うそうさ〜第二号室〜

フリゲ!鬱展開!ヤンデレ!万歳

同人ゲーム「ファタモルガーナの館アナザー」感想

「その日が前日と呼ばれれば既に必ず終わりが定められ」

未来から観測する過去ほど歯がゆいものはない前置き。

 

 

えー、今回はNovectacle(ノベクタクル)さんところの同人ゲーム「ファタモルガーナの館アナザー」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

この作品をネタバレ無しで語るのは無理だと判断しました。

一応、追記でない部分は、せめて致命的なシーンはぼかしているつもりです。それでも念のため、本記事は『ファタモルガーナの館』および関連作を既プレイの方に読んでいただければ幸いです。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

 

プレイヤーの読後感を考えた構成

 

ファタモル本編を想定すれば察しはつきますが、本作もかなりの鬱展開です。なにせモルガーナの過去編です。スチルも圧倒的な画力で臨場感と残酷さを見せてくれるものが多く、心がぞりぞりと削られていきます。好きです。

 

で私としては、ファタモル本編が希望のあるエンドで終わることもあり、こっちはもう救いようのない鬱展開だけが来たとしても驚かないという覚悟で読みました。そして確かに、どうしようもなくただただ閉じていく、もどかしくやるせない悲劇がありました。しかも質が素晴らしく、緻密に隙も無く積み上げられた展開です。

でも、鬱だけじゃなくて。あのハッピーエンドをあのタイミングで持ってくるのが上手いし、そこから舞台裏へも心理的に行きやすいし、何よりボーナストラックが素晴らしかったんです。

メインエピソード中盤で暗い話と前向きな話が交互に出ていたこともそうですね。プレイヤー心理や、陰と陽の雰囲気をうまく使い分けて、希望も絶望も見せてくれる作品作りだったなあと思います。

要は、各エピソードの解放タイミングが上手い!

 

 

 

人間味のある魅力的なキャラクター達

 

中にはかなりの変わり種として描かれているキャラもいます。とても同じ人とは思えない悪逆の徒もいます。それでも、悔しいことに奴が辛い目にあってよかったとは思えないんですよねえ。

やっぱり、キャラに一貫性があるところがうまいなあと思うんですよ。思考がブレても葛藤の理由に納得ができて、出自や来歴も後天先天問わず、一人の人間が立っている感じ。悲劇が起こってしまう土壌がしっかり固められていて、説得力を持って襲い掛かってくるようなお話でした。

 

基本的に悪役の背景事情を後出しするのは反対派なのですが、こと本作においてはものすごく旨味のある幕間だったなあと思います。

本作の幕間は悪役の言い訳じゃなくて、きちんと、解答編なんですよね。どうして彼女が、という引きを作って、盛り上がりを落ち着かせつつもプレイヤーが離れないような構成づくりをするために用意されている……ここ本当に美味いなあと思います。

先に終わりを知っているからこそ突き放して見れる部分は有りますし。逆にだんだん感情移入していってしまったらもうドツボで、やっぱり終わりを知っているからすごく苦しい。この苦しさが好きです。

 

 

 

豊富なサブエピソード

 

さて、私はあくまで本作はモルガーナとヤコポの物語のみだと思い込んでいたのですが、蓋を開けてみればサブエピソードとして思わぬキャラの語りが読めてとても嬉しかったです。

特に新キャラについては他作品でちょこちょこ名前や設定だけ出されていたので、やっと出会えて感無量でした。

そして、そして胸が詰まって涙がぼとぼと流れてきたのはあの、最後のお話ですよ! ファタモルをプレイしてきて、皆のお話をこうして見続けてきて良かったなあと震えた瞬間でした。本編の後味があれでサブエピソードがあれというのもすごい、プレイヤー心理を熟知してますよね……!

メインエピソードだけでもかなりのボリュームですが、サブエピソードもかなりの満足感が味わえました。

 

 

 

 

とまあ、隠しながら?語れるのはこんな感じ。

鬱もキツイが希望も大きい、読んでよかったなあと心から思える話です。

 

ネタバレガッツリの話は追記から。

 

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伏字を何一つしていませんネタバレ注意。

 

 

 

メインエピソード

 

ヤコポがいっそ思い出の中の奴隷の青年に成り代わって壊れたモルガーナを騙してしまえばいいのにと! 彼の生真面目さを一瞬恨めしく思ってしまうくらいには、ものすごく誠実で苦しくて素敵なお話でした。やらないからヤコポなんだよな……。

ヤコポはなまじ何でもできてしまう能力があるからこそ損をしている性格ですよね……。本当にそれこそメルのように無力で振り回されるだけの人であったならここまで苦しまなかったし、でも救われたモルガーナという少女もいなかったし、うーんうーん。

 

印象的だったのはやっぱりラストのマリーアです。

文だけならまだ、耐えられたんですよ。唇を噛み締めはするだろうけどきっと耐えれた。でもスチルが出た瞬間、心が限界になって変な声が漏れました。本当にあれは、泥で窒息するみたいなしんどさがあって、凄まじかったですね……。

最後にヤコポの独白を入れて少しの希望をちらつかせたうえであの展開、というのがまたあまりにも皮肉で、ここまでひたすらに痛めつける展開を作れるものなのかと(誉め言葉です)……。そういう展開が好きでそういう傷つく感情が好きだから読んでるので嬉しいんですが、本当に、厳しい話でした。

 

全体的にこの話って、「知らなければ良かった」で構成されてる気がします。

前述のマリーアのシーンもそうで、ヤコポのマリーアだけでも助かってくれればという独白を知らなければまだ苦しみは半減した気がしますし。モルガーナの独白からも、神の子であり続けられたなら良かったとありますし。ジェレンと領主の幕間も、きっとなくても本筋は進んでいって、悪を倒したという達成感が得られたのかもしれません。まやかしとはいえ。

なので、砂漠みたいな話だった、という気持ちです。

知らなかったら、初めから救いのない荒野みたいな話だと思っていれば……。心から喜び、満たされ、読んでいるこちらもふんわりと笑顔になってしまうシーンが丁寧に描写されているからこそ、空虚が深まっていくお話でした。

 

一方で、「知らなかったから傷ついた」部分も多くあります。街の誰もがジェレンの本性を知らなかった、グラシアンはヤコポの奮闘を知らなかった、マリーアはヤコポの葛藤を知らなかったしヤコポはマリーアが友を想っていたことを知らなかった。

 

 

不器用な人たちの掛け違えが上手いなあと思います。

そしてそれらのほとんどが、誰が悪いというものではなくて、でもずるいとかやりようがあったとか感じたくなる余地はあって……ただただ苦しい。誰もに非がある話なので、誰かを悪人にしたり憎んだりこいつが嫌いだと言えてしまう余地さえありますし、それをしたほうがきっと読後は楽なんですよね。このやるせなさを押し付ける場所があるから。

でも、みんなに見せ場と考えがあって、欠点すらも一貫した行動原理に繋がっていることが読んでいて伝わってくるから、安易に悪認定することも難しくて……ただ暗澹とした気持ちを抱えるしかない。よくできている、話だと思います。この空虚さが大好きです。

 

 

 

サブエピソード他

 

アフターハッピーエンド

 

新規立ち絵!と叫びました。えっ、ミシェルの立ち絵は新規ですよね? セブンスコートではジゼルだけでしたよね。好みの男の体現でした。

二人が並ぶと本当に美男美女で……画面の麗しさがすごい……すごかったです。

 

内容としては、何度も何度も、特別なことが起こるわけじゃない話だっていうことを繰り返されるのが逆にすごく響きました。そう、それを私は待ち焦がれていたんだ!

二人が終始いちゃついてカッコイイこと言うわ可愛いこと言うわで、もう見てて照れつつ泣きながらクラッカー鳴らして読んでましたね。デート中の選択肢でセーブしようと思ったらできなくて吹き出しました。思わぬ臨場感。意図的なのかシステム上の関係なのかはともかくとしても楽しかったです。

ミシェルの大学生なのに初々しい女慣れしてない感じと、きっちり欲はあってジゼルのこと欲しがってる感じ、言ってしまえば童貞感がたいへん宜しかったです。萌えました。ありがとう。ありがとう……。

 

 

 

舞台裏・ボーナスステージ

 

まずマイナスなこと書きます。ご了承あれ。

他作品の感想等書く時も隠しきれていなかったと思うのですが、私はあまりモルガーナの扱いが好きではありませんでした。

皆を悲劇に落とし込んでしまったけれどそれ以上に責められない事情があった――このようにモルガーナはほとんどの舞台裏で擁護され、愛され、救われます。でもそれを言うなら他のキャラだってそうで、みんな擁護される余地があったしみんな非や責もあったじゃないかと思い……要は過剰に特別に免罪されている感じが苦手だったんですね。

で、今回の舞台裏のノリも正直あまり好きではなくて。ヤコポの扱いがあまりにあまりで、公式不憫枠だとしてもあれだけ頑張った彼がギャグ時空でもあの扱いというのはほんとうに悲しかった。それがウケを取るうえでおいしいポジションだとしても、どうしてもね。

 

だから、ボーナスステージがあってくれて良かったなあと思ったんです。

モルガーナだって被害者の立場だけど一切の瑕疵がないわけではない……というところに言及してくれて安心しましたし、ヤコポがようやく一歩進んでくれた幻を見せてくれましたし。誰かは悪い、でも悪くない、という緻密なバランスを守ってくれたことで、作者様への信頼もさらに加わりました。舞台裏でジェレンがちょくちょく話していたみたいに、片方下げたら片方上げる、みたいな感じ。

あれがなかったら私はもやもやしてお話を閉じていたと思う、ので、ボーナスステージまで含めて各キャラへの扱いの配慮を考えられていたんだろうなあと思います。

 

あと良点として、水にジャーに関して。普通元凶側がそれを言うと怒ると思うんですが、言ってるのがジェレン達なのでむしろ納得して笑ってしまいました。そうだよね、君達はそういうタイプだよね!

 

それと、魂の話について。

ファタモル本編のモルガーナの決め台詞がずっと脳裏にあって、どれだけ幸せでも二度と巡り合えないんだろうなあと悲観的な考えをしていたので、可能性の世界を許してもらえて、ほっと一息つけました。こういうところも優しい描かれ方だなあと思います。

 

最後に。舞台裏のイメオンに惚れました。口説いて欲しい!!!

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

悲劇と幸せな物語のバランスもよいし、おまけも本当にたっぷりで、やりきってくれたなあという気持ちと見届けられてよかったなあという気持ちが込み上げるファンディスクでした。