うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「獣の国の花嫁」感想

あなた色に染まりに行きます」
そこに策略があったとしてもな前置き。



えー、今回は、pineteaさんところのフリーゲーム獣の国の花嫁」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

ジャンルは乙女向け短編RPG、獣人などの人外異種恋愛がメインのウディタゲームです。ヒロインは無個性タイプで、外見のキャラチップこそあるものの、基本的にセリフ無しです。

公式サイトにはプレイ時間2時間・二周目以降は半分とありますが、私がプレイした時は初周1時間・二周目以降は慣れたら15分前後になりました。なので、RPGやウディタに慣れてる人ならほどよいボリュームの短編~中編として楽しめるかと思います。

 


では、さっそく特徴など。

 

 

 

驚きのエンド数と魅力的なキャラ

 

攻略対象は3人。無邪気な犬タイプの従者や、生意気虚勢張りのショタ、読書家ながらワイルドなおじさんと、誰か一人はピンときそうな感じに属性が分かれてます。
エンド数はなんと14種類も。回想機能はありませんが、セーブデータが15枠あるのでやろうと思えば全エンドの直前データを残しておけます。


そして、うちのブログだからこそ何よりも推したいのがヤンデレ要素! そう、全体的に愛されほのぼのな雰囲気ではありますが、あるんですそういうエンドが!

といっても凶行で暴れるわけではなくて、ほんのり病み要素があったり闇堕ちっぽく見えたりするくらい。それでも、予想外の方向からヤンデレの兆候が見えた時の嬉しさったらありません。大変おいしゅうございました。

 

 

 

豊富な会話の裏に見れるしっかりした世界観

獣の国、というオリジナルの世界設定ではありますが、小難しい用語はなく世界説明も最低限に留められています。


けれども世界観が薄味というわけでは決してありません。むしろ、キャラ達の雑談からちらりと出てくる身分の話、王政の仕組み、蔓延する疫病の話などから世界観が膨らんでいくようになっています。しかも説明口調ではなく、さらっと混ぜ込んでくる辺りが自然で良い。
それこそ「成りそこない」の辺りを深めれば大長編のファンタジーものも作れそうなほど。そこをあえて短編にまとめて落としこめるのも凄いです。

そして何より、乙女ゲーに求める第一要素として、キャラクター達との交流も充実しています。ちょっとした会話イベントの起こる場所が設定されている他、何にもないところでも雑談ボタンで色々台詞が聞けるのもグッド。特に雑談ボタンは、かなりの種類の台詞が用意されててびっくりしました。連打楽しい。
本を使った時のキャラの反応が人数分設定されているのにも驚きました。会話やキャラ萌えメインの人にはものすごく嬉しいシステムです。

 

 

さくさく周回できるシステム

 

レベルを引き継いで二周目を開始できたり、メッセージスキップや歩行速度調整でハイスピードにプレイしたりできます。アイテム引き継ぎがないのはちょっと残念ではあるけれど、それが無くても十分余裕でラスボス倒せるので贅沢な意見ですよね。てへ。


面白いな~と思ったのは強敵を倒すことで近道ができるシステムです。二周目以降で雑魚敵を避けたい時にも便利だし、強敵がいるぶんレベル上げにも繋がってラスボスがどんどん楽になるし。

下手なシステムで色々スキップするとレベルが伸び悩みがちなイメージですが、この作品はこの点心配する必要がなくて有難かったです。

 

美麗で細かいグラフィック


さて、キャラ萌え・RPG要素に加えてさらに見どころはグラフィック。
とにかく立ち絵を見てもらえればこれはすぐに納得していただけるのではないかと。こういう画風はなんて言えばいいのかな、リアル寄り? 表情変化も多く、かなりクオリティの高い立ち絵です。


全体像でのみ見られる下半身や手元の部分にごってりケモノ要素が詰まっているので、亜人系人外にはしっかり人外してほしい方も嬉しいのではないでしょうか。なお、全体図はゲーム内のパスワードを公式サイトに打ち込むことで見られるおまけページから見られます。

あとは、ルートによってヒロインのキャラチップが変わるのも、さりげなく嬉しいところ。

何もしてない棒立ち状態のキャラチップが、何故か一歩踏み出した状態で固定されるのは仕様上なのかな? そこだけ少し気にはなりましたが、細かい変化があることに変わりはありませんし、特にリフルート入った時の姿はとっても可愛くてお気に入りです。

何より、それぞれのエンドに一枚絵があるのが嬉しい! これを見るためにデータを取って置いたくらいです。繊細な線画とBGMが合って、どんな雰囲気のエンドにもぴったり合う素敵なイラストばかりでした。




最後に、ちょっと惜しいなと思う点について。

 

 

イベントやエピローグのあっさり味


ヒロインが無個性タイプだからかもしれませんが、キャラからの告白やエピローグに入るまでなど、随所の大事なイベントがかなりあっさりしてるなーと感じました。
例えばラスボス撃破時にもうちょいエフェクトを入れたり、告白時だけBGMを個別のものとは違う特別なものにしたりしたら、もうちょっとフィナーレの盛り上がりが出たのではないかなと思います。


キャラに凝り、イラストはクオリティ高く、RPG要素もさくさく――ここまで良い要素が揃っているからこそ、演出面ももう一息頑張ってほしかったというのが惜しいところです。


とはいえ、上記の通りエンドロール自体はグっとくる一作です。誤解なきよう。

 


と、最後に少しだけえらそうなことを書いてしまいましたが。
繰り返すように、クオリティが高くてエンドの雰囲気も多様、ヤンデレ展開もある大変おいしい一作でした!


追記でネタバレ込みの感想です。

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

 

ネタバレいっぱい。

 

【戦闘】



ヴィレムさんが大変頼りになった覚えがあります。魔力特化技とユイフォンの魔力支援の技は重複できるので、二つ合わせるとラスボスにも500超えのダメージが叩きだせるという。とても助かりました。
初周が人間ルートだったからラスボスはちょっとだけきつかったかな? でもRPG苦手でも頑張ったらなんとかなるくらいの難易度だったので、今にして思うとちょうどよかったのかも。

 

 

【エンディング】

全般について
人間エンドがノーマルエンド、愛エンドがハッピーエンドって感じでしょうか。人間エンドはほのぼのしてるイラストが多くて和みました。ヒロインちゃんかわいい。メニュー画面にも是非顔グラが欲しかった。


悲エンドはてっきり心が通じ合えなくてお別れ的なサッドエンドだと思っていたので、いやまさか、溺愛してもらいつつヤンデレっぽい行為をして頂けるとはびっくりでした。良いんですかこんな盛りだくさんで。ありがとうございます。


そして衝撃のクリーチャーエンド、いや、悲エンドに引き続く衝撃でした。良いんですかこんな闇堕ち的なエンドを見せて頂いて。ありがとうございます。

てっきりほのぼの守られゲーだと思っていたので、ダークなエンドもあることがとことん予想外で、ありがたくってたまりませんでした。よくよく考えると序盤からハードな境遇ではあるんですが、道中の彼らが微笑ましくてその印象が強かったのかもですねぇ。

何にせよ大変私得でありがたかったです。萌えた!

 

 

 

【キャラクター】

 

リフ

 

たまらんかわいい。癒し系。彼に王を任せて大丈夫なんだろうかと失礼ながら思いつつ、だからこそヒロインちゃんがいるのよねと微笑ましく感じるなど。彼が王になるルートだとローブがかなり映えてかっこいいですよね!
初めにリフ関連のエンドを回収しに行ったので、悲エンドのヤンデレ風な展開にぎょっとしました。いや、まさか彼がこう、その、太陽みたいな笑顔で軟禁に走ってくれるとは思ってもみなかったので……一番ときめきました。悲エンドの時に見れる、エピローグ前の選択肢もたまりませんねー。とことん善玉として描かれてるリフの葛藤とか負の面がちらっと覗ける貴重な選択肢でした。
クリーチャーエンドのイラストも心抉る良いものでしたね……無念がひしひしと伝わってきました。


おまけの後日談SSが一番好きかもしれませんw 

かわいいなあ君は!

 

 

 

ユイフォン

 

じわじわ敬語がキャストオフするの萌えるな~と思っていたら、やはりあえてそういうふうに描写されていたとのこと。作者様は敬語キャラの萌えツボをよくわかっていらっしゃる。耳まで真っ赤になってくれるのも可愛かったです。

そして彼の人エンドは心なしかヴィレム・ユイフォンハーレムエンドだったような気もしますw とはいえ、対抗相手がいるからこそ燃えるタイプというか、燃えざるをえない環境だと思われるので納得の展開ではあります。
愛エンドではさりげなく「閉じ込めてでも」って単語が出る辺り実に良いですね。あとショタっぽいキャラが妻って言ってくれるの背徳感がこう。気分が高揚します。
一番意外だったのはクリーチャーエンドかな。てっきり悲劇にしかならないんだと思っていたので、まさかの希望溢れるエンドでびっくりしました。男前!!

余談ですが、リフとユイフォンのクリーチャーエンドは普段の性格を考えるとそれぞれ逆な行動になりそうイメージだったので、それも相まって新鮮でした。

色々考えましたが、


リフ
自分がちょっとあほのこで身分も低いことに自覚的

自分の限界を悟っているが故の受け身姿勢


ユイフォン
一族の代表として祭り上げられている

現状に嫌気がさしている、実のところ逃げ出したい

ヒロインをきっかけに逃避行の夢を見る
みたいな思考回路があったのかなあと想像しました。こうやって考えると納得。

 

キャラがひたすらアクティブとか内気とかに特化しているんじゃなくて、こういう色んな面を見せてくれるのもこの作品の魅力の一つなのかもしれません。

 

 

 

ヴィレム

 

最後に攻略したお方なのですが、悲エンドで世界観説明をしてくれる唯一の人ので、もうちょい早めに攻略しておけばよかったかなあと思ったり。
汚れ役を引き受けてくれるタイプのキャラで、役回しがうまいなーと感じました。あと、自分に対する照れとか恥の概念が強そう。

誰よりも何よりも好きなのが彼のクリーチャーエンド!! これ、ED名も含めて一番好きです。


他二人のクリーチャーエンドは受け身で良い子ちゃんなヒロインにぴったりの、悲劇・希望のお話でしたが、ヴィレムのだけものすごく色が違いますよね。急に掻っ攫われた怒り、騙された理不尽、なかなか歪んでいる獣の国の風習等々、色んな負の要素をぎゅっと詰め込んで解消させてくれる良いエンドでした。こういう暗い部分は道中まったく出てこなかったので、展開にぎょっとするなど。でも、序盤の選択で王様にツンツンした選択肢選んだ方ならものすごくしっくりきたんじゃないかなあ。

ヴィレムからヒロインちゃんに向けての呼び名も凄いですよね。一見酷く見えますし、ショックもうけますが、これ考え直すとヴィレムからのものすごい気遣いからきてるのではなかろーか。受け入れざるを得ない現実と向き合え、俺はどこまでも着いてってやるよ、みたいな。のが、呼び名に詰め込まれてるような。これ私が書いちゃうと蛇足というか言わぬが花を潰してるみたいだなごめんなさい、でもめっちゃ感動したので書きたかった!


色んな意味で勝てない、そして頼りになるキャラでした。

 


とまあ、こんな感じで。
濃厚な萌えがぎゅっと詰まっていて、どっぷり楽しめました!