「隙間にコインをみっちりと詰めてみる」
取れなくなって損する前置き。
えー、今回はタンクタウンさんところのフリーゲーム「トラベラー改良版」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
ツクール製の一本道RPG。戦闘と探索の難易度はやや高めですが攻略に頼るとするする進む印象でした。もともとは英字タイトルで公開されていたそうなのですが、私がプレイしたのは改良版のほうになります。
というわけでさっそく特徴など。
ニヒルで俺様な主人公の織り成すダークストーリー
私のツボがこの主人公、ジェードのキャラです!
悪態つきがちで行き当たりばったりだけど根は優しく人並みに女好き、さらにはイカしたセリフ回しがかっこよくハマるこの感じ。そしてカッコイイだけでなくツッコミ役もこなせるしどうにもキマりきらないところがまた微笑ましい。いやあ、実に王道なニヒルヒーローだなあと思います。たとえ中二だと言われようがああいうウィットにとんだ比喩セリフ好きなんですよ。
より詳しくツボだったところは追記に畳むとして。
従者役のカーネリアンもところどころ頑固で可愛いし、メインヒロインのベリルもあほのこキャラかと思いきや驚きの設定があったりして、生き生きしたキャラ達も楽しかったです。小さい事件からどんどんとキャラの背景に切り込んで、話が膨らんでいくのもわかりやすくて素敵。
仄暗い展開も交えつつ会話劇は軽快に進み、綺麗にまとまっているという読後感の良いお話でした。
夢に介入して悩みを解決する神霊術師
作品の主な舞台は夢の中、戦う相手は夢魔。作中では何人かの夢にダイブすることになるんですが、この、導入の儀式が大好きでした!
草を焚いて宝石を掲げて詠唱して瞑想する、この流れ。こう、ゲームってどうしても長めの手順はワープポイントとかイベントスキップとかで流されがちじゃないですか。でもこの作品ではこういう儀式の手順をお決まりの流れとして入れてくれていて、すごくわくわくしたんです。
なにせ私はいつまでも魔法陣を書いたり竜破斬の詠唱をしたり大鍋で薬草を煮たりするのにあこがれを持つ人間なので、すっかり心をくすぐられてしまいました。
ぱっと使うのが吉のアイテム管理
夢に現実の物は持ち込めず、逆もまた同様。当然通貨も持ち運びはできません。
リアルだと当たり前のルールがRPGとして良い縛りになっていて、ストーリーとゲーム要素がしっかり噛み合っていました。アイテムを遠慮なく使い切れるのって気持ち良いですよね。もったいない精神持ちの私もこの作品ばかりは勇気を出せました。
ある意味詰む要素も無きにしも有らずなのでけっこうリスキーなシステムだとは思うんですが、無限湧きの薬草など、最悪の場合でもある程度稼ぐ方法が用意されているのも親切です。
デフォ素材を上手く味付けした演出
顔グラもキャラチップも基本的にはツクール既存なので、豪華で美麗なオリジナルグラフィックを求めるとなると確かに物足りなさはあるでしょう。
が、特筆すべきはこの素材の生かし方だと思います!
白黒の夢や赤色に滲んでいく夢、くるりと姿を変える精霊、意外なところに潜む敵キャラなど。色やマップチップの使い方が面白かったです。
また、ストーリー上必須のイベントのフラグがわかりやすいのも特徴の一つ。話を終えてちょうど移動しようとしたところで画面端に気になるキャラがひょこっと顔を出したり、通り道でふと空いた扉が目に付いたり。特に序盤はかなり丁寧に動線が読まれているなあと思いました。
一方で、サブイベント的に設置してある“スポット”についてはちょっと条件や場所がシビアすぎやしないかと思いもしますが……。メインどころはきっちり抑えてありますし、公式の攻略やサポート掲示板は手厚いのでなんとかなるのかなー、なんて。
あとは夢の区切りごとにNPCの台詞がかなり細かく変化していたりするところも見どころの一つかなと思います。会話分岐万歳。
RPGあるあるだと思うんですが、イベント終わった街に試しに遊びに行ってみて、本当に反応がもらえるととても嬉しいですよね。
とまあ、こんな感じで。
夢の世界、ほんのりハーレム展開、ニヒルでクールな言い回し、読後感の良いストーリーなどにピンとくる方へおススメです。
追記ではネタバレ込みの感想。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
ネタバレ注意。
ストーリー・セリフ
- 悪夢でうなされて目覚めた時の「懐かしい恋人に出会ってきた~」的なセリフ
- 魔王第二形態をお断りした時の「相談してくるから!」的なセリフ
- カーネリアンの「つつがなく~」
この辺りの台詞が好み直球でした。
あと、ガーネットの肩書が田舎娘からおしゃれ娘になっていたのにもくすっときましたねぇ。小ネタが楽しい!
テキスト面の魅力ばかり語ってしまいましたが、初の夢の後日談的な流れと言い、エンドロールと言い、サイレントな表現も上手だったなあと思います。イッシーは特に愛着のわくキャラなので、なおさら嬉しかったですねぇ。
夢として消えるとしてもあったかいものを残してくれるところが、優しいお話づくりだなあと思います。
そうそう、これは欠点とも良点とも異なるので表には出してなかったんですが、この作者様の文章ってかなり読点が多いですよね。サイト自体がそんな感じなので、作品限定ではなく作者様自身の文章の癖だろうと思いますが。
初めは慣れなくて説明書きを読んだ時点でかなり息切れしてしまってはいたものの、お話の中盤からは展開が楽しみすぎてそんなこと一切気にならなくなりました。ツクールはメッセージ枠が狭いから慣れるのが早かったというのもあるかも。
キャラクター
ジェード
けっこう色男っぽい行動もするので、カメオとのあれこれいやんな展開にはつい身を乗り出してしまいました。へへへ。俺様男だけど根は良いやつで微笑ましいし、師匠やベリルにイタズラしてやったり加虐心そそられたりしてる展開には釣られてぞくぞくしました。
ベリル
設定は本当ずるい、こんな一途な子大好きになるに決まってるじゃないですか! 私自身が全然気づいていなかったのもあって思わず舌を巻きました。
カーネリアン
理想の従者ですよね。黒髪ロングの淑女とか似合いそう! もっとお姉さんにもなってほしかったですが、犬姿に並々ならぬこだわりを持つ彼女も好きです。
フルオーライト
性癖の関係でヤンデレ妄信キャラになってほしいですしおまけシナリオのお部屋でずっと付き添ってる姿にたいへん萌えました。ありがとうございました。ごめん師匠。
続編の話がちらりと見れましたが、結局どうなったんでしょうね?
現状のサイトには続編らしきものはないような気がしているのですが。
もしかするとどこかで出ているのかも。
戦闘・難易度など
スポットは見ればわかるとあったのでかなり目立つのかと思いきや、おまけ要素に絡むせいかかーなーり探しづらかったです。ノーヒントだと絶対無理だった。
あと、おまけダンジョンのホーリーパワーはトラップだと思いますね……。私はまだ3枚残していたんでなんとかなったんですが、これマジックカード使い切ってどうにもならなくなって詰んだ人いるだろうなあと。とはいえレベルアップアイテムが気楽に狩れるので、極論ごり押しも出来るのはありがたいなあと思います。
マジックカードに収められるものを探すのも楽しかったです。無駄に毒を2回食らってしまいポイズンカードが増えたのは記憶に新しいハッハッハ。
ラスボス戦で爽快に全カードを使いきっちゃうのも気持ち良かったです。
総力戦とはこうでなくては!
仲間になるキャラも面白かったですねぇ。アゲートが出てきたときは爆笑しましたし、木村さん他動物の皆さんにはたいへんお世話になりました。カーネリアンも併せて気分はムツゴロウさんです。
鬱展開部分はもちろん好きですし、意外なところでの突っ込みや冴えたボケがとびかかってくるのも面白い一作でした!