うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「横行する饅頭、独白する人鳥。」感想

「白を赤に染め上げて、想うはあなた一人」

どちらも彼岸花な前置き。

 

 

えー、今回はアングラ人鳥歌劇展さんところのフリーゲーム横行する饅頭、独白する人鳥。」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

 

選択肢によってエンド分岐あり、全エンド回収でプレイ時間が数時間くらいの中編陰鬱ノベル。恋愛要素あり。個人的にはヤンデレ好きさんに強く勧めたい気持ち。

 

novelgame.jp

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

 

無陰陽うごめく生命町

 

違法も異常も堂々と飛び交う、生命町。

まずこの舞台設定が思い切りよくて好きです。「この町はこうです!」と言われればこちらも「そうか!」と言うのみ。ややこしい整合性や真実味は勢いよく振り切ってしまうところが気持ち良かったですね~。

キャラに一癖二癖あるのも、倫理観が薄いのも、この町ならでは。余計なことを考えずすんなり物語に集中できたように思います。

 

そんなわけで、本作の舞台は暴力酒薬人身売買と何でもござれなアンダーグラウンドです。見世物小屋モチーフとかが好きな方にはきっと合うと思います。

 

 

 

写実と二次元の入り混じる描写

 

写真と手描きのコラージュ描写も本作の魅力の一つ。

シャフト、劇団イヌカレーっぽい……と軽率に括ってしまっては怒られてしまうかもしれませんが……でも知らぬ方にはこの表現が伝わりやすいとも思うジレンマ!

狂気に振り切っているストーリーにぴったりの、ザワッと心落ち着かない画像が盛りだくさんでした。背景画像がこまめに切り替わるのも素敵……。

時にはホラーテイストな画像も多く出てくるんですが、この電波っぷりがすごく自分は好きでした。現実と狂気の見分けがついてない感じ。

まさに“ビジュアル”ノベルしてる作品です。

 

 

 

大胆に画面を分断するメッセージ

 

画面の中央にテキストウィンドウがドーン!

1対1の恋愛ゲーだとたまに見かける画面構成ですが、斬新だったのはスチルです。

見せ場である一枚絵をあえて、分断する。テキストウィンドウのおかげで不穏さや怪しさが際立つんですよ……。特にトゥルーエンド、あのすがりつくスチルには鳥肌が立ちました。

画力だけでなくて、魅せ方をわかってる。たまりません。

 

ただ惜しまれたのは、フォント。せっかくの縦書きがフォントのせいで崩れている部分をちらほら見かけたので……。もしかするとティラノの方の問題かも。

 

 

 

鬱展開に次ぐ鬱展開

 

公式曰く、ジャンルは「生き地獄と純愛のノベル」。

紹介文に違わず、ストーリーはかなり暗くてえぐい展開でした。主人公はズタボロな目に遭うし、デッドとリスクが隣り合わせだし、人は人と扱われません。

そんな中で私が特に好きだったのは、曼殊沙華の態度がずっと低温だったところ。救いを信じるでもなく、劇的に恋へ落ちるでもなく、期待はせず希望も持たず……。曼殊沙華が過酷な状況にいるからこそ、激しい心の動きがないのは逆に納得なんですよ。

死にかけの心身に小さな欲が芽吹き、最後に開花するさまは実にカタルシスでした。良い感じにじっとりと下へ下へ沈んで浸れる良作です。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

ちなみにこの作者様の例に漏れず、本作の登場人物のほとんどは性別が二分化されていません。中性・無性別キャラが気になる方も是非。

 

 

追記ではネタバレ感想!

クリア済みの方は是非お付き合いください。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

 

 

 

 

ネタバレ注意!

 

 

 

 

 

結局ペンギンって?

 

お恥ずかしながら、結局あのペンギン(アイ)がよくわかっていません。

エピローグや手帳を見るに、内部にオルゴール機能がある人形。物体としては。ただ、「私」は結局何だったのか……。

読み始めの頃は曼殊沙華の逃避人格だと思っていたんですよ。内的人格、自分の意思決定を代わりにしてくれる便利な存在。曼殊沙華が痛めつけられている時に、自分の意識だけ浮かせるみたいな構図のスチルが出てきていたのも、よく聞くDV被害者が他人事として自己防衛するやり方を意識させられたので。

 

ただ、アルビフロラとペンギンが普通に会話しているんですよね。……してたよね? 終盤でしてた気がする。なので、イマジナリフレンド……? でも第三者とは話せないか……、うーんうーん。

実際は曼殊沙華が喋っていて、アルビフロラが曼殊沙華の一人芝居に付き合ってくれている可能性もありますし。

とりあえず、曼殊沙華の本名と過去を担う存在、って感じでふんわり解釈しておけばいいんだろうなあ。

 

 

 

純愛エンド

 

私は恋愛ゲームを全て乙女ゲームというカテゴリで認識している暴君プレイヤーなのでそういう文脈で乙女ゲーと称することを許してほしいのですが(前置き)、

 

まさかここまで乙女ゲーしているとは!!!

 

プレイするまでは本作をそんなに恋愛要素が強くない、純愛と言っても感動モノの一要素として取り上げられているくらいだとなぜか思い込んで油断していたんですよ。だから想像以上にアルビフロラ×曼殊沙華がメインでびっくり&万歳しました。

 

曼殊沙華にそこまでの、執着?欲?自我?が生まれると思ってなかったんだよなあ。大したやつですよアルビフロラは。

特にTRUEエンドの、自分を選ぶ以外の選択肢なんてないよね、というあの態度がむちゃくちゃ好きです!! 事実、だからこそ傲慢、そして迂闊。

 

アルビフロラはずっと良い具合に、後輩キャラでしたね~……。ピュアに見えてエゴいところ大好きです。キャラに奥行きを感じる。

アルビフロラが最強というわけではなくて、あくまでも不完全でうまくいかないところがあるからこその展開だよなあとも思います。覚醒はしてくれるけど何でもありにはならない。良い。他キャラの格が落ちない。

 

 

トゥルーエンドとハッピーエンド、どちらも好き~!!!

いずれにせよヤンデレ溺愛エンド、ありがとうございます!!!!!

曼殊沙華の望みが明確に描写されるので、どちらに行っても納得感がありました。ただ破滅するのではなく、そこの過程がきちんと描写されるところが良い!

 

 

 

 

おまけ要素他

 

サブキャラの中で一番好きなのは鹿柳亭燕左衛門さんです。末恐ろし~!

どもり癖って言うとサ行(摩擦音)や文頭によく出る印象がありますが、この方はそういう法則性も特段なさそうなので、ぶっちゃけこれは演技の一環なんじゃないかと私は睨んでいます。……どうなんでしょうかね? 私の知識不足なだけかも。たはは。

 

ちなみに、クリア後タイトルの一部をぽちっとすると、良いことがあるかも。既プレイでご存じない方は是非。

ハクマの襟部分がくしゃっとなってたりリボンが不ぞろいだったりして、相変わらずだなあという気持ちと、がんばってるんだなあという気持ちがないまぜになりました。にこにこ。

 

 

 

 

と、熱く語りたかったのはこのくらいかな。

続編がすでに公開されているそうですが、本作のエンディングをあまりに気に入りすぎていて、逆に受け入れられるか不安でもあります。

とか言いつつ絶対プレイはするんですけどね! どう感じるのか……またいつかの感想記事を楽しみにして頂ければ幸いです。私も楽しんできます! どきどき……。