「にゃんこと甘いものは心のいやしです!」
お願いだからせめてこれだけは取り上げないでほしい前置き。
えー、今回は禁飼育さんところのフリーゲーム「スレガル」「縛り神父」「SAGO」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
どちらも無垢な少女(ゲス顔はする)と糸目の悪い大人が恋愛する、一本道ノベルです。
キャラクターは共通していますが、世界観や基本的なあらすじは全く異なるパラレルワールド系なので単品でも大丈夫。ただ、特に「スレガル」と「縛り神父」はセットでプレイすると面白いギミックを味わえるとは思います。
「スレガル」のほうがR18えろげなのですが、自分のプレイ順がスレガル→縛り神父→SAGOだったので、記事もその流れで書きますね。公開順と逆回りにプレイしてるのでこれからプレイ予定の方は要注意。
『スレガル』
[概要]
魔法学校に通う少女このりが糸目教師ジドノと出会い、余計なところへ引きずり込まれてしまうお話。後味は明るいけど人によってはかなり痛むタイプ。鬱展開、ヤンデレ、他。
[キャラクター]
ヒロインは禁飼育ゲーだとおなじみ、冷めた心境も吐露しつつ恋に恋するノリ良き少女。顔芸有りぼっち有り。
自分が性的な搾取の目に合うとは一切思っていないヒロインっていいですよね。
ジドノ先生は笑顔が気持ち悪くて最高です。失礼で申し訳ないんですが、このりと並ぶと性根がにじみ出るかのような笑顔だなあと思います。
あと、追い込み方が上手ですよね。回復というより言葉の魔術師というか。悩む間も見せずにああいった的確な言葉がポンポンと出せる辺り、頭の回転がめちゃくちゃ良いんでしょうね。なぜその才をこんな方面に使ってしまうのか……だからこそ培われたのか……うっうっ。
校長先生は空回りっぷりがこう、虚しさを抱かせる人でした。もっと明確に敵と敵とみなせる人だったら良かったんだろうなー、なんて。でも根が優しすぎるほどだからだろうとも思います。
[世界観]
このりを見てぼんやり現代日本な世界観なのかなーと思っていたのですが、ふたを開けてみるとびっくりハリポタ世界でした。
きらきらした画面効果や、画面を彩るメルヘンなフレームなど、魔法と聞いて思い浮かぶハッピーでロマンティックな演出が輝きます。
一方で、儀式で開く扉や不気味な呪い、妖精さんの差別的な扱い、地下牢と人外化、等々。魔術と呼ぶべき仄暗さがあるのもこの作品の特徴です。
メイン二人の交流だけでなく、サブキャラを通じて世界観を感じさせてくれるのが素敵でした。これぞファンタジーですね!
[ストーリー・演出]
不穏な予感からドンと突き落す、この展開が絶妙です。
「怪しい行為だと思うんだけど、もしかすると考えすぎかもしれないし、いやそれって現実逃避だけどさ……」みたいな、ぐるぐるしつつ身体も動かせないし嫌とも言えないこの混乱具合が大好きです。生理的嫌悪感みたいなものがひしひし伝わります。
乙女的な幼稚で色っぽい妄想を男が生々しかったり汚れたりするものでグジュグジュにぶっ壊す流れがとても好きです。一方で、序盤と終盤は糖度が高くなるので、乙女ゲーとしても味わえます。
演出としては、あの猫さんマジカル発表会ですね。既プレイの方には伝わりますかね。初めて見て驚き、二度目のあまりの直球さにぎょっとしました。ああいう、ポップに背筋の冷えるもの大好きです。
画面装飾は控えめですが、渦巻く画面演出と蛇のモチーフが噛み合っているなど、こちらに「想像させる」怖さやえげつなさがあるなあと思います。
[一言]
まさにここでしか味わえない作風、明暗が一貫した雰囲気の中で成り立っている一作でした。
『縛り神父』
[概要]
ドット絵可愛いミニキャラたちが、西洋な雰囲気の世界観の中で、呻いたり嘆いたりニートしたりしながら少女を救おうとする話。
[キャラクター]
某キャラの設定が、スレガルをプレイしていたからこそ驚きでした。こういうトリックは本当、「やられたー!」ってなって楽しいですね。ああいう、隣人な展開大好きなので嬉しかったです。
スレガルでは見られなかった新キャラ、マリくんも魅力的です。朴訥とした良い子は愛でたいですよね。初めは青年だと思っていましたが、話慣れてくると意外と中学生くらいに思えてきました。
あと、このりはこちら側のほうがこう、洗脳されきってる感じがして、しみじみと痛々しさがあります。健気さも光りますが。自己嫌悪の理論を叩きこまれているのがあまりにも辛いです。好きです。
ジドノさんについては、個人的には同情の余地が無いと思うのであの終わり方はちょっと悔しくもあるのですが、それでも背負わずに済むと考えれば良かったのかなあとも思います。
[世界観]
この作品は「スレガル」のみならず、まったくの別作品も絡んできているようで、全ての謎は明らかにされません。ですが、関連作は予告宣伝されているので追うのは楽です。本筋であるマリカボルトやこのりのお話としては綺麗に完結しているのでご安心。
魔女狩り、神父、異端者と信仰者などなどにピンとくるならこの世界観はグッとくるはずです。
[ストーリー・演出]
何よりもまず、起動画面ですよね。
開始ボタンの意味が分かった時は鳥肌がすごかったです。あまりに熱い展開のストーリーと、あの選択肢の意味がかっちり噛み合ってゾクゾクしました。
グラフィックとしては、“可愛い”印象が強いドット絵をホラーな展開でもシリアスな展開でもよくぞここまで使いこなしてるなあとしみじみ。
また、お話としては主人公がマリカボルトというある意味で異物なのが効いてるなあと思いました。良い歳した大人であっても、頑張りたい・救いたい・変わりたいと思えてそれを許されるストーリー。大人のための少年漫画な展開だなあと感じました。
保護者という存在の明暗両面が感じられたのも良かったです。頼もしさ、身近さ、傲慢さ、管理される気持ち悪さ、等々。断罪とまではいかないし、片方が完璧にできた善人というわけでもないのがまた、いい塩梅です……。
印象的だったシーンはやっぱりこのりがバレたときのあのセリフです。もう呆然とするしかないですよね。マリカボルト側が下手に叫んだり連れ出したりするのではなく、まず絶句するというあの反応がすごく真に迫っていました。ああいう場面に出くわすと、どうしようもなさが真っ先に来ると思うんですよね……。
展開としてインモラルなのは「スレガル」だと思うんですが、心のダメージや鬱展開の衝撃という意味なら、こっちの方が闇は濃い気がしています。
[一言]
鬱展開を乗り越えるニートを応援したい人向け。
『SAGO』
[概要]
幼女がうっかり先生とサービスエリアへ行くことになった話。純愛100%。ほのぼの年の差。
[キャラクター]
禁飼育ゲーのキャラクターって皆、かなり多面的なんですよね。なんだろうな、鬼畜王子がスーパーでカレー粉買ってるの想像すると笑っちゃうみたいな……? どこかにいそうな人間味を出しつつ、異様な展開へ持っていくのがすごく良いなあと思っていまして。
で、上記二作がキャラの黒い面や弱い面を出しているとするなら、この『SAGO』は善人な面や人間らしい面を出しているなあと思いました。
疲れてると失敗しがち、わかるわかる!
まずいとわかっててもうっかり甘い言葉にノリがち、わかるわかる!
共感しやすく甘酸っぱい、幼い恋とおじさんの躊躇いを感じられるお話でした。
あとこの作品のジドノ先生はまだ衣装がまし。
[世界観]
サービスエリアの存在の通り、現代日本な世界観。うっかり高速に乗ってしまった際の回避術も学べます。
特に、遊園地とか公園とかじゃなくて、中継地であるサービスエリアに行きたいって言うところがすごく良いなあって思うんですよねぇ。場所は重要じゃなくて、ただ誰かと楽しくおでかけしたいっていう気持ちが出てると思うんですよ。すごく、すごく良い。
サービスエリアってなんか本当楽しいんですよね、すごくわかる、楽しかった……。お飲み物サーバーとかね、なんとも気の抜けた感じの漂う休憩所とかね、好きなんですよ。なんだかすごく懐かしい気持ちにもなれる作品でした。
[ストーリー]
ワガママは言えないけどやっぱりちょっと寂しい女の子が、大人の男の人に少し気分を軽くしてもらえるお話。……かと思っていたのですが。よくよく見ると、疲れた大人が子どもの幼くも懸命な励ましに心を救われるお話でもあると思うんですよねぇ。
このりとジドノ先生が相互に心をちょっと楽にしてあげてる関係性が素敵でした。子どもの背だと見れないところを見せてあげる代わりに、大人になって気づけなくなってたことを教えてもらえる感じ?
他作品の関係でジドノ先生にハラハラする気持ちが全くないと言えば嘘かもしれませんが……無理に黒く塗りたくらなくても、この話はこの話。子どもの頃のわくわくを大事にしてくれるお話として素直に受け取りたいなあと感じました。
[一言]
どっしり感あふれる牛乳ソフト、万歳!
とまあ、こんな感じで。
「スレガル」がジドノバッドルート、「SAGO」がジドノグッドルート、「縛り神父」はマリカボルトルートという印象が強いです。
子どもに対してずるい言い回しをする大人と、子どものためにずるい言い回しをする大人、両方楽しめました!
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