うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「バケモノハイツ」感想

「人間なんてろくなもんじゃない、近づいたらダメだよ」

でもほどよい距離でなら仲良くなれるかもしれない前置き。

 

 

えー、今回はSEPTET(ぬぬぬ)さんところのフリーゲーム「バケモノハイツ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

www.freem.ne.jp

 

全てのエンドを見て2時間半くらい。エンド分岐あり、追いかけっこあり、びっくり要素は(私の主観だと)無し。

探索ホラゲ寄りのプレイ感で鬱展開もありますが、怖がらせることよりも、心を通わせることを重視しているADVだと思っています。

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

ホラゲーのようで鬱ゲーのようであたたかな

 

子どもの落書きのようなマップに、顔面だけ実写のキャラクターたち……。そして目と表情筋の死んだ主人公。

見るからにTHE病みな作品なんですが、いやいや。不気味さを煽る演出も素敵ですが、それだけでなく本作の神髄はその向こう側にもあると私は主張したいのです!

だが、こう書く時点ですでに若干のネタバレ!

ああもどかしい……!!

 

ともあれ、すごく、すごく優しい物語でした。

「苦しい」から目を背けないまんまで進むから、メンタルやられる演出も鬱展開もあるんだけど、だから綺麗な景色も信じられる。そんな、繊細な作品です。

 

 

 

キレキレなセリフ

 

ダウナーでしんどい雰囲気の中でも、たまーに漏れ出すキレッキレのツッコミ。ここ、すごくツボでした!

不気味はシーンはしっかりおどろおどろしくする一方で、テキストにパワフルさがあるので、中だるみがないんですよね。切ないシーンは切なく、明るいシーンは明るく、緩急がしっかり。

特に中盤からは会話劇が増えていくので、より楽しかったです。

 

 

 

重ねる謎と読ませに来る真相

 

本作はまず、人間関係がかなり複雑。様々な謎や事件が関わってきます。

が!

この情報の開示の仕方がすごく読みやすい!

匂わせるところは匂わせつつ、物語が進んだらしっかり語り聞かせてくれる。かといって、設定集を読み上げるみたいな冗長さもなくて、まさに人間ドラマ。

等身大で、心の中の柔らかいところがぐちゃぐちゃに叩きつけられる。でもその果てに、綺麗なところが取り出されてキラキラと輝く。そんなお話でした。

 

 

 

スクロールを駆使した丁寧な演出

 

基本操作はウディタのデフォルト通りなんですが、要所ではマップが横スクロールに切り替わります。

この演出がまた良いんですよ~! 視線誘導って言うのかな? 進んだ先にあるものがどれも衝撃的で、印象深くて……。ストーリーが秀逸なのはもちろんのこと、その魅せ方にもやはり丁寧な工夫がなされている印象でした。

ショックも感動も、どちらもぶっ刺さります。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

複数エンドがあるものの、エンディングを1つ見てからが本番と言いたい!

もちろん、END1だけで余韻たっぷりの終わりを迎えるのも、それはそれでアリだとは思います。ですが、全部クリアした身としてはやっぱり、堪能しきってほしい気持ちがありますね~!

 

 

追記ではネタバレ感想。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

 

 

 

 

 

ネタバレ注意!

 

 

 

 

 

~葵編~

 

追いかけっこが辛かった~……!

暗視マップも辛かった~~……!!

ものすごく”フリーホラゲ”らしい作品だったなあと感じます。爆発的にフリホラが流行ってた時期の。

なんでもありなグラフィック表現が本当に良い!!

エンドへ向かうステンドグラスみたいなマップが本当に好きです。あそこだけシルエット表示なのも本当に良い、ハイセンス……。兎の塔でカメラが動いで視線誘導が起きるところも好き。見た目の演出が丁寧。

 

「なんでSecondから?」「5人?」といった疑問が残るのも、初手からプレイを続けたくなる謎が用意されてて上手いな~と感じます。

「人殺しの子」で葵が人殺しと見せかけて、子(息子)なのも巧み。

 

 

 

~雪ちゃん編~

 

パワフルガール! でも、どこかドライ。

途中までは雪ちゃんってこんな印象だったんですが、色々明かされてから、ドライというより諦めてる(ダメでも仕方ないなという過去の経験が積まれてしまっている)のかもなと思いました……。校内でのアイドル(虚像)っぷりといい。敬語キャラなのも(年齢差はあるにしても)心のバリアがどこか出ているのかな、とかとか。

 

サイコ寄りだったマップが現実寄りに変わったのも然り、色々な意味で一味違うなと思わされたパートです。

 

クマさんのYES・NO表現がかわいい! 葵編でもキュートだなと思っていたんですが、顔グラがつくことでなお魅力が増しました。「(首を横に振る)」とかじゃなくてあえて「……」で顔グラだけで示すところが、センスあって好き!!

 

 

 

~紫苑編~

 

紫苑編始まってから、真相の解き明かしが加速しましたね~。

「おばけ」「小鳥遊家の人間関係」「父の事件」と複数の謎と伏線を、この短さの中で、かつわかりやすく盛り込んでいるのはすごいなと思います……。

 

一応自分用にまとめておくと、

 

鳥(旧姓:虎)家

・母→殺害される

・父→母の死を苦に酒とDV、葵紫苑との心中未遂、飲酒運転でゆうちゃんを轢き殺し自分も死亡

・猫→父の飲酒運転の被害者

・親戚→紫苑だけなら引き取るが葵は無理

・葵→自分は父の飲酒運転のきっかけを作った(と思い込んでいる)。自分さえいなければ姉は親戚筋で楽に生きていけるはず……

・紫苑→父の心中未遂を葵に気づかせたくない、葵がいないと生きるのが辛い

 

こうしてまとめるとなお、紫苑と葵のどっちにも動けない感じが際立ちますね……。

 

すっごく単純化したら父が悪いってことにされてしまいそうな気がするんですが、そうされてほしくないんですよ。そういう、誰か一人だけが悪いっていう都合の良いことは、なかなか起こってもらえないし。人の感情に対して生々しく誠実な本作だからこそ、なんか、単純化したくないなって。だから、だから紫苑の回想で葵も一生懸命、「しょうがないよ」って言ってたんだと思うんです。

いないとは信じたいんだけど、もし未プレイでこれを読んでる方がいたら、誤解しないでもらえたらなあと、思いますね……。

 

 

 

 

END2

 

ワニ×紫苑のカップリング人気すごそう。でも存在自体がネタバレになる歯がゆさ!!

 

「言って楽になる」の道が絶たれている紫苑がマジで辛い。

愚痴の形でもいいから、何かしら吐き出せるところがあればもっと、と、思っていて……。ワニさん達はきっと、紫苑のはけ口になってくれるくらいに優しい人たちだと思うんですが。でも、死者に頼ることで「辛くても生きる」の道が薄れてしまうのもそれはそれで……。

うわあああああ!

 

こういうね、「どうにもならなかったね」に納得のある作品、大好きです……。

 

「こんなお姉ちゃんいらないよね」の時にもう涙が弾けてしまって。

そんなことあるかよ!!!って。いるに決まってるじゃん!!!!!!!!!って言いたかったんですよ。

からの、ワニさん……!!でした。

言いたいこと全部言ってくれる。ありがとう。ありがとう。

 

 

 

END3

 

気になって見ちゃったんだよなあ~……!!

第一声が「……あー……」なのと、ずっとずっと「だよねえ」のノリで続くところが苦しくて、好きです……。生々しいんだよね、モノローグの温度感が……。

感情が弾けるEND2と比べて「何にもなくなっちゃった」空虚さがあるのも、このエンドを見る道のりを考えると、やっぱり、「だよねえ」でした。

 

 

 

END4

 

エンディングを全部絵と背景でわからせるところが最高に好きです。

言わないでいてくれる雪ちゃん。それでも窓が開く音。揺れるカーテン。直前の扉の本のタイトルは「いかないで」。

結末は察するに余りありますね。切ないね……。

 

 

 

END5

 

このエンドを見ようとなるとどうしても、END1の道のりを辿りなおすことになるわけですが。

見返すとかなり色々繋がって、伏線回収がすごく気持ち良かったです。

買い物袋散らかして倒れてる女性は紫苑さんだったのかなあ……。

 

葵と雪はもちろんのこと、このエンドでの紫苑がすごくすごく気になります。

一人で仕事と葵の介護をこなしてるのは察せられるにしても。葵のためだと言って強くいられてるのかな。でも、その葵とお話できないままで、ずっと強いフリは続けていられるのかな。わかんないよ……。

葵も葵で、紫苑の足を引っ張りたくないっていう一番の気遣いと優しさを、自ら捨ててしまっているわけだし……。

うぅ~……。

 

個人的にはEND4よりもしんどい結末だと思いますし、このエンドは「あえて」酷い行動をしないとたどり着かない道のりな気がしているので、しんどさが割増しなのもわかる気はします。

 

 

 

END6

 

最後に見て良かったなあ……。

私ね、このエンドのブタさんのセリフが大好きなんですよ。「ハッピーエンドになるってわけじゃ~」の。

もっと言うと私はこの作品の、痛みや苦しさから逃げないところが好きなんだろうなあと思います。逃げようとしたって逃げきれないし、受け止めようとしたって一人だと潰れちゃうし。

 

だから、ね、舐め合いでもいいじゃないですか。

これほど綺麗に作中のキーセンテンスが繋がることある!?

ぽたぽた泣いてしまいました。フィクションなんだけど、人の心や中身に対して、すごく誠実でありのままに描いてるなあと思うんです。

 

どのエンドもこのエンドの説得力を増すための反証になっているような気も。

ED曲がピアノなのもまた、絶妙な演出ですね。このこの。

 

 

 

 

 

 

 

なんだかな、もう、クリア直後と言うのもあって気持ちが溢れてるんですが、とにかくここまでたどり着けてよかったです。

おかえり。