「零しちゃったら洗えばいいよ」
だから涙も弱音も吐き出して良い前置き。
えー、今回はGreen Pochetteさんところのフリーゲーム「MILK」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
エンド分岐ありのフリーシナリオに近いRPG。ちょっとしたサブイベントや合成要素など、脇道に逸れながら進むのが楽しい一作です。
このゲーム、キャッチコピーも好きなんですよー!
「事態はとっても深刻、でものんき。」
まさに作品を一言で表しているなあと感じます。
世界観が一部過去作と共通しているので、『cocoa』辺りはやっておくと理解が深まるのかも?
せっかくなので以下では過去作もちょこちょこ話題に出しますね。
というわけで良かった点など。
ほのぼのに大匙1杯のシリアス
人類どころか生き物が全て滅んだ世界、という舞台がお気に入りです。
探索を進めると色々と“生きていた”跡が見つかります。誰もいない廃墟、食べかけで放置されたままのお皿、壊れた樽や放置された爆薬など。こういう、物言わぬところでしんみりと終わりを感じさせる雰囲気が好きでした。
そんな中、いい味を出しているのが意外なほどのんびりなサブイベントです。たまたま出会った皆が手を取り合って、ちょっとした助け合いコミュニティを作ってる優しい雰囲気。
ラーメンイベントのわいわいやってる感じが好きです。
あと、うさちん!
固い単語を選びつつゆるい喋り方をするのがすごいツボなんですよね。「さようか~」のゆるさがほんっと好き。なんかすごい好きです。
で、ゆるゆると進むかと思いきや…………なシナリオも有り。のんびりしたテンポになじみかけたところだったので、ドカンと鈍器で頭を殴られるような衝撃がありました。でも、こうやって優しさだけで終わらずに、鬱展開も踏まえて、まったり笑える雰囲気が好きだなあとも思います。
自由度の高いマップ
前々作の『Espresso』でもあったフリーシナリオ風のマップが、今作はさらに強化されています。目的地もやるべきシナリオもきっちり明示されるのですが、そこへ行く道のりは自由な感じ。あちこちうろついたら見覚えのある場所に着いている、お散歩みたいな感覚が楽しかったです。
迷子になりやすい私のようなプレイヤーのために、いつでも見られるマップがついているのも嬉しいところ。方角形式ではなくマス目形式で描かれているのもわかりやすくて助かりました。ワープポイントが多いのも良いですよねぇ。
選べる道筋が多いのに加えて、探索ポイントが多いのも好きでした!
あちこち探索してちまちまアイテムを拾い歩いていくRPG大好きなんですよ~。室内の家具や草原の草花など、マップチップもこまごまと凝っていて、色々見て回るのが楽しかったです。
サブイベントやスキルに関係するアイテムは吹き出し表示で見やすくなっているので、探索が苦手な人でも一通りのアイテムは集められるのではないかなー、なんて。
自分のおうちとステータス振り分け要素
プレイヤー独自の色を表現できる要素が多いのもポイントです。
例えば、お部屋の模様替えシステム。いくつかあるタイプから自分の好みを選ぶのも、出来上がりがどうなるのか見るのもドキドキしました。種類が豊富なのも楽しいところ。
初めは名前の響きから錬金術インテリアを選んだんですが、色々見た後だと森インテリアが好きかもなあと思います。ある程度物があって落ち着きもあるお部屋が好き。
また、レベルアップの概念が無い代わりに、ステータスを割り振れるのも自由度の高さが感じられる点です。アイテム制なので、一応やろうと思えば縛りプレイもできちゃったり。自分だけでなく仲間のステ振りができるのもポイントですね。
前々作の『Espresso』ではフレーバー要素だった主人公の性別が、今作ではがっつりイベントやエンドの違いに絡んでくれます。性別差分があるとついつい見たくなりますよね。楽しかったです。
集めて作って一手間かけたくなる合成システム
『cocoa』の感想で「枝豆の筋取りが好きな人は合いそう」という伝わるのか不安な例えをしてしまいましたが、今作ではその筋取り作業が実際に組み込まれています。やったぁ!
いや、字義通り枝豆を作るわけではないのですが。
あちこち歩いてアイテムを集めてきて、合成で物を作ってみたり。強化素材は糸紡ぎの機械で加工してから初めて使えるようになったり。畑に種を撒いておいて、探索して帰ってきてから収穫したり。そういう、経営ゲームっぽい要素が組み込まれているのが楽しかったです。自分の手で復興してる感じが楽しかったなあ。
ちまちま色々集めたり増やしたりするのって、なんかいいですよねぇ。
余った素材をリサイクルできる機能もあって、作り損や集め損がほとんどない、あるもの全部を使い切れる気持ち良さも味わえました。
変わった画面演出
さて、グラフィックが独特のゆるいデフォルメタッチで可愛らしいのもポイントなのですが。
グラフィック面で特筆したいのは画面の使い方です。
登場してきたボスの攻撃が、なんとゲーム画面に直撃しちゃったり! 次はどんな壊され方をしちゃうのかなと不謹慎ながらわくわくしてしまう楽しさがありました。
あと、エンドロールの入れ方も大好きですねぇ。ああいうのされると不覚にも泣いてしまいます。
しっかりゲームをしている一方で、演出は映画っぽかったといえるのかもなー、なんて。
惜しいと感じる点
一方気になる点としては、
- 一部ステータスに差がありすぎる
- アイテムの種類に対して使う機会が少ない
- 元凶の設定
辺り。
まずはステータスから、私は2周してざっくり「物理型」「魔法型」で作ったのですが、いかんせん魔法型が弱くなってしまって参りました。腕は攻撃も防御も上がってくれるので固くて強いアタッカーになってくれる一方、頭は攻撃とMPなので魔法を唱える前に倒されちゃうんですよねぇ。強いボスは物理寄りと言い換えてもいいのかな。
現状は腕ステが体ステも兼ねている感じだと思うので、
腕:物理とHP 頭:魔法とMP 体:防御全般
にしていたら魔法不遇感は薄れていたかなと思います。
次にアイテムについて。装備品は「やかましいキノコ」が一強なのが少し惜しかったなあと思います。『Espresso』の時はキノコ自体が弱かったので複数行動も納得だったんですが、今作だとデメリットがほぼ無いうえにけっこう発生率が高いので、ちょっとバランスブレイカーかも。
逆に料理は効果が少し薄かったかなあと。ただ、時限式なのはすごく斬新で面白かったです!
ラスボスについてはネタバレを避けられないので追記にて。
とまあ、こんな感じで。
一部大味も感じられますが、全体的にゆるーい雰囲気のゲームなので、らしいと言えばらしいかも。マップ等のシステムはかなり親切ですし、難易度も易しめ。
イラストや世界観が気になったら是非プレイしてみて欲しい一作でした。
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以下はネタバレ有り注意です。
物語の真相もネタバレしてしまうので、未プレイの方はご注意ください。
エンド分岐条件など
何故かイベントを無視して進めばバッドエンドに辿り着くと思い込んでしまい、けっこう探してしまったので自分用の攻略のメモがてらまとめます。
恋愛エンドの条件は(たぶん)二つの探し物を探し終える前にアンさんの探し物二つをコンプリートすること。
男:ラストの選択肢で共通/恋愛に分岐
女:ラストの選択肢でバッド/恋愛に分岐
恋愛エンドの条件を満たしていなければ共通
みるくんBADはあってアンさんBADがないのも、色々考えが膨らみますよね。アンさんは一人で生きていけるタイプだけど、みるくんは誰かに望まれて誰かのために生み出された以上、自分のルーツには抗えなかったのかなー、なんて。
全部のサブイベントをコンプすると掲示板に全員分の似顔絵が出るはず……
と、思っていたのですがホルスタイン氏だけ何故か似顔絵が出てきません。何か見逃してるのかも。
ラスボスについて
まず、ここを語る前にうさちんについて触れないといけないんですが。
あのうさちんエピソード凄かったですよね……!
確かに『Espresso』の時だってキノコたちはABCDEついてたのにうさちんはうさちんだし、うさちんズとすら言われないんですよ。そりゃ、そうですよね……。回想シーンを見てやっと気づきました。
しかし、あのゲームってやろうと思えば全く休息せずに進めることもできるので、もしかするとうさちんの回想イベントを見ずに終わった方もいらっしゃるのではないの、かなと……? でもあれは必見ですよ、心が刺されるような気分でした……。
で、うさちんのことを想えば想うほど、元凶を憎く感じてしまうわけで。
その憎さのはけ口と言うか、行き場がないまま終わるんですよねぇ。そういう負の気持ちを表には出さずに終わろうという、許しや優しさに溢れている雰囲気こそがこの作品だと言える気もするのですが……。
勝手な妄想ですが、たぶんこの作者さんは悪役としてのキャラクターを生むのにためらいを感じる、優しい人なんじゃないかなあと思うんですよ。人と魔物が手を取り合う世界といい、『Espresso』の時の魔王や悪魔といい。それで、デウスエクスマキナ代わりに作者様自身をぶち込んできたんじゃないかなあと思うんですよね。
でもそれをされちゃうと、どうしようもなくて。かといってこんな楽しいゲームを作ってくれた作者様を殴りたいわけではないんですよ、だからおまけボスも過去作キャラという意味で楽しくはあったけど納得はいかなくって、うーん。
けど、あのポジションにいるのがあの桃色熊とまったく同じ性質を持つ別キャラだったとしたら、それはやっぱり悪役でしかないキャラクターを作ることになってしまうことになって、作者様が躊躇われるところだったんだろうなあという想像もつくんです。だから堂々巡りで、書いても仕方のないことなのかも。
ああーでも、やっぱりほんの少しだけぐっと飲み込む苦い気持ちがありました! うさちんを好きになりすぎたんだと思います!
エンドについて
念のためもっかい大前提を書いておくと、あのエンディング自体は好きなんです!
BGMがすごいまったりしてるのもこの作品らしいなあと思いますし、タイトル画面BGMの使い方もうまいですし。
ああいう、それぞれのキャラクターがそれぞれの道へ行く展開って込み上げてくる気持ちがあって良いですよねぇ。アンさんのこれからがエンドによってガラッと変わるのも、主人公がかなり影響を与えたんだなあと思えてしみじみします。無口主人公はどことなくクールキャラとして動かしがちなので、ツンデレアンさんとよく合うペアだなあとにやつきました。
あとアンさんや男主人公はキャラデザも好き。良い感じに絵になる二人ですよね。
みるくんエンドも良いですよねぇ! ああいう、どんどん人に近づいていく展開、好きな方多いんじゃないでしょうか。
恋愛エンドではベタ甘に一途で頼れる一面を見せてくれて、もうほれぼれでした。かわいいしかっこいいぞ!
他、うさちんと『Espresso』のあの先生は何か関係があるのかなあと想像したり、うさちんのお部屋が物であふれていたのは少しでも寂しさを埋めるためだったのかなと考えたり。
シッコクさんの変身には心を奪われたり。
おばあちゃんじゃなくておばあたんなのがさりげなく可愛かったり。
と、色々書きましたが。
全エンドを回収しておまけボスまできっちり倒してしまうくらい、あちこち歩き回って楽しんだ一作でした!
キャッチコピーでDLしたゲームは常に当たりだなあと思う今日この頃です。