うそうさ〜第二号室〜

フリゲ!鬱展開!ヤンデレ!万歳

フリーゲームアプリ「大繁盛!まんぷくマルシェ」感想

「未知を探求するのが人気への第一歩」

とんでも展開も意外と慣れてこれる前置き。

 

 

えー、今回はアソボックスさんところのフリーアプリゲーム「大繁盛!まんぷくマルシェ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

やっとスマホにしたんです!(記事を書いているのは2017年現在)

これでアプリゲーもソシャゲも自由自在、そんなわけで以前からTwitterのTLで話題になっていたこのゲームにチャレンジしてみました。

 

舞台やストーリーはお店経営型ですが、小難しい数値管理などはなく、中身としては育成放置ゲーに近いかも。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

主人公はシェフじゃない料理ゲー?

 

材料を調達してレシピを考案して売りまくる、という流れ自体はよくあるお店経営ゲー。ですが、このゲームを独自のものとして色付けしているのが主人公の立場です。

主人公はシェフではなく、料理アドバイザー。

彼女のアドバイスを通じてシェフたちの、個性たっぷりで意外性のあるストーリーも楽しめる構成です。こういう、自分一人でガツガツお金を稼ぐんじゃなくて、お互いお手伝いし合いながらマルシェを盛り上げるぞ!っていう仲良し感がすごく素敵でした!

 

初めの内は皆噛み合うとは思えないくらいてんでバラッバラ。そこもご愛敬。

主人公は主人公なんだけど主役ではなくて、それでもみんなの中心。この意外な切り口がまず新鮮で、それこそ良い具合にトッピングの効いた設定でした。

 

 

フツーの料理じゃやってけない、はちゃめちゃネオ料理

 

意外性といえば、料理のレシピ自体もそう。

例えば食パンがそこにあったとして、そこに併せるならレタスとトマトかな?

……なんて無難な組み合わせは存在しません!

 

意外なものが組み合わさって、案外イケる味にな……いや本当に美味しいのかこれ!?と一瞬引いてしまう流れがすごく楽しかったです。出来上がりを見ると確かにおいしそうなんですよ不思議と。

レシピ考案の際のヒント文で材料を当てる、ほんのり謎解き(?)要素が入っているのも楽しいところですね。ぽかぽかあたたかい~の文言によく騙されていた覚えがあります。

 

ご自宅のキッチンで作ろうと思えば作れそうなのも好奇心が湧きました。

深淵を除く時また深淵もこちらを……。

ドリンクバー全混ぜ派の方や、給食の食パンにみかんとマヨネーズを乗せた経験のある方などは感覚としてもしっくりくるのかもしれません。

 

 

リアクションたっぷりの食レポシーン

 

とんでも料理が出てくるからには、食べた時の反応だって気になるところ。

レシピを思いつくとシェフたちが食レポしてくれるんですが、この反応がまた面白いんですよ。何故泣く何故脱ぐ何故跳ねる! キラキラが飛び交い食べれば汗と涙が止まらず思わず駆け出したくなる、そんな反応が如実に伝わってくる食レポがたくさん。まさに必見ものです。

 

反応によってシェフのキャラがより詳しくわかるのも良いところなんですよねぇ。

軽いところだけ書いちゃうと、フェンネルお酒飲めないんだー!とか、ブーケガルニって小学生男子っぽいけど女の人に興味はあるんだー!とか。良いギャップ萌えでした。

 

 

タップで簡単食材集め

 

いわゆるAPに当たる体力を消費しておでかけして、タップしながら進んで食材を集めるのが基本システムです。簡単操作で隙間時間に、と思いきや熱中しちゃう感じでした。

このAPの量がちょうどいいんですよね。無くなったと思ったらイベントが進んだり、レシピを思いつく間に溜まっていたり。料理を食べると回復するだけでなく実績も埋まっていくので、いっぱい食べるのを推奨されているのがシステムとしても伝わってきました。

どんどん進んでどんどん食べてイベントが進んでいく、ゲームのテンポの良さがハマる秘訣だったのかなーと思います。

 

またグラフィック面として、ウディタ改変(と思われる)キャラチップがぴこぴこ動きながら進む姿は見ていてとってもかわいかったですし、行く場所によって変わる背景や画面フレームも綺麗。時々起こるレアなイベントもわくわくでした。

 

 

 

その他、

お店の品物切れが目に見えてわかったり、

お客さんの人数や稼いだお金が記録されたり、

シェフたちとの会話や過去のストーリーが見返せたりと、

プレイヤーの欲しい機能が全部搭載されている辺りもすっごくありがたかったです。

 

無料アプリゲで言われる広告についても、この作品ではきちんとメリットのあるシステムとして組み込んであったので好印象でした。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

意外性のあるキャラ達、スカッと明るくて笑える展開や、奇妙奇天烈おいしそうな料理の数々など興味がある方におススメです。

 

追記にはキャラクターについてちょこっと。

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フリーゲーム「くものいと-雪割草外伝-」感想

「あなたの善意は本当に優しさ?」

言い訳させず捕らえたいだけの前置き。

 

 

えー、今回は猪鹿蝶さんところのフリーゲームくものいと-雪割草外伝-」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

一本道、ドロドロ愛憎百合ノベルゲー。和風の短編柵です。

一時期公開されていた『雪割草』というゲームの番外編とのこと。公式サイトが縮小運営になった際にDLしたゲームなので、『雪割草』のほうもご縁を逃してしまいプレイはできていなかったのですが、紹介文どおり単品でも楽しめる一作でした。

 

一部ネタバレというかシーンバレしているので注意。

 というわけで良かった点など。

 

 

平安時代をどっぷりと感じられる世界観

 

登場人物の衣装や背景などのグラフィック面はもちろんのこと、テキストの端々に出てくる用語や主人公の口調から和風ものの世界観を濃厚に感じました。

和風ファンタジーではなく、がっつりと和風もの。それでいて読みやすく、難しい用語はさらりと流されていたり、状況で判断出来るように描写されていたりします。

あの、どうしても語りたくて書いてしまうんですが、文を書こうとしてぼとりと墨が零れ落ちるあのシーン! あそこがめちゃくちゃ好きでした。拭い切れない何か、語り切れない情感を、小道具の妙で表現している名シーンだと思います……!

 

 

寵愛、帝、没落、振り回されるしかない女の姿

 

主人公である常磐も丁寧に、平安時代らしい女性として描かれています。

帝の寵愛が得られない嘆き、それでも自分から会いに行くなんてことは露ほども思えないこの徹底ぶり。うっかり現代の感覚で書いてしまいそうなところを省いて、当時らしい、ぎちぎちに縛られて動きの取れない女性像を見事描ききっています。

ただ“可哀想な女”で留まらないところも構成の上手いところでして。子が権力を持つことで成り行かなかった自分の居場所を得ることに固執するなど、当時のドロドロした女性の生き方もがっつり書かれています。

まさに鳥籠の中、澱んだ空気が溜まっては人の裏でひしめく空気が素敵でした。

 

 

善意と悪意が交差する愛憎劇

 

さて、前述した通りこの作品は百合です。愛憎劇です。

この愛憎を深く深く味のあるものにしているのが楓の存在。彼女がいるからこそ常磐の生活は揺らがされ、狂わされ、しかしいなければよかったと簡単には思えない複雑さが込み上げるわけですが……。

 

なんだろう、楓のやっていること自体は善人・善行の気遣いなんですよね。黒さが出ているのはむしろ常磐のほう、だというのに、不思議と楓のほうがずれているように感じてしまうこの構成。一人称視点というのもあるでしょうが、愛憎どちらとも振り切れず葛藤する常磐のほうに感情移入しがちなのでなおさら、楓の人柄が強調されるストーリーでした。

「良い人だし優しいし悪いのは私ばかりなのに、」の「なのに」に隠れた寒気というか。帝との子、寵愛、後ろ盾、常磐の価値観を通して読み進めるプレイヤーからしたら何よりも重要なはずのそれら全てを手にしている楓の強さと、注意深く見なければ気づかずに終わってしまうであろう、一匙の妙がとても刺さりました。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

憎いのに憎めないドロドロ百合、平安和風、足元が崩れていく展開、など聞いてピンとくる方へおススメです。

 

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shiki3.hatenablog.com

フリーゲーム「シェリラベット」感想

「雪に隠せば消えていく、部屋に篭ればなおのこと」

綺麗なものだけ見ていてくださいな前置き。

 

 

えー、今回はCOCOONさんところのフリーゲームシェリラベット」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

分岐ありの男女恋愛乙女向けノベルゲー。攻略対象は一人ですが、総愛されに近い描写が多めです。騎士と姫、モンスターなど、軽くRPGっぽい世界観も交えたファンタジーでした。

 

プレイ後は副読本が気になること間違いなし。勿論私もぽちる気満々なのですが、ちょっと言ってはいけないところまでぽろっと出してしまいそうな気がするので、この記事を書いている現時点は未読です!

 

 

というわけで良かった点など。

察しの良い方や、既にもうDL済みでプレイ予定の方はネタバレ注意です。

 

 

徹底した一人称視点の物語

 

初周でエンドに辿り着き、真っ先に感じたのはここです!

ノローグからワンシーンまで、語られるのは徹底してリディの視界から見えるもののみ。乙女ゲーでよくある、「一方その頃攻略対象は……」みたいな描写も本編中ではしっかりとそぎ落とされています。

この構造がね、二重の意味で上手いんですよ!

物語のオチに絡んでいるのが一つ、裏で活躍して主を立てるという従者力を大いに表現しているのが一つ。なんていえばいいのかなあ、キャラの魅力を描きながら物語のギミックにもなっていてもう、感銘を受けました。

 

シナリオだけでなく、スチルでもしっかりリディの視点を意識されているのがもう震えました。トゥルーエンドのスチルの構図、必見です。

 

 

誠実勤勉な有能騎士と、ふわふわメレンゲ繊細姫

 

普段はキャラ単体よりストーリーやキャラの関係性に注目しがちな私なんですが、この作品では二人ともが単体で私の萌えを直球に貫いてくれました。

 

まずリディから。

すごい萌えるんですよ! 時々出てくるちょっと子どもっぽい甘えや諦めも庇護欲そそられてものすごく可愛いですし、ウジウジじゃなくて反省で留まるのも好印象でした。性善説で、時々クスっとしてしまうおとぼけが出てくるのもまた面白いところ。

好感が持てるというよりは萌えるに近い、愛玩っぽいキャラだと思っていたのですが、おまけ要素云々を見て思わず唸ってしまいました。本当に上手くできてるなあ。

「~だよぉ」って口調が妙に抜けてて好きです。

 

次クワルツ、これまた萌えるんですよ。

もう萌えるとしか言ってないな!?

ええと、まず素の口調がごくごくごくごく限定的で、基本的には常に敬語なところ。従者の立場をわきまえて、どれほど自分に都合の良い展開が来ても、きっちり自省ができるところ。常に真面目で、過ぎるほど真面目で、嘘は絶対言わないところ。

「優しくて誠実な人」という乙女の理想をぎゅぎゅっと詰めて、さらに黒い差し色が入れられたような、まさにときめくキャラでした。

 

 

おつかいに始まりめでたしで終わる、幸福の物語

 

公式サイトの言を借りれば、「ほのぼの95% シリアス5%」。

確かに分量としてはそうなんです。が、個人的に濃度的には50%50%だと思います。

リディ自身はぽえぽえしつつもしっかり前向きに頑張ろうとする力もある子なので、やっぱり全体的に明るい雰囲気なのは確かです。

ただ、同じ綺麗なものであっても例えば花やお菓子ではなく、“雪”を意識させるデザインがあちこちにされているところに、この作品の本質が見えるなあと感じました。

 

 

その他、マップ選択でちょっとした寄り道ができたり、眼鏡オンオフの作者様恒例システムが搭載されていたりと、一本道にさせない工夫がみられているのも良点です。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

内気で甘いお姫様や敬語従者が好きな方、ちょっとしたギミック付きのお話が気になる方へおススメの一作でした。

 

 

追記ではネタバレガッツリ伏字無しの感想です。

 

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GW・短編乙女向けフリゲ6作感想

 (『ニカ・トラジティー』)

 

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フリーゲーム「だれかのよどみ」感想

「狭くて暗いところでないとその存在は見えないのです」
常に潜んでいるからわざわざ語ろうとしなかった前置き。

 


えー、今回はウミユリクラゲさんところのフリーゲームだれかのよどみ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

絵師としてくらやみ横丁さんをお呼びしているとのことで、別名義の合作『無限夜行』とほぼ同じ形になります。とりあえず名義がウミユリクラゲさんのみでしたので、そのように。

 

ジャンルとしては“おんなのこ”を希求する一本道ノベルゲームです。
ストーリー上の関係は一切ありませんが、作中で用いられる「閉じている」「おんなのこ」等々の概念は前作『だれかのかがみ』を読んでおいたほうがわかりやすいかなとも思います。

 

 

というわけで特徴的な点など。

以下、ある程度テーマのネタバレ等を含みます。
事前知識があるほうが読み取りやすい作品だとは思いますが、ネタバレ嫌いな方はご注意ください。

 


ポエムな文体で流れていくテキスト

『だれかのかがみ』でも感じていたことではありますが、文章の癖がいっそう強くなっています。単語をテンポや響き重視で連ね、読者の理解よりも作品の伝えたいものを先行して流しているため、少なくとも私にはかなり難解に感じられました。


普段使いとしては違和感のある単語(外に出かけよう、を「遊歩しよう」と言うなど)が多いのも特徴の一つ。稀に校正厨になってしまう私としては、ちょこちょこ違和感に固まってしまうシーンもありました。
ただ、独特の文体だからこそ此処でしか感じられない雰囲気が生まれているのも確かなんですよ! 終盤の泥のような勢いはすごかったですし。人を選ぶ要素でもあり、強みでもあると思います。

 

 

比喩を重ねられた単語と曖昧な彼女達の存在

例えば作中の「おんなのこ」の有する概念は、国語辞典的な、身体的特徴が女性である子ども的な意味には収まりません。登場人物と地の文が共通認識として使っている「おんなのこ」の意味をつかみ取りながら読まなければ、たぶん何一つ残らないまま不気味な話として終わってしまう作品であると思います。
まあ物語とは得てしてそんなものとも言えそうけれども。この作品は比喩や象徴で語るやり方で突出しているため、より単語のニュアンスに注目する必要があるのかなー、なんて。

 

さらに言えば、登場人物三人の存在もかなり曖昧なままで終わります。曖昧こそがおんなのこの概念、と言えるかもしれません。


登場人物達の関係が“あの日”をきっかけに変わった、ということはかなり序盤から明記されるのですが、その“あの日”に何があったのかは終盤にならないと明かされません。そのうえ、結局のところ登場人物たちがどうしてこの地に集まったのか、ムカシノバシとは何なのか、シルル伝説のシルルという響きの由来は何なのか、そもそもあの子は何者だったのか、そういった諸々の設定は全てそぎ落とされます。物語の根幹に関わらないことは、語る必要などないんだと言わんばかりに。

木陰の街の外での話などは閉じられた世界の外側の話になるので、あえて語らないようにされているのだと思うのですが……。


考察好きの方や、そこまでいかなくても自分で色々と想像を広げながらゆっくり読むのが好きな方に向いているゲームだと思います。

 

 

おんなのこを愛し、女を忌避する語り口調

じゃあ物語の根幹、主題は何なのかというところですが、やっぱりおんなのこだよなあとは思います。思うのですが、さらに深く突き詰めて考えるというところになるととんとわかりません。私には難しかった!

ともあれ、生理や妊娠などどうあっても避けがたいものをあえてドロドロドロドロと書き綴ることで、間接的におんなのこの概念を強めていく感じはすごく好きでした。
この手の作品が出るたびに毎度書いてる気もしますが、私なぜか三次元二次元問わず、妊娠ってすごくグロテスクなものだと思うんですよねぇ。別に、処女が至高とかロリ万歳とか性嫌悪とかエロ撲滅とかそういう主義主張的なものは一切無いんですけれども。うーん?
とにかくこういう私の感じ方に近い演出がされていて、水が合うなーと思いました。

 

とりあえずわざと俗っぽく書くなら、百合に見えて似て非なる形かなと思います。
でも私が百合に求めるところの、少女性、女を嫌でも意識させられる何か、二人きり感、はかなり出ているのでブログ記事に百合タグは付けます。許して。
登場人物達の諸々を隠してあるのも、あとがき読むまで気づきませんでした。たはー。

ついでにあとがきと言えば、トートロジーにならないよう気を遣われているところも好印象でした。

 

 


とまあ、こんな感じで。
色々考えながら読むのが好き、少女という響きに心ときめく、ロリータ服に憧れ以上のものを感じる、等々の方向けの作品かなと思います。

その他はラストシーンのネタバレになるので追記にて。

 


同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

 

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フリゲサイト「マテンロウ計画」3作品感想

「只の数字をあなたの徴だと思うこと」

 意味ばかりが増えていく前置き。

 

 

えー、今回は、マテンロウ計画さんところのフリーゲーム機械仕掛けの夢」「イヴの日に死んでしまうアナタのための走馬灯機構」「lost brave」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

というわけで、順番に行ってみます。

 

 (例の如く記事を書いた時期と公開時期にタイムラグがあるため、現在はDL出来ない作品が多数です。ご了承ください。)

 

 

 

機械仕掛けの夢』

 

[概要]

 

エイプリル作品ということで、公式サイトでも末尾に文字のみでそっけなく置かれているのですが――だからと言ってスルーしてしまっていた自分を張り倒したい! とても好みな一作でした!

 

短編のノベル&育成ゲー。絡繰の世界にやってきた人間、ニナがブリキうさぎをお育てしながら自分のアイデンティティを考えるお話。とにかくストーリーとグラフィックの親和性が高く、あえて抑えた色調からもモノクロ絵本のような世界観が味わえます。

いまさらですが、同作者様の『停滞少女』やこの後感想を書く『イヴのための~』などは全部関連してたんですねぇ。停滞少女だけプレイして他に手をつけていなかった自分をこれまた張り飛ばしたい……もったいねぇことをしたもんだ。

 

[システム]

 

まず、クリックで読み進め&操作をする、ツクール製には珍しい(と思う)操作方法です。

この操作方法が良い感じに物語と絡んでくれるんですよね。ブリキうさぎをなでなでしたりねじまき巻いたり。ラストのねじまきにはついかなりの時間をかけてしまいました。操作することでこっちも覚悟を決めさせられるというか。システムと物語ががっちり合っているとそれだけでスタンディングオベーションしたくなります。

 

難易度は易しめ、というかおそらくプレイを続けてさえいれば必ずエンディング分岐には辿りつける、はず? でも、餌やりと機嫌の調整など、読むだけに収まらないゲーム性があって楽しかったです。何よりぽくぽくご飯食べてくれるブリキうさぎがかわいい!

街の人達の会話パターンが多めだったり、時々変化したりするのも楽しかったです。何も無さそうだなーと感じる日があっても、見逃すのがもったいなくてついつい毎日あちこち足を伸ばしてしまいましたw

 

[ストーリー]

 

お約束の掛け合いが後々効いてくるパターン、と書けば伝わるでしょうか。

ラクリに心は必要か?

僕らの存在意義ってなんだ?

そういう、人によっては小難しい議論に発展しそうなテーマを、心に響く一言でぽんと伝えてくれるストーリーでした。響いた言葉をあげよって言われたらありすぎて唸っちゃいそうです。それでもやっぱりぐっときたのは394番とのあれこれかなあ。一回だけの要求だったけど明らかに変わってしまったことを悟って胸が痛くなりました。

肝心のところでキャラグラを出さず台詞に注目させるのも上手かったなあ。

「間。」もツボです。

 

[グラフィック]

 

立ち絵の代わりに一枚絵を使っている場面が多いです。そのどれもが安定して可愛く、何より好みな絵柄で嬉しかったですねぇ。そしてやっぱり394番の可愛さにときめきます。

キャラ絵だけでなく、ウィンドウや背景なども全て自作、のはず。おかげで視覚的に統一感があって、世界観構築に一役かってくれています。移動する時に出てくる、浮かぶ金魚やネジの道の背景が好きです。

 

[エンディング]

 

どちらにも思うところが残る、良いエンディングでした。ハッピーエンド的な意味でもべストは終焉のほうなんだろうけど……永遠のほうも管理者のもの悲しい優しさが伝わってきて大好きです。

一通りプレイし終わったら、もう一度プロローグだけでも見直すと、意味がよりわかってじんと来ました。

 

[一言]

メルヘン、ロボットやアンドロイドと心の云々、哲学ふうの考えさせられる言い回し。

 

 

 

『イヴの日に死んでしまうアナタのための走馬灯機構』

 

[概要]

 

こちらは初めから『停滞少女』のスピンオフとして出された短編作品。先に停滞少女をプレイした人用のおまけもあり、ファンには嬉しい一作です。停滞少女のほうの記憶が新しい方なら、ウェンディとシヤのお話と書けば通じるでしょうかね。

ジャンルとしてはノンフィールドRPG、になるはず。オリジナルの戦闘システムで、死の国に来たウェンディの思い出を集めていくゲームです。

 

[システム]

 

一番独特なのはやはりバトルです。ストーリーの基盤になる“思い出”が召喚にもアイテムにも装備にも使えて、シンプルながらも幅広い遊び方ができます。

強い思い出が自動的に上にソートされたり、場や敵の属性が一目でわかったり、バトル前にメニューが開けたりと、かなり便利でプレイしやすい仕様になっているのも嬉しいですねぇ。

ぼんやり攻撃連打では勝てない、という意味では難易度もそこそこですが、じゃんけん理論さえわかればむしろ戦略を楽しみながらさくっとプレイできるかと思います。ゲームを始める時に難易度設定もできるので、オリジナルシステムに抵抗がある方もご安心。

行動するたびに刻限が進むと言うのも、まさに死の国らしい設定で良かったなーなんて。

 

[ストーリー]

 

まず、グリノアとのお話できるのが嬉しかったです。あの手の、ちょっと道化師っぽいキャラ好きなんですよねぇ。ヒント機能としてしっかり活躍しているし、世界観も深まって一キャラで二度おいしいです。覗き見に関するお話がお気に入り。

次、本編について。中ボスにもぐっと心が抉られるエピソードがついていて、つい停滞少女のほうをもう一度プレイしたくなりました。

 

エンドは2種類あって、やはりどちらも魅力的。ハッピーエンドの、日記の演出にはやられました。単純にメッセージウィンドウに表示させるんじゃなくて、エンターキー分の間があるのがね、良いですね。あれはなー、泣いちゃうなー。

パスワード入力で見れるおまけ会話では、グリノアのやるせなさがひしひしと伝わってきました。切ない。それにしても、もう一人が停滞の時と比べてわりと荒んでらっしゃっててちょっと意外でした。

 

[グラフィック]

 

顔グラがぼやけて見えるのはウィンドウサイズでプレイしていたせいでしょうか。これだけちょっと惜しかったです。

とはいえやっぱりマテンロウ計画さんところの女の子キャラは皆可愛いです。顔グラの表示場所がスライドするのは新鮮でしたねぇ。

特別な敵のドット絵も可愛いです。可愛いんですよ……(絶望)。

 

[一言]

停滞少女をプレイしたならこれもやるべき!と言い切っちゃっていいくらいの良作でした。

 

 

『lost brave』

 

[概要]

 

君の咎を確かめにいくRPG。で、いいんだろうか。メインキャラクターはクールな少女と妻子持ちのボロボロなイケメンです。

隠し要素まで回収してクリアまで1時間強くらいかかりました。

 

[システム]

 

自分でステータスの調整ができる上に、状態異常耐性まで操作できるキャラメイクシステムが一番の特徴だと思います。ステータス戻して振り直しがいつでもできるのも有難いです。

勿論、ジハードは力・ATは魔に全振りしました。極振りってロマンですよね! まあ隠しボスはさすがにそれだと厳しかったので耐性にも振りましたが……w

 

難易度選択ができるのもありがたかったですねー。ぬるゲーマーな自分は躊躇わずやさしいを選択しました。でもちょくちょくゲームオーバーになりました。ははっ。

 

あとは、バトルでMPがじわじわ回復するのも特徴でしょうか。じゅもんつかうなの方針だとすぐ死にますがガンガンいこうぜだと案外MPもきれずにさくさく進める感じです。普段MP節約気味の自分はそれに気付かず序盤でぽこじゃか死んでましたが、方針を変えたらすんなり進められるようになりました。死んでも復活、なんていうすさまじいパッシブスキルもあるので躊躇わずガンガン行きましょう。

 

マップの仕掛けもわかりやすく、宝箱を求めて歩くと全て練り歩けてすっきりしました。灯台のヒント機能には助けられましたし……w だってスクショとったり覚えたりするのがどうにも面倒な性質なんですごめんなさい!

 

[ストーリー]

 

自身がおまけ部屋で語ってらっしゃるように、色々と明かされないまま終わるところもあるのは確かです。他の作品と関連しているところが多いみたいですし、作者さんなりの世界観がしっかりできているのはよくよくわかるのでとても気になりますねぇ。設定資料集的なもの欲しいなー。特に、どの作品にも出てくるティスカがどういう位置づけなのかが知りたいです。

それでも本筋のストーリーはしっかりしているので、プレイ後の気分はすっきり。もう一度OPに戻るとあれが誰の言葉だったのかもわかって素敵です。だからOPとEDがリンクする作品は総じて良作なんですよもう!

 

[グラフィック・BGM]

 

何よりもまず、ステータス画面の二人が可愛いです!キャラデザも好きだなあ、ジハードさんの見た目はぐっとくるものがありますね。あんなイケメンをおじさん呼ばわりできる少年少女、流石。

メニュー画面が自作らしいのも凄いです。説明や無駄な欄を削除してすっきりしたデザインで、始めたばかりの時はちょっと戸惑いましたが、慣れるとかなり便利でした。

BGMとしては一番初めの、地下水道の曲が好きです。

 

[一言]

ファースデール精神病院が好きな自分には嬉しい一作でした!本当はこっちのほうが先なんですけどもね。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

いやー、楽しかったです!

 

 

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フリーゲーム「だれかのかがみ」感想

「ぽしょりとぽつりとぽそりの違い」

耳元に近いかどうかで決まる気がする前置き。

 

 

えー、今回はウミユリクラゲさんところのフリーゲームだれかのかがみ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

濃密な魔力のある、一本道百合ノベル。

魅力じゃないんです魔力なんです。すさまじい、圧倒されました。

 

というわけでさっそく良かった点など。

一部シーンのネタバレを多く含むほか、既プレイの人にしか通じそうにない書き方が多くなっています。ご容赦。

 

 

 

おねロリ年の差百合、の皮をかぶった別物

 

ぎこちない恵音の緊張をほぐそうとする棗や、年相応にお化けめいたものに怯える恵音を見て、ほのぼの家族物かなと思いながら読み始めたのが序盤。恵音の小さな願望を膨らませ、まるで魔法のように引き上げ、そして落としてしまう展開に濃厚な百合を感じたのが中盤

そして終盤になり、全てはひっくり返ります

もっとぼかして書きたいんですが、もうね、こういうふうにプレイした時をありのまま振り返ることでしか語れないんですよこの作品。既プレイの人には通じますよね、通じて欲しい、この読み手の意識や感覚が驚くほど滑らかに変えられていくこの感じ!

 

なんだろうな、俗っぽい属性付けをすると「年の差リバ」で終わるんだと思うんですけど、そういう枠に当てはまらない濃密な空気があるんですよ。身近に感じていた人たちが、急に二人の世界へ閉じこもって遠くへ行ってしまい、かと思えばふいに傍で佇んでいるような感覚です。

二人だけの世界! 魔性の百合!

雑に書くならこうなんですが、この枠ではとうてい収まらない濃厚で混濁した純度の高い空気があります。わからない? やればわかる。

 

 

たった二人の、万華鏡のような関係

 

登場人物は、本当にまったくの“ふたり”です。余計なサブキャラが出ることも無く、何かの影が見えることはあっても、干渉されることはありません。

だというのに、この、何人もの“誰か”が息づいているような雰囲気! これがもうたまらなかったです。

 

素敵な女の子になりたい、かわいい恰好をしてみたい……

とても“乙女チック”な願望が作中第一のターニングポイントになります。

まずはこの願望との向き合い方の描写がとてもうまいなと思いまして。片や、男っぽくてがさつで部屋の片付けもしない棗。片や、私には似合わないと言いながらもチラチラとレースを覗き見てしまう恵音。まるで対称的に見えちゃうんですよねぇ、これが。

 

で、ある意味暴力的な変化から、さらに二人の関係は変わっていくわけですが。演じているキャラと素の私と作った私がどんどん混ざって、二人の関係性もシーンごとに代わっており、それに違和感を抱かなくなっていく……どんどん立ち位置がわからなくなっていくような読み心地のノベルでした。

 

もっと本質を突くような書き方をしたいなあ。

どうしてもこの作品、プレイして感じるところが多くて、表層的な部分を追うしかない書き方になってしまいます。うぅ。

 

 

 

生々しい女の子像と、フィクションの乙女が交錯する展開

 

やっぱり印象に残っているのはあの、恵音が棗の地雷を踏み抜いてしまったシーン。それに対する棗のアンサーであるあのシーンもなかなかにその、エグくて、いい意味で鳥肌が立ちました。

あれはもうね、女の子にしかできない報復の仕方だと思うんですよ!

ここだけではなくて、作中ではあちこちに“女の子”が根付いています。

 

で、思ったんですが、女の子と乙女って違うんですよねぇ。もしかすると作中で少女と語られていたものもまた当てはまるのかもしれないのですが……。

お酒を飲んでサバサバと恵音を切り捨てる棗は確かに、大人の女性なんですよ。すごく現実的、だというのに例の“乙女”のシーンは濃密な質感を持って上映されていく。まるで女学生でしょう、本当、あれを説得力持って同じ人物の話として描けるのが感服ですよ。

で、うっとりするほど淫靡なシーンを挟んだうえで、「男娼」「キャー!」のあれです。突然夢が冷めるような、でもどちらもすごく女の子らし過ぎる会話で、本当生々しさに頷いてしまう。ああいう世界が好きな子って、するでしょうああいう会話。わかるって叫びたくなる、けど現実味がないくらいフィクションで塗り固められている登場人物達! もう何なんだ、読んでるこっちは大混乱で、でも確かに納得できる地盤のうえで読み進めていけるんです。

 

書いてる私がもう混乱してますね。すまない。

でもありのままの感想を書くなら本当にこうなんです。

決して、わけがわからない、ではなく。どこにいるのかわからなくなる・誰かわからなくなる、けど、“ふたりのはなし”であることは明確な事実として実感できる、そんな感じでした。

 

 

 

 

とまあ、普段以上にふわふわした書き方ですけれども。

ともあれ、濃密な世界観と圧倒的な展開力があったことは確かです。

 

現実と虚構が入り混じる世界、意外な一面や衝撃的な展開、リアルで生々しいキャラクター、年の差百合、自分で考えながら読み進めるストーリーなどにピンとくる方へおススメしたい作品でした。

 

追記ではネタバレ込みの感想など。

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フリーゲーム「ドライエック」感想

「何十の目が向いていたって、あなたがそっぽ向いてちゃ意味がない」

君だけが欲しいなんて寂しすぎるな前置き。

 

 

えー、今回はへもへもさんところのフリーゲームドライエック」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

主要人物3人の視点で進む、恋愛ノベルゲーム。非乙女向けとありますが、女性向けではある気がしています。

というわけで良かった点など。

 

 

鬱の一歩手前で踏ん張る、ままならなさのお話

 

まず書いてしまうと、衝撃的なシーンがかなりあります。ドロドロと底意地悪い感情も描かれていますし、リアルさにウッとなるシーンもあります。

が、驚かされることに、読みやすいという印象もありました。読んでる側のストレスを最大限に軽減したうえで、彼らの物語と心の傷へスポットが当てられている感じ。鬱展開って多かれ少なかれ心に刺さる部分があると思うんですが、他の鬱作品によく感じる「理不尽さ」「話を聞かない苛立ち」がほとんど無かったんですよね。

これは香枝ちゃんの功績が大きい気もします。彼女が言うことを言えずに泣き寝入りしてしまう性格だったら、鬱よりも怒りのほうが強くなって(もちろんそれも別の楽しみ方ができますが)、フラットな気持ちで彼らを見つめられなかったんだろうなと……。香枝ちゃんがぐっと腹に力を込めて物を言える子で本当に良かった。

 

また、「読者を虐めてやろう」「コイツにこんな酷いことをやってやろう」みたいな厭らしさもなく、あくまで「ままならない」「やりきれない」からこそ起こる酷い行為が多かった気がします。前者に振り切ると鬱というよりB級ホラーな楽しみ方になるので、少なくともこの3人を中心とする物語には合わなかったかなと。だから、作品の方向性を決めてしっかりと留めるところは留まっている作品だと強く思います。

 

まとめると、シリアスや鬱というよりは、人間ドラマ。

バランス感覚がすごく良い作品でした。

 

 

 

嫌なものを直視させることを躊躇わないスチル

 

前述の通り、あの3人の内情を丁寧に描いている作品なので、キャラの気持ちが折れかける展開も誠実に書かれています。

その手法としてかなり効果的に使われているのが、スチルと立ち絵!

香枝の例の黒背景なシーンとか、礼への初めてのおねだりのシーンとか、もうね、呻きました。心に刺さる、辛い……!

でもこうやって目に見えて、ある意味滑稽な辛さが突きつけられるからこそ、感情移入もしやすくなるし、キャラを身近に感じる気持ちが最高潮になるんだと思うんですよね……。

こういった暗い部分も余すところなく光を当てて見せつけることで、逆に、その後の変化もしっかり見せてくれる手法だよなあと思います。隠したまんまじゃ光るものも見えなくなる、みたいな。

 

 

 

視点の違い、見え方の違い

 

導入の3視点がもう凄いんですよね!!

詳しくは追記に隠しますが、プレイ前とプレイ後で印象が全員ガラっと変わりました。なんだろう、当然そうまとまるしかないんだけどその過程は彼らにしかないものだった、みたいなところが素敵なんです。伝わるかな。伝わってくれ。

印象が二転三転するけど、キャラの根幹の性格自体は変えたくたって変えられないものだから、一本筋に見えるんですよねぇ。3視点というのもありますがそれ以上に、読んでいるこっちの見え方も変わる不思議な感覚を味わえました。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

いつも以上にふわっとしたことしか語れていませんが、巧妙で素敵なお話なのは確かです。便宜上一応ヤンデレ分類タグも付けますが、もっと違う恋の話という気もしました。

 

現代日本、妄信と葛藤、好きな人への執着と他者への無関心などにピンとくる方へ。

 

 

追記ではネタバレ込みの感想など。

 

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