「彼女はまっすぐ君を見ている、そこにしか答えはないから」
自分がどう動くかの決定権すら持てない前置き。
えー、今回はめいどいんるーむ(ヨシカワ)さんところのフリーゲーム「Flyend」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
ウディタ版、ブラウザ版、ツクールMV版が存在する本作。私はウディタ版で遊びました。んで、その後ブラウザ版へ。細かいテキストが微妙に異なりますが、個人的にはウディタ版の方が皮肉が効いてて好きです。
ゲーム紹介は簡潔。
詳しくは彼女に聞いてください
フリゲ好きだとこれだけでビビビッと来る方、案外多いんじゃないかなー、なんて。実際私は即DLを決めました。良い出会いだった……。
とはいえやっぱりあのプレイ後の爆発的な気持ちを共有していきたい気持ちもあるので、ここは熱く語らせて頂きましょう!
ネタバレするのが激しくもったいない作品なので、未プレイの方は詳細を彼女に聞いてから本記事を読んでくださると幸いです。
というわけで、良かった点など。
プレイヤーの脳内と会話するゲー
まあ、メタゲーなわけですが。
まず冒頭、説明の仕方がすごい面白かったんですよ! 「説明いる?」じゃなくて「初めまして」で状況を把握されるところ。ゲームなんだけどゲーム的ではない。こちらの言葉で状況を察するという、“会話”をしている。ゲーム数秒ですでにすごく楽しかったです。
また、さらに驚かされたのが初手無視の選択。「きみが単によくわかってなくて~場合が怖いな」という、あれ。好きだな~!!
あの配慮を利かせられてるの、独りよがりではなくてきちんとゲームとしてプレイヤーとやり取りしようという誠実さを感じて好きです。
雑で無気力で熱いロマンが味わえる
このグラフィックのゆるさ、たまんね~!!
グラフィックの良さでDL数が決まるといった噂も立つフリゲ界隈ですが、やっぱ私はこういうゲーム“も”大好きなんです。
直線すらフリーハンド、フォントも使わず手書きの「にゃーん」。
これよ、これこれ。これでも作品の味として大いに通じて許される、こういう何でもありのフリーゲームっていうジャンルが私は大好きです。
うっかり話を壮大にしてしまいましたが、戻して。
実際、このグラフィックが手抜きだって言いたいわけではないんです。エンディングの演出とかマジで熱いし。部屋の小物とか深読みしたくなるところあるしね。
この無気力なグラフィックがそのままこの作品の世界観になっている!
ここを私は熱く述べたい!
というわけで、今度は主人公たる“彼女”にスポットを当てましょう。
ヒコーキってロマンじゃん
プレイヤーに全てを説明し、求められるがままに行動する、彼女。
まず私、彼女のキャラがすごい好きなんですよ~。
「~ものな」「~だろうか」みたいなどことなく独白っぽい口調とか。状況説明する時の、考えながら喋ってるんだろうなって感じる「・・・」とか。
作中で意外とトンチキでシュールな状況になることが多いんですが、それに対しても淡々と進んでくれるところが好きでした。「ハリポタ薩摩藩寮」とか「鶏が爆発したぐわー」みたいなトンチキ具合好きな方には刺さるところ多いと思います。
彼女がああなった背景を考えるとちょっと違う気もするけど、まあ……ダウナーで頭の回転が速い女の子が好きな方にオススメ?
そもそも、飛行機がヒコーキって表記な時点でロマン。
この感覚、通じると嬉しい。
久しぶり、あるいは初めまして
実際のゲームの中身について。
経営ゲーと言えばいいのか、数値管理ゲーと言えばいいのか……。決められた日数までに目標達成するタイプのゲームではあるはずなんですが、このやりくりの仕方もまた楽しかったです。
ひらめきがいる、し、ひらめかなくてもとりあえずできること全部やってたらなんか起こる。難易度がちょうどよかった。ちゃんとゲーム内にヒントが出てるのも良いし、もしわからなくても最悪、同梱テキストファイルに全部答えが書いてあるのも親切。
ちなみに私は、最難関のエンドだけお力を借りました。くぅ~。
「あれ?」って思う挙動には必ず理由がある。
この無駄のなさが気持ち良かったです。
とまあ、こんな感じで。
1プレイ数分の、お手軽なゲームですので、気になった方は是非まず彼女に会いに行ってみてください。
追記では特に重大なネタバレ込みでの感想。
ネタバレ注意!
タイトル
FlyとFrendでFlyendなのかな?
FlyとEndでFlyendなのかな。
前者だとしたらプレイヤー私を好意的に見てもらえていて嬉しいし、後者ならエンディング通りでとても綺麗。作者様のブログなど拝見したんですが、ぱっと見は由来など書いてなかったんですよね……。案外両方だったりして。
本作のテキストがすげー好きという話
謎解きめんどくさいでしょ、の流れニヤニヤしちゃいました。
ああいうRPGあるある、作業としての謎解きもそれはそれで様式美ではありますが。陸生ウニにしてもそうで、なんか、こう、作品全体に「ご都合でなんとかなっちゃう」っていう痛烈な皮肉が効いてて痺れます。
本編で死ぬキャラクターのスピンオフのくだり、あれすごい好きなんですよ。「あまり」許容されない、という言い方が特に好き。
手に入れるアイテムの説明文にしてもそうですが、この作者様、言葉に厳密で物語に誠実だなあと思います。
彼女
メタゲーって、わりとこう、プレイヤーが怒られること多いじゃないですか。どうしてこんなことをしてしまったんだ、みたいな。
でも本作の彼女はそうでなくて……どちらかというともっと悲痛な……どうしようもなさを抱えていて、だからこそプレイヤーである私もハッピーエンドへ手を伸ばそうとがんばりたくなりました。
初めは「この知的でダウナーな感じ好きだなー」くらいだったんですが、ゲームを繰り返すごとにどことなく、寂しさが積み重なっていき、そしてエンディング1つ迎えて爆発しました。心が。
なんか、たぶん彼女、諦めてるんでしょうね……。
独白型の喋り方になるのも、こっちが能動的に会話を試みれないので、まあ当たり前なんですけど。なんかな、本当に色々と納得が多いゲームなんだよな……。
だから、うん、空を越えられて良かったです。
エンディング
ヒコーキエンド
初めてたどり着いたのがヒコーキエンドだったんですが、あの時マジでむせび泣いたんですよ。あともうちょっとなのに!!!!!って。
こう感じられる演出になってるのもすごいよなあ……。あの画面で……。
空が割れる演出、シンプルだけど刺さって好きです。
勇者エンド
一方、勇者エンドは苦しかったです。ヒコーキエンドは悔しくて、勇者エンドは苦しい。
彼女がねー……。「ごめん」になっちゃうところが、辛かったですねー……。でもそうならざるをえないよなあ。こっちが、なんも言ってくれないから。
最後の音も、まあ、そういうことなんでしょう。ああ……。
とことん独りなの、空しくて好きです。余韻が味わえて。
何事もなせないエンド
何事もなせないエンドの最後の二択、初めはかなり困惑したんですが、何周もした後だと色々と深読みしたくもなりました。
何もしない→彼女にどちらの未来も与えない→寄り添わない→人間ではなくキャラとして扱っている→それってつまり君は彼女をこう見ているってことだよね、みたいな感じなのかなー、なんて。
選択ができなかったのは、なんでなのかな。
ゲーム内の私があの二択のうちどちらも彼女に言いたくはなかったから、だと私は解釈しています。が、単に、どっちだろうが変わらないしこの道に来た時点でもうお前なんもする気ないだろ、というこれまた痛烈な皮肉なのかもしれません。
どうであろうと、どういう意図で仕込まれたのかなと考えること自体が楽しい。
何もできなかったけど、深みのあるエンドでした。
ブルーローズエンド
初めて崖崩れイベントが起こった時に、私、気づいてたんですよ! ループに!
でも増えてるのには気づいていなくて!!
それで普通に何事もないエンドにたどり着いてしまっていました。くぅ~!! あとちょっとだったな~!
でも逆説的に、自力で全クリできるゲームという説得力がかなり増しているってことでもありますよね。あとちょっとでいけそうってことは。
というわけで、謎解き?好きさんにもますます推して参りたい好きゲーになりました。
エンディングの自体はね、もう、求めているものにようやく届いた。それだけです。それだけで、もう、心がフルに満たされる内容でした。
BGMの演出が最強。好き。
にしても、エンドロールが無いゲームというのも新鮮ですよね。
この辺もあえてなのかなあ。
まとめると、濃厚なプレイ体験でした!
この祈りが叶って良かったです。