「すでに終わった世界でも、人の命までは終わらない」
そして繰る手がある限り物語は続く前置き。
えー、今回はGreen Pochetteさんところのフリーゲーム「Espresso」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
フリーシナリオっぽく作られている、分岐有りのRPG。
公式ページには「わりと暗いRPG」というポスターがあるとおり、全体的に暗め。ただゆるかわなキャラグラとほのぼのとした雰囲気のキャラのおかげで、陰鬱とまでは行き過ぎない、ほどよい距離感のゲームでした。
サブキャラクターとして前作『GreenTea』の二人も登場します。なかなか良いところをもらっていくキャラなので、プレイ後でもプレイ前でも前作を齧っておくとちょっと嬉しいかも。
というわけで良かった点など。
ダンジョンごとに代わる同行者
基本的に初登場キャラのほとんどは一度仲間になってくれます。1ボスに対して1ゲストキャラが加入する、という感じ。
ゲストキャラは万能アタッカーからちょっとイロモノ風のスキルなキャラまで多種多彩。仲間キャラとして使えることで、そのキャラの特性や得意なこと苦手なことなども伝わってくるような気がしました。
さらに魅力的なのは、彼らが彼らの意志で行動している、というのがわかるところかなあと思います。マップをクリアしてキャラと解散した後も、ゲストキャラはどこか別のマップへ行ったり拠点に戻ったりしていて、話しかけると毎回異なる反応が返ってきます。ここが、各々の考えで動いて各々の物語を作っている、キャラが生きている感じがして素敵でした。
会話分岐もかなり豊富ですよ! ダンジョンの攻略順によってもちょっとした会話の違いが出てくるようですし、ボスを倒したらとりあえず拠点に戻る、で色んな子達のお話を聞いてみることをおススメします。
主人公以外のキャラの装備は外せないようになっているところや、スキル本やステアップアイテムは主人公専用になっているところも有難い仕様です。種を使った直後に離脱案件は実に切ないものがありますからね……。
どこからでも攻略できて、一点に収束するシナリオ
ある程度の制限はかかりますが、基本的には右左後ろ前どこからでも攻略できるシナリオになっています。上手く進めないなと思ったら別方面から攻略するもよし、ふと思い立って来た道を戻るもよし。ストーリーの進行度にはよりますが、行き止まりや訪れたダンジョンには必ずキャラかアイテム等があるのも楽しかったです。
また、これに合わせてシナリオ面でも変化が。とあるキャラクターを助けるかどうかが大きなターニングポイントですが、それ以外でもちょこちょこ会話分岐や軽い違いが出てきます。
エンドの結論自体は確定なので、ノーマル/バッドといった極端な違いではなくあくまで差分な変化ではあります。が、こういう細かい会話をしっかり集めていきたい私としてはとっても嬉しかったです。
探索で強化されていく主人公と拠点キャラ
ゲーム開始時に主人公の性別を選べる!
ここがまず嬉しかったですね~。男女のキャラデザの違いとか見るの好きなんですよ。おかげで、エンドが変わらないと知っていながら、某一枚絵見たさに2周してしまいました。ふふふ。デザイン以外での違いはない(はず?)ので、純粋に好みで選べれるのも良いところです。
レベルアップの概念がなく、落ちているアイテムでどんどん強化していく形になるので、綺麗なマップを楽しむ余裕も出ます。
拠点に居る仲間キャラのできることがどんどん増えていってくれるのもわくわくしました。何より、こうやって何度も話しかけていると愛着がわくってものです。かわいい!
大味ながらも本筋は易しい難易度のバトル
最低限詰まないように作られてはいるものの、攻撃ミス率がかなり高めだったり、魔力切れが起こりがちだったり、そこそこバトルは大味の調整です。
ただ、ある程度キャラのスキルを駆使する必要がある戦略性や、武器が貧層でもそこそこ殴れば勝てるゆるい難易度などはとても好印象。基本は簡単すぎず難しすぎず、一部のボス戦ではうっかり負けてもちょっとだけ強化がもらえるというプレイヤーに優しい仕様でした。
形容詞付きのキャラネーム
「可愛いサニー」「無口なハナビ」などなど、ほとんどの登場人物には肩書がついています。
この形容詞の使い方がね、また良いんですよ!
例えばサニーなら、かわいいって言うのは見た目だけじゃなくて素直になれない想いも含めてなのかなとか。
一つ単語が引っ付くだけで不思議と想像が広がっていくので、どんどんキャラが深まって見えてくるんですよねぇ。さりげなく良い演出でした。
また、ステータス画面のちょっとした文章もさりげなく良い味出しているので必見です。色々なところで見られるキャラ会話も魅力的で、エンドの演出も含め、自然とキャラクターに愛着が湧くように作られている作品だと思います。
合わなかった・惜しかった点
一方で気になるところとしては、
復活可能アイテムとキャラゲーシステムの合わなさ
でしょうか。
全滅してもその場でコンテニュー可能というシステム自体はとっても優しくて、良いと思うんですが、ダンジョンの攻略具合によってキャラの会話が変化していく関係で、コンティニューしまくって突き進むとちょっとした会話を見逃してしまうんですよね……。
どちらも良点なぶん、噛み合わなさが少しだけもったいなかったかな、と思います。
とまあ、こんな感じで。
キャラクター重視、色んな性能のキャラを使うのが好きな方や、シリアスな世界観でほのぼのな会話、魔王に負けた勇者の話、などに興味を惹かれる方にオススメです。
追記ではネタバレ込みの感想や攻略など。
同作者様の他フリーゲーム感想↓
ネタバレあり!
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攻略について
ゆるく2周しただけなので細やかなところまでは確認しきれていません。
内容はだいたい会話分岐やイベント分岐中心。
攻略質問は受け付けませんが誤情報の訂正は大歓迎です。いえーい。
・ルート
大きく分けて
「左・上・上・上」のルート
「右・上・上・上」のルート
があって、どちらかのルートを最後の上手前まで進めると、
「前・前」のルートが解放される感じ。
「前・前」の解放と同時にポストと奴隷商人とバルバパパがいなくなるので、彼らの会話を見たい人や、キヨを助けたい人は注意。
ボスを倒す前に別枠でセーブしておくと安心だと思います。
左ルート:主人公のスキル、ランみか兄妹、マタギ
右ルート:装備、ハルにゃんちゃ、リセエンヌ
が充実してる印象。
ただ主人公のスキルはサポート重視なので、行ったり来たりする手間を考えないなら、左右左右と交互に攻略していくほうが進みやすいかも。
交互に攻略すると、左右前3か所のイベントが時には一度に発生するからどこから進めればいいのかわからなくなってくると思うんだけど、一方に特化して攻略してしまうとお話の設定が後出しになったりサブキャラの会話を見逃したりするので、やっぱり交互攻略を進めたいなあ。
希望の地でのセリフはマタギとリセエンヌどちらか一方のものしか聞けないので、もし片方がお気に入りなら先に攻略しておくのをおススメしておきますね。
台詞はそう長くないんですが、ちょっとした一言が嬉しいこともありますから!
悩んだらとりあえず、
奴隷は真っ先に助ける
ボスを倒したら拠点に戻る
でだいたいのイベントや会話は回収できるはず。
・マップ
妖光の湖は見逃しがち。
左ルート行って橋渡る前に下の暗がりへ。
敵はいませんし素材と頭防具も貰えるので、希望の地に着いて休息したら真っ先に行くのがおススメ。
あと右ルートの途中、ランみかボスを倒した辺りのマップで下へ行くと、スタート地点の牢獄へ行けます。そこにも素材とボスがいるので要チェック。
・見捨てるか見捨てないか
<ヒャヤッコを見捨てた場合>
2回目の牢獄ボスが魔法攻撃タイプに(ドロップは全ステータスup)
ラスダンでのボウオンイベントやマタギとの会話が無くなる
<ヒャヤッコを助けた場合>
2回目の牢獄ボスが物理攻撃タイプに(ドロップは攻撃時50%確率毒付与)
希望の地で色んなミニ会話が聞けたりラスダンで色々あったり
<キヨを助けた場合>
最強装備が作れるようになる
キヨの衣装替えイベントがある(ハナビに服作ってもらう)
ラスダンでイベントが増える
助けない場合は装備が作れなくなってイベントが無かったことになるだけ
でした。
やっぱり助けたほうがストーリー上の盛り上がりも熱いですし、助けないとただ単に無かったことになるだけのパターンが多いので、単純に損かなと思います。
あっでも、牢獄ボスのドロップアイテム説明文の「とても残酷なアイテム」の意味は見え方が変わって面白いなあと感じました。どちらも同じ文なのに、見捨てた場合だとプレイヤーが(酷い)という意味に聞こえるし、助けた場合だと自業自得という意味にも聞こえる気がします……。こういう心を刺しにくるところ大好きです。
キャラの名前について
やっぱり、形容詞付きのお名前がすごい好きです。
一番思うところがあるのは自立した彼なんですよね。初対面で魔王との決別かと思わせておいて、終盤ではみんなと一緒になれないという寂しさもにじませてくるの、本当上手いし辛いし沁みるし最高じゃないですか? この言い切れない何かが詰まっている感じ大好き……。
称号の変化でキャラの成長や想いの変化が垣間見えるのも良いですよね。激情の、勇敢な、明朗な、無垢な、月虹の、辺りが特に好きでした。どのキャラのことかわかるかな!
あとは、ともこに驚きましたね。
あの見た目でまさかの女性名、そしてまさかの和名。あの星自体色んなものが飛んでくる世界だったようですし、何より天使が落とした子なら、異世界勇者的なポジションってことかなあとぐるぐる考えていました。
名前といえば、片足ポストってまんまですよね。そのことに彼の例のイベント辺りで気づく遅さでした……。ポスト&レターって感じなんでしょうかね、由来は。
ついでにバルバパパはてっきりあの丸いうにょうにょした外国アニメのあれかと思っていたんですが、綿菓子という意味だそうです。確かにそれっぽい子だ。
リセエンヌもググって見たらフランス中等部生徒の女性形とのことでした。着々と知識がついていく。リセエンヌは歩くとドットの後ろ髪のキラキラがわさわさ動くのも好きでした。
ストーリーについて
ラスボス周りの展開がすごかったですねぇ。
根本の設定は意外にも壮大だったので、けっこうぎょっと驚かされるところもあったのですが、なんだかんだでキャラへの愛着が物語を輝かせてくれたお話だったなあと思います。
初めはあの選択をハナビもキヨも全く躊躇わなかったことに驚きましたし、それを主人公が止めなかったことにも驚いていました。そんなに軽やかにこっちへ来て良いのか、という気持ち。
でも、よくよく考えるとこの二人の子達が一番親しくて思い入れがあったのってきっと主人公なんですよね。ハナビにはポストもいただろうけれど……。
実際二人が来てくれてプレイヤーの私もめっちゃ嬉しかったですもん、泣きました……。そりゃ一緒に来てくれるなら止められない、一緒に居たいです。だから、あれは死が軽いとか決断の重さとかいう次元の問題ではなくて、天秤にかけるまでもなく単純に二人を引き止めるものはないってことだったのかなあと思います。
もっと言うと、他の仲間キャラがどの子も各々の人生を歩んで、主人公と離れて自分の意志で活動していたのに対して、あの二人は“どこへ行っても一緒にいてくれる”というところが大きかったのかなー、なんて。そのために仲間キャラはゲスト扱いってのがあったのかもしれないとまで思えてきます。
ポストが何度もハナビと一緒にって言ってくれてましたしね。
その他雑感・プレイログ
1周目のプレイでは男主人公・ヒャヤッコとキヨを助けるルートで進んだんですが、いやあやっぱり熱く優しい展開で泣きましたね!
マタギがヒャヤッコを力不足だって言わずに、ここで使命があるんだぞって、君のやるべきことを作ってくれるのが本当に嬉しかったです。
そしてキヨは大好き。あの元気さが大好き。服イベントではネズミさんまでおめかししててときめきました。
サブキャラだとキノコーズが好きですねぇ。
あのゆるーい掛け合いがツボなんですよ。
あと「ちょっと暗いけど、良い森だ。」が丸侭このゲームに当てはまるよなあとも思います。
ちょっと暗いけど、その距離感が居心地よくて、良いゲームでした。