うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「Circus Show of Fancy Dolls ~Your Desire~」感想

「上から目線? とんでもない、こちらには目すらございません!」

おまえが勝手に下へ落ちてっただけな前置き。

 

 

えー、今回はアングラ人鳥歌劇展さんところのフリーゲーム「Circus Show of Fancy Dolls ~Your Desire~」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

1周10分程度、6+αで合計1時間くらいのノベルゲーム。舞台を同じとした短編集とも言えるかも。

あなたの人生のお悩み、ひいては願いごと、このサーカスが叶えます。

 

novelgame.jp

 

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

 

訓話について考えること

 

考察重視を銘打たれている本作ですが、謎を解くというよりは教訓話に近い読後感でした。しっかりした倫理や哲学の一歩手前、思春期に一回は通っておきたい思索の道。

この手の鬱ゲーって、①救いが欲しいプレイヤーを裏切ったり②人間の悪意だけフォーカスして単調だったりするものもたまに混ざっているんですが、本作はそういった意地悪さ以外にも一味利いています。

ネタバレになるといけないので詳細は追記に隠しますが、シビアな現実も受け入れている作品でした。

 

 

 

 性別にこだわらないがゆえこだわるキャラデザイン

 

ReadMeに「本作では性別が明記されていない奴は大体無性別」と記載がある通り、本作のキャラは女性とも男性とも取れる見た目の子が多いです。

こういう男女どっちとも取れるような見た目のキャラがぶっ刺さるタイプの方、けっこう多いのでは? ツインテ男子とか、超常存在ゆえに性別もないとか、作品名を出してしまい恐縮ですが『宝石の国』とか。 

作者様がこの面に重きを置かれているのが文面だけで伝わってくるので、もし失礼や違反があったらもちろん訂正しますので……!

 

ともあれ、見た目の口調にギャップがあったり、そもそものデザインがすごく魅力的だったりで、ツボなキャラが多かったです!

特にハクマの見た目は本人の性質がわかりやすくてお気に入り。

 

 

 

ビビッドでサーカスなグラフィック

 

タイトルにサーカスと名のある通り、登場人物はみんなサーカスの劇団員。実質短編集のようなゲームなので、プレイしてくるとだんだん“お決まりの流れ”もわかってきます。

が、それでもスチルが出るたびに目新しく驚かされました

斬新な構図! サーカスならではの小道具! シリアスなテーマによく合う緊張感!

背景画像も原色&カラフル、派手で奇抜なサーカスの雰囲気が感じられて好きです。

 

 

 

起動ごとに異なる画面

 

私は隙間時間でちまちまフリゲするタイプなので、何度も何度もゲームを起動することになるんですが……。そのぶん、起動画面の豊富な演出が楽しかったです!

世界観を感じさせる注意書きから、狂気溢れる文字羅列まで様々……。こういう初めの第一歩から凝ってると、没入感が高まって良いですよね。しみじみ。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

最後に一個だけ短所にも触れておくと、誤字脱字はかなり多め。1ルートに1つは必ずあります。

でも、それが気にならなくなるくらいにはいい味出してる作品ですので、併せてご了承を。

 

サーカス舞台の話や、キャラが魅力的なフリゲ、ダークアングラものが好きな方にオススメです。

 

 

 

追記ではネタバレ感想。

 

 

 

 

ネタバレ注意!

 

 

嘘:黒

ゲンちゃんのキャラ好き~!

ゲンちゃんの身体が軽すぎたり気配がなさすぎたりする描写がいくつかありましたが、これも何かに繋がるのかな?

苦手なやつと相対する時に嘘つかないのはむしろ自殺行為~、のくだりものすごく好きです。私もこれに気づくまで苦労したクチなので……。なんならまだできないし……心がお子様……。

話の展開として、「優しい優しい君の周りの人間はみーんないなくなりましたよかったね!」という胸糞を想像していたので、違う方向性で驚きました。因果応報でもないような……?

せっかく周りの環境は良いのに自分ばかり見つめている主人公が、結局自分だけ見て終わるお話だったように思います。

 

キサトさんの時蕎麦好きなくだりが、その場のノリで出たアドリブって感じで楽しかったな!

 

 

 

彼氏:赤

自らの想いに気づかせてから堕とす! シンプル胸糞!

成したことが大きければ大きいほど愛の証明になるという考えにわりとなりがちですが、愛は日々の小さな積み重ねでもあるように思うので、後半は主人公がシュカンに上手く転がされちゃったねーという気持ち。口八丁っぷりがさすがの一言。

仕事も上手くいってない、の言及がミステリっぽくて楽しかったです。

 

シュカンのスチル好きです! 空中に浮かぶブランコと原色の背景、そしてシュカンの呆れ顔。明るい空間のはずなのにすごく冷たくて、すごく……好き……。

 

 

 

会社:白

ハクマかわい~!!

リボンがうまく結べないっていう表現もよきです。パチッと留める型のリボンもあると思うけど、あえて結ぶ型にすることで、成長の機会がもらえてるのかも。

前二つと比べて、主人公の周りの環境のどうしようもなさがちょっと作り物っぽくは感じてしまったんですが……。そのぶん、ハクマが主人公に、哀れみ?を見せているところはさじ加減の妙を感じました。

現状維持が一番楽だし馬鹿だよね、というお話。

 

「デザイナーなのに、自分の人生デザイン出来なきゃ変な話だろ?」

ここの巧いこと言ってる感好きです。スクショ撮っちゃった。

 

 

 

赤ちゃん:青

 

ここで明かされる「生者じゃない」事実!!

そうなんだ~!!!

私は上から順番にプレイしたのでここで知ったんですが他の順番で遊んだプレイヤーさんはどう思ったんでしょうね? 案外、デスヨネーってノリなのかな。

 

私自身は、「子を成すために快楽がある(∵快楽が無いと子を産むなんてリスクを誰も取りたがらない)」派なので、そもそも「快楽に負けるせいで子が産まれる」が前提となっているこのルートは読む際にワンテンポ必要でした。

語り口がやや独特だったけど、要は、考えなしに性行為して堕胎するのどうなの問題ですよね。せっかく生者じゃないという設定がここで明かされるのなら、産まれる前の子をどこまで生者と扱うか問題にシフトしてほしかった気持ちもあり。ただそれ言い出すと尺が足りないか。

 

ReadMeに抵触してしまっていると申し訳ないんですが……。

アオちゃんのことを見た目だけで完全に女の子だと思っていたので、まさかの一人称「俺」にびっくりしました。誤解されやすい引っ込み思案ちゃんが俺なの、ギャップがあって良いな~……。

 

シャーデンフロイデ:他人の不幸は蜜の味 独語 シャーデンは損害や損傷 フロイデは喜び

retribution:報復

 

 

 

人殺し:桃

 

「人を殺してはいけないのはなぜ?」という本ルートの問題提起と、主人公の動機である「なぜ私は人を殺したいのか」が、同じ「なぜ?」でリンクしているところがなんだか好きでした。

トウレンの前半の問答は、こう、よくある切り口だなあと半眼で眺めていたんですが……。

ラストの展開でウオオ!と拍手してしまいました!

いやあ、やっぱ一味違うんですよね~。信頼できる。てっきり自殺だの因果応報でトウレンに殺されるだのが来ると思っていたので、「てめーらで勝手にやってな!」という結論はすごく気持ち良かったです。切り口が素晴らしい!

 

そういえばトウレンは桃蓮だったりするのかな? エンドロールのキャスト表示が回転するせいか、読み切れずじまい。

 

余談ですが、新書の『なぜ人を殺してはいけないのか』は中学生でもわかるレベルの良き本なので、この手の問答がお好きな方にオススメです。

 

 

 

友達:緑

 

ビジュアルが大優勝~~~~~!!

釣り目さんなところといい、とっても好きです。

 

てっきりイマジナリーフレンドみたいなものだと思いながら読んでいたので、ガチに実在する友達でびっくり。

頭の回転が弱い人=自分で選択するのが苦手な人、という印象なので、「あなたの選択です」をひたすら強調するこの展開はとても納得でした。人任せにするって、選択するためのエネルギーを全部人様に押し付けてるってこと。今後それを全部自分でやらなきゃいけないなら、そりゃ生きるの無理だよね~っていう話。

 

『人形』設定がここで飛び出てさらにびっくり。てっきり、こう、ファンタジック不思議パワーによる幽霊とかそういうものだと思い込んでいました。

エピローグを見るに、エンバーミング集団なのかな?

ということでおまけのパスワードへ……。

 

 

 

??:黄

 

スクショ撮っといてよかった~~~!

初回でタイトル画面のボタンに気づいていたからよかったものの、気づいていなかったらだいぶ手間だったと思います。私えらい。気づけるように作成している作者様が一番えらい。それはそう。

 

キャラ同士のわちゃわちゃが見れて嬉しい~!!

アオちゃん絡みがとってもほのぼのしました。ハクマが真っ先に褒めるというのも良い! ハクマ自身が、成長を喜ぶタイプの子(っぽい)からなおさら人のことも褒めたくなるんだろうなあ……。

こういう面が見えるからこそ、お仕事モードのアオちゃんのクールさがより輝きますね。惚れ惚れ。

 

色んなキャラが増えて、舞台としても奥行きが増したルートでもありましたね。

そして、やっぱり名前が気になる……。ロセールスガールは売り子さんなのでわかるんですが、カナリレスターがわかりそうでわからない、ぐぬぬカナリアから来てはいるんだろうけど。

カナリレスターは主人公に警告してくれてたのかな~。

 

『キグルミ』と『人形』の違いも明かされずじまいだったんですよね。とりあえず製法が違うんだろうとは思われるんですが。

『人形』が死体の流用で、中身も外側も願いを叶えに来た人の末路……? 『キグルミ』の7人は既存の死体や機械に彼らの人格?を注入?してるとかかな……。

結局名前だけだったボスの存在も気になります。

 

いつもにこにこでリーダー役なキサトが実は狂信者風な思考回路。王道ながら、良き真エンドでした!

 

reverie:幻想、空想

 

 

 

小ネタ

 

余談ですが、ふりーむの紹介文にもモールス信号の小ネタが入っているので、こういうの好きな方は是非。

https://www.freem.ne.jp/win/game/18563

 

ノベコレだけで手に入るバッジにも2進数が仕込まれているんですが、あれ、数字を10進数変換して色順でパスワード打ち込みしても特に何もなかったんですよねえ。

もっと何か隠し要素があるんだと思うし、イエローチケットルートがかなりボリューミーで魅力的だったので、何かあるなら読み解きたい気持ちはあるんですが……。

いかんせん、頭打ちになったのでここまで!