「後に晴れても土はぬかるみ」
カラリと爽やかにはいかない前置き。
今回はちゃんとするさんところのフリーゲーム「雨雲」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
年齢制限ありのサスペンスもの。前半はノベル、後半は選択式のアドベンチャー。舞台は現代日本で、まさにあるあると言いたくなる日常感と、自分の身にも似た危険が起こり得るかも…!といったハラハラ感が楽しめます。
ではさっそく魅力的な点から。
臨場感のあるビジュアルホラー
一枚絵の使い方がとにかく上手でした!
ただ衝撃的な絵をバンと出すのではなく、プレイヤーの視界を制限してじわじわと迫りくる怖さを演出してあったり、絵の表示をずらすことで視界の揺れを表現されていたり、ビジュアル面での演出力が凄かったです。
また、突如始まる狂劇にぴったりの表情付けも良かったですねー。絵柄自体はデフォルメ寄りかなと思うのですが、それでまさかここまで鬼気迫る表情がお目にかかれるとは思ってもみませんでした。
一目でわかる魅力的なキャラクター
この作品、公式サイトを見て頂ければ分かる通りけっこう登場人物が多めです。なのに驚くべきはキャラ皆に立ち絵があること、そしてその描き分け方でした! キャラごとの絵風を統一したうえできちんと違いが出してあるのは本当素晴らしいです。
キャラの性格もそれぞれ個性的で、内面の描き分けも上手でした。まさにリアルで身近にいそうな感じのキャラも居て微笑ましかったですね~。
お気に入りは西久保さん! ああいうマイペースなキャラ大好きですw オチの付け方も素敵でした!
注意書きの潔さ
「警察の描写がありますが、実際の警察の仕組みとは大きく異なります」
これ大事!本当大事!
なんでだろう、他の職業や機関と比べて警察ものって「こんなのリアルじゃない」って思っちゃうバイアスが強い気がするんですよね。それで変な絡まれ方してる作品も散見します。でも、あらかじめこうやってスタンスを表示してもらえていると、機関構造の云々などに気を囚われず、ありのままストーリーを素直に受け入れられるのですごくありがたいです。
こういう注意書きってつけるの勇気あるんじゃないのかなー、と勝手ながら思っているのですが。よくぞ言ってくれた、まさに英断と感じれる潔さでした。
一方気になったところとしては、
考察整理パート
まず先んじて。死亡スチル等にも関わるコンプ要素や判を押すスタイリッシュな演出など、全体的に見ればゲームらしさ含めかなり良いシステムだと思います。
でも気になったのが、初めてこのパートに入る時の問題の難易度とタイミングです。かなり話に没入したところでこのパートになりテンポを崩されてしまったのが一点。さらにその難易度について、肝心のところはかなりゆるいのに対して枝葉と思われる三択選択肢は紛らわしく、白ける感じを覚えてしまいました。
この難易度はチュートリアル代わりだからなのかなとも思うし、ヒント機能や調書読み返し機能があるので、仕様自体はものすごく親切です。製作者様の優しさが出ているなあと思います。だからこそ、この“いままでのあらすじ”みたいな部分はパスで、それ以降の捜査が始まりだす辺りからこの推理パートが入っても良かったんじゃないかなあと惜しく感じました。
ミステリ的な推理要素を狙ったのかなとも思いはしましたが、第二話でほとんど答えは明かしてもらえているので……。
重ねて書きますが、このシステム自体は面白かったです。特に終盤の展開は、刑事さんと同調してかなり手に汗握りつつプレイさせて頂きました!
とまあ、こんな感じで。
他にも、即死ポイントに事前セーブの警告が出たりちょっとした記念要素があったりと、親切さや楽しませようとする気概が随所にうかがえる一作でした。
余談。××マニア(ネタバレ防止伏せ字)の称号をクリア前に取得できたので思わずふふっと笑ってしまいましたw やったぜ!
そんなわけで、サスペンス好きの人やノベル型アドベンチャーが好きな方にオススメです。
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