うそうさ〜第二号室〜

フリゲ!鬱展開!ヤンデレ!万歳

フリーゲーム「なれのはてのものがたり」感想

「恨むのはぼくだけでいいよ」

そしたらたぶん誰もが忘れられる前置き。

 

 

 

えー、今回は風待ち駅さんところのフリーゲームなれのはてのものがたり」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

基本は一本道の探索ゲー。公式で「戦わないRPG」という紹介がされているとおり、いわゆる勇者魔王ものになります。

というわけで、さっそく良かった点など。

 

 

昔懐かしスーファミゲーの趣

「はなす」コマンドがあったり、台詞が全てひらがなだったり、MIDIな音楽だったり。

どことなくファミコン時代のレトロRPGの空気の中でお話は進んでいきます。

記憶喪失の主人公、魔王と人間が隔てられている世界、いつでも回復できる仮住まいなどなど。RPG好きにはピンとくる世界観です。

一方で、斜め移動もダッシュもあり、システム面はテンポよくさくさく進みます。顔グラ変化やスチルはもちろん、まさかの動画演出まで惜しみなく差し挟まれるなど、イマドキなプレイヤーへの演出力もばっちりでした。

 

 

ココロを集めるおつかいイベント

誰かの悩みを解決してあちこちの街をうろつくミニイベントが豊富なのも、この作品の見どころの一つです。この手のおつかい要素って下手すると手間にも感じてしまうものですが、ことこの作品においてはミニイベントがあってこそという感じがしました。

何でもない村人や魔物にもドラマがあって、彼らの零すちょっとした一言にココロがそっと温かくなったり、逆に少し痛くなったり。ほのぼのしつつも切ないあの雰囲気は、おつかいイベントでそっとキャラたちが届けてくれるセリフの一言一言が作り上げているんだなあと思います。

赤い悪魔の言葉には激しく共感して共感のあまり大爆笑してしまいました。わかる、わかるぞ。サブキャラ同士にひっそりと関連があるのもいいなあと思います。

 

 

聖人君子も悪人もいないストーリー

ざっくりストーリーを書くと、勇者に救われた後の世界の話です。

こういった、王道展開に少しのメタを挟むストーリーってやっぱり発想が面白いですよねぇ。何度見ても人によって切り口がずいぶん変わるので新鮮さを感じます。トゥルーエンドの満足感はかなり高く、プレイして良かったなあとしみじみ思えるストーリー。

 

そして何より良いなと思ったのが、各々に引っかかりを残してあるところでした。全員が全員良い人とは言えず、一方で悪い人とも言い切れない、このやりきれなさが深く心に沁みます。

物語中に起こる不思議なことも、具体的に書くとネタバレしてしまうので追記に格納しますが、好みな要素で嬉しかったです。

 

案の定キャラとしてはナーヴが一番好き。敬語、後悔、やるときはやる、ドロドロ生真面目。たまりません。大好きです。

 

 

 

細かな会話分岐と「はなす」コマンド

ともすれば重苦しくなってしまいそうな雰囲気を、ほのぼのへ引き上げてくれるのがこの「はなす」コマンドの存在です。

あのコマンドを初めて有効活用した時はもう、にやにやが止まらなくって!

以降もあちこちでにこにこさせられました。とある行動をすると拗ねられてしまうのも微笑ましいです。

 

このはなすコマンドのみでなく、ミニイベントや住人達のセリフも進行状況によって細かく変わっていきます。このセリフへの凝りっぷりは、同じ作者様の前作を思い起こされたり。

やっぱり探索ゲーはキャラの反応の変化があってこそですよね!

イベント発生時には吹き出しが出たり、取り逃したイベントのヒントがもらえたり、見逃しそうなおまけアイテムは通り道に配置してあったりと、プレイヤーへの優しさもたくさんでありがたかったです。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

昔懐かしのゲームの雰囲気やドット絵が好きな方、虚しさや切なさを噛み締めるようなストーリーが好みな方、RPGという世界観が好きな方にオススメです。

 

 

 

追記では、ネタバレ込みの感想と、考察とまではいかない解釈など。

 

 

 

 

 

 

ネタバレ注意です。

 

 

 

【ツボだったサブイベントや小ネタ】

・クロウサギの「くちおしい」

寂しいとかうらやましいとか名残惜しいとかではなく、くちおしいなんだなあという、言葉の選び方にくすっときました。この後起こる世界のバグ演出イベントの衝撃も併せて印象的。

 

・セーブはコマンドから

可愛すぎます。

しばらくセーブしてないと心配してくれるのも優しい。

 

・赤い悪魔の本読みイベント

反応がアナタ私ですかと言いたくなるほどで実に面白かったです。呻きながら読む鬱展開からのハッピーエンドものはいいよね……鬱のまま終わってもそれはそれで好きですが……。

 

・ぼうぐやさんイベント

そういう生き方もありだよね、っていう、優しい肯定に心がじんときました。

イベント後にぼうぐやへ行った時の反応も好き。

防具屋だけでなく道具屋等もそうなんですが、サブキャラの物語が一連の流れになっていたり、関連キャラがひっそりと別の建物にいたり、人に話しかけるのがとても楽しいRPGだったように思います。誰かの物語が感じられるって良いですよね。

 

・フィリンと夜の城

初回プレイで断罪ルートに入った時、どうやって帰ればいいのかわからずしばらく迷子になりました。来た道を変えるだけだしポイントもわかりやすくマップチップが盛り上がっているのに、なぜなんでしょうね自分……。

 

・蝙蝠さんに果物を

フルーツバットだったんかいという密やかな驚き。

 

・せいしゅくにってするやつ

わかるけどかわいいな。

 

・ゆるさなくっても、いいんじゃないか

ハッピーなお話も暗いお話も、このくらいの距離感が心地よいなあと思います。

お話づくりが絶妙なバランスでできているなあとも。

どちらを選んでもいいけれど、選ぶのが私ではなく彼というところもまた、誠実で好きです。

 

 

 

全体的に、言葉のチョイスにぐっとくるパターンが多かったです。

 

キャラとしてはやっぱりナーヴが好き。本編だと冷徹さや嫉妬が目立つ彼ですが、せかいのカケラを見る限り、心配症のお世話焼きさんなんだろうなあとも思わされます。言い方が損なだけで。

 

 

 

解釈・考察

 

察することで響く良さもあると思いますが、整理がてら書きますね。

 

プロローグの会話

あの会話は初見だとプレイヤーに向けたメタに見えますが、実際はネメとくろいほん(姫)との会話だと思います。くろいほんにしてもなお魂を生かそうとするネメへの姫からの問いかけみたいな。

「アンタ」「キミ」などカタカナでの呼びかけこそがプレイヤー向けでしたね。

 

 

暗転幕間

本編のところどころで起こる時間消失みたいな、一瞬の暗転からの都合よい展開に移るあのパワーについて。現実改変と便宜上呼びます。

あれ、初めはくろいほんの力だと思っていたんですよ。姫と会わせて、お話をおしまいに持っていくための力みたいな。でも、くろいほんが力を使う時はその前にきちんと意図や意志を表すセリフが入るので、くろいほんはあくまで巻き戻しの力だけを行使しているんだろうと思いなおしました。

 

で、よくよく考えるとあの現実改変が起こる場所にはいつも女神像があるんですよね。だからあれはネメの力なんだろうなと思いなおしました。

バグっぽい画面もそうじゃないのかなあ。

 

初めに魔物たちのパーティに参加できなかったのも、

魔物たちに受け入れられる

=お姫様のところに行かず大樹のもとで過ごす

=姫と勇者は出会わない物語になってしまう、

からかなー、なんて。

 

ノイズやバグっぽい演出は少し、禍々しさを感じるほどでもあったので、ネメのような作中における善の役割を果たすキャラが使うのは意外だなあと思いもしたのですが。姫と勇者が出会う=世界の終わりが近づくと考えれば、納得なのかもしれません。

 

 

とはいえもちろん、崩壊するだけでなく、お話を終えた暗転の中に見出せるものは無限にあるとも思います。あの、色々考えて余韻に浸れる終わり方が大好きです。

 

 

 

ページ最後のせかいのカケラの一文が、本当に響いて素敵でした。

人の悪意や行き違いの切なさと向き合ったうえで、優しさを満たしてくれる作品だなあと思います。