「盗られた分だけ捕り返してやれ」
大義名分をありがとうな前置き。
えー、今回はTeToriapotさんところのフリーゲーム「ほしくずスチール」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
本作は公式によるふりーむ説明文が最も的確であり秀逸なので引用。
物騒な人たちから、ものを集めるだけのADV
です。
エンディングは複数で、エンドを見るだけならプレイ時間数分。アイテムを全回収して全員分のコメントを見るなら1時間未満くらいの短編です。
というわけで、良かった点など。
個性豊かなキャラクターたち
まず注目したいのが、キャラクターの圧倒的な個性とエピソードについて!
どのキャラも、語るエピソード一つで作品が一つできてしまいそうなくらいの濃さと魅力があります。本作、色んなキャラに話しかけていくだけのゲームではあるんですが、それがこんなにも面白く感じるのはやはりそのキャラにどっぷりとストーリーが煮詰めてあるからなんだろうなと思いました。
さらに嬉しいのは、キャラクター別に専用のBGMが用意されている点!
15+αになるので、作品のボリュームで考えると曲数はかーなーり多めです。そしてその曲がどれも良いんだこれが! キャラクターが個性的だからこそ、BGMもこれぞと感じる曲ばかり。相乗効果で印象に残りました。
濃い世界観
同作者様の別作品と共通した世界で、土台はどっしりしています。それこそ宗教・文化・政治・etc.。一方で本作はあくまでそのうちの『道』という一か所にスポットが当たっているので、初見でも入りやすいかと。
とにかく、アングラでイリーガルで、お薬も性行為も凶器も狂気もなんでもありのヤベー奴らが集合する場所! と書けば性癖にぶっ刺さる方も多いことでしょう。私です。言ってることがしれっとエグいことも多くて、それが当然まかり通ってるんだと感じさせられる自然さがまたゾクゾクしました。変に露悪的だったりイキってたりするんじゃなくて、あくまで当然のように異様なところが好きなんですよね……。
そもそも、『道』では本名ではなく漢字で成り立つ偽名を名乗るという設定の時点で既にヤバイレベルに好きです。設定の時点でもはや最強。
不憫で不幸?な主人公と、不穏で不遜なパートナー
物語の鍵を握るのは二人。
まずは主人公の流聖から。
状況が状況だけにヘコヘコしている流聖ですが、プレイしていくうちにけっこう“イイ”性格してそうなところが垣間見えるんですよ。「ビジネス従順は好みじゃない」などなど。
特に初見では顔色を窺ってゴマをするキャラのように見えていたので、なかなかに強かそうな一面にニヤつきました。小悪党とも裏ボスとも取れるキャラ好き……。
続いて星売。
なんだろうな、“読めない”キャラです。矮小でもなくカッコつけでもなくただただひたすらにこの読めなさを出せるのがすごいな……と感じました。率直に言うことは言うし、不満や呆れを見せる人間らしいところもあるし、流聖に対してだって好意が見られるように思うんですが、それでもどことなく得体のしれない不気味が漂います。
目を付けられたくないキャラ第一位……と言いたいですが……本作のキャラを考えると軽率に一位を付けられない、むしろ同率最上位が多々居そうなのがおそろしい(好きな)ところです。
とまあ、こんな感じで。
追記では、エンドと気に入ったキャラについてかるーくネタバレ感想。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
ネタバレ注意!!
エンド・真相について
ミイラ取りがミイラ! な一作でしたね~!
賢い方々が多いのであちこちで警告はもらえるものの、やっぱり真相がわかってからのスッキリ感は気持ち良かったです。ハクビシンに出会うエンドはどちらに行っても結局、流聖が星売から逃れられないことがむざむざと目の当たりにされて、大変よろしかったです。こういうの大好き。
星売さんずるくないですか? いやずるくはないんですけど(解決)。
なんだろうな……攻め×スーパー攻めのニュアンスを感じるというか……作中のボスに歴代の裏ボスがぶつけられたかのような……ヒエラルキー……カーストピラミッド構造……。いやはやとにかく、土壌の違う強者の食い合いみたいなものを感じました。
Desireエンドの三種の「液」も生々しくて大好きです。愛液、何をしてるとも無いし地の文もなかったのに、ヤッバイえちえちでしたね……。
他もそれぞれの形で、『道』に馴染んで星売と良好な関係を築けている…………という風に見えるからこそ怖くて好きです。唾液のエピローグがあっさりしたテイストでどろっと濃いこと言っててにやにやしました。ふへへ。
キャラクターについて
さすがに全員は無理なので、気に入っているキャラだけ!
王法皇
この名前がもうエグクて好き。もしかしたら魔の長になっていたかもしれないし、もしかしたらみんなと一緒に死ねていたかもしれない、そういう可能性に想いを馳せたくなるエピソードを持っているところが好きです。物語に置いて行かれたキャラクター、みたいな……。
葦首
「かわいい」の価値観も、そのかわいいの守り方も好き。知的で器用なキャラだと思われるんですが、だからこそ根本のズレがものすごく致命的でぞわぞわっとします。キャラ造形がもう上手いんだ。何よりこれほどオラついているように見える方があのおじ様をピュアに愛でているという点がもうギャップでヤバ。好きです。
轆轤(ろくろ)
見た目が思いっきりシュクレなのに人懐こいの、なんかすごくこう、バグりますね。こっちが。いやシュクレも人嫌いなんじゃなくて単にこう、(『がらくたミミック』の印象が強いので)こちらを人扱いしてないだけだとは思うんですけども……。
老若貞処
こわいよーーー! ヤバイ奴らが勢ぞろいする中でも特に怖さを感じるキャラでした。なんだろう、ある意味洗脳よりも怖いんですよ。始まりは合意と納得の上なのに、いつのまにか認めていないところまで侵入されて侵害されて全部奪われちゃうような……?
洗脳ってこう、暴力じゃないですか。なのでちゃんと解けたら敵対心みたいなものも感じられるし、そもそも元凶が元凶として居てくれると思うんですが、この子の場合はまず肌を合わせて懐に入れるところから始まるので、すごく……柔らかい?んですよね。そこがめちゃくちゃ怖かったです。
入加
「ばかみたいに信じてあげるのって、~」のセリフが好きです。この作品で、一番好き。
実は本ブログ、感想文を書いている時期と記事を投稿する時期とでかなりの開きがあるんですが……。プレイして約一年経った今では、人間関係で不安になった時に思い出して、支えてもらっている言葉です。
作中で評されていた通り、彼女は弱いもので、守られるもので、搾取される側の者だと思ってはいるんですが、それを良しとするところにしなやかなしたたかさを感じて好きです。
特に語りまくりたかった点はこんな感じ!
お手軽に遊べるボリュームで、ガッツリと印象に残る作品でした!