「危険なものは非実在とは限らない」
魔法使いが寝煙草で倒れる前置き。
えー、今回はspice+さんところのフリーゲーム「サマーナイトミラクルミッション」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
ツクール製。選択肢分岐はあるものの、基本的には二ルートに分かれる、短編選択肢ノベル乙女ゲー。
ネタバレちょっとだけ触れるので、嫌な人は先にプレイしてみてくださいね。
というわけで良かった点など。
ドギツイヒロインのラブコメ、ゲー?
まず、主人公の夏夜ちゃんがなかなかの濃味です。ガッツリオタクでほんのり夢女子な言動と、THE中二な片メカクレな外見。まだまだ成長途中で前向きにも後ろ向きにもなれる感じが、先行きのドキドキに上手く繋がってくれていたように思います。
やっぱり私が近い陰気オタク気質なので、共感しまくったり、逆にし過ぎてちょっと逃げ腰になってしまったり、色々と面白い視線で楽しめました。
ぎょっとさせて平坦に戻っていくギミック
そして本作、もうこれを書く時点でネタバレになるんですが、おっと驚くギミックがあります。……このくらいまでなら書いても大丈夫かな、どきどき。
このギミックがものすごく自然なんですよねぇ。なんだろう、ゲームとしっかり噛み合ってるのが素晴らしいんですよ。プレイ中も、おや?と思いはしたのですが、それがこういう形で来るとは思ってもみませんでした。
なんというか、にやにやラブコメして油断していた脇腹をハンマーで殴りかかられたかのようなプレイ感。超楽しい。
で、興味深いのはその衝撃を引きずらないところです。
結構ガラッと雰囲気が変わるので、てっきりそのまま突き進むのかと思いきや、終わらせ方は原点回帰で締まるという。いやあ、思い切りが良いなあと驚かされました。
プレイヤーをギミックで驚かせて、行こうと思えばきっとそのまま突き進めるし、実際そういう落としまくる展開も私は好きなんですよね。でも、そこで思い切ってブレーキ踏んで、マイルドかつ万人向けにまとめてるのは興味深かったです。
清涼感と夏の夜を感じるグラフィック
この作者様のゲームは常にグラフィックがハイクオリティで、しかしながら他のシステム要素も楽しいのでついつい良点に挙げるのを遅らせがちになってしまうんですが……。本作は特に、作品自体がノベルゲームちっくなので、グラフィックが記憶に残りました。
まるで幽霊みたいな透明感のある立ち絵と、清涼感のある水色、夜を感じさせるほのかな影。タイトル画面の色使いが作品全体に染み渡っているような印象でした。
演出も上手いんですよねぇ。差し挟まれるスチル、少しずつ埋まっていくビンゴゲームのカード、ノベルゲーの静かな背景、等々。そして忘れちゃいけないニャーン。素晴らしかったです。
ドンドンパフパフ音とかの効果音も好き。
とまあ、こんな感じで。
その他、スキップ機能や会話中のセーブなど、ユーザーフレンドリーのシステムもばっちり。プレイしやすく、ちょっと不思議でパワフルな後味の短編ゲーでした。
追記ではネタバレありで軽い感想。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
フリーゲーム「999,Victory -Return-」感想
フリーゲーム「SweetSpiceSummoner! (すいーとすぱいすさもなー!)」感想
以下はネタバレ込々、伏字無しの感想。
ネタバレ注意。
ストーリーについて
ここまでまるっとハッピーにまとまるとは思っても見なかったので、かなり驚きました。そういう方向でまとめるのかーという。
虐め一歩手前のイジリ描写もありましたし、夜凪と夏夜の関係もけっこうドロっとしていたので、てっきりビターな味わいで終わると思ってたんですよ。で、それもそれで好きなので待ち構えていたんですが、それがふっと前向きに転じて、あれよあれよでまとまっていった感じでした。
雰囲気がアップダウンするので、ややまとまりのなさも感じたかも? でもパラレル世界線への移動やお願い事周りは綿密ですし、お手紙の流れもきっちり繋がっていてカタルシスはあるので、設定面は詰まってるのは確か。
とりあえず、ギャグとドロドロ、両方書けるのは強いなーと思います。
スチルについて
お気に入りのスチルは「頭なでなで」です。プレイ後に見ると納得感が強くって。
虫取るの好きな猫ってああいう動きしますよね。なるほどなー。あと単純にデフォルメ寄りの絵が可愛くて好きです。
うん、ざっくりこんな感じ!
繰り返しになりますが、効果音がにゃーんなのが本当好き。
そしてやっぱりギミックが最高でしたね。
ジジッと警告を出して、なんとなくやばいなと思わせて伏線にしている辺りが本当、丁寧で良い具合に驚かされる演出でした。