うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「木精リトの魔王討伐記+」感想

「全員助けて絶対勝つ、あなたの期待は報われる!」

笑いと共にハピエンゴリ押していく前置き。

 

 

 

えー、今回はLemon sliceさんところのフリーゲーム木精リトの魔王討伐記+」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

RPGツクール製ですがSRPG(マス目上でキャラを動かしていく戦略バトル)が楽しめるという、斬新な一作。大長編で、私はサブイベント全回収のクリアでだいたい37時間かかってクリア。

痛快と銘打たれているとおり、明るく前向きな一作です。

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

 

成り行き任せで世界を救え!

 

師匠の代役として勇者に任命された、木精リト。仲間はワケあり落ちこぼれ、王や民からは期待されず、前途多難のこの度は果たしてどうなるのか……。

こういったプロローグから物語は始まります。

思ったのは、プレイヤーへのストレス軽減が上手いなあということ。雰囲気をギャグに戻すのが上手いと言えるかも。

悲壮な展開になりかければ漫才が始まり、辛い展開の中で覚悟を決めたシーンの後にはそれでもハッピーエンドをもぎ取るんだという力強い反論が付いてきます

この手法、多用しすぎるとプレイヤーも慣れてくるかと思うんですが、逆に本作はそれを逆手にとって天丼の笑いへと変えてくれます。

そうです「エドガー病」です。

終盤にはそれこそ、馴染みの店を覗く時のような親しみを抱いてしまいました。

 

絶対みんな救われるハッピーエンドがいい! というプレイヤーさんに、安心して勧められる作品だと思います。※202210現在は公開停止

 

 

 

+でリメイクされた古来名作

 

さて、私がプレイしたのは「+」と銘打たれているリメイク版。無印の本作はサイトの表記が2004とあり、かーなーり古来から根強く人気を誇る作品になります。

だからこそ、古き良き雰囲気を感じるんですよね~。テンプレを茶化さずきっちりやり切って、王道として魅せてくれる感じ。

落ちこぼれの成り上がりというと、今(2021年)はざまあ系が主流なのかな? 私がそういった、少し毒のある作品群に触れてきたということもあって、本作の文脈はなかなかに健全でした。

 

序盤にあった、リトが「善人」じゃなくて「世間知らず」だからみんなに手を差し伸べられるというくだりが私大好きなんですよね~! その世間知らずに、苦境を知ってる仲間たちが乗っかってくれるところも好き。無知に手を伸ばしていたリトが、だんだんと己の意思で守りたい救いたいと思えるようになる──そういった成長物語の側面もあったように思います。

まあ、善性が押し出される話ではあるので、お説教臭いと感じるシーンがなかったとは言いません。ご都合主義とも言えますし、敵役の扱いやすんなり壊される障害に拍子抜けする面は確かにありました。

でも、本作はこれでいい。これがいい。

「どうあがいても全員生かして救ってやる!」というこの味わいが、このまま貫かれたのが、気持ち良かったです。

 

一方で、今の価値観からするとちょっと危うく見える掛け合いなどもありますエドガーとレオのBLネタや、リア充爆発しろネタの扱い方は、うーんと思うところも。

ただ、リメイク前の2004年、公開当時にプレイしていたら私もうっかりすんなり受け入れていたかもしれません。時代による表現方法の違いという気がしますね~。

 

 

 

勇者魔王物から少し転じて

 

興味深いのは、勇者が当人の資質ではなく、アイテムによって成り立つところ。勇者の証をかざせば皆が道を空け、悪い輩にはずずいと証を突き出して戦闘開始。まさに水戸黄門の心地です(とプレイ時にメモしていたらまさにそれを意識した作りだったことがプレイ後に判明しました)。

これ、いわゆる勇者モノのお約束に理屈をつけて解決する手段でもあるんですよね。この時点で設定が面白いなと。

ここだけでなく、物語が進行するごとに、こういった各種システムとストーリーの絡みにハッとさせられることが増えていきます。ただ用語を並べ立てるのではなく、プレイヤーとしても親しみや納得を感じられる方法で世界観説明が行われるので、自然と熱も入りやすいストーリーでした。

よくあるテンプレ展開から、この作品独自の展開へ進む流れがとてもスムーズな一作です。

 

 

 

表情豊かにイチャイチャわいわい!

 

さて、ここでグラフィックやキャラクターについて。

目を見張るのが顔グラの種類の多さです! メインキャラはいわゆるRTPキャラと呼ばれるデフォ素材キャラなんですが、この表情差分の多さでかなりの個性を感じられました。どっかで見たことのあるエドガー、ではなくて、リト世界のエドガーって感じ。

 

この個性は見た目だけに留まりません。

最も熱いのが、キャラの掛け合いセリフの多さ!

たとえボス前でも笑いは欠かさず、常にわあわあと盛り上がるキャラクター達見たさに、プレイする手もグイグイ進みました。恋愛イベントが多いのも、CP厨な私としては嬉しかったです。

NPCのセリフも個性的&進行状況によって変わるという細やかさ。

 

何より驚かされるのが、個性づけの巧みさなんですよね!

ちょっとしたシーンで一・二回であっただけのキャラでも、再会した時に「ああこういう人だったなー」と思い出せるんですよ。これ、長編RPGで大事。すごく大事。

特に終盤、勢ぞろいするキャラクターの数はまさに圧巻の一言でした。まさに一人一人、キャラが立ってる作品です。

 

 

 

マップがそのまま戦場になるマス目型バトル

 

ストーリーばかりに目を向けたので、システムについても。

やっぱり特徴的なのはバトルでしょう!

バフデバフや状態異常が普通にRPGと同じような感覚で作られているのが特にポイント。その辺が重要なのはコマンドバトルと変わりないんですよねえ。何分、SRPGと言えばファイアーエムブレムで育った私としては、SRPGでバフがかけれるというだけでもかなり新鮮でした。

 

フィールド探索からぬるっとそのままバトルへ入るのも、かなり斬新なプレイ感覚です。

だってマップに落ちてるアイテムがバトル中に拾えるの、すごくないですか!? というか、戦闘用の別地帯へ切り替わるんじゃなくて、シームレスにその場でバトルへ移行する、それだけでもうすごいんですよ……!

探索中は通りすがるだけだった障害物が、バトル中には厄介に感じるなど、地続きだからこその難しさや発見があって面白かったです! 魔法が地形型と対象型に分かれているのも、幅があって楽しい……。

 

難点を上げておくと、1戦に時間がかかるので、挙動がもっさりとしていてテンポは遅めかな~と思いますね。ただ。その戦闘自体が癖になる面白さだったので、個人的にはやっぱり楽しめました。

あと、マップデザインが綺麗! 色欲の空間とレスティナ、ニケの塔は特に必見です。

 

 

 

何でも突っ込め錬金システム!

 

面白いなと思ったのがもう一つ、合成。

装備品の、いわゆるアクセサリに当たる「秘石」を合成できるんですが、その錬成のレシピがかなり何でもありなんですよね。

合成用アイテムが存在しているうえで、武器や防具も合成できちゃうところがポイント! もしかすると合成だけで総計数時間くらいは使っていたかもしれません。初期装備も無駄にならないのが、もったいない精神持ちの私には嬉しかったですね~。

 

ただここは難点も見られます。まず、街によって合成アイテムのラインナップが違うので、特に終盤はあちこち飛び回らないといけません。世界観や町の個性づくりとも言えますが、不便なのは確か。また、合成レシピの仕様について、詳細な説明はあるもののややとっつきづらい印象ではありました。

幅が広くなった分難しさもあるのは仕方ないよね~、という感じ。

といっても斬新でしたし、あれこれ試すのが楽しかったです。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

若干の不便さやご都合主義は感じるものの、それを補って余りある熱さに溢れるフリゲだなあと思います。

「こういうの好きだよね!! わかる! じゃあ行こう!!!」と力強く期待通りの展開を見せてくれる一作でした。