「ここは美しくあたたかな世界、だから幸せはここにある」
だからのあとは自分で決めさせてほしい前置き。
えー、今回はめぞん(きりききう)さんところのフリーゲーム「グリム・ディエムの冒険録 あるいは忘れられた海の底で」lの感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
サブイベントありの、基本は一本道なRPG。さくっとプレイするなら数時間、のはず? 私はやり込み要素を集めていたので、12時間ほどかかりました。
というわけで、特徴的な点など。
意外で納得のあるタイトル
タイトルだけ見て元気いっぱい王道RPGだと思い込んでいたので、ストーリーの深さと重みにたいそう驚かされました……!
コミカルなシーンもたくさんあり、確かに「冒険のわくわく」が味わえる作品ではあるんです。でも、決して明るいだけではありません。そしてそこがお気に入りポイントでもあります。事前情報なしでプレイしたので、彼らが背負っている過去の想像以上の重みにはぎょっとしました……。
でも、この作品はこのタイトルじゃなきゃダメなんですよ。納得感があって、すごく気持ち良かったです。プレイした方はわかってくれるはず。
動き回るモーションと華やかな一枚絵
特筆すべきは、グラフィック!
まずバトルシーンですね。もうね、キャラクターが動き回るんだ!! グリムの短剣モーションなんてもうアクロバティックで最高にかっこよかったです! 味方だけでなく敵もしっかり動くのすごいですよねえ……。
さらには、要所に出てくる一枚絵! このクオリティがすっごいんだ! イラスト集とかあったら欲しくなるスチルばかりで惚れ惚れしました。「笑っていて」のスチルがものすごく、胸が苦しくなって、好きです……。
最後に、マップチップ! 物語の都合上、作中ではずっと海の光景が続くわけですが……。同じ海底でも、深層と表層でまったく雰囲気が違ってるんですよね。青ってこんなにも多彩なんだなあ!
特にマップは、隠し通路などの何度は高めであるにせよ、暗くても歩くべき通路はしっかり照らされていたのが好印象でした! 方向音痴でもプレイできるRPG、好き。
セリフではなく周りの態度で示すキャラクターの性格
キャラクターの過去がしっかり性格に紐づいているところも好きです。そういう経験があるならそうなるよな、そういう環境で過ごしたならそのセリフになるよな……。そんな納得が積み重なっていくキャラ性でした。
個性ってこういうことだよなあ。
また、そのキャラがどういう人なのかが周りの態度で通じるのも好き。
いや~、これフィクションあるあるだと思うんですけど、優しい人が「俺は優しい人だ!」とは言わないじゃないですか。極端な話ね? そういう不自然さがないのが好きでした。
一つ一つのセリフが、染み入るように感じる……強く感情を揺さぶられる話だったように思います。
楽しい難易度4種類
難易度は、簡単・普通・難・激の4種類。装備によってパーティメンバーの強さが劇的に変わる分、細やかな難易度の違いも用意されてるの素晴らしいなと思います!
私は初めのダンジョンだけ普通でプレイ、物足りなくなったので難、ちょうど中盤(サブイベントが発生し始める頃)に激へと変更しました。ドロップアイテムを求めて雑魚と戦いまくっていたので、敵シンボル避ける派の方は普通がちょうどいいのかも。
プレイ中にノーリスクで難易度変更できるのも強みでしたねえ。
ちなみにバトルはRTAバトル。ゲージが溜まったキャラから行動できるタイプのアレです。なので自然と敏捷性を最重要で装備を組んでましたね~。この辺の詳しい内容は追記にて。
あ、フィルマのステータスについてが少し説明書きだとわかりづらかったかな? 「影響があります」じゃなくて「値が大きければコストも大きくなる」と書いて欲しかったかもです。強くする→使いやすくなるという思考が自然だと思うので……。
やりこみする場合の不満点
さて、大絶賛していきたい本作ですが、不満点もありはします。ただし、これらはあくまで「図鑑や実績のコンプを目指すなら」不満に感じる点です。
- 時限イベントや後戻りできない要素が多い
- 釣りにシビアなアクション(目押し)が必要
- 所持品を「使う」動作が必要かつポイントがわかりづらい
- 敵のドロップ率が渋い(50%上昇装備をつけたうえで5戦に1回落ちるくらい)などなど。
そんな中で、ありがたいのは公式サイトにある攻略ですね~……! ガン見しながらプレイしたうえで、それでも予期せぬタイミングで取り損ねることが多かったので、初見ではまず無理かと。
コンプおまけや2周目要素の詳細は追記に収めておくので、未プレイの方がやり込みをするかどうか指標になればいいなあと思います。
とまあ、こんな感じで。
シリアスを挟みつつも、和やかな絆を感じるボーイミーツガールを楽しみたい、夢に焦がれたい皆さんへオススメです。
既プレイの方は、公式HPのイラストページもオススメ! ミナモの見事なアクロバティックキックがツボでした~。
追記ではネタバレ感想。
ネタバレ注意
コンプや2周目要素などについて
- クリア後のおまけ部屋に所持品や一部装備品などの攻略情報あり
- 装備品図鑑、敵図鑑、釣り図鑑、でそれぞれおまけイラストが1枚
- 2周目は引継ぎあり
- 1周目でサイドストーリーを全てこなしていた場合のみ、2周目のサイドストーリーの一部が変化
特に注意して欲しいのは、ボス戦前の回復ポイント! ここでセーブをしていないと、クリアしてもクリア判定にならずおまけ部屋へ入れません! 通常のセーブとは扱いが違うようなので、絶対に忘れないように、未プレイの方はよくよくご留意ください。
戦闘関係
いや~、防壁が罠でしたね!
初めは敏捷最優先で防御をほぼ捨て、防壁で補うつもりだったんですが……。防壁ステータスが高いとGPも高くなり、戦闘不能になりやすいのに復帰のコストが高くなるという地獄のような状況になっていました。ははは!
おそらく戦いやすいのは防御と敏捷をバランスよくとる装備にすることなのかなー、なんて。たいていの装備品はこの2ステータスが互いの足を引っ張り合うような値設定になっていたように思うので。
まあ私は高火力大好きなので火力と敏捷でゴリ押しましたが!
人によってはフィルマをガチガチの要塞にしたり、あるいはグリムを短剣使いにしたりしそうですね~。この辺りのプレイヤーによる幅も用意されているところも好きです。
ここからはストーリーやエンディングの核心にかかわるネタバレ!
エンディングBGM
エンディングが始まったとき、びっくりしたんです。
聞き覚えがあるだけじゃない、「歌える」ことに!
BGMに歌詞はついていないのに鮮明に、しかも和風の歌詞が再生されて、とんでもなく戸惑いました……。
そしてクリア後の部屋でびっくり、なんとこの曲ではありませんか!
よくよく調べてみると元はこの曲のインスト版が素材?として公開されていて、そちらを本ゲームで使用されていたようです。
いやはや、10年以上の時を経て再会するとは……。
月並みかつとても私的な体験ですが、この曲との再会がゲームのストーリーともリンクしているみたいで、二重にしみじみと感じ入りました……。
ミナモ
ミナモの旅への憧れについて
ミナモ、一番心を引っ掻き回されたキャラクターです。
プレイしている間ずっっっとハラハラしていました。「どうか彼の願いが損なわれないでいてほしい!」と。
いやあ、プレイしてたらミナモの願いはどことなく感じるじゃないですか。で、それが叶わないであろうことも。
ミナモの旅への憧れが満たされて欲しい気持ちは確かに、溢れんばかりにあったんです。でも、あっさりと旅に出ると言ってしまったら、それはミナモらしくないなあとも思っていて。
ミナモってすごく、なんか、情が深い人じゃないですか。フィルマへの歩み寄りもそうですが、愛や友情というもの以上に、自分にまつわる人脈をきちんと大事にできる人だなあと思うんです。愛されるし、愛せる人。
だからこそ全部捨てて旅に出てまた戻ってくるよって言うミナモはなんだか想像がつかなくて……。でも彼がどうしようもなく外に焦がれているのも伝わるので、報われて欲しくて……。ああ~!!
だから、彼の結論がああいう形になって、それにグリムが祝福をくれたのがすごく嬉しかったです。
エンディングの一枚絵やシェーネとの会話からしてそうですが、正直あの後もミナモがじゃあやっぱり旅に出ますとはならないと思うんですよ。
でも、自分で自分に夢を諦めるよう言い聞かせながら生きるって、絶対、絶対悲しいじゃないですか!
だから、グリムの言葉がすごく救いになりました。
もしもそんな日が訪れたら、と思えたら。ミナモ本人じゃなくても、グリムが旅をする姿を心のどこかで原風景として持っていられたら。それはすっごく、救いだと思います。
納得できる結末を見せてもらえました。ありがとう。
ミナモのグリムやフィルマとの関係
ミナモがものすごく、こう、「大人」の役割を持っていたのがもどかしくもあり微笑ましくもありましたね~。ほんのり過保護で、お説教っぽくて、輪と規律を重視する人。でも、こういう面があるからこそ冒険に心ときめかせてしまうんだろうなあと、めちゃくちゃ頷いてしまうんですよ!
ミナモが自分の欲求を口にするシーンは少ない、どころか、グリムに折れてるシーンのほうが多いはずなのに、直接的なグリムよりも欲求が多く感じるキャラでもありました。なんだろうな~、ほんと温室育ちの優しい人なんだよな~……。
グリムやフィルマからしたら正直ちょこっと口煩く感じてるんだろうとは思います。一方で、彼みたいな地に足付けるキャラがいるからこそ、本作がものすごく引き締まって感じました……。
グリム
ミナモとは違った意味で大人だなあと思っていたんですが、終盤に明かされるエピソードやおまけ部屋で膝を打ちました。なるほどね……。
フィルマと出会った時の態度からして好きだったんですよ。
グリムって押しつけが全く無いんですよね。ああいうシチュエーションだとありそうな、「君を守ってあげる!」な展開が全くない。そこで早くも好きになり、さらにどんどん深みが増していった印象です。
シェーネに対する態度も好きだなあ。なんかね、好かれなくちゃとか、嫌われるのは悲しいとか、そういうのが無いところが好きです。ミナモもグリムの話を「客観が過ぎる」みたいな風に言ってた覚えがあるので、あえての描写なんでしょうね。
そういう人格形成になった背景事情を考えると、苦しくもあるんだけど……。でも、そんなグリムが魅力的に見えてるんだから、良かったと思いたいなあ。
天真爛漫な面、表情がくるくる変わって素直な面もしっかりと出したうえで、こういうドライな面を感じさせられるの、本当感嘆します。ミナモの裏で計画を進めてた時のクールさなんて、若干怖いくらいで、痺れましたもんね……。
喋る時は喋るキャラなぶん、黙れる面もあるとわかるとドキドキそわそわします。好きです。
フィルマにお土産をあげるサブクエでの会話全般が大好きです。本作で一番好きかも。
欲しいものを言えないフィルマに、「わからないよな」と事実を突きつけるのではなく、察して「おれが選ぶ」と言ってくれる優しさ。フィルマの万感の想いのこもった「いいえ」に対して、速攻で力強く同意してくれるところ。
言葉も記憶も出てこないフィルマから無理やり引き出そうとするのではなく、にかっと笑って受け入れてくれるのが、大好きです。
フィルマについても、と思いはしたのですが……。もう本作が彼女のための物語でありそこで全て語られつくしていると感じたので、ここで筆をおきます。
本作がああいう結末を辿り、グリムが今も冒険を続けているであろうことに、莫大な夢を感じて。無理に引き上げる明るさではなく、心の内にぽうっと灯る希望を与えてくれる作品でした。
素敵なお話! ありがとうございました!