「現実逃避だと言える人こそ現実にいるとは限らない」
まずは自分の脚で立ってから引っ張り上げなきゃな前置き。
えー、今回はThunderSonia(サンダーソニア)さんところのフリーゲーム「ナイトメアの見る夢」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
選択肢で分岐する、夢の世界が舞台の乙女向け男女恋愛ノベルゲーム。
根幹のギミックのネタバレは避けますが、一部の要素や展開などは挙げてしまいますので、気になる方はプレイしてからどうぞ。
というわけで良かった点など。
紫基調のメルヘンなグラフィック
メッセージウィンドウ等々はオシャレな模様が入り、かつ縁取り文字で読みやすい見た目。登場キャラも片や艶の美しい金髪、片や空虚な印象の髪色で、グラフィックからして夢見心地な感じでした。公式紹介ページの雰囲気が作品と直結してるので、あのページが気に入ったならプレイして損はないかと。
こういう髪の塗り方どう言うんだろう、お絵かきしないので拙い言い方になるんですが、光を当てると輝いてみえるような雰囲気がいいなあと思います。
怠惰の裏にある幸せと背徳感
夢の世界が舞台、という時点でもう大好きな予感がしていた本作。
予想通り、夢を肯定するルートとそうでないルートがあるのですが、その中でもドリームエンドが一番好きでした~!
このままではいけない気がする、というぼんやりした不安と、それでいいんだと肯定される気持ち良さ……。最高ですね……。恋愛面でも危うい境界線の上に立っていて、エンド後はきっと踏み越えてしまうんだろうという予感がするのでなおさら、すごく興奮する展開でした。背徳感の書き方がとてもうまい!
甘ったるくいじわるに構ってくれる後日談
本編はシリアスで謎めく展開、一匙の不安感と共に進んでいきます。序盤はどちらかといえば主人公の記憶や夢の世界の謎などに注目され、暗中模索な雰囲気です。
が、恋愛がメインではない、というわけでもなくてですね!
それまで抑えに抑えられてきたものが終盤、そしておまけの後日談で解放されるこの勢いにたまらなくときめきました。言葉通りの意味でかけがえのない存在なのが天界からもひしひし伝わってきます。
何よりちょこっとからかい上手な年下だなんて皆好きですよ私は好き。からかうのも意識して欲しいからなんだろうな~! かわいいですね! かっこいいです。錯乱。
とにかく、糖度も終盤はなかなか高めでした。
色々できても何でもはできない魔法
やるなあ、と思ったのは作中での魔法の扱いです。
魔法というのは実に便利ワードで、ことフィクションでは何だってできるものとして扱われがちです。だからこそ、下手をするとシナリオ上の障害すら、魔法でなんとかすればいいじゃん、で片づけられてしまいます。
が本作では、夢の中だからできた、魔力が減ったから色が戻らない(のかもしれない)、彼女が魔法に疎いのは…、などの理由付けをしっかりとしてくれるんですよね。なので、この世界ではこういうことなんだなという知識と、それらしい辻褄合わせが両方できるという。ここ上手いなーと思います。
さらっと読みやすいシナリオだからこそ、読み流されちゃいそうな部分を詰めているところが好きでした。
とまあ、こんな感じで。
メルヘンでほんの一匙仄暗い作品をお求めの方におススメです。
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