「世界のため、魔法のため、愛する人のため」
自らの苦しみがために自らを捨て置く前置き。
えー、今回は箱庭のイデア(栄崎)さんところのフリーゲーム「エインルート」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
綺麗なマップを歩きながら心に触れていくゲー。エンド分岐はありますが、一つ察しがつけば攻略にもピンとくるはずです。
というわけで良かった点など。
私の心を力にするシステム
一番好きなのがこの作品の大きな根幹にもなっている、心の要素です。
戦闘前に“感情”を選び、それに付随するステータスに沿って戦うのですが、これがまた物語性を感じまして。敵と戦う前のエピソードが悲しいものだと、こちらもついついポジティブな感情で対抗したくなったり。1周目ではステータス等の実利面以上に、それこそ感情に従って選んでいた気がします。
プレイする人によって選ぶものがかなり変わりそうな作品だなー、なんて。他の人のプレイも見たくなる作品ですよね。
そして何より、あの色相図みたいなメニューが変化していくさまも良い没入感がありました。元ネタを調べて一つ賢くなった気になったり。不安と信頼で服従、っていうのがなんかすごく、すごく、言い表しにくいながらも心に残ってます。
戦う敵のグラフィックもかなり象徴的で、語られるもの以上に感じるものが大きかったように思います。
風と色を感じるマップ
基本的にマップは横スクロールの一本道です。温もりを感じるような背景で、主人公の歩くと揺れる髪も併せて、風や温度が身近に感じられそうなマップばかりでした。短いながらもじっくりと歩き回りたくなるマップです。BGMがそれぞれ異なるのも素敵なところ。
もちろん1周目はゆったりとした速度で噛み締めるように進みたくなる作品なのですが、2周目からはダッシュが解禁されるのもありがたかったですねぇ。
民族風な儀式と文様
儀式、継承、という言葉がある通り世界観はどことなく民族調です。こういう世界観ってツボな人にはたまりませんよねぇ。因習村とか好きでしょ皆、知らんけど。
また、戦闘時の怪しげなBGMと、それぞれの敵によって変わる背景の文様、攻撃エフェクトなど、あちこちに儀式を感じさせる演出が敷かれています。
あの戦闘突入から終了までの雰囲気が本当、すごい好きなんですよね……。おどろおどろしい感じというか、神秘と恐怖の間というか。好きです。
とまあ、こんな感じで。
儀式、感情、丁寧なグラフィックなどにピンとくる方へおススメの作品です。
追記ではネタバレ込みの感想など。
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ネタバレあり
プレイ感が楽しかったので、いつも以上にあらすじ書いてるだけっぽくなってます。
1周目
とりあえず触ってみる、ということで深く考えずにプレイ。
メニューを開いた感じ、緑色の扉が陰陽の中間な感情のイメージだったので、試しに左から行ってみたら不安でした。なんとなくストーリーに合いそうなものを選んだら的中。
で、次にもう一つの緑を開けて、今度はステータスにも注目してみようと怒りを選んだらああなりました。
うわあやっちまった!
でもまあ、エンド分岐があることは事前にDLページで知っていたので、気にせずプレイ。
ポジティブな感情を破壊してしまったので、勢いでポジだけ破壊してネガを開放していく流れに開き直ってしまいました。
そのせいか宝珠を手に入れたのはかなり終盤で、しかも「自責」「侮辱」の二つ。つらい……。ステータスより心がつらい……。
じんわりと色を失っていく主人公も含め、なんとなくゲームの中身は掴めたものの、しんみりとするものが残りました。
2周目
じゃあとりあえず極端に行ってみるか、ということで結論エンド1への道をたどりました。
あの最後の道に虹がかかるの、すごく良い演出ですよね……。あとがきで、あの虹もおそらく狙ったものだとわかって納得しました。やっぱり心に残るシーンは人の思い入れが詰まっているものだなあ。
ラストの戦闘の感情は、ステータスだけ考えるとたぶん「怒り」が使いやすいだろうと思いつつ、「予期」を選択。話の展開的に、私にはこの感情が一番しっくりくるなあと思ったんです。あと、星のエフェクトがなんかかわいくて好き。
3周目
逆方向に行ってみようということでエンド3の道。
最後になるのでオープニングから復習しようと思ったら、思わぬセリフが聞けて驚きました。想像以上にえげつないことがされていた……。
あと、よく見たら女性さんはこちらを目で追って見送ってくれていたんですね。ありがとうね。ごめんね。
1周目で実は色がなくなっているかどうか半信半疑だったんですが、核心に代わったエンドでもありました。最後1扉のセリフが切ないし、少女の、声をかけることすら躊躇うみたいな、物悲しい「……」がまた。
でも、こういうしんみりと残る話が好きなので、このエンドが一番好きかもしれません。
全体を通して
設定はかなり暗かったですが、プレイ後はかなり希望の見える爽やかさを感じました。
世界を救うぜ!!までいかず、世界の問題はまだ続くけれど、それでも彼らは彼らなりの希望を掴んだ――っていう塩梅がすごく良いバランスだなあと思います。勇者じゃなくて、救世主でもなくて、少年少女なんだなあって。
この作者様のゲームは「白のキョウメイ」「ずっとそばにいるからね」の印象が強かったので、こういう展開も描かれるんだなあと意外に思ったり。私自身の嗜好としてはキョウメイ系が好きですが、描写の丁寧さや温もりがあるグラフィック、システムとストーリーがかっちり噛み合う構成などは共通して素敵な点だったと思います。
とまあ、だいたいこんな感じ!
やっぱり、システム含めて戦闘の雰囲気と世界観が好きなゲームでした。