「伸ばしきって保留され続けた余白はとうに」
千切れて燃え尽きていることにも気づかないなんてな前置き。
えー、今回は高野M明さんところのフリーゲーム「ごめん、まだわかんないや」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
VIPRPG、選択肢ありノベル、シリアスエロゲ。攻略可能キャラは凸シェイドⅢ、ウォーターⅠ、ミルミ。そして顔グラは出ないけど一応ダー惚が主人公、でもよくいるナルシストダー惚ではありません。
VIPなノリも素材もあるので、その辺りは折り込み済みの人向け。
というわけで良かった点など。
さらっと伝えてくる重い設定
王からの依頼、世界情勢、この世界における魔法の価値、主人公の過去、ミルミとの確執、魔法具現化達との出会い、などなど、パーツだけ取り出して羅列するとかなり盛沢山。資料集もびっくりの分厚い設定をぎゅっと詰められていることが伺える作品です。
なんですが、これがまあ見事なことに読みやすい!
なんだろう、文章がどれもテンポよくて、会話だけでも序盤に最低限のところは把握できるんですよね。匂わせている関係性が仮に察しがつかなくても、きちんと途中から回想シーンを挟んで明言していってくれるので、色々と把握しやすいですし。
要は、よくこれだけの背景事情をこのボリュームに収めきったなあと!
厨二心が疼く文体
文体がかなり独特です。そして大好きです。
主人公はいわゆるやれやれ系ですが、見事なことにテンポは良いんですよね。特に終盤のバトルシーンの疾走感は、本当にヤバイ。脳汁出ます。ただ短文を連ねるだけじゃなくて、カッコイイ比喩や心にズガンと痺れる一節を交えつつ“熱さ”を出してくれるのがめちゃめちゃ素敵! もうねー、トランプのくだりとか、自然と体が動き出していた例のシーンとか、大好きなんですよ。
表向きクールでシニカルだけど熱いものは持ってるぜ、みたいなレグルスの性格が、文体にもう表れてる感じ。その熱さが恋の時もあれば自分の生き様の時もあり、世間に倦んだ暗い情炎の時もあるところがまたよいです。
闇堕ちもハッピーもお手の物
序盤から実はけっこう詰んでる状況なだけあって、世界観はダークです。展開も鬱寄り。
初回プレイ時は一途に愛を育もうとしたところで、魅惑的かつ明らかにアウトな選択肢がしれっと見えたので、思わずうきうきしながら選んでしまいました。結果は闇落ち一直線でした。やったね。
そんなわけで、鬱展開に陥る選択肢はもう見るからにマズイと分かるよう作られています。なので、厨二だけど女の子が可哀想になるのはちょっと……という紳士的な方にも楽しめるかと。
なお、フォルダ内には攻略テキストが同梱済み。エンドの種類も豊富でハーレムも純愛も家族愛も凌辱も味わい深かったです。
本作の主人公はダークサイドへ吹っ切れるルートも、輝く未来を諦めきれないルートもあるんですが、そのどちらに転んでも当然と思える主人公のキャラ付けが上手かったですねえ。落ちる時はとことん落ち、明るい時は底抜けに明るいところも魅力的でした。
汁だくギラギラみさくら系
で、エロゲなのでR18なところも書きますが。
喘ぎ声はみさくら系。んほぉってやつ。画風は強調が強めと言いますか、出るとこは出るし出すものはどばどば垂れる豪快な感じ。あとは性感帯は尖れば尖るほど良い、みたいな。
シチュは二分されていて、ノリノリ発情エロと、シリアスダウナー凌辱のどっちかです。私は後者のほうが好きだったかな。性欲を煽るというより性行為を通じて人間の尊厳やら理性やら前向きで健全な精神やらをぶっ壊していく描写のほうが際立っていたように思います。まあどっちにせよえろいので一向にかまいません。
よくある設定からズラしていくスタイル
私自身がVIP作品はかなり後になってハマったので、順当に多作を追ってきている方から見れば異論もあるかもですが……物珍しい設定が多かったなーと思います。
特に嬉しかったのは凸シェイドⅢ。よくあるツンギレじゃなくてこう、くすくす笑いながらからかってくる感じだったのが可愛かったです。好きではいてくれるんだとわかる安心感。そこそこ隙が多いところもキュート。こっちタイプの凸も増えて欲しいなーなんて。
ウォーターⅠはいわゆるわてりとは真逆な感じ? 大人しくてナイスバディで桂言葉様系。ミルミもぽややん癒し系ではなくTHE糸目キャラって感じで楽しかったです。
そもそもキャラのラインナップからして独特ですよね。特に、ミルミは五郎、凸はダーブラという風潮が強い気がするので、新しい扉開けて楽しかったです。
とまあ、こんな感じで。
この作者様のゲームはどの作品も作品同士リンクしているんですが、中でも本作「ごめん、まだわかんないや」をシリーズ導入の起点とするのがわかりやすい(気がする)ので、作者様追いするプレイヤーさんは是非。
ネタバレ込みの感想は追記より。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
VIPRPG「想い出とまわる君 ~Memories Of...~」感想
キャラクター感想。ネタバレたっぷり。
レグルス
見かけないデフォ名だなーと思ったところ、まさかのダー惚でびっくりしました。確かに魔導士だわ……。
まさに頭脳でなんとかするタイプの描写が多くて好きです。モテモテだけどマスターだからという気もするし、本人は内省的だし、やってることはやれやれ無双なのにあんまりそう見えないところも興味深いところ。「ミステリアスで危険な男を演じてきたつもりだが?」のセリフがお気に入りです。
同作者様の他作品でもかなり登場率が高いですよね。この作者様の、ナルシスト喋りじゃなくてダウナーな喋り方するダー惚は全部ここのレグルスの派生だと考えてよさそう。派生の出発点はレグルスではないかもしれませんが。
エロゲで主人公が快楽堕ちするのもけっこう好きなので、快楽かどうかはさておくとしても肉人形エンドの自堕落な感じはとても好きでした。
ミルミ
元々同作者様の他作品を知っていたので、なんとなーく予感はしていましたが、やっぱりガッツリ売春な設定でしたねー。好きな男との過去があったうえでっていうところがすごく滾ります。
なので彼女の凌辱シーンが一番好き。レグルスのこと好きだから反応したんでもいいし。開かれりゃ誰だろうがガバガバ受け入れる穴女になってしまったんだとしてもいいし。どちらにせよ鬱くムラムラくる良いシチュエーションでした。
ラストシーンで彼女とは絶対深く絡む時点で、まあメインヒロインですよね。もちろん彼女の汚された純愛も応援したい気持ちはありますが、指環持ってあれ持ったうえで曰く人形風情にフラれるミルミも惨めでムラっとくるので、つまるところどのルートでもおいしいと思います。
あと終盤のバトルシーンについて。BGMと展開、どちらを先に想定していたのかは存じ上げませんが、「これやりたいがために使ったな?」と言いたい感じ。ぴったりすぎて吹きました。
ウォーターⅠ
なんとなくわてりと書きたくない不思議。独自の色がきちんと出てるからかな。本編の流れ的にも、特別視したい子です。
特別視、ひいきしたい子、なんですけども。性格自体は汎用正規清純ヒロインなんですよね。尽くしてくれて、ドジっ子で、明るい未来を夢見ている、おっぱい大きくてえっちな子。いやあ理想の体現ですよ。ある意味すごく造り物のようで、痛々しさ、性的搾取されるための生き物って感じがすごくいい。
だからこそ二番手に終わりそうだなーと思っていたので、刺されエンドが楽しかったです。何を隠そう初めに辿り着いたのは凸派生の水刺されエンドだったので……。
勝手ながら、レグルスと引っ付くには奥手ピュアすぎて上手くいかないような予感もあり。刺されエンドくらいの情念燃やしてくれるほうが相性良くなる気もします。
凸シェイドⅢ
かわいいなーと感じているのは表で言った通りとして。
彼女の恋人エンドでの服装がイケイケ(死語)で印象に残っています。さも中世ですよという顔をしてああなったのも意外性があって楽しかったですしね~。
ニヤニヤ笑いながらずーっと着いて来てくれそうな、良い腐れ縁を感じる子でした。真っ先に彼女を攻略しにいったくらいは好きだしエンドもこの子との恋愛エンドが一番好き。
その他
あと書いておきたいのは、タイトル回収の仕方かな?
起動画面からしてああいう、誠氏ねを連想させる感じの二股セリフだと思わせるところが実にうまかったです。回収シーンで思わず声出た。
書きたかったことはだいたいこんな感じ!
ダウナーと熱血が半々な感じも、凌辱シーンや鬱展開も、良い具合に好みの合う一作でした。