うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「黄昏境界線」感想

「誰もが平和を求め、同時に繁栄を求めていた」

停滞は進化の妨げなりや?な前置き。

 

 

 

えー、今回はケニーさんところのフリーゲーム「黄昏境界線」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

www.freem.ne.jp

 

 

一本道、クリアまで数十時間におよぶRPG。バトルもテキストもキャラも気を抜かない、最後まで密度がしっかりの対策です。

 

というわけで、良かった点など。

 

 

重厚で洒落た言い回しのストーリー

 

まず必見なのがここ! ストーリーのがっつりしたボリュームです!!

特にふりーむだと、バトルのバランス調整や難易度が前面に推されているように見えるのですが、いやいやこれがお話部分もものすごく魅力的なんですよ!! なので当ブログではまずここを推して参ります。

 

一言で言うと、ドラマ。

神と人、国家の闇と貴族の誇り、異能力者への不信と祭り上げられた英雄……などなど。様々なテーマを介しつつも、お話は「少年と少女が想いを通じ合うハッピーエンド」に集結します。この! 古き良きRPGなストーリー! これがものすごく好きでした~!!

細やかな描写やキャラの暗躍がしっかりと描かれているので、肝心の「絆」の部分がしっかりと説得力を持って、ズガンと響いてきてくれるんですよねえ。私はキャラに愛着を持ちがちなので、主人公・クリスに着目しながらストーリーを進めましたが、物語の全体像や伏線などに目を向けても楽しめる作品だと思います。

 

ハートに訴えかける場面と理知的に事を進める場面とがきっちり用意されているところも推したい。理想論でであっても、それを信じたいと思わせてくれるような展開が多かったです。要は、信頼できる!

 

世界観には専門用語を含めつつも、すんなりと頭に入っていくようなやり口だったのも好ポイントでした。いっそweb小説なりでがっつり読み返したい気持ちもあるんですが、この作品はRPGだからこそ成り立つお話だとも思うので、ぐぬぬ。ジレンマです。

 

 

 

シニカルだけど前向きな台詞の数々

 

主人公からして、貧民街出身の逃げるが取柄な小悪党。どことなく斜に構えた態度で物語は展開していきます。

でも、注目したいのは終始前向きなところ!

若干やれやれ系主人公な文脈も垣間見えつつ、やる時には奮起してしっかり眼前見据えながら逃げ回ってくれるのが、このクリス・クニクルスです。かっこいいー! パーティに明るい子がいたり生真面目な子がいたりもして、ダークに走りすぎないようバランスが取れてるのもポイントですねー。

 

洋画っぽい言い回しといえばいいのかなあ……。漢字たっぷり・比喩ドバドバな台詞が飛び交うので、そういうのを、アツイ!これぞロマン!!と感じられる方には是非プレイして欲しい気持ちです!

 

 

 

個性も魅せ場もしっかりあるキャラクター

 

メインキャラもサブキャラも、登場するキャラは本当に一人一人が生き生きと舞台上に立ってくれます。

何よりうれしいのが、それぞれにきちんと見せ場があるところ!

終盤になって味方キャラが一人ずつ自分の影と立ち向かう展開、オタクは皆好きでしょ。私は好きです。それぞれに焦点を当てた回があって、クリスとの会話や過去エピソードを通じてそのキャラの個性がどんどん深まっていくのが、プレイしていて楽しかったです。さりげなく顔グラの差分もかなりあって、どこまでも凝ってました!

 

バトルにおける同じ盾役でも例えば、クリスは避け盾・ガランドゥは受け盾といった差別化があります。ストーリーにおける女の子との関係性も戦友・相棒・右腕、などなど盛りだくさん。どの局面においても、誰かが誰かの上位互換にならないように、という意思を強く感じました。

 

ちなみに自分はガランドゥが一番好きです。理性を持って狂気の道をしっかと歩む姿、実に矜持を感じてかっこいい!! 

CP的な意味だとオートリ主従が好きです。おてんば姫と堅物従者めっちゃおいしいんだ~……。あんな、サブキャラ的な二人にも、きっちり内面を感じられる会話などが盛り込んであって嬉しかったです。

 

 

 

こだわり抜かれたバランスのバトル

 

さて、バトル要素ももちろんないがしろにする気はありません。

古き良きコマンドバトル、特殊な状態異常や属性攻撃なども取り揃えて、約数十時間のプレイを最後までじっくり頭を使いながら楽しめるようになっています。

 

面白いなーと思ったのは装備品について。なんだろう、「無条件にこの防具が最強です!」みたいなのがないんですよ。どの防具にも短所があって、だからこそ長所がめちゃくちゃ強力。属性耐性を全て揃えるパズル系の装備品もありますが、本作は何を捨て何を取るかで悩まされることが多かったように思います。

状態異常もそうですね。完全無効は一種類、複数耐性はパーセンテージで管理、という印象が強かったです。

 

これはキャラについてもそうと言えるのかな……? 意図されている性能はそんな気がしますが、個人的にはティグレとセフィーロが二強で万能だったように思います。でもこれもプレイスタイルによってまたガラッと変わるんだろうな~!

サポート重視と見えるキャラが意外と攻撃にも回れたり、逆に攻撃役がアイテムをさっと使って回復する必要のある場面があったりと、終始流動的なバトルが多かったです。

 

まとめると、常に動き回って休む暇のない、激しいバトルが盛沢山!

戦闘狂のあなたへ、文句なしにオススメです。

 

 

 

 

ハートフルがそこそこハードな難易度

 

さて、ここは魅力ながらためらいにもなる点として。

戦闘の難易度についてです。

 

まず本作は、ストーリー重視向けとして簡単難易度のハートフルモードも用意されてはいます。が、やっぱり「たたかう」連打派の方にはそれでもかなり厳しいと思います。頭を使ってのバトルは必要不可欠です。

ただこのバトルの難易度は作者様の強いこだわりかつ魅力でもあると思っているので……これを崩すのであればもうバトル全スキップになってしまいかねないんでしょうね……。やはりストーリーを私は推したいので、それもそれでアリの選択だとは思うのです。が、これだけ凝ってこだわり抜かれたバトルシステムの修正履歴を見ると軽率に言い出せそうにはありません。

 

ちなみに私は、一話~三話辺りまでアドバンス、四話~六話途中までカジュアル、以降特に各話の最終ボスについては常にハートフルで進みました。最終章よりもその手前がきつかったかな。

でもやはり、被ダメージからして難易度による違いはしっかりと感じましたし、配慮したうえでのこのバランスなんだろうとは強く感じました。

それに作り自体はすごく誠実で丁寧なんですよ! 

強いスキルを使う前には必ず予備動作が入りますし、初見殺しにはならないように戦闘中に会話イベントなども挟まれます。規定ターンごとに行動する敵が多いためか、バトル画面には常にTURN表示がされています。私はターン数え間違いをしょっちゅう起こすプレイヤーなので、ここが実にありがたかった……。

 

ストーリー重視の方にも是非プレイして欲しいゲームなのですが、RPG初心者にはさすがに厳しそう。でも、雑魚敵は無視して進めるつくりなので、そういう意味ではオススメしやすい作品と……言いたい!

何より詰将棋デフォ戦が苦手な私でもクリアできたので、いける! はず!!

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

あと細やかな点だと、セーブタイミングの挟み方やアナライズによる敵ステータスの確認など、プレイしやすさへの配慮も素晴らしかったです。

 

魂がぶつかり合う重厚で熱いストーリー、睨み合い思考を回す高難易度バトル、雑魚戦不要のRPGにピンとくる方へおススメです。

 

 

追記ではネタバレ感想。

 

 

 

 

 

 

ネタバレ注意!!

 

語りたい点や、絶妙にツボな言い回しはたくさんあるんですが、ありすぎて逆に挙げられない感じです。もうね、あの作品をプレイして感じてほしい! 隅から隅まで文章を読んであの文体に浸かってほしい!!

 

とはいえそれだけだと私の備忘録にならないので、軽~くだけさらって行きます。

 

 

 

改めて、伏字無しのネタバレ注意!!!

 

 

 

クリスの真相と立ち位置

 

こいつは何かあるぞ、と匂わせつつ、引っ張って引っ張って最終章!

本来であれば早く早くとせっつきたくなるところかと思うんですが、本作は他キャラへ焦点を当てるのが上手いので、「さあ残すところは君だけだ!」という心の準備を持って挑むことができました。

 

あくまで最後までクリスが「ただの少年」なのがすごくすごく大好きです!! ただの小悪党が、国家と貴族、神と人というスケールのでかい世界に叩き込まれるとなったら、やっぱり主人公にもチートを付与したくなるじゃないですか。でもクリスは最後まで、生き汚くて権力もなくてただ幼馴染のことが大切なだけの、男の子であってくれた。ここがもう、も~~~たまらなく好きです!

だからこそ「あの子の英雄」ってところが光るんですよね……。全世界のためなんていう、遠い話じゃなくて、あの子のために頑張ってたらなんかいつの間にか世界の英雄にもなっちまいましたみたいな。それも、たぶんクリス一人だと絶対成り立たなかったところがまた、本作のあちこちで語られていた「絆」「物語」を感じてすごく好きです……。

 

ものすごく軽率に言うと、一時期のなろう小説やラノベの流行りにも似た文脈があると思うんですよね。底辺から始まる成り上がり?な展開で、素の言動が仲間たちの信頼を勝ち取っていく、でも主人公は優等生ではなくて自分の魅力には若干鈍感、内側の熱血さは要所要所だけで見せて、なんだかんだで絆の力でハッピーエンドみたいな。各キャラにスポットが当たるのも、番外編やスピンオフっぽさを感じます。

で、この「ラノベっぽいなあ」という感想こそが最後に綺麗に繋がってくれるという!! いや~実に気持ち良かったです。

 

 

 

ハーレム主人公?

 

まず前提として、私はいわゆるハーレムものが苦手で、特に本命がいるのに女キャラがみ~んな主人公君が大好き!みたいなのを見るとちょっと冷めてしまうタイプです。なんだろう、フラれちゃう子がいるの寂しいんですよねー。

なので本作は、その文脈も多少は携えつつも、ほどよい距離感で落ち着いてくれる子が多くて嬉しかったです。ドドンと告白したら盛り上がるところを、あくまで幼馴染のヒーローとしての立場で抑えていたのも好印象! アイとの距離感が近ければ近いほど、クリスとナハトのエピローグがアイをないがしろにするみたいに見えてしまうところだったかと思うので……抑制とバランスがうまいなあとしみじみしました。

 

 

 

スキルブック

 

本編の最後に追加されるスキル本のタイトルがだ~~~~い好きなんですよ!!

あれを見た瞬間の、ひゅっと息をのむ感覚が忘れられません。ストーリーで語ってくるのももちろん大好きですが、こういうシステムやアイテムですっとお出しされる衝撃も好きです……。

よくよく考えれば、スキルブックが全部著名な作品だったのも、この世界全体が物語という伏線になるのかなー、なんて。

 

余談ですが、スキルのフレーバーテキストもすごく好きでした。「やっぱり平和が一番です!」の説明文がそれこそ一番好き!

 

 

 

ラスボスおよびエンドロールおよびあの世界に関わった人たちに向けて

 

PRAYとPLAYをかけるセンスが大好きです。

 

 

 

 

 

と!!

こんな感じで!!!

 

語りつくせないくらい、文体もキャラも見せ方も扱いもすご~~~く好みの一作でした! 公式では「地味に力を入れた」的なことが書いてあるんですが、いやいや! これはもう全力投球のすさまじさですよ! 好きな台詞ありすぎて、スクショ何百枚も撮っちゃったもんね!

 

かなり長編の作品、出会えて本当に良かったです!