンタジーです。
というわけで、良かった点など。
作品の構造上、軽いネタバレは含んでしまうので、初見の気持ちを大事にしたい方はご注意を。
序盤1時間は前座
悪い魔王をやっつけるため、ダンジョンを巡って精霊の力を集めて、仲間と共に――。
と、RPGやなろうラノベで山ほど見た展開が成されるのが本作。これぞ王道、と言えば聞こえはいいものの、やはり見飽きるのは事実でもあります。
が、本作の神髄はその先なんです!
私は「この作者様がこんな安易に終わるわけはない」という信頼があったので、プレイし尽くしましたが……。途中で投げたり止めたりしがちなプレイヤーさんは、序盤で評価を決め打ちせず、是非ちょっと踏ん張ってみてほしいなーなんて。
愛に性別なんて!
主人公を男女どちらにするか選べる!!!!
この古き良きRPGなノリ、好きなんですよね~。選ぶときに先んじてビジュアルを見せてもらえるのも嬉しいし。ツインテかわいいし!
そうして、主人公が目覚めて初めに出会うのは、勇者さまのことが大好きな女の子、クレイア。
驚かされたのが、彼女の反応が主人公男女どちらであろうと全く変わらないところ。男女選べるとなると“変化”に着目しがちですが、本作はあえて“変わらない”ところが興味深かったです。ここに理由がちゃんとあるのも好き。
無口主人公と言えばおなじみ、会話は選択肢で進行します。基本的には真面目で冷たい感じか、小粋で軽い感じの二択。
性別も選択肢も、劇的に作品の結末を変えるわけではないんですが、それでもこういう要素を実装してくれるのがとっても嬉しいです。なぜなら、遊んでいて楽しいから!
属性が最重要の戦闘バランス
作中でも属性についての注意が重ねられる通り、本作は魔法と属性がキーとなっています。体感は、通常攻撃<<<弱点属性魔法。
「かばう」コマンドをかなり意識させられる戦闘システムでもありましたね~。特に終盤はラディに常に盾を張ってもらわないとろくに動けなかったように思います。
面白かったのは、スキルの付け替え!
回復魔法を全員に装備させるビビりなプレイもできます。
そして弱点属性と魔法の付け替えの兼ね合いで、パーティ内での役割がダンジョンによって入れ替わることも。まあ魔法職に盾はさせられないので、自由自在とはいきませんが……。
一生懸命レベリングしても勝てなかったボスが、装備品を変えるだけで雑魚、なんてことも。弱点って大事!
金欠しがち、と見せかけて?
敵が金を落とさない仕様なので、稼いだり工夫したりしないと武具揃えはうまくいかなかったですね~。
同梱テキストにある通り、ちょっとコツを掴めば楽なように設計されているんですよ。その時点で、ゲーム設計がかなりハイクオリティだということはわかるんです。ただ、自力で気づけるかというと私にはやや難しかった。
また、前述のとおり弱点耐性をつけるのが最重要なので、アクセサリ枠がそれで埋まるんですよね。なので、自由に見えてそんなに自由ではない、みたいな印象でした。
でもですね!
戦闘中に使用するアイテムが一切ないので、メニューはかなり整頓されていますし。武具は進行度に応じて強いものが合成できるようになっていますし。バッサリ捨ててあるシステムがあるからこそ、ゲーム全体は洗練されています。
こういう無駄のない設計は大好きです!
選べるエンカウント率
本作はランダムエンカウント。ですが、敵との遭遇率はメニューからいつでも変更することができます!
前述のとおり、バトルは属性重視なので、レベリングはそこまで重視されていない……はず? こういう装備の付け替えが重要な戦略RPGに慣れている方は「敵を避ける」、通常攻撃連打でクリアできるRPGを遊んでこられた方は「通常」くらいの頻度で進めていけばちょうどよいのではないかなと思います。
今はお金集めたいのに~、とか、綺麗なマップをうろうろしたい~、とか、プレイヤーのプレイスタイルに合わせてもらえるの、ありがたすぎる~!
キャライベントの見逃し防止機能もそうなんですが、とにかくプレイヤーにとって優しいゲームなんですよね……。余計な苦労をしなくてよい。そのうえで、試行錯誤する楽しみは残ってる。良き……。
美麗でファンタジックなグラフィック
驚いたのが、マップの美麗さ!
とにかくどこ歩いても目の保養になるんですよ……。毎秒スクショ撮りたくなるくらい。歩くだけでも楽しいとはまさにこのこと。水に波紋が走ったり、ちらちらと輝く演出があったり……。
ただ、見栄え重視には難点もありまして。
わざと塞いである通路や気になる凹みがあると私はついつい、そこに何かあるんじゃないかというゲーマーな思考をしてしまうんですよね……。よって、ゲーム的な意味が欲しい方には合わないかもしれません……。
でもね、ここでもう一度主張させてほしい。
もうすごいんですよ、宿屋がちゃんと風呂トイレ別で、店にはきちんと居住スペースと察せられる部分がついていて! 間取りや部屋割りなど実際にあのマップでゲームキャラが過ごしているというリアルさを感じたい方には、感激もののはずです。
気になる他作品キャラ
私自身、こういうのは先に知っておきたいタイプなのであらかじめ書いてしまいますが……。本作は、同作者様の他作品とがっつり繋がっています。
初めはゲストキャラみたいな扱いだと思っていたので、想像以上にしっかり食い込んでいて驚きました。一応本筋の部分は本編で説明があるので、未プレイでも問題はない……のかなあ?
とりあえず、他作を履修している方とそうでない方とでは、黒幕への感じ方などなどがかなり変わると思っています。逆に聞いてみたいかも。
とまあ、こんな感じで。
公式の攻略テキストもゲームフォルダ内に同梱されているので、RPG慣れしてない方も遊んでみてほしい気持ちです!
追記ではネタバレ感想。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
ネタバレ注意!
なお、作品の都合上、同作者様の他フリゲ『サイレントフィリア』のネタバレも含みます。ご容赦!
真相の考察や解釈もあります。
ストーリー
悪魔と魔王
老いと死から人間を解放する赤目の悪魔……。
ユリーゼとユリウスじゃないですか、やだー! いやではない! 好き!!
『サイレントフィリア』の隠しエンドからこの世界に繋がる感じでしょうか。
ユリ双子が人間をどんどん人形化していく
↓
箱庭世界を手に入れて興味がそっちに移る
↓
箱庭世界の人形で遊びまくる
箱庭世界で死んだ人形を疑似復活させる
↓
アズライトが生まれる?
(新しく人形を作ることはできないだろうから、偶然それっぽいのが生まれたのを作り替えた?)
↓
アズライトを失敗作として放棄
↓
アズライトが魔王化
修行してトレースの魔法を人格交換の魔法に変える
↓
世界の人形たちがユリ双子のために人形劇を繰り返す
↓
魔王アズライトが勇者を壊して人形劇の終幕を計画
直接魔王が勇者を殺すだけでは人形劇の台本内なので外部(クレイア)を利用して勇者を根本から消すことをたくらむ
↓
クレイアと魔王をトレース&虐殺
↓
ゲーム開始時へ
という流れ、かなあ?
エンド2に入る時のユリゼウスの「(王は)聖剣を扱えぬゆえ魔王を倒せないということになっている」、周回プレイでギャーーーーッと叫びました。「ということになっている」……!!
話は変わって。
赤目と聞いたとき、まず主人公を思い浮かべたんですよ。主人公って立ち絵だと目の色が、緑?萌黄?な感じですが、マップでのキャラチップだと真っ赤なんですよね。これも何か伏線だったのかな。いまいちピンときていなかったりします……。
小ネタ
相変わらず状況別の差分の作りこみが上手いこと!
・城下町のアズライトに話しかけているかどうかでラスボスのセリフが変化&本の世界イベントがカット(魔王な口調でも言ってることは同じなのがまた良き)
・エンディング1を見た後にまた魔王戦へ行こうとすると止められる
・トレースをあえて使わないとゲームオーバー
・魔王&レイス戦で先にレイスを倒すとゲームオーバー
・男女選択でラディの血縁関係が変化
・セイからの名前呼びを嫌がると「ゆーしゃ」呼びのまま進む
などなど。こういうの探すのも選択肢があるRPGの醍醐味ですよねえ。
エンディング
無事に魔王アズライトを倒し、エンドロールを眺めることのできる、本作のトゥルーエンドですが……。
これ、とんでもねえバッドエンドじゃね!?
いやわかるんですよ。この世界の人々は害されずに済んで、ユリはループエンドをずっと楽しめて、クレイアは勇者さまの本当の願いを知って、ハッピーエンド。この世界のゆがみを正す=神を殺して世界を滅ぼす、なので、間違ってはいない。正しくはある。
でも、怖くはあるよね~!
知ってしまったら最後、って感じはするよね~!!
こういう世界観、好き~!!!
『サイレントフィリア』も、もっと言えばこの作者様の作風自体、こういうエンディングが特徴ですよね……。ハッピーなはずなんだけどそうと言い切れない。プレイヤーや、一部のキャラだけがそのヤバさを感じ取っていて、でも止められない。
この、絶妙な苦みの後味が大好きです。
ちなみに作者様のTwitterを見たことがない方は、下記の公式宣伝ポスター(?)をぜひ。
『ディアーレイス』Ver2になりました。
— 栄崎 (@xxeisaxx) 2019年4月29日
新規イラストや追加イベント等、色々追加されてます。
すでにクリアされた方もセーブデータを引き継いで追加イベントを見れるので、よろしければ遊んでください!
DL⇒https://t.co/YzzNEzXh5X pic.twitter.com/EuA9BjN2c0
キャラクター
『サイレントフィリア』関連人物
この子達のこと、他の『サイレントフィリア』のプレイヤーさんはどの段階で気づいたんだろう? 向こうはホラー探索でこっちはRPGなので、両方プレイしている方がどのくらいいるのか気になるところです。
ユリゼウス
魔法屋のほうで「この子知ってる!」となりました。王の時はスルーしちゃったんですが……。あの「ぬ」とか「よさげ?」とかの口調で、ピピピピピーーーンと。
とりあえず私は、見た目よりもセリフで判断しているようです。はっはっは。
ゼラフィーネ
ゼラに至ってはクリア後におまけ部屋で気づく始末!
そういえばね! フィーネでしたね!! ずいぶんと美人さんになっていたので全然気づきませんでした……。ふええ……。
選択肢で10回断ってみるのはきっとあるある、なはず。
アズライト
結局、彼は、誰なんだ……!?
初めは彼こそフィーネの立ち位置だと思ってたんですよ。フィーネが転生して男性になったパターン。人形師だし、見た目もフィーネ寄りだし。紡命のカップルの子はユリ双子のはずなので、黒髪青目はフィリアの子のほうかなと。
ただ、この世界のゼラフィーネは存在していたので……。そうなると、誰!?っていう。
「奴(ユリ双子?)から失敗作と言われた」という記述から考えて、ユリ双子がフィーネを作ろうとした時の失敗版ということなんでしょうかね……?
クラードかもしれないんだけど、だとしたらフィリアも一緒に作りたがるはずだよねと……?
うーんうーん。彼のエピソードをもっとたくさん聞いてみたい次第です。
人形劇登場人物
主人公
まずは女、続いて男でプレイ。
別に性別で展開が変わることはないんですが……。でもプレイしたかったんです。だって、細かい違いとか、堪能したいじゃないですか! おまけ部屋で両方のスチルも立ち絵も見れるんですけど、でも、せっかくだし選んだことない選択肢も見ておきたいじゃないですか!
そんなわけで2周しました。楽しかったー!
1周目は真面目にやろうとして、かなり冷たい主人公になっちゃったんですよね……。なので少し罪悪感もあったんですが……。
いやまさかこの対応の方が自然だとは思わないじゃん!?
色々知って、ひょえ……となりました。ラディやセイからしてみれば、主人公がクレイアに合わせてあげてたって感じにみえるのかなあ。
クレイア
ヤンデレと見せかけてちょっとテンプレとは違うところが味わい深かったです。
細かいところ失念したんですが、勇者が他のキャラと接触?恋愛フラグ?しかけた時に、クレイアが割って入らず受け入れていたのがすごく意外だったんですよね。あれ、ヤンデレなのに邪魔してこないんだ? って。
で、おまけ部屋で納得しました。クレイアはむしろ恋愛対象になる気0だから、あのシーンはスルーして当然……!
キャラの言動が一貫してるの、最高でしたね……。
立ち絵の向きについてもおまけ部屋で初めて気づきました。ほんとだ……。ひえ……。
でも、だからこそ私の名前を呼んでありがとうと言ってくれたシーンが沁みるんでしょうね。
兄がいる設定ではあるそうなんですが、果たして今のクレイアは何代目なのかも気になるところです。3代目と4代目の話をしているからといって5代目とは限らないのが本作の怖いところ。
ラディ
女勇者でプレイしていたこともあって、「女性だけの宿に男性が1人同室ってけっこう緊張しそうだな……真面目な方っぽいし……」等々考えていました。なんなら、かわいいもの好きイベントでも「キュートな男性なんだあ」とスルー。そして、セイが加入したころに初めて、「女?!?!?!」と。
気づくまで長かったな~……。片目隠れで赤髪で、と好みドストライクな外見だったのでなおさら衝撃がすごかったです。しみじみ。
ラディがクレイアを心配してあげてる会話がなぜか印象に残っています。仲間から主人公への感情はよく見えるけど、ラディやセイがクレイアをどう思ってるのかはあんまり出てきてなかったからかなあ。
ともあれ、義務感や責任感で自分がつぶれちゃわないように、ほっとする時間をなんとか作ってほしい子だなあと思います。しみじみ。
セイ
彼に対してはかなり申し訳ないエピソードがありまして!!
「殺しちゃった方が早いのに~」みたいなことを言う会話で、私、思っちゃったんですよ。「あーなるほど、さすが前世が前科者なだけあるな……」と。この年で不穏な発想が出てくるのはやっぱり、血筋とか魂とかそういうところから来るのかな、と。
結果が本の世界のあれです。
もう、私。私!!
なーにが「やっぱり」じゃい!!!
私自身、ほの暗いものや病んでるものは大好きなんですが、それとこれとは別と言うか……。レッテルを貼ってる自分に気づいたときの罪悪感がえぐかったですね~……。
あのセリフはこういうプレイヤーもいると想定してのものなのかなあ。いやでもさすがに、単に年若くとも賢いし合理的な発想はできるみたいな描写だとは思う、かな……。
いずれにせよ、なんだかまともに顔が見れなくなっちゃった子でもありました。ごめんな……。
ちなみにセイは本の世界でのセリフが好きです。自分の欲しいものややってほしいことの本質を、明確に言葉にするのって、本当に難しいと思っているので。ブレずに自分が欲しい対応はこれだと明言できる賢さが、むちゃくちゃ感服でした。
と、こんな感じで。
余韻がたっぷり残るゲームだけあって、たくさん書き残したい感想があふれ出ちゃいましたね~……。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!