「芽を出すにはまず植えなければ」
習作で収穫できるものもあるだろうな前置き。
えー、今回はKIJI-N-CHI(きじんち)(kiji)さんところのフリーゲーム「植物モチーフ詰め合わせ4品」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
タイトル通り、ノベルが四つ読める短編集なノベルゲー。そのうちの一つは植物関係の奇病ということでさらに四つ分かれているので、実質7つの作品が楽しめます。
作品は相互に関連性もないので、好きなところから読み進められます。
というわけで、今回はもうさくっとネタバレ込みで、全話の感想など。
『草だよ。』
いや触手だコレー!
というわけで、双子の男子学生がちょっとえっちな実験にいそしむ話です。セリフはえちえちになってもわりと態度や進行は粛々としているのが好き。
全部は見ていませんが分岐はかなり多数。見終わった後の選択肢すぐ次の組み合わせを愉しめるのもプレイしやすい配慮を感じました。
『KOTONOHA』
文字通り、文字。会話する間ずっと形作られていく葉が綺麗で、なんだろうな、タイムラプス?を見ている感覚でした。これがやりたくて書いた話って感じだなー、なんて。
『herbARiumer』
これだけ独立して一作品出ないかな~~~!
と思ってしまうくらいには、世界観もしっかりと独立してオチも綺麗な作品でした。現代社会の風景にふわりと重なり合う植物たちが、ほんっとうに美しいんですよ……。
立ち絵や線画は素材とのことでしたが、その重ね具合、加工技術は随一。ずっとなり続けるBGMも、かなり激しめであるはずなんですが、どのシーンにも合ってるんですよねえ。不思議だ……。
地の文とシステムを使った会話が別々の表示なのもポイント。なんか、画面全体を使った一つの世界を感じられたなあと思います……!
ストーリー面も感無量。退廃も再生も両方味わえるのが気持ち良かったです。創作をしている方には読んでみて欲しい話だなあ。
『植物症』
植物にまつわる奇病と生きる女性たちの話、ということで、順番に。
『四肢幹化症』
大切にされたくない、過保護にされるからこそ逃げ出したい、でも破壊したり嫌ったりしたいわけじゃないし、感謝だってある。この葛藤! うわ~~~~ってなりました。
こういう感情すごく、刺さっちゃうんですよね。他者の愛を受け取り損ねるし与え損ねるみたいな、なんか、思いやりという綺麗なものがどんどんねじ曲がっちゃう感じの。
私がそっちのマイナスイメージに強く引きずられてしまったせいで、爽やかと思うべきであろうオチにあまり注視できなかったのが惜しまれました。フラットに読みたかったなーこれ。
『花弁嘔吐症』
創作界隈で知られる花吐病ではなくて、ガチで単に嘔吐物が花になるだけの病です。爽やかに毒と皮肉をまき散らしながら夜を駆け抜けた話、という印象。
なにか、こう、こじつけようと思えばアンチテーゼ的なものが読み取れそうな気はするのですが。これはそうじゃなくて単に、世間の一意見を小馬鹿にしながら弾ける男女は見てて気持ち良いよね~で終わりたい気持ちが大きいです。
『蔓草頭痛症』
……?となってしまった話。一人を知ってから改めて二人になることで絆が……的な……合わないのになお二人でいることが愛みたいな……あれかな……。もう少し、頭痛について深く考えながら読んでたらちゃんと感想が出せたのかも。
『胸部萌芽症」
胸元の芽がネックレスに引っかかる、という、繰り返し描写されるこの仕草がすごく好きでした。頭痛症もそうでしたが、ネックレスにまつわる描写がなんか繊細で好きです。あっちで述べてあったことを繋げてしまうと、この萌芽症の女性はこれからずっとネックレスをひっかけながら過ごすわけで、つまり彼と易々別れることはなく、お互いの命を感じながらゆるゆると続いていくのかな……等々。
とまあ、こんな感じで。
やっぱ『herbARiumer』だな~!! あの世界観がすごく刺さったので、あれを読めただけでも本作をプレイしてよかったです。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓